Castaway-2nd battle-
最新 最初 全
#172 [◆vzApYZDoz6]
「ハルトマンさん…私達がここに来た理由なんですが」
「おお、まだそれは聞いていなかったな。どうしてじゃ?」
リーザは一度ためらうように湯飲みに視線を落とした。
しかし、すぐに決意のこもった顔でハルトマンを見据えた。
「シーナが無くした血風丸が、敵の手に渡っていました」
「…それは本当か!?」
どんな話をしていても笑顔を保っていたハルトマンまでもが、神妙な顔つきになる。
「祖父の仕業という確証はありません。しかし、敵がリリィと呼ぶバイクに…『SED』が搭載されています。恐らく、としか言えませんが」
「そうか…厄介な事になったのう」
:08/07/22 21:37 :P903i :L4Q41k3c
#173 [◆vzApYZDoz6]
2人が重苦しい雰囲気を出す中、シーナは明らかに不機嫌になっていた。
もはや話についていけていないのは自分だけだろう。
その疎外感が苛立ちの元になっていた。
次第に耐えかねて、とうとう口を開く。
「ねぇ、一体何の話をしてるわけ? そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
「今はあなたが知る必要は無いわ」
「うむ…知ってしまうと、おまえさんにまで危険が及ぶ」
「はぁ、またそれ? ずーっとそればっかりじゃない」
もういい、とシーナは1人立ち上がり、部屋の扉へ向かってドスドスと歩いていく。
相当に不機嫌らしい。
:08/07/22 21:38 :P903i :L4Q41k3c
#174 [◆vzApYZDoz6]
「ちょっと、待ちなさい!」
リーザが声を張り上げたが、シーナは聞く耳を持たない。
扉を開け、ずかずかと部屋から出ていってしまった。
自分だけ蚊帳の外なのが、気に入らないのだろう。
肩を落としながら席に戻るリーザを、ハルトマンが目を細めて眺めた。
「もう…仕様がないわね」
「仕方ないじゃろう。今はまだ言えない事じゃ」
どっこいしょ、という要らぬ掛け声と一緒にハルトマンが立ち上がり、全身を使って伸びをする。
おもむろに壁掛け時計を見て時間を確認した。既に午後11時を回っている。
些か話しすぎたようだ。
:08/07/22 21:38 :P903i :L4Q41k3c
#175 [◆vzApYZDoz6]
「おまえさん達の寝床はわしが用意してやるが…敵が現れたりせんかのう」
「既に地球にも刺客が送りこまれてる、と敵は言ってましたけど」
「しかし、内藤からは何も聞いて…」
言いかけたところで、デスクに置かれた電話が鳴り響く。
ハルトマンが受話器を取り上げた。
電話の相手は、リーザにも聞こえる程の大声で。
その叫びは、ハルトマンの背筋を凍らせるには十分すぎた。
『すぐに来てくれ! 川上が敵に拐われた! すでに街の郊外まで敵が来ている、とにかくすぐに来てくれ!』
予想外に早い敵の進軍。
それを知らせた声の主は、内藤だった。
:08/07/22 21:39 :P903i :L4Q41k3c
#176 [◆vzApYZDoz6]
時間軸は少し戻る。時刻でいえば8時半、ちょうどシーナとリーザが地球にやって来た頃。
家の近所にある自動販売機の前に、京介はいた。
「寝ようとは思っても、あんな話を聞いた後じゃなー…」
呟きながら、投入口にコインを入れる。
百円玉を1枚、十円玉を2枚。入れ終わったら『つめた〜い』のエリアにあるボタンを押す。
どうでもいいが、最近は英語表記が多く『つめた〜い』とか『あたたか〜い』とか書かれている自販機が少なくなった気がする。
いや、本当にどうでもいいんだけど。
出てきたファンタフリフリシェイカーを普通に振って、蓋を開ける。
:08/08/29 22:03 :P903i :saOknxQ2
#177 [◆vzApYZDoz6]
ちなみにファンタフリフリシェイカーと言うのは、缶を振らないと飲めないという『炭酸ゼリー』。
食感はゼリーだが炭酸のようにシュワシュワしていて、作者はわりと好きなのだが、作者の周りでの評判は今ひとつ。
最近はリアルキアイダーと共に自販機でよく見掛けるようになった。
ちなみにリアルキアイダーと言うのはアニマル浜口とリアルゴールドがコラボレーションって話が逸れましたね、ごめんなさい。
とにかく、なかなか寝付けなかった京介は気分転換も兼ねてフリフr…ジュースを買いに外に出た、というわけだった。
ジュースは既に飲み干してしまったが。
:08/08/29 22:04 :P903i :saOknxQ2
#178 [◆vzApYZDoz6]
「しっかし、明日からどーするかなぁ…」
飲み終えたスチール缶を、自販機の隣の空き缶入れに投げ捨てる。
が、惜しくもフチに当たって弾かれ、カラカラと音を立てて地面を転がった。
悔しそうには見えない舌打ちを1つ。
携帯電話を見て時間を確認すると、家とは反対の方向に歩き出した。
ついでに地面に横たわるスチール缶を蹴りだす。
「…よっ…と…ああ、そっちに行くなよ!」
カランカランと音を立てて、スチール缶でドリブルする京介。
思いのほか楽しそうだが、時間的に近所迷惑にはならないのだろうかと心配してしまう。
:08/08/29 22:04 :P903i :saOknxQ2
#179 [◆vzApYZDoz6]
そうして向かった先はコンビニ。
空き缶ドリブルもあるし、気分転換はまだ続くようだ。
よくよく考えれば、寝るにはまだ早い時間だ。
表通りではなく路地からコンビニに向かうため、裏にある駐車場を通らないとコンビニには入れない。
「…ん?」
そのために駐車場に入ると、コンビニの裏にある煙草の自販機を睨む男が見えた。
手には吸いかけの煙草、足元にも煙草の吸い殻が数本落ちているというのに、まだ買うつもりなのだろうか。
男は無精髭を生やしていて、よく見るとリアルキアイダーを持っていた。
リアルキアイダー片手に煙草の自販機を睨む、無精髭の男。
:08/08/29 22:05 :P903i :saOknxQ2
#180 [◆vzApYZDoz6]
それがよほど不自然に見えたのか、空き缶ドリブルをやめて不審な目で男を見る京介。
その視線に気付いたのか、空き缶ドリブルの音がうるさかったのか、男が軽く驚いたような様子で京介に振り返った。
「……いよぉーう」
「…? ど、どうも…」
「誰だ? ってぇ顔してるから教えてやるぜぇ。俺はウォルサーの雇われモンのロモ。あんたと、もう1人のお嬢ちゃんの身柄を頂きに来た」
「…っ!!」
とっさに身構える。
内藤から忠告を受けたその日にこれだ。
正直、戦いだとかそんなものに関わりたくなかった京介にとっては、まったく馬鹿馬鹿しい事この上なかった。
:08/08/29 22:06 :P903i :saOknxQ2
#181 [◆vzApYZDoz6]
ロモは吸っていた煙草を地面に捨て、再び新しい煙草に火をつける。
「そぉーんなに警戒するってこたぁ…やっぱり誰か告げ口しちまったなぁ? セリナの姐さんは向こうにいる筈だし…クルサの坊っちゃんかぁ? ま、落ち着けよーう」
「…襲って来ないのかよ?」
「危害を加えるつもりはねぇよぅ。とりあえず落ち着けってぇ」
確かに見たところでは武器も持っているようには見えないし、戦う意思も感じられなかった。
だが、ロモがレンサーである可能性は高い。レンサーである以上、気は抜けない。
何より、スキルを持たない今の自分では満足に戦えるか分からないのだ。
:08/08/29 22:07 :P903i :saOknxQ2
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194