よすが
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#770 [○&◆oe/DCsIuaw]
「よぉ、うすのろま」

「ぼ、僕はハンスだ……」

僕はうめきながらそう言った。ジェラルドはおもしろくなさそうに、フンと鼻をならした。僕はすかさず立ち上がる。ジェラルドは僕と背丈はあまりかわらない。なのに、力の差は歴然だ。

「俺は機嫌が悪い……」

ジェラルドが続きを言う前に、僕は全速力で走り出した。逃げなきゃ……。それしか頭になかった。僕は逃げ足には自信があったため、ジェラルドからも簡単に逃げられると思っていた。しかし、それは間違いだった。

⏰:22/10/25 19:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#771 [○&◆oe/DCsIuaw]
ジェラルドは僕を追って走ってくる追い付かれることはないものの、引き離すこともできない。ジェラルドが何か叫んでいたが、聞いている余裕はない。僕はパニックになっていて、どこに行くかも考えず、やみくもに走り続けた。気付いた時には、僕は森のなかを走っていた。僕が住んでいる町は、まわりを森に囲まれた小さなもので、少しあるけば、森へと出てしまうのだった。僕のあとから規則正しい足音が聞こえる。ジェラルドは今だに追い掛けてきているのだ。僕の足はそろそろ限界を迎えようとしていた。

⏰:22/10/25 19:38 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#772 [○&◆oe/DCsIuaw]
だが、走り続けなければジェラルドに捕まり、とんでもないことになる。絶望的だ……。僕は、いつ走るのをやめるべきかを考え始めたときだった。目の前に小さな家が見えたのは。

「あれは……」

息も絶え絶えに僕はつぶやいた。あれは……魔女の家だ。実際に魔女が住んでいるかは知らなかった。町の間でそういう噂になっているだけだった。ジェラルドと同様に悪い噂ばかりだったが、もしかしたら全部嘘かもしれない。

⏰:22/10/25 19:38 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#773 [○&◆oe/DCsIuaw]
実は誰も住んでなかったり、気の優しいおばあさんが住んでいるかも。僕は決めた。あの家に逃げ込もう。一か八かの賭けだ。僕は最後の力を振り絞り、家まで走りついた。ドンドンと必死で家のドアを叩く。ドアは僕の背丈ほどしかない。早くしないと……。ジェラルドに追い付かれてしまう!僕は無駄だと思いながらもドアの取っ手を掴み、まわした。

⏰:22/10/25 19:39 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#774 [○&◆oe/DCsIuaw]
ギィー……

なんとドアは鈍い音をたてながらゆっくりと開いた。僕は戸惑いながらも家に飛び込み、ドアを閉めて鍵をかけた。ドアを閉めるとき、ジェラルドが悔しそうな顔をしているのが一瞬だけ見えた。助かった……。そう思ったのも束の間だった。


「おやおや。人の家に勝手に入ってくるなんて、なんて子なんでしょうねぇ……」

僕は慌てて声のする方を向く。そこには小さなおばあさんがいた。すでに200年以上は生きてるんじゃないかというほど、腰はまがり、体のあらゆるところにしわが刻み込まれている。

⏰:22/10/25 19:40 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#775 [○&◆oe/DCsIuaw]
真っ黒なワンピースを着ていて、とんがり帽子をかぶれば魔女にしか見えないだろう。おばあさんは、不吉な笑みを浮かべていた。小さな黄色い歯がこれでもかというくらい、びっちりとはえている。僕は思わず、ぞっとしてしまった。

「あ、えっと、勝手に入ってしまってごめんなさい。人に追われてて.......それに、ドアを叩いても誰も出てこなかったから、てっきり空き家なんだと思ったんです」

僕はもごもごとそう言った。魔女のようなおばあさんは、怪しげに大きな目で僕をじろじろと眺める。僕は目から変な光線がでないかとビクビクした。

「……まぁ、いいだろう」

おばあさんは、独り言のようにそう呟いた。何がいいのか僕にはさっぱりわからない。怒っていないのだろうか?
おばあさんの表情から感情は読み取れなかった。

⏰:22/10/25 19:41 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#776 [○&◆oe/DCsIuaw]
おばあさんは窓の外を見つめた。この家には小さな窓が一つだけしかないらしく、昼間だというのに部屋のなかは薄暗い。僕はさらに不安になってしまった。

「ところで.......お前を追ってきたというやつは?」

おばあさんの口調は今までとは違い、楽しんでいるようだった。

「えーと、ジェラルドっていう乱暴な子です。でも、音もしないし、もうあきらめて帰ったんじゃないかと……」

僕が言いおわらないうちに、おばあさんはつかつかとドアの方に歩いていき、凄い速さでドアの鍵を抜き、ドアを開けた。すると、帰っていたと思ったジェラルドが、部屋のなかに転がり込んだ。

⏰:22/10/25 19:41 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#777 [○&◆oe/DCsIuaw]
「ジェラルド!」

僕は恐怖の叫び声をあげた。ジェラルドは予想以上に早く僕を痛め付けることができそうなので、喜んでいるようだった。

「ハッ!間抜けなばあさんがドアを開けてくれたから助かったぜ!俺はお前が出てくるまで待ってるつもりだった」

なんていうやつだろう。僕はやられる前から失神しそうだった。せっかく助かったと思ったのに。ジェラルドはおばあさんを思いっきり突き飛ばし、僕に飛び掛かろうとした。もうだめだ……!

「おやめっ!」

⏰:22/10/25 19:42 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#778 [○&◆oe/DCsIuaw]
狭い部屋中におばあさんの声が響き渡った。僕もジェラルドも呆気にとられ、おばあさんを見つめた。おばあさんは腰に手をあて、僕らを睨み付けている。

気のせいか、さっきりより腰が真っすぐになっている。

⏰:22/10/25 19:42 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#779 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>750-780

⏰:22/10/25 19:42 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#780 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>780-810

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#781 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>810-840

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#782 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>840-870

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#783 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>870-900

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#784 [○&◆oe/DCsIuaw]
 雨が降っていた。
 もうすぐ秋の気配を感じながら帰宅したわたしは、まるで捨て犬みたいに縮こまって、悲しそうにうつ向いてる彼と出会ったのです。


しばにっき

⏰:22/10/25 20:06 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#785 [○&◆oe/DCsIuaw]
「お母さああん!人拾ったあ!」
「え.......ちょ、あんた、そんな犬拾ったみたいなテンションで!」

 優雅に紅茶をすすっていたお母さんは、わたしの叫びにびっくりした。そんなわたしはずぶ濡れの彼を家にいれて、タオルを貸してやった。

「ハイ。拭いて。風邪ひいちゃうから」

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#786 [○&◆oe/DCsIuaw]
わたしの言葉なんか聞いてないのか、綺麗な茶色い髪から滴る雫もそのままに、彼はぼんやりしていた。お母さんが風呂を沸かしてあげると言って、風呂場へ向かった後、あたしは彼を拭いてあげる。そこで、ハッとする。伸びている髪の毛の隙間から覗いた瞳は、グレーだった。外人さん?もしかして、日本語通じないとかかな。

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#787 [○&◆oe/DCsIuaw]
「わ、ワットユアネーム?」

カタコトな英語で話かければ少し反応したのか、こちらを見た。

「分かるから、日本語」

ぽつりとだけど、確かにそう言った。

「良かった!あ、あたしは神野絵子(かんの えこ)。この家の長女。あなたは?」

さっきまで私に向けていた魅力的な瞳を僅かにそらして、またポツリと呟いた。

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#788 [○&◆oe/DCsIuaw]
「勝手に.......呼べばいい」

何でだろう。でも何故か分かる事は、彼はとても傷ついてるように見えると言う事。何故、そんな悲しい目をしているんだろう。

「どうして……うちの前にいたの?」
「.......疲れた。どこにも行く場所なくて、さまよって、休んでただけ」

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#789 [○&◆oe/DCsIuaw]
行く場所がない?つまり家出って事なのかな。そう思いながら、今日初めてあった人をあれこれ詮索するのはよくないと思い、私は何も聞かなかった。

「じゃあ……とりあえず貴方は柴(しば)ね。犬みたいにうちの前にいたから!」

特に反応する訳でなく、柴は黙ったまま私に拭かれた。



「行くとこないっていうなら、まぁいてもいいよ」

⏰:22/10/25 20:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#790 [○&◆oe/DCsIuaw]
お母さんは寛大すぎる程寛大で、お母さんだけど男気溢れる人だ。柴がお風呂に入ってる間、さっき彼から聞いた事をお母さんに言ったところ、さっきのような返事が帰ってきた。

「今更家族が1人増えようが5人増えようがどうでもいいよ」

⏰:22/10/25 20:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#791 [○&◆oe/DCsIuaw]
「5人て……。そうなったら大家族だよお母さん」
「あぁ!おねーちゃん!」

後ろから声がするので振り向いてみれば、三女で4歳のいちごと、長男で10歳のそらがそこにいた。苺はトテトテと走ってきて私の足に抱きついた。

「おかえりなさぁい!あのね、いちご今日おうたおぼえたんだよー!」
「そうなんだぁ。またお姉ちゃんに聞かせてね。」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#792 [○&◆oe/DCsIuaw]
苺は「うん!」と元気よく言って、お母さんの膝によじ上った。

「えこ姉!俺今日野球でホームラン打ったよ!」
「空はさすがだねー!この調子で頑張りなよ!」

空はニカッと笑う。それにつられて私も笑うと、玄関の方から叫び声が聞こえた。

「うわぁぁ!!」
「あ、さくらおねえちゃんだ!」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#793 [○&◆oe/DCsIuaw]
さくらとは、次女で14歳。おそらく部活から帰って来たのだろう。それはいい。多分.......柴がいたな。玄関へつけば、風呂上がりで、さっきと変わらず頭びちょびちょの柴と、見知らぬ柴に驚いた桜がいた。

「え!?ちょ、お姉ちゃんこの人誰?」
「柴。ちょっと柴。ちゃんと頭拭かなきゃダメでしょうが」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#794 [○&◆oe/DCsIuaw]
すると、柴は頭にタオルを乗っけて、私に頭を差し出してきた。拭けと言ってるらしい。桜の叫びにかけつけた苺と空も、驚いていた。

「わ!誰?」
「いちごのおにいちゃん?」

.......いっぺんに説明しなくちゃならないようだった。


 小さな苺もいると言う事で、分かりやすく丁寧に話した所、最初こそ驚いたものの、皆次第に納得していった。

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#795 [○&◆oe/DCsIuaw]
「分かったよお姉ちゃん」
「俺も」
「いちごもー!」

皆が了解したと言う事で、私は柴が使う部屋へと案内した。丁度1つ余っているので、そこにする事にする。階段を上がって、空いてる部屋へと案内。柴は黙々とついてくる。ドアを開けると、何もない空間が広がっている。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#796 [○&◆oe/DCsIuaw]
「じゃあここね。布団はまた持ってくるから」
「.......てない」

「え?」

柴は入口に止まったまま、窓を見つめて何か呟いた。柴よりも先に部屋に入ってた私は、柴に寄っていってもう1回何を言ったか尋ねた。

「何?」
「似てない.......誰ひとりとして、兄弟も、親子も」

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#797 [○&◆oe/DCsIuaw]
「.......そっか」

私はにこっとして、質問に答える。

「皆、施設からこの家に来たから。似てなくて当然なんだよ」

私は皆、桜も空も苺も……皆施設から今のお母さんの所へ引き取られた。お母さんは、子供が欲しいけど出来なくて、ずっと悲しんでいた。そんな時、私達を見つけてくれた。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#798 [○&◆oe/DCsIuaw]
血の繋がりなんてないけど、愛情一杯に育ててくれた。私は5歳の時、両親から捨てられた。それでも今のお母さんが大事に育ててくれたおかげで、今は何も寂しくもないし、怖くもない。

「本当の兄弟じゃなくても、皆大切よ」

柴は静かに私を見つめ返す。灰色の瞳でじっと見つめられるば、少しドキドキした。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#799 [○&◆oe/DCsIuaw]
「いいな」
「え?」

.......と、突然、柴が被さってきた。急なので、バランスを崩した私の体は、柴と共に倒れる。ドスンと派手な音を立てると、私はムクリと起き上がった。

「あいったたたた。ちょっと柴!何すん」
「スー……スー……」

え、寝ちゃった?

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#800 [○&◆oe/DCsIuaw]
確認するまでもなく、ピクリとも動かず柴は寝息を立てる。何か……謎めいた人だなぁ。歳は20ちょっとくらい。長身、どちらかといえば美形。そして灰色の瞳。一体どこの人なんだろうか。結果として膝枕をしなくちゃならない羽目になった私は、柴の寝顔を見ながらぼんやりと色々考えた。

⏰:22/10/25 20:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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