○アダムの唄○
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#158 [紫陽花]
何事もなかったかのようにサラリと言いのけた傳を央里は今度は歯を食いしばりながら睨む。
“あんなに青い顔してたのはどこのどいつだよ!!”
文句は次から次へと頭の中を巡るがうまく言葉にできない。
どんな風に言ったら傳を説得できるか分からない。
いろいろ考えてはみたものの巧く傳を言い負かす言葉が出てこなかった央里は、食いしばっていた唇を緩め一言だけ
「馬鹿やろう!!!!!!」
と言い放った。
:08/09/03 23:50
:F905i
:Oww9YNww
#159 [紫陽花]
―――――――…………
―――――………
どれほど歩き続けたのだろうか。
見回す限り木、木、木。
ついさっきまで舗装された平たい道を歩いていたのに、今では凸凹のある土が剥き出しになった道を歩いていた。
木々から時折差し込む弱々しい光が、この森の深さを表している。
:08/09/03 23:50
:F905i
:Oww9YNww
#160 [紫陽花]
そんな暗く影ばかりの樹海に央里たちは入り込んでいた。
「さむ……こんな所に單柵村があんのかよ」
先ほどまで背中を濡らしていた汗は冷え、冷たい滴となって体を冷やす。
肉体的に感じる寒さだけでなく、この森の暗闇がさらに央里に寒を与える。
「アダムの唄で行けば、すぐに着いたのに……」
:08/09/03 23:51
:F905i
:Oww9YNww
#161 [紫陽花]
「うるさい!!倒れられたら俺が困るんだよ!!!!」
威勢良く強がってみたものの、寒くて寒くて仕方がない。
「單柵村はまだかよ?」
「もう少しのはず……あれ?あれは……」
傳がある一点を見つめる。
「ん?」
:08/09/03 23:53
:F905i
:Oww9YNww
#162 [紫陽花]
この暗く深い森の中で、唯一そこだけライトが当たっているかのようにポツンと目に留まる赤い場所を傳は示していた。
赤と言っても少し深みのある、ワインレッドのような色。
赤という明るい色であっても、この森の中に不自然無く上手く溶け込んでいる。
「なんだあれ?」
欲目を凝らしてみると、赤いスーツを着た、腰のあたりまである黒い長髪を一つに纏めた男がこちらを睨んでいる。
:08/09/05 22:35
:F905i
:uLrgapLA
#163 [紫陽花]
「おい傳。あいの長髪こっ「央里!!逃げるぞ!!!!!」
言い終わらない内に傳は走り出していた。
「はぁ!?ちょ、まてよ!!」
訳も分からず央里も走り出したが、赤スーツの男の前では全てが遅すぎた。
50メートルほど離れた場所から赤スーツの男は、胸ポケットからパチンコ玉ぐらいの小さな礫(ツブテ)を取り出し、親指で弾き飛ばす。
:08/09/05 22:36
:F905i
:uLrgapLA
#164 [紫陽花]
その礫は前を走っていた傳のを追い越し、高くそびえ立っていた樹に命中した。
それを見て傳は叫ぶ。
「央里、絶対にこの礫に当たんなよ!!毒が塗ってあるからな!!」
そして同時に傳の表情が一層厳しいものになった。
それでも、アダムの唄を使わず走っているということは、赤いスーツの男に裏技は通用しないと知っているのだろう。
:08/09/05 22:37
:F905i
:uLrgapLA
#165 [紫陽花]
「つ…たえ!!お前、し、知り合いなのか?」
息が切れて上手くしゃべれない。
だけど、あの男と傳の関係は聞かなければならない。
二人に何があったかは知らないが、央里が命の危機に晒される理由などないのだから。
:08/09/05 22:38
:F905i
:uLrgapLA
#166 [紫陽花]
「あ、いつは……ネイクの“三鬼心”の内の一人……」
「さん、き、しん?」
前を見て走っていた傳が一瞬だけ後方にいる央里を見た。
「あと…で話す…から、とりあえず…今は、逃げろ!!アイツはヤバいんだ!!!!!」
そう言って視線を前に戻した傳は、急に目の前に現れた赤いものに驚き足を止めてしまった。
:08/09/05 22:39
:F905i
:uLrgapLA
#167 [紫陽花]
「やぁ、野胡瀬 傳君。久しぶりだね」
いつの間にか赤スーツの男は央里と傳の前方に回り込んでいた。
180はゆうに越えているであろう長身と、その身長の真ん中まである長髪。
一見、赤いスーツに身を包んだ長髪の男はホストのようにも見える。
だが、ホストのような闇のオーラではなく、この男はどこか落ち着きのある穏やかなオーラを持っていた。
:08/09/05 22:41
:F905i
:uLrgapLA
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