Castaway-2nd battle-
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#132 [◆vzApYZDoz6]

─京介の場合─

同時刻、内藤宅。

有紗はキッチンに向かい、どっさりと買い込んだ食材を使って調理中だ。

その様子を、リビングのテーブルに肘をつきながら眺める京介。
その向かいで、京介の顔をじっと眺める藍。

「……なんだよ?」
「私って京ちゃんにどうしてほしいんだろうと思って」
「なんだそれ…知らねーよんなもん」
「……ハァ…」
「お前今あからさまにため息ついただろ」
「あら、また喧嘩?」

そこへ有紗が、皿と食器を両手に割り込む。

「あっ、できた?」

有紗が楽しそうにピースサインを作った。

「バッチリ、ね♪」

⏰:08/05/07 02:43 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#133 [◆vzApYZDoz6]

「これは…藍さんや、代金はいかほどだったのかね?」
「知らないわよ、会計したの有紗さんだし…」
「さ、そんな事気にしてたらお腹一杯食べられないわよ♪」

有紗が作ってくれた料理は、予想以上に豪華だった。フカヒレのスープに子羊背肉のソテー、海老のワイン蒸しやホタテ貝のピュレ添え。
まるで、というか普通にどこかの高級レストランのフルコースだ。
これは代金が京介持ちになるのを見越した新手の嫌がらせだろうか。

「あの…お代金は…」
「これなんだ♪」
「へっ? クレジットカード…あ、名前が内藤篤史って!」
「財布忘れてたからちょっと拝借しちゃった♪」

⏰:08/05/07 02:43 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#134 [◆vzApYZDoz6]
親指を立てて無駄にいい笑顔を作る京介と有紗。
すでに箸をつけている藍。
外はすでに暗くなり雨が降り始めていたが、家の中は暖かい雰囲気で溢れていた。

「あっ、その豆腐ステーキは俺のだよ!」
「私が先にお箸つけたんだから私のよ!」
「あら、豆腐ステーキならまだあるわよ♪」
「さすが内藤、太っ腹!」

さらに良い笑顔を浮かべキッチンへ向かう有紗を横目に、京介が食事を再会する。

料理は予想以上に豪華だし、藍も何だかんだで喜んでいるようだ。
そして代金は内藤もち、と来れば、自然と京介の頬も緩む。

「今日は来て本当よかったなー」

⏰:08/05/07 02:45 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#135 [◆vzApYZDoz6]

「ふー、おいしかったぁ。ご馳走さま、有紗さん」
「ご馳走さま、内藤」
「あら、デザートもあるわよ♪」

有紗がキッチンへ向かう。
一般家庭にあるまじき料理を平らげ、京介と藍は一息ついていた。
そのとき玄関の扉が開いた音がしたが、降りしきる雨音のせいで3人の耳には届かなかった。

「有紗さん、念のために内藤には明日言っといて。数日はどこかに隠れねーと…」
「……あっ、京ちゃん…」
「………ただいま」
「って内藤!?」

固まる京介と、それをジト目で見つめる内藤。
普段なら鉄拳制裁なのだろうが、なぜか今日は手を出してこない。

⏰:08/05/07 02:45 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#136 [◆vzApYZDoz6]
雨に濡れて帰ってきたのだろうか、びしょ濡れのままで内藤はため息をついた。

「ほどほどにしろよ。安月給なんだから」
「ハイ、スミマセン、ハイ…」
「つうか川上は今から俺の部屋に来い」
「部屋でじっくり殺害を!?」

内藤に耳を引っ張られて連行される京介。
有紗と藍はそれを尻目に、とりあえずデザートを食べ出した。

⏰:08/05/07 02:46 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#137 [◆vzApYZDoz6]


「で、だ…川上」
「はいはい」
「お前、半年前のこと覚えてるか?」

内藤は濡れた服を脱ぎ、全裸のまま大真面目な顔で京介に問いかける。

京介は「え、こいつ何言ってんの?」というような目で見ていたが、内藤の真面目な表情とその言葉に、半年前のあの戦いを思い出した。

自分が少しだけ変わるきっかけになった事件。
藍のために戦った、たった1日の出来事。

「…忘れるわけがねーよ」

「あれは、終わった」

「ああ…終わった。でも何でいまさら?」

「あれな。まだ、おかわりがあるってよ」

⏰:08/05/07 02:47 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#138 [◆vzApYZDoz6]
ステテコとタンクトップに着替えながら、内藤は何でもないことのようにそう言った。

遠回しな言い方と、何気無いような振る舞い。
それは、現実を受け入れたくない、という心情の発露にも見えた。

「は? もうお腹一杯なんだけど」
「俺の財布は寂しくなりそうだ」

その態度は、あまりにらしくなかった。
内藤なら例え、そう、グラシアの残党が生き残っていたぐらいなら驚きもしないはずだ。

「今度はもっとでかいぞ。新しいボスキャラも増えたしなぁ」
「はぁ? 意味が分からん…話しづらそうなのは分かるけど」
「話しづらいな。まぁ聞け…」

⏰:08/05/07 02:48 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#139 [◆vzApYZDoz6]

「…内藤先生と京ちゃん、一体何話してるのかな?」
「さぁー…京ちゃんはもしかしたら殴られてるかも♪」
「タコ殴りにされてるのかな…ってまだデザート食べてるのに。
 話変えてっと…有紗さんはやっぱり内藤先生の傍に居たいから地球に来たんですよね?」

「んー、それが第一なんだけど…ちょっと探し物があってね」
「探し物…ってなんですか?」
「それは秘密ー♪」

「うーん、気になる…ってあれ? デザート無くなっちゃった」
「あら、結構買っておいたんだけど…女の別腹ってすごいわねぇ♪」

ちなみに、本日のディナーの総料金4万2千円也。

⏰:08/05/07 02:49 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#140 [◆vzApYZDoz6]

「…と言うわけだ」
「つうか話でけぇー…」

話を聞き終わった京介は、盛大にベッドに突っ伏した。
だがアレの匂いが少し鼻についたので、眉をしかめながら再び体を起こした。
シーツは洗われていないらしい。

「…つまり、グラシアがいた要塞よりもたくさんの組織が、スキル収集を目的に俺や藍やその他の地球にいるレンサーを狙っている、と。内藤はそれを本当だと信じてる」
「お前は信じないか?」
「内藤の言うことじゃなかったら絶対笑ってるよ…クルサって奴は1回見ただけだけど、信じられるのか?」
「確かに嘘をついてる可能性もあるが…そんな嘘つく必要があるか?」

⏰:08/05/07 02:50 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


#141 [◆vzApYZDoz6]
確かにクルサがわざわざ嘘をつきに内藤に会いにいくのは、意味が分からないし必要もない。
本当の話なのだろう。

そしてより肥大した組織ウォルサーは、恐らくはグラシアの要塞の事件から半年の間に、準備を整えてきたはずだ。
それが今から動き出すとなれば、壮大な戦いになるだろう。
ましてや地球ではレンサーの認知度は無いに等しいのだ。
半年前とは比べ物にならない騒動になる。

「もう、いつ何が起きてもおかしくない。お前は確か…身体強化の名残があったよな」
「あるにはあるよ…前ほど強くはないけど」
「浅香は今何もできない状態だ。お前が守ってやれよ」

⏰:08/05/07 02:51 📱:P903i 🆔:TWhWMPbI


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