よすが
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#442 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは言葉を忘れたように、ぽかんと口を開けて明るくなったり暗くなったりする空を眺めていた。
しばらくそうして立ち尽くしていたら、ハナが口を開いた。
「あの時も、花火があがってたね」
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:08/06/08 00:08
:SH903i
:aqXUJcpA
#443 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そういえば……十年前あたしがここを去った時、意識が途絶える直前に花火が打ち上げられていたんだった。
空に広がった光がハナの顔を照らしていたのをよく覚えている。
「うん」
今、あたしの隣にいるハナは、空の一点をじっと見つめている。
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:08/06/08 00:17
:SH903i
:aqXUJcpA
#444 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「毎年この時期に花火があがるの。近くで花火大会があるんだと思うけど……。
ユキがいなくなって、何にもなくなったあたしの唯一の楽しみだったんだ、冬の花火」
「ハナ……」
見上げていた顔を隣にいたハナに向ける。
ハナは相変わらず空を眺めている。その表情は生き生きとして、希望に満ちていた。
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:08/06/08 00:18
:SH903i
:aqXUJcpA
#445 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ハナ、あたし……」
「ストップ! ……今謝ろうとした? さっきも言ったけど、ユキが負い目を感じる必要はないんだよ? あたしがこうなることを望んで選んだんだから」
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:08/06/08 00:20
:SH903i
:aqXUJcpA
#446 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの顔を見てそう囁くと、笑顔のハナはまた明るく彩られた空を見上げる。
ハナはあたしが罪悪感を感じることを望んでいない。
それならあたしは謝らないでいよう。
そのかわり、これから先あたしはハナに感謝し続けよう。
ハナがこの十年間をあたしに捧げてくれたように、この先の全てをハナに捧げよう。
それがあたしの返し方だ。
「ハナ、ありがとう」
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:08/06/08 00:21
:SH903i
:aqXUJcpA
#447 [蜜月◆oycAM.aIfI]
その第一歩、あたしは感謝を言葉にしてハナに捧げた。
空で弾ける花火に照らされたハナの横顔は、穏やかで喜びに満ちていて美しい。
自分の顔と同じはずのそれは、全く別のものだった。
離れていた十年がそうさせたのだろう。
あたしとハナは見た目こそ同じだけれど、内側には絶対に重ね合わせることの出来ない違いがある。
どうやったって今のハナの気持ちをあたしが理解することは出来ない。
しかし、これから時間をかければ、もしかしたら。
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:08/06/08 00:21
:SH903i
:aqXUJcpA
#448 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルがあたしとハナの周りを跳び回りながら花火に向かって叫んでいる。
あたしはハナの横顔から上空に視線を移し、この先の幸せな未来を明るく瞬く空に思い描いた。
火花が煌めく夜空の向こうに、温かくて希望に満ちた未来がはっきりと見えた気がした。
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:08/06/08 00:22
:SH903i
:aqXUJcpA
#449 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/08 00:25
:SH903i
:aqXUJcpA
#450 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/08 00:27
:SH903i
:aqXUJcpA
#451 [蜜月◆oycAM.aIfI]
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歩道の端に植えられた桜は蕾を膨らませ、その下を歩く全ての人に春めいた空気を味わわせる。
あたしとサトルはバスに乗って街の端にあるマンションに向かっていた。
バス亭からマンションへと続く歩道には間隔を開けて桜の木が植えてあり、枝の間をくぐりぬけて落ちてくる太陽の光が時折あたしの目を眩ませる。
マンションまでは歩いて約二十分。ちょうど半分くらいまで来たところで、あたしは歩きながらセーラー服の上に着ていた黒いカーディガンを脱いだ。
もう、冬は終わったようだ。
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:08/06/12 05:10
:SH903i
:80/PBkxE
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