Castaway-2nd battle-
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#241 [我輩は匿名である]
地元のヤンキー人種も0時をすぎるといい子になるおかげで、街に点在するコンビニはこの時間はガラガラ。
中には0時を過ぎると閉めてしまうコンビニもある。24時間営業でなくてどこがコンビニエンスなのか。

ちなみに筆者の近所には23時に営業終了するファミリーマートがあるが、23時を過ぎても彼らは閉めきられたシャッターの前で普通に座り込んでおり、最近ではやもするとヤンキーというのは閉まっていようが開いていようがコンビニの前に屯する性質があるのではないかとの仮説が筆者の脳内で提唱されるほど
どうでもいいですかそうですか。

⏰:10/03/28 17:07 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#242 [我輩は匿名である]
話がそれた。つまるところ深夜の歌箱市とはそんな半ゴーストタウン状態なのだが、そんな中で真面目に24時間営業しているコンビニがある。
そのコンビニに1人の男が入店したところから、話を再開させていただこう。

男はハンチング帽を目深にかぶり、踵まで裾が届くかという丈の長いベージュのロングコートを羽織っている。
レジの奥でパイプ椅子に腰かけ雑誌を読み耽っていた店員が、怪しいものを見る目付きで男を出迎えた。

男は鼻唄を奏でながら、片手に持つカゴにさっさと商品を入れていく。
ふと男のコートに目をやると、ポケットにそれぞれ銘柄が違う煙草が、ぎゅうぎゅうに詰まっていた。

⏰:10/03/28 17:08 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#243 [我輩は匿名である]
男は陳列棚を一通りまわり終えると、レジに向かった。店内にいる唯一の店員が、雑誌を置いて対応に向かう。
見るからに怪しい男だが、早寝早起きのこの街にとっては大事な商売客である。
店員は手早く清算に取りかかった。

オレンジジュースが一点。
缶ビールが一点。
コンビーフが一点。
乾燥鯣が一点。
割けるチーズが一点。

ここまで清算したところで、男は煙草を1箱要求した。
ポケットに煙草があるのにどれだけのヘビースモーカーなのだろうか。
しかし店員は当然それを口に出すことはなく、言われた通りに棚から煙草を取り出す。マイルドセブンのロングボックス。タールは1mg。

⏰:10/03/28 17:09 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#244 [我輩は匿名である]
それを含めて、清算した商品を順次袋に詰めていく。
合計1039円。コンビニの買い物にしては高い方だ。

男は相変わらず鼻唄を歌いながら、財布を取り出して1040円をカウンターに置いた。
店員が1円を渡そうとするが、男は釣りはいらないとばかりに手を仰ぐ。
店を出た男は、歌箱市内にある唯一のホテルへ向かった。

⏰:10/03/28 17:09 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#245 [我輩は匿名である]
 

消えていたエレベーターの表示灯が点灯する。1から2へ、2から3へと点滅していく。
12の点灯と同時に到着音。
表示灯の下の扉が開き、奥から気の良さげな鼻唄が聞こえてくる。

ハンチング帽と、丈の長いコートに詰め込まれた銘柄の違う煙草。
今しがた購入した煙草をくわえたロモが、ご機嫌な様子でエレベーターから降りてきた。

ノスタルジアな匂いが漂うメロディを鼻歌で刻みながら、手に持つコンビニ袋から鯣を取りだしかぶりつく。
ホテルの自部屋へ向かう25歳の傭兵隊長の後ろ姿は、残念ながらどこぞの中年親父にしか見えない。
しかし本人は特に気にしている様子もなく、柱をかじる二十日鼠のように鯣を勢いよく燕下した。

⏰:10/03/28 17:10 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#246 [我輩は匿名である]
長く続くホテルの廊下で鯣をすべて消費して、歯軋り混じりに口を揺らしながら部屋のドアを開ける。
部屋の中は隅々まで手入れが行き届き、整然としている。状況は部屋を出た20分前と全く変わっていない。
変わっているとすれば、京介の顔色が悪くなっている事と、ゲーム機が繋がったテレビ画面に写るスコアの差が一方的になっていることぐらいか。

⏰:10/03/28 17:11 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#247 [我輩は匿名である]
「だあああ!! また負けたあああ!!」

「……これで…ぼくの63勝0敗……」

テレビに映る1P WINの文字。
もんどりうってベットに倒れ込んだ京介の右手には、PS2のコントローラが握られていた。

「もう1回だもう1回!」

「……なんだおめぇら、随分と仲良しこよしじゃねぇのぉ」

「…あ…おかえり…」

「おーう、オレンジジュース買ってきてやったぜぇ、好きな時に飲みなぁ」

「…ありがと…」

「おいトビー、次やるぞ次!」

「…おまえさんよぉ、捕まってるっていう自覚はあんのかね?」

⏰:10/03/28 17:11 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#248 [我輩は匿名である]
京介の誘拐監禁から、ちょうど30時間ばかり経過していた。
監禁とは名ばかりで、拘束すらされていないのだが。

「自覚あるよ? だから逃げてないじゃん」

「いやー、そうじゃなくて…なんで仲良くゲームしてんのかってよぉ」

「次はこのキャラで勝負だ!」

「おいー」

京介に急かされ、トビーは再びコントローラを握る。
64回目のキャラ選択でも、同じキャラを選ぶ。京介はというとまたキャラを変えてきた。

無表情にキャラを操作するトビーと、無駄に真剣に操作する京介。
その横で呆れたように首根っこを掻きながら、ロモは煙草に火をつけた。

⏰:10/03/28 17:12 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#249 [我輩は匿名である]
「あんたらはさ、藍に手を出す気はないんだろ? 俺を捕まえたのもその場の勢いって言ってたしな」

「あー、まぁ雇い主の命令次第だがなぁ。そんで?」

「俺はその言葉を信じる。あんたらのやってる事は褒められた事じゃないけど、どうにも悪い奴には見えないしな。
というかそんなことはどうでもいい。俺は今のところ、藍に何かやらかそうとする奴以外とは戦う気はない。
だからおとなしくしてる」

「……逃げないの…?」

「いや…ロモが煙草持ってるうちは厳しいし…まぁそのうち?」

「ところがどっこい、そーもいかねぇーんだなぁー」

⏰:10/03/28 17:13 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#250 [我輩は匿名である]
ロモは煙草を器用に灰皿に飛ばし入れる。
コンビニ袋からコンビーフを取り出し、封を開けながら言った。

「ぶっちゃけお前、邪魔」

「い? そんな勝手な…」

「そーろそろ、俺らも忙しくなるんだよなぁ。予定外のお客さん部屋に置いてても手がまわらん」

「…ロモは…明日からおでかけ…」

「そーなのよ。お前さん、今は正直言って普通の人間と大して変わらんだろ?
俺としては野放しにしても別に構わないわけで」

⏰:10/03/28 17:14 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


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