Castaway-2nd battle-
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#254 [我輩は匿名である]
「それを手に入れて、その後は勝手に逃げろ…と?」

「まぁせめてそんぐらいのものはねえとなぁ。大事な藍ちゃんを守れなくなるぜ?」

「…どういうことだ?」

詰め寄ろうとした京介を、ロモが煙草を掲げて制止する。
煙たさと爆発時の記憶が思い出されて、京介はベッドに腰掛けなおした。

「言ったろ。忙しくなるってよぉ。雇い主の準備が終わったんで、この街の制圧が始まるんだと」

「本気か? ウォルサーってのは確かレンサー目当てなんだろ?
そんなに数いるわけじゃないのに…だいたい、それなりにでかいこの街を制圧なんてできるのかよ?」

⏰:10/03/28 17:18 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#255 [我輩は匿名である]
「だからよぉ、それができる人数と質が揃ってるわけよ。
この街を制圧する理由なんざ知ったこっちゃないがなぁー」

歌箱市も決して小さな街ではない。
そして、今は内藤や有紗がいる。
さらに京介は知らないが、ハルトマンやシーナ、リーザもいる。

それらを含めて制止するのだから、少なくともレンサーはある程度数が揃っているはずだ。
となると藍に危害が及ぶ可能性は高い。

「…わかった。連れていってくれ、その船に」
 

⏰:10/03/28 17:18 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#256 [我輩は匿名である]
 


「えー、さて! というわけでやって参りました某港ー!」

「…ぱちぱちぱち…」

「拍手は口じゃなく手でやるもんでしょトビーはん! いやしかし広い港ですなートビーはん!」

「……」

車から降り、バラエティ番組の芸人リポーターのように港に対して早口にコメントを繰り広げるロモ、に対して早くも素無視を決め込むトビー。
京介はそんな2人に、両手首に縄をかけられ引っ張られるというオーソドックスな御用スタイルで連れられている事に軽い絶望を感じながら、それでも抵抗はできないので2人に倣って素直に車を降り、改めて港を見回した。

⏰:10/03/28 17:20 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#257 [我輩は匿名である]
地元の港ではあるがこうして眺めるのは初めてだ。
客船の来航はなく、主に商船や貨物船のハブからハブへの中間に位置するサービスターミナル兼避難港として機能している港湾であるため、普段足を運ぶことはまずない。

それどころか今の時間帯は船舶の往来すらなく、見るものと言えば堆く積み上げられたコンテナや、無意味に沿岸の彼方へ向かって自己アピールの光を煌々と照らす小さな灯台、なぜか一部が鉄鋼弾を被弾したかのような抉られ方をしているコンクリの地面ぐらいのものである。
抉られた地面が気にはなるものの、考えたところで今の京介にはその答えが出る筈もなく、知る由もないので、最終的に京介の注目が波止場に錨を下ろし入り口を開けている一隻の中型タンカーに向くのに、それほど時間はかからなかった。

⏰:10/03/28 17:20 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#258 [我輩は匿名である]
「……あれがそうか?」

ロモは相変わらず謎のトークを繰り広げていて、なぜか鯛焼きをどこから食べるかというおよそ現状とまったく無関係なネタに発展していたが、
トビーが自分の話の節目でも何でもないところで首を縦に振った事でようやく京介の問いに気付いたらしく、今度は目の前のタンカーに向かって友人を紹介するかのように両手を広げた。

「おーう。なかなかいい船だろ? まだ資金はそこそこ持ってるらしいなぁ、ウォルサーさんは。
まぁー、だからこそ俺も連中に雇われてるんだがよぉー」

「雇われてる? ウォルサーの人間じゃなかったのか?」

「いや、何度もそう言ってるような気ぃするけどなぁー…
 まぁいい、そろそろお喋りはおしまい」

「いやお前がずっと一人で喋ってたんじゃねぇか…」

「こまけぇこたぁー、気にしちゃいけねぇよぉー」

⏰:10/03/28 17:21 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#259 [我輩は匿名である]
ロモに縄を引っ張られ、京介はけっ躓きそうになりながら歩き出す。その後ろを、トビーが音もなくついていく。
タンカーの入り口には一人の男が立っていた。

「昨日連絡した捕虜を連れてきたぜぃ。噂の京介くんよぉ」

「ああ、もう仕事増やすなよ」

「んなこと言われても他に連れていくとこもあるめぇよなぁー」

ロモが手にしている縄を男に渡し一歩下がる。
すれ違いに横を霞めた京介の肩を軽く叩いて、振り返る京介に前蹴りを一発。
よろける京介を一瞥し、ハンチング帽を被り直して男と京介に背を向けた。

⏰:10/03/28 17:21 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#260 [我輩は匿名である]
「そいじゃー、俺ぁ仕事に戻るわー。そいつ頼んだ」

「ったくめんどくせーな。ほらキリキリ歩け!」

「へーい、キリキリキリキリ…」

大手を振りながらタンカーを降りるロモと、それに静かに続くトビー。
京介は2人の背中に感謝の念を飛ばしながら、男に連れられて船内に入る。

そんなわけで捕虜の受け渡しは無事に完了し、京介は手錠はおろか身体検査などもされることなく船内の一室に放り込まれただけだった。

⏰:10/03/28 17:22 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#261 [我輩は匿名である]
「さて…とりあえず脱出しなくちゃな」

特に何かされるわけでもなく、携帯電話等もそのまま。京介は対応の甘さを怪しむことなく、今しがた閉じられた扉に手をかけるべく近付く。

だが、甚だ無防備とも言える対応だったのは、京介がただのレンサーという事で大した警戒もされていなかった事に起因するのだが、それでも最低限を講じるのは組織として当然であり、

「あれ? 普通に外から鍵かかってるじゃねーかよ!」

故に、船内で一番壁の厚い貨物室に京介を放り込んで施錠するのは、ウォルサー側としては当然の対応だった。

 

⏰:10/03/28 17:23 📱:P08A3 🆔:swSqV4NM


#262 [我輩は匿名である]
あげる

⏰:11/02/04 23:49 📱:SH02C 🆔:☆☆☆


#263 [◆vzApYZDoz6]
 


時間軸はまたさらに進み、現在7時20分。

小一時間ほど前までは紫がかっていたパンデモの空も今ではすっかり青味が強くなり、辺りにかかった薄靄は春風に吹かれ、ほとんど払われつつあった。
朝日は山の裾から離れ、いざ南を目指して東の空の低い位置からトロトロと歩を進めている。

西から東へ階段状に続くパンデモの傾斜。
その一番上で朝日を背に受けて立っているハルキンの長い影が、傾斜を縦断するようにまっすぐ伸びていた。

パンデモ全体を一望できるその高台で、ハルキンはくわえ煙草を葺かしながらパンデモの様子を見渡す。

⏰:11/03/06 18:05 📱:P08A3 🆔:Mq.0sahk


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