Castaway-2nd battle-
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#204 [我輩は匿名である]
西にいる敵を東へ誘い込み、その間にハルキンがバッシュらと合流し、東の敵へ逆挟み撃ちをかける手筈なのだが、先にジェイト兄弟が囲まれやられる可能性も低くない。
危険度は非常に高かった。

そしてパンデモの状況も、戦闘区域が西側であるとは限らないし、敵の拠点が東側にあるとも限らない。
他にも不確定要素が多く、細かな作戦が立てられなかった。

これぐらいの作戦はハルキン達も幾度か体験している。
それでも張りつめたような緊張感が漂っていた。

⏰:09/03/11 21:59 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#205 [我輩は匿名である]
 
程なくして、前方の地平線の先に山脈が見えてきた。
と言ってもまだまだ距離は遠い。あと20分はかかるだろうか。

目指すパンデモの地はその山脈の中の、さらに奥地にある。

「いよいよか…」

ハルキンが、小さく声を洩らした。

⏰:09/03/11 21:59 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#206 [我輩は匿名である]
 

荒れた山道を走ることおよそ40分。
バイクは徐々に速度を落とし、やがて茂みの中で停止した。

続いてスティーブも横に止まる。
前傾姿勢になってラスカを降ろし、やがて腰を落ち着かせ舌を出して犬特有の肩呼吸を始めた。
スティーブにさして疲れている様子はない。たいした体力だ。

フラットがバイクのエンジンを止めたのを確認して、ハルキンが後部座席から降り地に足をつける。
右手で煙草を取り出しながら、左手の腕時計に目をやった。

時刻は午前7時ぴったり。予定通りだ。

⏰:09/03/11 22:00 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#207 [我輩は匿名である]
マッチを擦り煙草に火をつけ、顔を上げる。

夜は完全に明けている。頭上にひしめく木立から、薄く木洩れ日が射していた。

煙を燻らしながら辺りを見回す。
茶色に染まったススキの穂が、胸にまで届くかというくらい長く伸びていた。

隣でジェイト兄弟が嫌そうな顔をしながら車輪に絡むススキと格闘しているが、身を隠すにはこの丈の長さは好都合だ。

このススキの群生地を掻き分けて先へ進めば、パンデモの北部に出る。

⏰:09/03/11 22:01 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#208 [我輩は匿名である]
ここから侵入するのには理由がる。

パンデモには東北から南西にかけてちょうど対角線を引いたように大きな河が流れている。
河の南西部には特に重要な施設が集まっており、パンデモ唯一の外交湾である族長の家もここだ。

この施設群は、河をまたいだ西側に固まっているため、東側から来る敵は河を渡る必要があった。

河にかかる橋は1つ、ちょうどパンデモの中央にあるので、ここさえ落とされなければ占拠されることはない。

⏰:09/03/11 22:02 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#209 [我輩は匿名である]
つまり北側から侵入すれば、敵に会うことなく、河の方を向いている味方に後ろから接触することができる。

また、同時にジェイト兄弟らを南側から侵入させて挟み撃ちにする事もできたが、侵入時の状況が予測できないので危険が大きい。
少人数で侵入するのだから、戦力の分散はできなかった。

⏰:09/03/11 22:02 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#210 [我輩は匿名である]
「…行くぞ」

取り出した携帯灰皿に吸い殻を押し付けながら、ハルキンが言った。

「エンジンは切ってるな。キーは差しっぱなしにしとけよ」

「あいよ」

返事を確認し、ハルキンが歩き出す。他もそれに倣った。


ススキの大群はすぐに終わりを迎えた。

茂みを抜けた先に、開けた丘陵地帯が広がる。
本部から出発して約6時間、ようやくパンデモにたどり着いたのだ。

⏰:09/03/11 22:03 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#211 [我輩は匿名である]
朝方のこの時間なら、耕作に勤しむ者がこの北側にいてもおかしくないのだが、その姿は見えない。
それどころか、見渡す限りパンデモのどこにも人の姿は見えなかった。

耳に入るのはせわしなく飛び交う朝鳥の鳴き声だけ。
人の声は聞こえてこない。

「視聴覚遮断型の結界か…? ラスカ、どうだ?」

ハルキンが言う前から、既にラスカは結界解析作業に入っていた。
答はすぐに返ってきた。

「おかしいね…どうも、結界が張られていないみたい」

「張られていない?」

「形跡はあるんだけど。それもなかなか強力なヤツの、ね」

⏰:09/03/11 22:04 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#212 [我輩は匿名である]
「…ラスダン!」

「分かってる」

ラスダンもまた言われる前に動いていた。
宙空に片手をかざし、小型のノートパソコンを出現させる。
画面を睨むラスダンが、眉間に皺をよせ渋い顔を作った。

「…人っ子一人見当たらない。人形ならうじゃうじゃいるけどね」

「人形…?」

「中には甲冑とかマネキンみたいなのも混じってるけど」

⏰:09/03/11 22:04 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#213 [我輩は匿名である]
ハルキンが記憶の糸を辿る。
半年前の戦いの時、確か人形を操る奴がいたはずだ。

「名前は…なんつったっけかな」

額に手を当て唸るハルキンを見て、ラスカが聞いた。

「誰か心当たりがある奴でもいるの?」

「ああ。人形の方ならな」

確か、風船で作った人形に自分が出したガスを吹き込み、そのガスを操って人形を動かす、という能力だったはず。

応用すれば、甲冑やマネキンにガスを注入して操るぐらいはできるだろう。

⏰:09/03/11 22:05 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


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