Castaway-2nd battle-
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#31 [◆vzApYZDoz6]
1階ロビー跡付近に到着し、ラスダンが再び目を閉じる。
さっきの連絡通路とは違い、ここは瓦礫だらけ。
探すのにも一手間いるし、見つけて瓦礫を掘り起こすのは大手間だろう。
それを考えてか、ジェイト兄弟がバイクを取りに戻っていった。

5分経った。ジェイト兄弟が巨人を走らせ戻ってきたが、ラスダンは依然目を閉じたまま。
更に5分。ラスダンはやはり目を開けない。それどころか、顔はどんどん険しくなる。
刀を探していた時と同じだ。
やがてラスダンがゆっくりと瞼を上げる。
まさかいないのでは、と誰もが抱いた思考は、的中した。

ラスダン「…駄目だ、見当たらない…」

⏰:08/02/28 05:08 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#32 [◆vzApYZDoz6]
ジェイト兄弟が巨人で瓦礫を吹き飛ばしても無駄だろう。
万が一クルサが居たら、と考えても主砲一発は使えないし、何よりラスダンの能力なら目の前の瓦礫の大部分を透視できる。
クルサがそこに居ないのは間違いない。
問題は、なぜクルサ、そして刀が無いのか、という点。

シーナ「クルサが刀を持ってどっか行った、とか?」
ブロック「まさか。瓦礫の山に飲まれたんだぜ、普通動けないだろ」
フラット「と言うことは…誰かが何かの目的でクルサと刀を持ち去った。とか…」

その仮説が成り立つとすれば、持ち去ったのは一体誰なのか。
5人が揃って瓦礫を見上げた。

⏰:08/02/28 05:09 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#33 [◆vzApYZDoz6]
目の前の瓦礫は、元は要塞。
半年前の戦いで敗れたグラシアが何処かから発射させたミサイルによって崩壊した。
今の今まで考えていなかったがそもそもあのミサイルは一体何処から発射されたのか。
いや、考えた者ならいるかもしれないが、ただ発射用の基地があっだけたと思ったのだろうし、それが妥当だ。

しかし、この要塞に似た施設が幾つもあるのかもしれない。ミサイルを発射したのはその施設の1つかもしれない。
その可能性は高かった。グラシアは世界征服を企んでいた。本拠要塞1つで済む組織な訳がない。
同じような要塞なり研究所なりが存在しても、全くおかしくない。

⏰:08/02/28 05:10 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#34 [◆vzApYZDoz6]
組織というのは、大きければ大きいほど潰れにくい。
小さな組織であれば命令系統さえ潰せば瓦解するが、大組織となると違う。
命令系統が無くなっても、必ずその代わりを為す者が決められている。
そして代わりの者は普段の活動では表側に顔を出さない。
グラシアのミサイル発射は、命令系統である司令官変更の引き金。
それはつまり、グラシアが倒された事は他の仲間と、ラスダン達が知らない新たな組織の司令官に、既に知れている、という事。

シーナ「奴らの仲間…?だとしても、クルサや刀を持ち去る必要は無いんじゃない?」
ラスダン「……もう1つ、気になる事があるんだけど」

⏰:08/02/28 05:12 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#35 [◆vzApYZDoz6]
ラスダンが眉を潜め、瓦礫を見上げて呟く。

ラスダン「……グラシアも見当たらないんだ」

全員が、絶句する。
屋上で藍を撃ち殺そうとしたところを京介に体当たりで阻止されたグラシアは、その勢いで屋上のフェンスを破って落下した。
要塞内部の爆発とミサイルがその直後にあったので、誰も彼の生死を確認していない。
彼はダメージを負った上に7階建て要塞の屋上から落下したのだ。普通なら確認しなくとも死んでいるだろう。

だが、もし生きていたら。

彼は当然仲間を呼んで、体を治療し傷を癒す。
そして自分を殺そうとした者達に、いつか必ず報復を実行するだろう。

⏰:08/02/28 05:13 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#36 [◆vzApYZDoz6]
彼もレンサーで、支配者と呼ばれる階級を持っている。
支配者のスキルは、身体強化が自動で付加される。
グラシアが生きている可能性は低くなかった。

要塞には数え切れない程の監視カメラがあった。
グラシアがシーナとハル・ラインの戦いを見ていたら、忘れていった刀を持ち帰り、その特殊な力を研究する。

クルサが奇跡的に生きていたら。
恐らく仲間達に捕まり、またグラシアに支配され利用される。
もしかしたら、見せしめに殺されるかもしれない。

ラスダンが、脳裏に浮かんだ嫌な想像を必死に振り払う。
だが、漠然としたは不安感はどうしても消えなかった。

⏰:08/02/28 05:14 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#37 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「…とりあえず戻ろう。会長に報告しないと」

会長というのは、グラシアが司令官の組織『ウォルサー』に対抗すべく生まれた組織『バウンサー』の司令官、ハルキンの事。

ハルキンは地球人レンサーの研究所でグラシアと共に地球人の細胞を組み込まれた人間。
ハルキンは強い能力を発現できず、失敗作として処分された。
しかし死にはしなかった。
そしてバウンサーでは、グラシアを唯一知る事と努力した末開花した強さで、絶大な信頼を得ていた。
ラスダンは彼なら何とかする、と確信を持っていた。

ハルキンが今、その心を揺れ動かされる人と相対している事など知らずに。

⏰:08/02/28 05:15 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


#38 [◆vzApYZDoz6]

時間は少し遡り、ちょうどラスダンらが要塞跡地に到着した頃。
ハルキンは左手に花束を持ち、愛犬のスティーブを連れて散歩に出ていた。

着いたのはバウンサー本部から少し離れた、丘の上。
若々しい草が茂る広大な土地に、様々な墓標が数え切れない程並んでいた。
その中の一ヵ所に、同じ形をした墓標が幾らかある。
花束から花を1本抜いて、その墓標の前に添えていく。
やがて一通りその作業を終えて、墓地から外れた丘の一番高い場所へ歩いていった。
その高台から見える景色は、密かにハルキンのお気に入り。
近くにあった木の側に腰をおろし、もたれ掛かって目を瞑る。

⏰:08/03/01 00:06 📱:P903i 🆔:F11dzLbg


#39 [◆vzApYZDoz6]
目を閉じたまま上を見上げ、視覚以外で自然を感じる。
澄んだ空気。時折聞こえる鳥の囀り。心地好い風。それに呼応する木々のざわめき。
目を開ければ、もたれ掛かっている木の葉の木漏れ日が目に染みる。
高台から眼下を見渡せば、悠然と、だが美しく聳え立つ山々に彩られた鮮やかな緑が目に入る。
これがもし地球ならなかなかの癒しスポットだろう。
日常の喧騒から隔絶された空間は、時間が止まってるようにすら感じた。

ハルキン「…ここに来たのも久しぶりだな」

先程花を添えた墓標は、昔の仲間達。
少年期に過ごした研究所から共に逃げ出した失敗作。

⏰:08/03/01 00:07 📱:P903i 🆔:F11dzLbg


#40 [◆vzApYZDoz6]
連れ去られた時の事はあまり憶えていない。
だが、そのお陰で人生が狂ったのは忘れない。
無理やり訓練を受けさせられ、勝手に手術を施されて他人の細胞を組み込まれ、その果てに出来上がった自分は失敗作。
強者になれなかったレンサーたち。

ハルキン「7人いたな…俺と似たような落ちこぼれが。だから力を合わせて逃げたんだ」

こればっかりは忘れられない。
処分されると聞いて、密かに立てた脱出計画。苦労して確保した脱出経路。
逃げる途中で捕まった仲間。
必死に走る背後で撃ち殺された仲間。
最後まで残ったハルキンともう1人、ハルキンより少し年上の少女。

⏰:08/03/01 00:09 📱:P903i 🆔:F11dzLbg


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