*柴日記*
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#540 [向日葵]
すると苺は先生を睨みつけ、目にうっすら涙を浮かべる。
「せんせいなんて、だいっきらいっ!」
苺は保育園を飛び出して行ってしまった。
「苺っ!すいません、失礼します」
柴は急いで後を追いかけて行った。
小さい子の足は思ったより早い。
なので柴は更に急ぐ。
転びでもしたら大変だと焦りながら。
そしてようやく捕まえる。
「コラ苺っ!先生にあんな事言っちゃだめだろっ!」
:08/08/30 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#541 [向日葵]
目の高さまで苺を抱き上げて、叱りつける。
苺は口を波のように歪ませると、大きな目を潤ませる。
泣く。
そう思った瞬間、体を軽く反って大声て苺が泣き出した。
「し、しばちゃんのばかぁーっ!いちご、わ、る、く、ないも、ぉーんっ!!」
うわーん!と甲高い声で泣かれれば、柴は慌てる。
苺をちゃんと抱くと、家まで急いで帰って行った。
その間も苺の機嫌は治る事は無かった。
「珍しい。苺が怒るだなんて」
:08/08/30 03:51
:SO906i
:☆☆☆
#542 [向日葵]
帰ってきた越に、柴はぐったりとしながら訳を話した。
あれから苺は自分の部屋にこもってしまった。
柴がいくら呼んでも返事をしない。
強行突破と思い、ドアを開けようしたらしっかりと鍵がかけられていた。
途方にくれた柴は、大人しく越の帰りを待ち、越になんとかしてもらおうと考えていたのだ。
「ご機嫌ななめでも話を聞く限り今日のは酷いなぁ。ちょっと行って来るよ」
「……ごめん」
「気にしなくていいよ。すぐに「しーばちゃん」って来るから」
:08/08/30 03:55
:SO906i
:☆☆☆
#543 [向日葵]
越は柴を安心させるよう微笑むと、リビングを出て2階へ行き、苺が閉じこもっている部屋まで行く。
立ち止まってしばらく中の様子をドア越しに読み取る。
そして優しくノックをする。
「いーちーご。いーれーて」
柔らかく、ちょっとおどけたように言ってみる。
返事はない。
でも越は辛抱強く待つ。
もう1度、優しく名を呼ぶ。
そして再び待つ。
するとゆっくり鍵が開けられた。
越は鍵が開けられた速度と同じくらいドアを開ける。
苺はベッドを背にしてちょこんと床に座っていた。
:08/08/30 04:00
:SO906i
:☆☆☆
#544 [向日葵]
越はその隣に座る。
苺の目は、泣きすぎか擦りすぎか、赤くなってしまっていた。
「先生に大嫌いって言ったのはどうして?」
叱りつける訳ではなく、頭を撫でながら優しく問う。
すると段々苺の目に涙がたまってきた。
そして子供特有のせわしないしゃっくりをしながら訳を話し出す。
「しばちゃん、は、い、ちごの、おに、ちゃ、だ、もんっ……。せんせ、しばちゃ、が、ほし、とか、もら、ちゃうとか、いったぁ……っ!」
つまり。
苺は柴が誰かに取られるのが嫌だと妬きもちを妬いていたのだ。
:08/08/30 04:07
:SO906i
:☆☆☆
#545 [向日葵]
遊ぶのは自分だけ。
自分だけのお兄ちゃん。
だから誰も近づくのは許さない。
そういう気持ちが強くなって、今日みたいな事が起こったのだろう。
しかし……と越は思う。
自分は柴と恋人同士にある訳なのだがそれはいいのか?と。
「柴がお姉ちゃんに抱きついたりしてるのはいいの?」
「おねえちゃんは、い、いの。いちご、は、おね、ちゃんがすき、だからっ」
基準がよく分からないな、と、苦笑いを浮かべていると、苺はそばに置いてあった丸めている画用紙を越に渡した。
:08/08/30 04:11
:SO906i
:☆☆☆
#546 [向日葵]
受け取って、苺を見る。
「見てもいいの?」
苺は両手で目を擦りながら大きく首を縦に振る。
画用紙を伸ばして見れば、人が2人クレヨンで描かれてい。
片方の人にはピンク色で「おねえちゃん」と書かかれていて、もう片方人には黄緑色で「しばちゃん」と書かれていた。
「一生懸命描いてくれたの……。ありがとう……」
苺に微笑みかける。
しゃっくりは止んできたが、苺の涙はまだ止まりそうにない。
「だ、いすきなひと、をかきましょーって、せんせい、がいっ、たの。だからね、いちごね、おねうちゃんとしばちゃん、かいた、の」
:08/08/30 04:18
:SO906i
:☆☆☆
#547 [向日葵]
「そっか……でもね苺」
越は伸ばした自分の膝の上に苺を乗せて目線を合わせて話す。
「何も言わずに“大嫌い”とか、“見ちゃだめ”とか言ったらだめだよ。先生がびっくりしちゃうでしょ?」
苺はしゃっくりを上げながらもしっかりと聞きながら相槌を打つ。そんな苺を優しく見つめながら越は背中をさする。
「なんで見ちゃだめなのか、どうして大嫌いって思っちゃったのか、伝えなきゃだめ。もしお姉ちゃんが突然苺に大嫌いって言ったら、苺どう思う?」
「……いや」
「だよね?じゃあ苺も、先生に嫌な事しちゃだめ。……ね?」
:08/08/30 04:23
:SO906i
:☆☆☆
#548 [向日葵]
苺はしょんぼりしながらもコクコク頷く。
越はこつりと苺と額をくっつける。
「苺はいい子だから、明日先生にごめんなさい出来るよね?」
「うん……」
「あと柴にも言えるよね?柴に馬鹿って言ったんだよね?柴傷ついてたよー」
苺は黙ると、また涙をため始めた。
自分のしてしまった事が悪かった事と分かり、反省しているようだった。
「苺、お返事はー?」
「……あい……」
:08/08/30 04:27
:SO906i
:☆☆☆
#549 [向日葵]
「よしいい子ー」
越は苺を抱き締めてやる。
すると苺は小さな腕を越の首に回し「うぅー」と言ってまた泣き出した。
怒られると緊張していた糸が切れたようだった。
そんな苺をポンボンと叩いてあやしながら、立ち上がる。
そして下へと降りて行く。
リビングの机でぼんやりしていた柴は苺と越に気づいて、そちらを向く。
苺は顔を上げて柴を見ると、降ろしてと越に無言で頼む。
越が床に降ろしてやると、苺はすぐに柴が座っているとこまで走って行って、その膝に飛び込んだ。
:08/08/30 04:32
:SO906i
:☆☆☆
#550 [向日葵]
「しばちゃんごめんねーっ」
柴は驚いて越を見るが、越は笑顔のままだった。
柴は再び苺に視線を落とすと、微笑んで苺を膝に乗せる。
膝に乗せると苺はヒシッと柴の胸にしがみつく。
小さな手で必死に服を掴む姿はなんとも可愛らしい。
こうして、苺のトラブルは幕を降ろした。
―――――――
―――――――――――
―次の日―
「ねえ柴、理由もなく、叱りつけたらだめだからね。子供でも意見を尊重してあげないと」
:08/08/30 04:38
:SO906i
:☆☆☆
#551 [向日葵]
いつも通りの朝。
朝ご飯の支度をしていた越は毎日の日課かのように背中にくっつく柴に言う。
「そうだね。よく分かったよ」
「それに女の子はもうあれぐらいから大人の女として意識しちゃうんだからねー。あんまり子供扱いしたら拗ねちゃうよー」
おかしそうに言う越に、「もう少し大人っぼくなってくれないかなぁ」と思う柴。
もちろんそこが越の良いところだが、あまりに純度100%だと手が出しにくいと悩んでいる彼だった。
これくらいの触れ合いが彼女にとっていいのだと分かってはいるがもう少し近づきたいと思ってるのも正直なところだった。
:08/08/30 04:44
:SO906i
:☆☆☆
#552 [向日葵]
「おねえちゃんおはよー」
声が足元から聞こえたと思えば、苺が起きていた。
「あれ苺、今日は1人で起きれたの?」
「うんっ!」
元気よく返事した苺は、越と柴を交互に見る。
すると突然2人を離そうとする。
「え、何なに?どうしたの苺」
仕方なく離れた2人の間に苺は入り、越の足にくっつく苺。
「しばちゃん、おねえちゃんはいちごのだからあんまりひっついちゃだめーっ!」
:08/08/30 04:48
:SO906i
:☆☆☆
#553 [向日葵]
「えぇっ!?」
越と柴の声が重なる。
苺はそんなのお構いなしに当然のような顔をして越にくっつく。
「苺、昨日別にいいって言ったじゃない」
「やっぱりいやーっ!おねえちゃんとくっついていいのはいちごだけっ!」
越と柴は顔を合わせる。
柴はどこか遠くを見るような目をしながら乾いた笑いを漏らす。
「大人の女のいいわけ……?」
「そ、それはちょっと違うかな……」
どうやら2人が恋人のように過ごせるのは苺がいない時と限られてしまったらしい。
:08/08/30 04:53
:SO906i
:☆☆☆
#554 [向日葵]
天真爛漫。
癒し系。
神田家のアイドル。
その名も苺。
彼女の自由奔放な生活はまだ始まったばかり。
そしてそれに振り回される人々達がその生活から解放されるのは、もう少し、先のお話なのだった。
*苺日記*-fin-
:08/08/30 04:57
:SO906i
:☆☆☆
#555 [向日葵]
:08/08/30 05:00
:SO906i
:☆☆☆
#556 [向日葵]
番外編*夫婦日記*
:08/09/07 15:44
:SO906i
:☆☆☆
#557 [向日葵]
「えー!?今日遅くなるの!?」
急な母の叫びに、家にいる子供達と柴は驚く。
何事かと見れば、先程かかってきた父からの電話に出た母は、腰に手を当て、どうやら怒っているようだった。
「……あぁ、うん。分かったよ。」
神田家の長女である越は電話の向こうで必死に母をなだめる父を想像する。
きっと内心焦っているのだろう。
「……ところで、今日なんの日か知ってる?」
母はしばらく静かに父の返答を待っていた。
するとなんの前触れもなく母は電話を切ってしまった。
:08/09/07 15:54
:SO906i
:☆☆☆
#558 [向日葵]
「お、お母さんっ!?」
母は足を踏み鳴らして台所へ向かう。
越はその後を追って行く。
換気扇をつけた母は煙草に日をつける。
明らかに不機嫌だ。
「お母さんどうしたの?お父さんとケンカ?」
「あぁちょっとね。見苦しいとこ見せちゃったわね」
ふぅと煙を吐く。
それが換気扇に吸い込まれていくのをぼんやりと眺めながら越はハタと気づく。
「そういえばお母さん、今日は何の日なの?」
:08/09/07 15:58
:SO906i
:☆☆☆
#559 [向日葵]
「え?……あぁ今日はね」
「結婚記念日?」
いつの間にか越の背後に立っていた柴が口をはさむ。
「柴正解」
「えぇっ!?」
この家にの子になってもう10何年もなる越だが、母達の結婚記念日を知らなかった上、まだ来て日が浅い柴に言い当てられたのが悔しく思った。
しょんぼりしている越に、母は微笑む。
「いいんだよ。毎年ひっそりと2人だけでやってたから。別に言うことでもないし」
:08/09/07 16:02
:SO906i
:☆☆☆
#560 [向日葵]
「じ、じゃあじゃあ、ケンカの理由ってまさか……」
母の微笑みが少し歪む。
どうやら正解らしい。
煙草をまたくわえて、また煙を吐く。
「一郎さん……“なんだっけ?”だってさ……」
多分そう言った瞬間、受話器を叩きつけるようにして置いたのだろう。
「ホヤホヤしててどこか抜けてるトコはあれど可愛らしいからいいのに……っ!しかも結婚記念日忘れた事なんていちっどもなかったんだぞ!?なのにもう老いぼれたかぁっ!!」
怒っているのか父を誉めているのかよく分からない母の言葉を聞きながら越は柴に苦笑いを向ける。
:08/09/07 16:09
:SO906i
:☆☆☆
#561 [向日葵]
「そもそもさ、祐子さん達はいつ知り合ったの?」
そういえば、母のなれそめを詳しく聞いた事はない。
越は母をじっと見つめる。
母を残り少なくなった煙草を灰皿に押しつけ、シンクにもたれる。
「一朗さんと、会ったのねぇ……」
――――――――
―――――――――――
17歳の青春真っ盛りの歳に、神田 祐子、旧姓、森下 祐子は過ごしていた。
「森下ぁ!お前また煙草吸っただろう!」
「吸って何が悪ぃんだよ!」
…………少々、荒れながら……。
:08/09/07 16:15
:SO906i
:☆☆☆
#562 [向日葵]
喧嘩上等。
売られた喧嘩は倍額で買う上、決して負ける事はない。
何度も停学になるが、祐子は学校に通い続けていた。
そんな祐子に近づくものは誰もいない。
遠巻きに見ていて、びくびくしていた。
「お前なぁ、こんな事じゃ人生台無しにするぞ!」
生徒指導室。
祐子はここの常連だ。
パイプ椅子にドカリと座り、ふんぞり返って足を組む。
あぁうるさい……。
この台詞を聞いたのは何回目だろうか……。
:08/09/07 16:19
:SO906i
:☆☆☆
#563 [向日葵]
「てめぇに人生云々言われたかねぇよ。いちいち関わんな!」
立ち上がり勝手に部屋を出ていく。
バンッと閉めると、バサバサッと何かが落ちる音が聞こえた。
その方を見ると、本をぶちまけて呆けている青年がいた。
「び、びっくりしたぁ……」
どうやら祐子が閉めた音に驚き、持っていたいくつもの本を落としてしまったらしい。
しゃがんで本を持とうとするが、もたもたしている動作に祐子はイラッとする。
「ったく早く拾えよっ!」
とつい手伝ってしまう。
:08/09/07 16:26
:SO906i
:☆☆☆
#564 [向日葵]
「すいませんっ!」
「謝るなら手ぇ動かしやがれ!」
2人で本を拾い重ね、祐子は青年に押しつけた。
「落とすぐらいに持ってんじゃねぇよ。ちったぁ量減らせ」
「あー……。でも読みたいのばかりだったから我慢出来なくて」
へらぁと、たれ目がちの目が更にたれる。
なんだからこちらまで力が抜けそうだと思った祐子は、回れ右をする。
「あ、あの!」
ちらりと背後を見れば、青年は笑顔でこちらを見ていた。
:08/09/09 01:26
:SO906i
:☆☆☆
#565 [向日葵]
「ありがとう」
祐子は心底驚く。
目を見開いて、青年を凝視した。
青年は祐子が去って行くまで見送る気なのか、にこにこしたままそこから動かない。
だから祐子は珍しくて仕方がなかった。
自分に笑顔で、しかもお礼を言う人間がいるのか……。
まぁあれぐらいフヤフヤした奴だと、不思議ではないかもしれない。
祐子はまた歩き出した。
――――――――――…………
壁に思いきり背中をぶつける。
:08/09/09 01:30
:SO906i
:☆☆☆
#566 [向日葵]
放課後、祐子と同じ系統の3年に呼び出され、お約束かのように校舎裏の人気のない場所に連れてこられた。
祐子は聞こえよがしに舌打ちをする。
耳に届いてイラついた3年の女子4人は、眉を寄せる。
「お前調子のんなよな。1人でなんでも出来ると思ったら大間違いだかんな」
祐子は女子達を嘲笑う。
1人で何も出来ないクソガキが……。
祐子の嘲笑にカッとなった女子の1人が祐子に掴みかかる。
その手を払うと、払ったその勢いで横っ面に右ストレートをお見舞いする。
:08/09/09 01:35
:SO906i
:☆☆☆
#567 [向日葵]
どさっと1人が地面に倒れれば、それが合図かのように残り2人が来る。
2人の攻撃をひらりと交わした祐子は振り向き様に1人の背中に回し蹴りをくらわす。
よろめいたのを確認してる隙に左からもう1人の拳が飛んできて口元をかする。
その手を取って、腹に膝蹴りを入れる。
「うっ!」と唸ると、1人は地面に突っ伏した。
ガリッと痛みを感じたと思えば、さっき回し蹴りをくらわせた奴が頬に爪をたててきた。
また飛びかかってくるのを避けた祐子は、首の後ろに手刀を下ろす。
:08/09/09 01:42
:SO906i
:☆☆☆
#568 [向日葵]
フッと気を失ったのを見て、顔をあげれば、あと1人いたのを忘れていた。
しかし明らかにビビっている。
1歩近づけばビクリとし、しかし歯を噛み締めるとかかってきたので、素早く身を屈めた祐子は立ち上がるスピードに任せて顎目掛けて拳を向ける。
痛さによろめいて口元を抑えた手の隙間から、血が滴り落ちている。
口の中を激しく切ったのだろう。
祐子は地面に倒れている1人の女子の腰辺りを踏みながら冷酷に笑った。
「リベンジいつでも受けてやるよ。ただ偉そうな事言う前に、腕を磨いておくんだな」
:08/09/09 01:48
:SO906i
:☆☆☆
#569 [向日葵]
最後に一蹴りして、祐子は去って行った。
祐子は本当は喧嘩なんてするつもりは無い。
自由に自分らしく生きていけば、反発する人がいて、それにのっかるように、面白がるように攻撃してくる人がいるのだ。
そしてやがて人数が増え、周りは敵ばかり。
いつ何が起こるか分からないから、祖父がやっている合気道教室に通い、兄が趣味でやっているボクシングを教えてもらい、とどめに父がやっている柔道の道場で修行を積んだ。
あとは自己流で色々な技を編み出せば、最強祐子の出来上がりと言う訳だった。
:08/09/09 01:53
:SO906i
:☆☆☆
#570 [向日葵]
しかし敵がいなくなればいなくなる程、彼女に近づく人間もいなくなっていった。
今度は噂の一人歩きや陰口がつきまとう。
自分らしく生きていく一方で、彼女は人とも孤独とも闘い続けていた。
教室に入れば、やはりと言うかもう誰もおらず、差し込むオレンジ色の夕日がただただ眩しかった。
私はなんの為に生まれてきたのだろう……。
何故こうでしか、生きれないんだろう……。
考えればキリがない事は分かっているので、鞄を持つと足早に教室を去った。
:08/09/09 01:57
:SO906i
:☆☆☆
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