*柴日記*
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#738 [向日葵]
祐子は腕を振り払うと、その勢いに任せて一朗の弁当を床に叩きつけた。
弁当箱が一部破損し、中身が少しばかり出てしまった。
無意識に、息が荒くなる。
「もういい……」
声がかすれる。
「あたしは……アンタが野菜嫌いだなんて知らなかった。そうならそうで、言ってほしかった……」
「それは……」
「もうアイツに作ってもらえよ!あたしだって…………アンタの弁当を毎朝作るなんてごめんなんだよ!」
:08/11/29 22:50
:SO906i
:☆☆☆
#739 [向日葵]
祐子は階段を駆け降りる。
もう一朗は追ってこなかった。
辿り着いた場所は、いつも喧嘩で呼び出されていた校舎裏だった。
そこで座り込み、空を見上げる。
[そばにいるよ]
まだ素直になれていない頃、一朗がそう言った。
でももう無理だ。
自分と一朗は、やはり住む世界が違いすぎたんだ。
それでも、冗談でも、結婚しようと言ってくれた事は嬉しかった。恥ずかしくて、つい可愛くない事を言ってしまったけれど、本当は一朗のそばにずっといてもいい証を約束する事は、これ以上ないほど嬉しかった。
:08/11/29 22:55
:SO906i
:☆☆☆
#740 [向日葵]
でももういい。
あの杏とか言う奴と、くっつけば……。
祐子の心は、段々と真っ暗になっていった。
するとそんな祐子の元へ、いくつかの足音が近づいてきた。
座り込んでいた祐子が顔を上げると、何人かの女子が祐子を囲んでいた。
「おい森下。お前も腑抜けになったなぁ?」
耳障りな甲高い笑い声が響く。
祐子に恨みをもったグループらしい。
「丁度いいや。お前からうけた拳の数々、今返してやるからよぉっ!」
:08/11/29 22:59
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#741 [向日葵]
一斉にかかってくる。
祐子は無意識にそれをかわし、一人ずつに攻撃をくわえていった。
祐子の口角が、不気味に上がる。
「よえーんだよ……。バーッカ」
逆上した女子たちは、また一斉に祐子に飛びかかった。
祐子も負けじと攻撃する。
しかし数が多すぎる。
体に何発も重い衝撃を受ける。
……数分後、決着はついた。
祐子の勝利。
荒い息を繰り返して、攻撃してきた女子たちは地面に崩れている。
祐子もボロボロだった。
もしかしたらどこかの骨が折れているかもしれない。
:08/11/29 23:04
:SO906i
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#742 [向日葵]
壁を支えに、歩いて行く。
痛い。
けれどそんな事とは別に祐子は涙を流していた。
声を出して泣いてしまえば、やっぱり体は痛く、それ以上に胸が痛かった。
それでも息が出来ないくらい激しく泣く。
そして一瞬突き抜けた頭の鋭い痛みに耐えきれず、祐子はどさりと地面に倒れ込んだ。
――――――――………………
「祐子ちゃん……っ!」
再び目を開いたら、まず目に入ったのは翠と病院の天井だった。
「翠……ちゃん……」
:08/11/29 23:09
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#743 [向日葵]
体か重い。
右を見れば点滴。
左を見れば、包帯が分厚く手に巻き付いていた。
巻き付いているのは手だけではなく、足が自由に動けないからして足もそれは沢山巻き付いているみたいだった。
「目を覚ましてくれて良かったぁ……」
翠はボロボロと涙を流す。
祐子はそんな可愛らしい母を見てフッと笑った。
部屋のドアが勢いよく開いたと思うと、父が息を切らせて入ってきた。
「祐子っ!大丈夫かぁっ!」
額に汗を浮かべている。
全力疾走で来てくれたのだろう。
:08/11/29 23:14
:SO906i
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#744 [向日葵]
そんな二人を見て、祐子は嬉しくなったと同時に情けなくもなった。
失恋しただけでヤケを起こして、こんなにも心配をかけて。
自分は本当に駄目な奴だ……。
「ごめんね……。ごめん、二人共……」
涙が溢れる。
そんな祐子を父は優しく見つめ、柔らかく頭を撫でてくれた。
母は「良かった」と何度も繰り返し、涙を流しながら祐子の涙を拭う。
喧嘩をすることはよくない。
初めて祐子は思った。
一朗も、こんなに心配してくれてたから、祐子に喧嘩を止めてほしかったのかもしれない。
:08/11/29 23:19
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#745 [向日葵]
:08/11/29 23:22
:SO906i
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#746 [向日葵]
ついそんな事を思ってしまう自分が、どうしようもなく情けない気がした……。
祐子の怪我は、夏休み中に治り、退院を迎えた。
何かを察した翠は、残り少ない夏休みを田舎の方で過ごさないかと提案してきた。
丁度そこには翠の母、つまり祐子の祖母と親戚が一緒に住んでいて、なんだったら遊びに行こうと言った。
祐子は悩まずに直ぐに行くと返事をした。
:08/12/02 00:15
:SO906i
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#747 [向日葵]
一朗が家に来そうだったからだ。
現に、祐子の着替えを取りに帰ったりした時、翠が一朗らしき姿を何回か見たと言っていた。
一朗はもちろん、クラスメイトにも病院の住所は教えていない為、お見舞いに来るものはいなかった。
だから一朗も来なかった。
それでも、先生に聞けば教えてくれるだろうに……。
もう、どうでも良くなった……?
どちらにせよ、一朗と向き合える自信はなかった。
逃げたい。
今はそうしか思わなかった。
:08/12/02 00:21
:SO906i
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