○アダムの唄○
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#154 [紫陽花]
「勢いよく家を飛び出したものの……俺らどこ行くの?」

宇峰家を出発してから央里と傳はただひたすら見慣れた大通りを歩いていた。

「もうちょっと付いてきて……」

八月と言ってもまだ夏。

数分間歩けば央里の首筋には、しっかりと汗が滲んでいた。

⏰:08/09/01 00:53 📱:F905i 🆔:dc1.LTJE


#155 [紫陽花]
「せめて目的地ぐらい教えろよー!!」

まるで赤ちゃんがだだをこねるように央里は教えろとせがむ。

「分かったから……」

僕たちが今から向かうのは『探す才』を持った人たちが自治する村、つまり單柵村(タンサクムラ)だよ。

そこで、イヴの現在地を調べてもらう。闇雲に探してたら何十年とかかるからね。

⏰:08/09/01 00:54 📱:F905i 🆔:dc1.LTJE


#156 [紫陽花]
「なるほど!!で、どうやってその村に行くんだ?」

額から流れる汗を真紀に無理矢理渡されたタオルで拭う。

もうジリジリと焦げ付くような太陽ではないが、行き交う人々も日傘をもち、サングラスをかけている人までもいる。

「移動手段はこれしかないでしょ……」

ニヤっと笑ってエナメルバックから“アダムの唄”を取り出す。

⏰:08/09/01 00:55 📱:F905i 🆔:dc1.LTJE


#157 [紫陽花]
「お前!!それ使ったら、また倒れるだろーが!!」

驚きと怒りを露わにして央里は怒鳴る。

まだ人通りの多い道だった為、多くの人が振り返って央里を見たが、気にもとめず央里は傳を睨む。

「大丈夫。あの時はちょっと使いすぎただけだから……」

⏰:08/09/03 23:49 📱:F905i 🆔:Oww9YNww


#158 [紫陽花]
何事もなかったかのようにサラリと言いのけた傳を央里は今度は歯を食いしばりながら睨む。

“あんなに青い顔してたのはどこのどいつだよ!!”

文句は次から次へと頭の中を巡るがうまく言葉にできない。
どんな風に言ったら傳を説得できるか分からない。

いろいろ考えてはみたものの巧く傳を言い負かす言葉が出てこなかった央里は、食いしばっていた唇を緩め一言だけ

「馬鹿やろう!!!!!!」

と言い放った。

⏰:08/09/03 23:50 📱:F905i 🆔:Oww9YNww


#159 [紫陽花]
―――――――…………

―――――………

どれほど歩き続けたのだろうか。

見回す限り木、木、木。

ついさっきまで舗装された平たい道を歩いていたのに、今では凸凹のある土が剥き出しになった道を歩いていた。

木々から時折差し込む弱々しい光が、この森の深さを表している。

⏰:08/09/03 23:50 📱:F905i 🆔:Oww9YNww


#160 [紫陽花]
そんな暗く影ばかりの樹海に央里たちは入り込んでいた。

「さむ……こんな所に單柵村があんのかよ」

先ほどまで背中を濡らしていた汗は冷え、冷たい滴となって体を冷やす。

肉体的に感じる寒さだけでなく、この森の暗闇がさらに央里に寒を与える。

「アダムの唄で行けば、すぐに着いたのに……」

⏰:08/09/03 23:51 📱:F905i 🆔:Oww9YNww


#161 [紫陽花]
「うるさい!!倒れられたら俺が困るんだよ!!!!」

威勢良く強がってみたものの、寒くて寒くて仕方がない。

「單柵村はまだかよ?」

「もう少しのはず……あれ?あれは……」

傳がある一点を見つめる。

「ん?」

⏰:08/09/03 23:53 📱:F905i 🆔:Oww9YNww


#162 [紫陽花]
この暗く深い森の中で、唯一そこだけライトが当たっているかのようにポツンと目に留まる赤い場所を傳は示していた。

赤と言っても少し深みのある、ワインレッドのような色。

赤という明るい色であっても、この森の中に不自然無く上手く溶け込んでいる。

「なんだあれ?」

欲目を凝らしてみると、赤いスーツを着た、腰のあたりまである黒い長髪を一つに纏めた男がこちらを睨んでいる。

⏰:08/09/05 22:35 📱:F905i 🆔:uLrgapLA


#163 [紫陽花]
「おい傳。あいの長髪こっ「央里!!逃げるぞ!!!!!」

言い終わらない内に傳は走り出していた。

「はぁ!?ちょ、まてよ!!」

訳も分からず央里も走り出したが、赤スーツの男の前では全てが遅すぎた。


50メートルほど離れた場所から赤スーツの男は、胸ポケットからパチンコ玉ぐらいの小さな礫(ツブテ)を取り出し、親指で弾き飛ばす。

⏰:08/09/05 22:36 📱:F905i 🆔:uLrgapLA


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