Castaway-2nd battle-
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#52 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「まさかそれを言うためだけにわざわざ?」
セリナ「それなら良かったがな。分かるだろう、あの後私がどう生き延びて、なぜここに居るかが」
ハルキン「…十中八九、研究所の奴らに治療されたんだろうな。その後はあまり考えたくはないが、そういう訳にもいかんか?」
セリナ「いかないよ。私はきっと、お前の敵だから…」
悲しそうに微笑むセリナは、おそらくあの時に研究所の連中に治療され、道具として使われたのだろう。
だが、あの研究所の連中はグラシアが全滅させた筈だ。
もしグラシアに拾われていたのだとしても、そのグラシアも半年前に京介らの手によって倒された。
:08/03/05 03:40 :P903i :/Un8CKCQ
#53 [◆vzApYZDoz6]
それならば、少なくとも自由ではあるはずだ。
セリナ「それは違う。お前達はグラシアを倒したつもりだろうが、奴は死んでいない。ウォルサーも生きている」
ハルキン「あいつとウォルサーが生きている?」
セリナ「ああ、奴も治療されたんだ。私と傾向は違うがね。ウォルサーの方は、新たな司令官が着任した事で統制が執れている」
ハルキン「しぶといな、連中も。何とも面倒だ奴らだ」
セリナ「気を付けろ。理由は知らんが、新着の司令官もスキル収集に着手している。地球へ帰った2人も諦めていない」
セリナが言うには、新しい司令官はグラシア以上にスキルに執着しているらしい。
:08/03/05 03:41 :P903i :/Un8CKCQ
#54 [◆vzApYZDoz6]
そもそもグラシアの目的は世界征服で、スキル収集はその為の手段に過ぎなかった。
だが新着の司令官は、むしろスキルの収集に目的があるらしい。
司令官の情報は分からない。今までグラシア以外には顔を出していなかったらしく、何を求めてスキル収集を行うかは分からない。
そして、司令官はグラシアと京介らの戦いも見ていた。
京介と藍の強力なスキルや、心臓を貫かれて回復したシーナの異常に強い回復スキル、内藤や有紗らパンデモ一族のスキルなどを狙っている。
それどころか、地球にごく僅かに存在する、ハルキン達が知らない他のレンサーも狙っているらしい。
:08/03/05 03:42 :P903i :/Un8CKCQ
#55 [◆vzApYZDoz6]
更にはディフェレス。
パンデモ一族のスキル『ライフアンドデス』は他人のスキルを使う事ができる。
パンデモ一族はより使えるスキルを増やすため、20歳になるとスキル収集のためにディフェレス各地へ旅をする。
その為、パンデモにはディフェレス中の様々なスキルが集まっている、と言っても過言ではない。
司令官は、その様々なスキルを狙っている。事実上、パンデモの集落をまるごと狙っていると言ってもいい。
もし、ディフェレスや地球でそれらが現実となれば、一体どうなるのか。
地球の京介と藍は、自分で消去したスキルを復活させるために人体実験を繰り返されるだろう。
:08/03/05 03:42 :P903i :/Un8CKCQ
#56 [◆vzApYZDoz6]
ディフェレスでは、シーナの強力な回復力は滅多に見られない。テストと称して何度も切り刻まれるだろう。
何も知らないパンデモはあっという間に占拠され、スキルを奪われる。奪われてしまえば用済みだ。
ハルキン「…させるわけにはいかんな」
セリナ「そうだろう。既に地球やパンデモに何人かのエージェントが送られている。気を付けろ、私もいつかは牙を剥くぞ」
ハルキン「…分からないな。そんなことを俺に教えるなら、既に組織を裏切っているだろう。なぜウォルサーに居続ける?」
セリナ「…あの時お前を裏切った私は、もうお前の傍にはいられない。そういう運命なんだ」
:08/03/05 03:43 :P903i :/Un8CKCQ
#57 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「……俺は裏切られたとは思っていない」
セリナ「…お前は、いい子だ。どうかお前は、そのままでいてくれ」
セリナが目を伏せて、雨降る丘を下りはじめた。
ハルキン「…行くのか?」
セリナ「これ以上勝手に動くと怪しまれるし…行かねばならない理由もある」
ハルキン「行かせない、と言ったら?」
2人の視線が交錯する。
身構えはせず、目だけで訴える。力ずくでも行かせない、と。
セリナは全て分かっているかのように、悲しいような、嬉しいような、怒っているような、複雑な目をしていた。
セリナ「…行かせてくれ、とお願いする」
ハルキン「…………」
セリナ「…………」
交錯する視線は揺るがない。
:08/03/09 00:48 :P903i :IRJGZ9R2
#58 [◆vzApYZDoz6]
耳に入るのは、降り頻る雨のノイズだけ。
まるで2人をこの世界から切り離すかのように、雨が2人を濡らした。
時間が止まったのかと錯覚するほど、静かに、瞬き1つせず互いが互いを見つめていた。
その最中、視線はセリナに向けたまま、ハルキンの中で過去の記憶が甦る。
逃げ出したあの日も、こんな雨が降っていた気がする。
先に視線を外したのは、ハルキンだった。
セリナは目を伏せて、苦い表情でうつ向くハルキンを尻目に丘を下りていく。
その間、2人の視線は1度も交わらなかった。
セリナと決別したあの日も、こんな雨が降っていた気がする。
:08/03/10 19:14 :P903i :tHds.fh2
#59 [◆vzApYZDoz6]
スティーブが再び身震いする。
スティーブが撒き散らす水飛沫が、既に濡れているハルキンをさらに濡らした。
ハルキン「…寒い、な…」
小さく呟いたそれは、肉体的な意味だけではない。
それでもスティーブはその巨体を摺り寄せて、鼻で小さく鳴いた。
ハルキンはスティーブの頭を撫でてやり、歩き出す。
春先の雨だが、ひどく冷たく感じる。
そう感じる事と、先程のセリナとのやり取りとは、決して無関係ではないだろう。
ならばせめて、自分の仲間がいるあの暖かい場所に居たい。
ハルキンは濡れた髪をかきあげ、スティーブを連れて丘を下りていった。
:08/03/10 19:15 :P903i :tHds.fh2
#60 [◆vzApYZDoz6]
場面は戻り、要塞跡地。
刀とグラシアが消失した件とその見解を、本部に戻りハルキンに報告する。
その提案で、5人はジェイト兄弟のバイクの元に戻ろうとしていた。
ラスダン「…待って!」
だがその歩みは、戻ろうと言い出したラスダンの一声によって止められる。
他の4人は一瞬意味を考えたが、それは広域レーダーにもなるスキルを持つラスダンの言葉。
容易に解答を得て、シーナとリーザは身構え、ジェイト兄弟はバイクに向かって走った。
ラスダンが視ていたのは、1台の乗り物とそれに乗る2人の人間。
それらは既に、基地の入口であるトンネルの中を走ってきていた。
:08/03/10 19:18 :P903i :tHds.fh2
#61 [◆vzApYZDoz6]
ジェイト兄弟が巨人に乗り込み、ハンドルソケットに手を入れる。
シーナとリーザは剣袋から持ってきた刀を取り出し、腰に据える。
恐らく敵であろう者の襲撃に備えて、5人は完全な臨戦態勢に入った。
次第にトンネルから聞こえてくる爆音。
その音はジェイト兄弟の駆る巨人のジェットエンジン音と酷似している。
やがてトンネルから出てきたのは、純白のバイクだった。
バイクと呼ぶには大きすぎるフォルム。流線形のそれが展開し、装甲が運転席を完全にカバーする。
続いて前面にせり出す、青い光を湛える2つのカメラアイ。
その姿はまさに、2輪の白狐と言うに相応しい。
:08/03/13 22:50 :P903i :O1YrPz6M
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