Castaway-2nd battle-
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#234 [我輩は匿名である]
敵の気配の中に、何処かで感じたような違和感がある。

「この第六感に来る感じは…まるで…」

ひとつの体に複数のスキル。
誰かがスキルを使っている時の同類にしかわからない感じが、歪なものとなって伝わってくる。


そう、まるで半年前に見た、グラシアのように。
 

⏰:09/09/08 16:53 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#235 [我輩は匿名である]
 
「3人とも下がりなさい!!」

ハルトマン、リーザ、シーナ。それぞれの考え事を、高い声が吹き飛ばした。

声のした方を見ると、1台のシーマが停車している。
開け放した窓から、なにやら筒身のようなものが真っ直ぐこちらに伸びていた。

「あれは…有紗さん?」
「なるほどのう…」
「さっすが!」

状況を把握した3人が、即座に散開し離脱する。

意図に気付いた敵が動き出すのと、有紗が徹鋼弾を放つのは同時だった。

⏰:09/09/08 16:54 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#236 [我輩は匿名である]
狙いはハルトマンとリーザがいた辺り。
直撃せずとも、至近距離で着弾すれば衝撃その他諸々でどうにかなる。

思惑通り、港の舗装を砕き砂煙を巻き上げて着弾した一撃は、その周辺にいた敵を僅かな間混乱させた。
ほんの十数秒だが、それだけで十分。

「乗って!!」

筒身が引っ込み、代わりに有紗が運転席から顔を出し叫ぶ。
言われるまでもなく、といった感じに、3人は一斉にシートに乗り込んだ。

後部座席のドアが閉まるか閉まらないかのうちに、有紗が勢いよくシーマを発進させる。
砂埃が晴れ敵が立つのが見えていたが、それも遠ざかり、やがて見えなくなった。

⏰:09/09/08 16:54 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#237 [我輩は匿名である]
「ふー、危なかった」

「あれは一体何だったのでしょう…?」

ある程度距離を稼いでからスピードを落とし、車は直線道路に入った。

「それにしても有紗、いいタイミングだったぞ」

「実は内藤ちゃんに言われてね♪」

「内藤さん…か。何か知ってるのかな?」

シーナが小首を傾げる。
有紗は、小さなドライブインで車を停車させた。
降りるやいなや、シーナが自販機に向かう。

「ひとつの体に複数のスキル…まるでグラシアのようでした。それが何人もいて…」

「複数のスキル…?」

「間違いないぞ、有紗。『SED』じゃ」

「…!」

⏰:09/09/08 16:55 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#238 [我輩は匿名である]
有紗が睨み付けるようにハルトマンを見る。
ハルトマンはその視線をかわし、笑みを浮かべながら話を続けた。

「確認できたのは2パターンじゃ。携行できるまでは進んでいないじゃろうから、恐らくあのタンカーの中か…」

「…ふふふ」

有紗が目を臥せ、小さく笑う。
それを見たハルトマンも、くっくと含み笑いをした。

「悪いが、根が性悪なもんでの。なに、情報料などは取りはせんよ」

「ありがとう、予定が変わったわ。おかげで暫く退屈せずにすみそうね♪」

⏰:09/09/08 16:55 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#239 [我輩は匿名である]
有紗とハルトマンの会話を横で聞いていたシーナが思考を巡らせる。

「SED…何処かで聞いたことがあるような無いような…」

「どうしたの、シーナ?」

「お姉ちゃん、SEDって聞いたことない?」

「……さぁ」

「うーん、聞き覚えはあるんだけどなぁ」

目的の知れぬ敵との戦闘で、1つのキーワードが浮き彫りになる。
SEDという言葉を知るリーザも、この時はその真の意味を知らない。

故に、シーナの存在が敵にとってキーパーソンとなる事を知らない。
それと同時に数少ない切り札になりうる事も知らなかった。

身近にいる、ある人を除いて。


 

⏰:09/09/08 17:06 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#240 [我輩は匿名である]
 



時刻は深夜3時になろうかというところ。
市内の中央を横切る幹線道路の脇に点々と灯る街灯を除き、街の明かりはほとんど消えている。
目立った騒音といえば時たま市内を通り抜けるトラックやタクシーの走行音が聞こえてくるのみで、街全体が静まり返っていた。

首都圏から少し離れた、いわゆる生活都市圏である歌箱市では、深夜に外を出歩く者はあまりいない。酔っ払って帰ってきたサラリーマンや夜勤業の者がいる程度だ。
爆音低速で改造車を乗り回し街中を徘徊する人達とも、今のところ無縁である。

⏰:10/03/28 17:06 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#241 [我輩は匿名である]
地元のヤンキー人種も0時をすぎるといい子になるおかげで、街に点在するコンビニはこの時間はガラガラ。
中には0時を過ぎると閉めてしまうコンビニもある。24時間営業でなくてどこがコンビニエンスなのか。

ちなみに筆者の近所には23時に営業終了するファミリーマートがあるが、23時を過ぎても彼らは閉めきられたシャッターの前で普通に座り込んでおり、最近ではやもするとヤンキーというのは閉まっていようが開いていようがコンビニの前に屯する性質があるのではないかとの仮説が筆者の脳内で提唱されるほど
どうでもいいですかそうですか。

⏰:10/03/28 17:07 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#242 [我輩は匿名である]
話がそれた。つまるところ深夜の歌箱市とはそんな半ゴーストタウン状態なのだが、そんな中で真面目に24時間営業しているコンビニがある。
そのコンビニに1人の男が入店したところから、話を再開させていただこう。

男はハンチング帽を目深にかぶり、踵まで裾が届くかという丈の長いベージュのロングコートを羽織っている。
レジの奥でパイプ椅子に腰かけ雑誌を読み耽っていた店員が、怪しいものを見る目付きで男を出迎えた。

男は鼻唄を奏でながら、片手に持つカゴにさっさと商品を入れていく。
ふと男のコートに目をやると、ポケットにそれぞれ銘柄が違う煙草が、ぎゅうぎゅうに詰まっていた。

⏰:10/03/28 17:08 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#243 [我輩は匿名である]
男は陳列棚を一通りまわり終えると、レジに向かった。店内にいる唯一の店員が、雑誌を置いて対応に向かう。
見るからに怪しい男だが、早寝早起きのこの街にとっては大事な商売客である。
店員は手早く清算に取りかかった。

オレンジジュースが一点。
缶ビールが一点。
コンビーフが一点。
乾燥鯣が一点。
割けるチーズが一点。

ここまで清算したところで、男は煙草を1箱要求した。
ポケットに煙草があるのにどれだけのヘビースモーカーなのだろうか。
しかし店員は当然それを口に出すことはなく、言われた通りに棚から煙草を取り出す。マイルドセブンのロングボックス。タールは1mg。

⏰:10/03/28 17:09 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


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