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#430 [帰路(2/3)◆vzApYZDoz6]
がたんがたんがたん。電車は音をたてながら、もうすぐそこまで迫っている。

聞き取りが難しくなる彼女の声。
横顔が、どこか遠くを眺めている。
かんかんかん。鳴り響く警告音。赤いランプ。
黒と黄色のスプライトポールの前で、2人並んで立っている。
がたんがたんがたんがたん。電車がもうすぐ目の前にやってくる。
そして彼女は語り出す。

「自殺したんだよね」

がたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたんがたん。
電車が私達2人の前を、凄まじい勢いで通過する。
まるで光のように。
黒と黄色のスプライトポールが上がっていく。赤いランプが消灯する。
彼女が掛けているフチ無し眼鏡が、燃え上がる真冬の星空の光を反射する。
なんて事ないように彼女は進みだす。

私もそれに続く。冷たい風もついてくる。
白い吐息を押しのけて、ノイズのように絡みつく。

頭の中で耳障りなあの音が蘇る。
かんかんかん。それは、終わりへいざなう警告音。

私は彼女の後ろ姿を眺めながら、顔も名前も何も知らないその女の子に、何かを想っていた。

⏰:08/06/26 16:13 📱:P903i 🆔:yCWejlVo


#431 [◆vzApYZDoz6]
久々投下w

>>430は(3/3)です

⏰:08/06/26 16:15 📱:P903i 🆔:yCWejlVo


#432 [紫陽花]
ナナシさんのSSSはレベルが高すぎる!!Σ(゚Д゚)Ww

⏰:08/06/28 08:32 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#433 [[求めるもの(1/1)]紫陽花]
教室という小さな箱の中、規則正しく並べられた机と椅子。そして毎日飽きもせず、人形のようにそこへ行く自分。

吐き気がする

何のために、誰のために
何がしたくて、何を求めて
俺はここに立っている?

もう、うんざりだ!!

誰もいない教室
夕暮れの教室
規則正しい机と椅子

これを見ていると
全てを壊したくなる
世界を壊したくなる

誰のために
自分のために

何がしたくて
生きていたくて

何を求めて
縛られない羽を求めて

何がしたくて
自由になりたくて

誰もいない教室
夕暮れの教室
乱雑に置かれた机と椅子

まるで俺の心をあらわすように

---end---

⏰:08/06/29 00:22 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#434 [◆vzApYZDoz6]
保守!

⏰:08/07/03 21:53 📱:P903i 🆔:Wub61Ubo


#435 [[愛しいあなた(1/1)桃色]]
タキシードに身を包み、バージンロードに立ってるあなた。緊張してるのが背中から伝わる。

少しくせのある襟足から、肩にかけての曲線が好き。小さくて引き締まったヒップラインも好き。たくましい腕でどんな困難も乗り越えて行けそう。だけど何より「真理」って呼ぶ優しい声が好き‥あなたの全部が大好きよ。

賛美歌をうたって誓いのキス。

初めて見る、キスをするあなたの姿‥

「奈緒子、シャッターチャンス!」友人に促されカメラを構えるあたし。

永遠の愛を誓います‥

レンズ越しの愛しいあなたへ‥‥‥

⏰:08/07/04 16:40 📱:SH703i 🆔:Rip0ffE6


#436 [[名も無き花(1/1)桃色]]
先日、旦那と娘を連れて実家にご飯を食べに行った。

いつもは寄り付かない庭に、何となく出てみる。

誰も手入れをしていないので荒れ放題だ。

片言の日本語を話せるようになった娘が嬉しそうに

「おはな」

と言っている。

見ると伸びきった雑草の間に名も知らぬ白くて可愛いらしい花がいくつか咲いていた。

母にいつ植えたのか尋ねると、首を横に軽く振る。
だがその後語られた一言に私は心を揺さぶられた。

「あそこね、偶然かもしれないけど‥キューちゃんを埋めたところなのよ」

キューちゃんとは、昔幼かった弟が一生懸命に可愛がっていたハムスターの名だ。

なんだかいてもたってもいられずもう一度庭へ行き、娘と一緒に花壇の前で手を合わせた。

⏰:08/07/05 01:51 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#437 [桃色]
>>436
↑ちなみに実話デス↑

⏰:08/07/05 01:53 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#438 [咲笑]
桃色サンめちゃめちゃ文章上手ですね
もっと書いてほしいですP

⏰:08/07/06 23:48 📱:W53S 🆔:u2w2uFNs


#439 [[闇夜の雨、月(1/1)]蜜月◆oycAM.aIfI]
真っ暗な空。それをどんよりと覆い隠す雲。そしてその雲が悲しみを誘うように落とす雨粒。
そんな雨の降る深夜に、一人の少女が空を眺めていた。

町も静まり返る時刻に、彼女は自室の窓枠に肘をかけ憂いを含んだ表情でぼんやりと一点を見つめている。晴れていれば月が存在するはずの一点を。

随分長い間そうして雲を眺めていた彼女は、おもむろに側にあった携帯電話を手に取る。折り畳まれたそのボディを器用に片手で開くと、小気味のよい音がした。
しかし液晶画面を見た彼女の顔は暗い。雲に覆われた空よりも。
(連絡……来ないなぁ)
口には出さずに心の中だけでそう呟くと、
「はぁ」
と小さなため息を一つ。恐らくは想い人からの連絡を待っているのだろう。
彼女は下唇を噛むと、親指を素早く移動させながらボタンを押し、何やら新しい画面を開く。

しかし指の動きは止まってしまった。
真剣な目で闇に浮かぶ白い画面を見つめる彼女。

しばらくしてようやく指を動かした。
ゆっくりとボタンに親指を乗せ、カチッ、と鳴らすと――画面は真っ黒になってしまった。
「ふぅ……」
携帯電話を折り畳みベッドに放り投げると、彼女は再び窓の向こうに目をやった。さっきと同じ姿勢で、肘を窓にかける。

しかし――その目には、固い決意の光が宿っていた。

⏰:08/07/07 02:18 📱:SH903i 🆔:iEqgZovM


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