○アダムの唄○
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#201 [紫陽花]
三鬼心のメンバーは『紅』とまだほかに『浅葱』、そしてネイクを設立させたと言われる『朽葉』と言う人物がいる。

僕はまだ紅にしか会ったことがないんだけど、あとの二人もそーとーな切れ者らしい……。


それはもう、目的達成のためならどんな犠牲も払わない鬼のような連中だと聞いてる。

⏰:08/09/20 23:47 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#202 [紫陽花]
もちろん殺人だって数え切れないほどしてるだろーね。

だから『三』人の『鬼』のような『心』を持つ集団、イコール『三鬼心』と呼ばれてるんだ。

「これが、僕の知ってるネイクの全てだよ……」

長いことしゃべっていた傳はフゥとため息を付き、乾ききった唇を潤すかのように舌を唇に這わす。

⏰:08/09/20 23:48 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#203 [紫陽花]
その様子を見ながら、央里はゴクリと生唾を飲み込んだ。

“なんて連中と関わっちまったんだ……”

柔らかに流れる風とは反対に央里の心の中には黒くドロドロとした、不安という名の闇がとぐろを巻いていた。

肌をなぞるふんわりとした風さえも、いつの間にか表れていた鳥肌を逆なでするだけ。

“なんで俺、こんなことしてんだろ……”

周りの暖かい景色に背くように、央里の心は不安と恐怖で満たされていった。

⏰:08/09/20 23:49 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#204 [紫陽花]
――――………

――………

「くそっ!!私としたことがあの二人を逃すなんて……」

小さく舌打ちをして、紅は吐き捨てるようにため息を漏らす。

まだ紅は央里たちと出会った森に足を止めていた。

⏰:08/09/20 23:50 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#205 [紫陽花]
ネイクの三鬼心として、こうもあっさりと灰色の髪の少女によって目的が阻まれたことは、紅にとってかなり屈辱的だった。

それはもう、一歩も足が動かないほどに。

「なんだ〜。紅、あの二人に逃げられちゃったの?」

不意に周りに生い茂る木の上からケタケタという笑い声とともに、少年のようなまだ若い声が聞こえた。

⏰:08/09/20 23:52 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#206 [紫陽花]
「浅葱君……。いつからいたんですか?」

顎を少しあげると、しっかりとした太い枝に腰を下ろし、怪しげな笑みをこぼす少年が視界に入る。

「さっき来たとこ。そんなに悔しがってる紅なんて久しぶりに見た」

そう言いながら、浅葱と呼ばれた少年は決して低くはない枝から地面へスルリと着地する。

その軽い身のこなしはまるでリスのよう。

⏰:08/09/20 23:53 📱:F905i 🆔:q0JD9SlA


#207 [紫陽花]
浅葱は紅が赤いスーツを着ているように、彼自身も淡い水色のスーツを身に纏っていた。

少し長い襟足と前髪をヒラヒラとなびかせながら、着地の際にスーツに付いたほこりを払う。

「で、あなたは何しに来たんですか?」

憂鬱そうに前髪をかきあげて浅葱を見る紅の瞳は、全くと言っていいほど笑っていなかった。

⏰:08/09/23 17:13 📱:F905i 🆔:8TL/RHe6


#208 [紫陽花]
「あ、そうそう。
朽葉サマから伝言だよ!!俺様がわざわざ伝えに来てやったんだから心して聞くよーに」

紅の苛立ちも知らずに、胸を張って自分の頑張りを主張する浅葱に紅はため息を一つこぼす。

「だーかーら、その内容は何なんですか!?」

⏰:08/09/23 17:15 📱:F905i 🆔:8TL/RHe6


#209 [紫陽花]
「『仕事が沢山残ってます。早く帰ってきなさい』だってー。朽葉サマ怒ってたよー」

「……怒ってましたか。浅葱君、私の代わりに朽葉様の機嫌とってきてくださいよ……」

「は!?なんで俺が!!めんどくさすぎ……」

がっくりと肩を落とす紅を横目に、浅葱はまるで揚羽蝶のようにヒラヒラと態度を変え、先程までの無邪気な表情からツンとした表情になる。

⏰:08/09/23 17:17 📱:F905i 🆔:8TL/RHe6


#210 [紫陽花]
「じゃあ、私の代わりに央里君達を始末してきてくださいよ……」

「それもやだ。めんどくさいもーん」

「……あ゙ー!!分かりました。帰ればいいんでしょ!?帰れば!!!」

紅は意地悪そうに微笑む浅葱を睨みながら、半ばヤケクソになって叫んだ。

⏰:08/09/25 19:32 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#211 [紫陽花]
「そうそう。そうやって素直になれば良かったんだよ。じゃあ、こいつで道を繋ぐからちょっと待ってて」


そう言って浅葱は内側の胸ポケットから白いチョークのようなものを取り出した。

そして、周りにある木々の中で一番大きい幹にそのチョークで、ガリガリと音を立てながら大きな円を描いていく。

⏰:08/09/25 19:34 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#212 [紫陽花]
「浅葱君のそれは便利ですよね。どこにでも行けるんですから」

うらやましそうに紅は浅葱の手に握られているチョークを凝視した。

「そうでもないよ。
確かにこの“神の足跡”を使えばどこへでも移動できるけど、神力使うから疲れるんだよねー」

「傳君の“アダムの唄”と同じ能力ってことですか……」

⏰:08/09/25 19:35 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#213 [紫陽花]
神力、それは以前まで神様のみが使える不思議な力だったが、
ここ最近では“アダムの唄”を筆頭に神力をもつ不思議な道具が数多く発見されていた。

「まぁね。紅は知らないかもしれないけど神力使うのってなかなか疲れるんだよ!!」

「そりゃ、神様の力ですから」

「傳って奴もかなり無理して使ってると思うよーっと、できた!!」

⏰:08/09/25 19:36 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#214 [紫陽花]
パンパンと手を叩いて、手に付いたチョークの白い粉を払う。

先程まで円の輪郭だけ描かれていたものが、今では紅の身長よりも大きく、中心部まで全て白く塗りつぶされた円が出来上がっていた。

「よし。帰りますか!!」

浅葱は円の中心部に手を添えると、次の瞬間、その手はゆっくりと幹の中に吸い込まれていく。

⏰:08/09/25 19:37 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#215 [紫陽花]
「紅ー!!早くしないと道閉じちゃう!!」

木の幹から顔だけひょっこりと出し、浅葱は叫ぶ。

「はいはい、じゃあ失礼します」

そして紅も浅葱の作った不思議な空間に身を沈めたのだった。

⏰:08/09/25 19:38 📱:F905i 🆔:K8hH923.


#216 [紫陽花]
――――――…………

――――………

「これが、役場?」

紅たちが朽葉の命令通りネイク本部へ帰宅している間に、央里たちは單柵村の役場にたどり着いていた。

「役場だね……」

二人の目の前には弥生時代に出てきそうな、木と藁でできた建物がどっしりと構えていた。

⏰:08/09/28 17:39 📱:F905i 🆔:VnJKaQbo


#217 [紫陽花]
しかし、いくらどっしりとしていても建物の大きさは普通の一軒家程度。
周りに立ち並ぶ住居となんら変わりない。

違うものといえば、住居に比べ建物が大きいことと、入り口の前に【單柵村 役場】と書かれた標識が立っているだけ。

「じゃあ、入ろうぜ」

そう言って央里は戸に手をかけた。ガラガラと音をたて、役場の戸を右方向にスライドする。

⏰:08/09/28 17:41 📱:F905i 🆔:VnJKaQbo


#218 [紫陽花]
「こんにちはーって、あれ?」

入ってすぐ、央里は違和感を覚えた。

戸を潜り抜けると目の前には、いくつもの鉄でできた机が立ち並び、クリーム色の壁には高級そうな絵画が飾られ、至る所に観葉植物たちが育てられている。

まるで、どこかの高級ホテルのロビーのよう。

……だが、ここには普通、あるべき“モノ”がなかった。

⏰:08/10/01 17:56 📱:F905i 🆔:V1UNLGhA


#219 [紫陽花]
この部屋に漂う違和感はそのせいだろう。

央里が感じた違和感とは……

「人がいない?」

外見からは想像できないほど綺麗に整えられた役場内部には、誰一人として“働く人”の姿が見られなかった。

いくら小さな村とは言え、村の中心である役場に人がいないなんて不自然きわまりない。

⏰:08/10/01 17:57 📱:F905i 🆔:V1UNLGhA


#220 [紫陽花]
「傳、どーゆう事だよ!?」

空っぽの部屋に驚きを隠せず、央里は左後ろに立っている傳を振り返り、声を荒げる。

「僕に八つ当たりされても困るよ……」

傳も不思議そうに眉をひそめ、一歩、また一歩、役場の中へ入っていく。

「だけど、こんな「二人とも何してんの?」

不意に、傳のさらに後ろから声が飛び出した。

⏰:08/10/01 18:02 📱:F905i 🆔:V1UNLGhA


#221 [紫陽花]
突然の声に二人は一瞬驚きに肩を震わせた。

だがそこに立っていたのは、

「羽梶 ハルキ……さん?」

思ってもみない登場に二人は目を丸める。

ハルキの家がどこにあるのかは知らないが、30分ほど前に彼女は央里たちに背を向けて走り去った。

ならば家は南の方角にあると考えていいだろう。

⏰:08/10/03 19:15 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#222 [紫陽花]
南にある家に荷物を置き、反対側である北の役場に着くのが央里たちとほぼ同時というのは、いくら何でも早すぎる。

ハルキの呼吸は落ち着いたもので、走ってきたわけではなさそうだ。

「もう一回聞くけど、アンタ達何してんの?」

開け放たれた戸に寄りかかるような体勢をとりながら央里達を見るハルキの瞳には、少しだけ苛立ちの色が現れていた。

心なしか、風になびく灰色の髪でさえ刺々しく見える。

⏰:08/10/03 19:17 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#223 [紫陽花]
「いや、だから、君に言われたように役場に来たんだけど……」

「アンタ達……。どう見たって、ここに人がいないでしょ!?だったら他の階を探すとか、人を探すとか、なんか色々できるでしょ!!黙って見てれば……応用力のない人間ね!!!!」

ハルキの苛立ちの原因は、部屋の中に呆然として立ち尽くしている央里たちにあったらしい。

「あんたらそれでも運命を変える救世主なわけ!?ったく苛々する!!!!!」

⏰:08/10/03 19:18 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#224 [紫陽花]
少し口を開け、唖然とする央里たちを差し置いてハルキの口は次々と毒を吐く。

「本当にあんたちに運命なんて変えられんのかしらね!?」

それも“馬鹿”“阿呆”などの直球的なものではなく、嘲るような皮肉のこもった毒。

そしてその毒の言葉は確実に央里の痛いところをついていた。

⏰:08/10/03 19:20 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#225 [紫陽花]
だが、いくら女だからといって初対面に近い人物からこんなにも皮肉を言われる筋合いは、ない。

央里の苛立ちも限界に近づいていた。

「こっちだって黙って聞いてれば、おま「ハルキ、そこら辺でやめときなさい」

央里が反撃しようと口を開いた瞬間、背後からしゃがれた低い声が飛び出した。

⏰:08/10/03 19:21 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#226 [紫陽花]
その声は張りつめていた刺々しい空気を一瞬にして、そして、たった一言で雪解けの春のようにふんわりと和ませる。

「ったく、儂の孫はとんだ暴れ馬だな……」

それと同時に、また違う声も聞こえた。

しかし今度の声はしゃがれたものではなく、芯のあるしっかりとした張りのある声。

⏰:08/10/05 17:52 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#227 [紫陽花]
「じいちゃんに、しげ爺……」

さっきまで罵倒の言葉を吐いていたハルキも驚きの表情を浮かべる。

央里と傳はハルキが落ち着いたのを確認してからゆっくりと振り返った。

背後からの声に殺気や悪意は、ない。

数は少ないが、何度も修羅場をくぐり抜けてきた二人の耳がそう伝えていた。

⏰:08/10/05 17:53 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#228 [紫陽花]
すべてを包み込むような柔らかい声に、いつの間にか二人の警戒心は解かれていた。

「央里殿に傳殿だな?先程は儂の孫が失礼した」

二人の目に飛び込んできたのは、こちらもまた二人の老人たち。

⏰:08/10/05 17:55 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#229 [紫陽花]
>>228
×→二人の目に
○→振り返った二人の目に

他にも誤字脱字は沢山あると思いますが、気にせず読んでいただけると幸いです;;;

⏰:08/10/05 18:18 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#230 [紫陽花]
向かって右側にたつ老人は銀縁の眼鏡を掛け、群青色の着物を着ている。

銀縁の眼鏡の奥にはハの字に曲がった、開いてるのか開いていないのか分からない目。


眼鏡の老人とは対照的に左側の老人は、がっちりとした体格に藍染の着物を着て、キツくつり上がった目をしている。

⏰:08/10/07 00:54 📱:F905i 🆔:/hfRFL0M


#231 [紫陽花]
そして、おでこから顎にかけて頬には一本傷。

その傷によって誰もが、彼が壮絶な過去を持っているのだろうと、想像せざるを得ない。

「申し遅れましたが、私の名前は重ねて守ると書いて“重守(シゲモリ)”と言います。まぁ、村のみなさんからは“しげ爺”と呼ばれていますけど」

しゃがれた声の老人が、ハの字の目をより一層細めながらにっこりと笑った。

⏰:08/10/07 00:57 📱:F905i 🆔:/hfRFL0M


#232 [紫陽花]
「儂の名前はマサムネ。そこのじゃじゃ馬の祖父になる」

今度は左側に立っていた老人が話した。

しゃべる度にピクピクと動く傷痕が少々気になるが、央里たちにはそれよりも気になることがあった。

「え、ハルキさんの祖父……?」

改めて問い直した央里を真っ正面に見ながら、マサムネは深くうなずいた。

⏰:08/10/07 00:58 📱:F905i 🆔:/hfRFL0M


#233 [紫陽花]
「しげ爺はここの村長さんだから当たり前だけど……、なんで瞬光村の村長のじいちゃんがここにいるのよ!?」

「なんだ、儂がここにいたら悪いのか?」

「……そんな風に言ってないでしょ!!そーゆー被害妄想やめてくれる?」

「すまんが、儂にはそう聞こえたもんでな」

どう見ても互いに喧嘩を売っているようにしか見えない二人に挟まれた央里と傳は、どうしようもない気まずさと居心地の悪さを感じた。

⏰:08/10/09 19:49 📱:F905i 🆔:YMmUGsCQ


#234 [紫陽花]
「ハルキ、今日は定例の会議があったのじゃ。だからマサムネさんはここに居られる。マサムネさんも落ち着いてくだされ」

火花を散らしている二人を制止するように重守が間に割ってはいる。

「とりあえず座りましょうぞ。こちらにいらしてください」

そう言って重守は、流れるように皆を奥の部屋へと促した。

⏰:08/10/09 19:50 📱:F905i 🆔:YMmUGsCQ


#235 [紫陽花]
「奥に部屋があったんだ……知らなかった」

重守に促されながら部屋の奥へいく途中、央里は独り言のようにボソリと呟いた。

「………」

そして、同時にハルキの突き刺すような視線が央里を捉える。

「だからアンタ達の考えは甘いのよ、救世主さん」

皮肉を込めて吐き捨てるように放ったその言葉は、マサムネや重守に届くことはなく央里の心だけに深く突き刺さるのだった。

⏰:08/10/09 19:51 📱:F905i 🆔:YMmUGsCQ


#236 [紫陽花]



6頁
《繋がる事実》


⏰:08/10/14 00:38 📱:F905i 🆔:lMPfPTt.


#237 [紫陽花]
――――――………

――――………

役場の奥、つまり正面からは見えない部分に配置されていた応接室に央里、傳たちは案内されていた。

応接室と言っても、真新しい畳のしかれた八畳程度の和室。

だがクリーム色の壁の向こう、つまり、障子の向こう側は全く別の雰囲気を持っていた。

⏰:08/10/14 00:39 📱:F905i 🆔:lMPfPTt.


#238 [紫陽花]
一部分だけ窪んだ壁には、水墨画の掛け軸があり、その下には生け花が置いてある。

足元からほのかに染み出した畳の匂いが、この部屋に入った瞬間に鼻孔に広がり、何とも言えない安堵感を作り出す。

そん部屋に、央里、傳、ハルキ、マサムネは一つのちゃぶ台を囲んで座っていた。

⏰:08/10/15 00:03 📱:F905i 🆔:Lp9Y1HJs


#239 [紫陽花]
安堵感のある部屋なのだが、誰一人として口を開こうともせずに重苦しい空気が辺りを包んでいた。

「さてさて、この村一番の茶葉より煎れましたお茶ですぞ」

そこへ障子を開け、人数分のお茶を持った重守が入ってきた。

そしてマサムネの隣、つまり央里の正面に当たる場所に座る。

⏰:08/10/15 00:04 📱:F905i 🆔:Lp9Y1HJs


#240 [紫陽花]
一部分だけ窪んだ壁には、水墨画の掛け軸があり、その下には生け花が置いてある。

足元からほのかに染み出した畳の匂いが、この部屋に入った瞬間に鼻孔に広がり、何とも言えない安堵感を作り出す。


そん部屋に、央里、傳、ハルキ、マサムネは一つのちゃぶ台を囲んで座っていた。

安堵感のある部屋なのだが、誰一人として口を開こうともせず、重苦しい空気が辺りを包んでいた。

⏰:08/10/19 19:33 📱:F905i 🆔:DhUAfdwQ


#241 [紫陽花]
「さてさて、この村一番の茶葉より煎れましたお茶ですぞ」

そこへ障子を開け、人数分のお茶を持った重守が入ってきた。

そしてマサムネの隣、つまり央里の正面に当たる場所に座る。

「さてさて、なにから話しましょうか?」

重守独特のハの字の目をたらして、にこりと笑う。

その姿は、苛々としたこの部屋の空気を一瞬にして浄化する不思議な笑み。

⏰:08/10/19 19:34 📱:F905i 🆔:DhUAfdwQ


#242 [紫陽花→渚坂 さいめ]
※注意

自サイトを公開し始めたので、ハンネを紫陽花から『渚坂 さいめ』へと変更します

ご了承ください

⏰:08/11/02 07:58 📱:F905i 🆔:TAVhPyyk


#243 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「あの、ずっと気になっていたのですが『瞬光村』とは……?」

央里の隣に座っていた傳がおずおずと言葉を発した。

「以前僕がここに来たときには瞬光村なんてなかった……」

「そのことについては、村長である儂が説明しよう。良いか、重守?」

重守は一瞬の躊躇いもなく、得意の笑みをこぼし頷いた。

⏰:08/11/02 07:59 📱:F905i 🆔:TAVhPyyk


#244 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「さて、どこから説明しようかの……」

傳殿の言う通り5年ほど前まで“瞬光村”は存在しなかった。

以前の瞬光村は村としてではなく、「ヤマト」という一つの組織として闇の世界に根を張っていたのじゃ。

⏰:08/11/02 08:00 📱:F905i 🆔:TAVhPyyk


#245 [紫陽花→渚坂 さいめ]
單柵村に“探す才”を持つものが多いように、瞬光村の人間は戦術に長けた才を持っておる。

馬術・体術・足が速い者……

それはありとあらゆる実践向けの才を持つ者が、政府の命令により戦にむけて「ヤマト」に集まった。

⏰:08/11/02 08:00 📱:F905i 🆔:TAVhPyyk


#246 [紫陽花→渚坂 さいめ]
余談じゃが、ハルキなんかは親からの遺伝による手先の器用さに加えて己の才で足も早いもんだから、今では瞬光村一番の器用者じゃ。


「ハルキが村一番……?」

央里はゴクリと唾を飲み込む。

「なによ。なんか文句でもあるの?」

眉をキッと釣り上げ、ハルキは獲物をねらう猫のように鋭く央里を睨む。

⏰:08/11/02 08:01 📱:F905i 🆔:TAVhPyyk


#247 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「こらこらハルキ、やめんか。話を続けるぞ」

以前まで瞬光村住民のほとんどは戦という戦に駆り出され……あぁ、もちろん村となる前の「ヤマト」の時じゃぞ。

こんな言い方は気に入らんのじゃが、当時の各地で起こる戦の90%は何らかの形で「ヤマト」が介入していた。

戦いに溺れていたんじゃよ……。

毎日が地獄のようじゃった。

来る日も来る日も返り血を浴び、洗っても洗ってもこびり付いた血の臭いをとることはできなんだ……。

⏰:08/11/08 14:56 📱:F905i 🆔:ar2HhlBI


#248 [紫陽花→渚坂 さいめ]
そこまで言うとマサムネは哀しそうに俯いた。

マサムネの言葉の一つ一つが央里たちの胸に突き刺さり、きゅうっと締め付ける。

「ちょうど5年ぐらい前じゃ、『ヤマト』にとって耐え難い事件が……」

「じいちゃんごめん、私ここから先は聞きたくないの……。向こう行ってるわ」

「……あぁ」


マサムネの言葉を遮るようにハルキはこの場から出て行った。

⏰:08/11/08 14:57 📱:F905i 🆔:ar2HhlBI


#249 [紫陽花→渚坂 さいめ]
マサムネもその行為を止めようとはせず、いたたまれないといった様子でハルキを見送った。

「あの、どうかしたんですか?」

ハルキの出て行った障子とマサムネを交互に見ながら、央里は声を潜める。

⏰:08/11/08 14:58 📱:F905i 🆔:ar2HhlBI


#250 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「これから話すことは未だにハルキのトラウマなんじゃよ。
先程、耐え難い事件があったと言ったじゃろ?その事件でハルキはハルキの弟を死に追いやってしまったんじゃ……」

こうも毎日戦に加われば、「ヤマト」に対して怨みを抱く者もでてくる。

もちろん儂等はそれに気付いておった。必要に応じて邪魔者となる組合は何度となく消してきたからの。

じゃが、彼奴等はそこらへんに居る邪魔者とは格が違った。

その名も「ムサシ」。

儂等の最後の敵じゃった。
そしてハルキの弟、ナツキを殺したのも奴らじゃ。

⏰:08/11/08 14:58 📱:F905i 🆔:ar2HhlBI


#251 [紫陽花→渚坂]
ナツキは元気な子供じゃった。

体術こそ苦手にしていたものの、何に対しても好奇心を持って接し、一度 興味を示すとそれ以外目に入らぬほどの集中力。

ハルキとナツキは儂の自慢の孫じゃったよ。

そして事件が起きたあの日。

朝焼けがすごくての。血のように空が紅に染まっておったわ。

⏰:08/11/14 18:09 📱:F905i 🆔:znEeg2LA


#252 [紫陽花→渚坂]
……これだけは言わせてくれ。ハルキは何も知らなかった。
知らなかったんじゃ。


ここ一帯に立ち並ぶ山々の向こうには「ムサシ」の勢力が、今か今かと戦を待っていたなんて。

だから……

あの日も、まだ幼い弟の修行を手伝い森へ入っていった。

⏰:08/11/14 18:10 📱:F905i 🆔:znEeg2LA


#253 [紫陽花→渚坂]
そして「ムサシ」連中は戦の始まりを告げるように……

何のためらいもなくナツキを、まったく無関係なナツキを……
戦いの合図として見せしめに殺したのじゃ。




あの時 儂が山に入るのを止めてさえいれば……


ナツキは死なんですんだじゃろ……

⏰:08/11/14 18:11 📱:F905i 🆔:znEeg2LA


#254 [紫陽花→渚坂]
「マサムネさん……」

マサムネの頬には一筋の滴が流れ落ちていた。

両膝の上に置いてある両拳を小刻みに震わせながら。




「央里殿、傳殿。どうかあの子を救ってくれんか?

過去の罪の意識からハルキを救ってやってくれ……」

⏰:08/11/14 18:12 📱:F905i 🆔:znEeg2LA


#255 [渚坂]



7頁
《数多の決意を花束のように》

⏰:08/11/29 22:55 📱:F905i 🆔:6m5PmUPA


#256 [渚坂]
――――――…………

――――………

單柵村の中心部である大きな樹の周りを傳は独りで歩いていた。

先程まで目がくらむほど晴れ渡っていた空には薄暗い雲のカーテンが姿を見せ、じめじめとした生ぬるい風が辺りをその懐に忍ばせようと、憂鬱な湿り気をだしていた。

「もうすぐ雨が降るな……」

確固たる自信でもあるのか、誰もいない道の真ん中で傳はそう呟いたのだった。

⏰:08/11/29 22:56 📱:F905i 🆔:6m5PmUPA


#257 [渚坂]
―――――――…………

―――――…………

「マサムネさん。涙を拭いて下され」

そう言って重守は懐から、白いハンカチをマサムネに渡した。

「……すまんな。儂にとってもこの話は苦手なようだ」

ハンカチで両目を隠しながら苦笑いをこぼす。

⏰:08/11/29 22:56 📱:F905i 🆔:6m5PmUPA


#258 [渚坂]
「マサムネさん……だけど、俺らは一体何をしたらいいんだ?ハルヒの罪の意識を無くすだなんて……」

おずおずと、慎重に言葉を選びながら話す央里は 彼なりにマサムネに気遣っているのだろう。

⏰:08/11/29 22:57 📱:F905i 🆔:6m5PmUPA


#259 [渚坂さいめ]
「あの子は自分を責めておる。“自分のせいだ”“自分に力がなかったから”そう思い込んで生きている」

だから、力を求め結果的に村一番まで上り詰めた。


今のハルキを動かしておるのは、ナツキへの想いだけじゃ。


その想いを断ち切ってほしい。
つまり新しい目標を与えてやってほしいのじゃよ……。

見た限りでは、ハルキは央里殿に敵対意識を持っておる。


たぶん、ハルキは“運命を変える才”がうらやましいのじゃろう。

その才があれば、ナツキの運命を変えられたかもしれんからな……。

⏰:08/12/19 22:24 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#260 [渚坂さいめ]
そこまで言うと、マサムネはハッとしたように俯いていた頭を上げた。

「すまん、話がズレてしまったな。その後、儂らは戦いを封印し『ヤマト』は瞬光村へと姿を変えたのじゃ。

ご理解いただけたかな?」


いきなり話を変えられた央里は、はぁ と不抜けた返事しか出来なかった。

⏰:08/12/19 22:24 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#261 [渚坂さいめ]
「さてさて、央里殿達がこの單柵村に来た理由とは“イヴ”についてでしょう?」


今まで黙っていた重守が待ってましたと言わんばかりに口を開いた。

と同時に視線が重守に集まる。

「そうですな……。
一ヶ月くだされ。一ヶ月で出来る限り“イヴ”についてお調べいたしましょう」

「一ヶ月か……」


思わず傳は下唇を噛んだ。

事前に送っていた衛の手紙により、これまでスムーズに話が進んでいたものの、ここに来て思わぬ足止めを食らうなんて……。

⏰:08/12/19 22:26 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#262 [渚坂さいめ]
「アダムの唄には世界の滅亡は夏の終わりと書いてあります。もっと早くできないでしょうか?」

「総力を挙げ調べますが、うまく行っても二週間は……」

申し訳なさそうに目を伏せる重守をこれ以上責めることは傳には出来なかった。

「分かりました……。お願いします……」


今は單柵村の底力を信じるしかなかったのだ。

⏰:08/12/19 22:26 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#263 [渚坂さいめ]
―――――…………

――――……

その後、重守は早速 情報を集めるためにどこかへ出かけた。

マサムネは瞬光村へ帰り、同じくハルキも村へ帰っていった。

央里は何を考えているのか、やりたいことがあると言ってマサムネに着いていった。


「さて、僕はどうしよっかな……」

そう呟きながら薄暗い雲を仰ぎ見ても何の答えも出る気はしなかった。

⏰:08/12/19 22:27 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#264 [渚坂さいめ]
――――――………

――――………

「ね、親方!!頼むよ」

「う〜む……」

一方、央里はマサムネの治める瞬光村へと訪れていた。


村の中心には單柵村のような立派な樹木は無いものの、世界遺産に登録されてもおかしくないほどの巨大な噴水が設置されていた。

⏰:08/12/19 22:27 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#265 [渚坂さいめ]
「頼むよ、俺だっていろいろ考えたんだ」

その穏やかな村の空気の中に央里の嘆願の声がこだまする。

「俺に色々教えて下さい!!もう、足手まといは嫌なんだ」

つい先ほどまで真上で輝いていた太陽は西へとその体を傾け始め、自身の有らん限りの力で日没の光を放っていた。


まるで、央里の胸の中に宿る決意の光のように。

⏰:08/12/19 22:28 📱:F905i 🆔:0cYkCt0o


#266 [渚坂さいめ]


8頁
《パーティーへの招待状》

⏰:09/01/26 17:58 📱:F905i 🆔:vwJL31D2


#267 [渚坂さいめ]
央里たちが單柵村へ留まって3週間。

單柵村村長の重守からの調査では未だ“イヴ”の核心に迫るような情報は集まっていなかった。

無情にも時は流れ、季節は夏を終えようとしていた。

アダムの唄に記された地球滅亡の予想日は“夏の終わり”。

情報もない。

唯一世界を救える央里は瞬光村に行ったっきり音沙汰なし。

こんな不確かな状況に傳は焦っていた。

⏰:09/01/26 17:58 📱:F905i 🆔:vwJL31D2


#268 [渚坂さいめ]
だが、そんなある日突然 單柵村に鋭い警報が鳴り響いた。

それは鋭いナイフのように空気を切り裂き、歩いていた人の足を止め、寝ていた人の目を覚まさせた。


「敵襲だー!!早く、早く瞬光村に連絡を取れー!!!!」


誰かが叫ぶのと同時に村自体がざわざわと、まるで戦場のように人々は走りだした。

⏰:09/01/26 17:59 📱:F905i 🆔:vwJL31D2


#269 [渚坂さいめ]
なおも鳴り響く警報に、外で昼寝をしていた傳の心臓はドクドクと早鐘を打つほどに緊張していた。

「これまでの情報より、敵は“ネイク”の黒スーツたちとNo.3の浅葱と判明!!武装はナイフと拳銃のみ!!」

村全体に広まるように村人は放送を通して今の状況を伝える。
そのおかげで、状況を把握しきれていなかった傳もこの村のざわめきの原因を理解することができた。

「央里を探さなきゃ……!!」

⏰:09/01/26 18:00 📱:F905i 🆔:vwJL31D2


#270 [渚坂さいめ]
急ぎは焦りとなり傳の足をフル回転させる。

人々のざわめきは今にも爆発しそうな傳の心を荒々しく煽り、人々の波に逆らうように央里を探す彼に余裕などあるはずもない。

「つーたーえー!!何してんの?」

額に滲む汗を拭う途中、傳は誰かに名を呼ばれた。
もちろん、その声の主とは……

⏰:09/02/24 00:47 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#271 [渚坂さいめ]
「央里!!どこ行ってたんだ!?敵が来たんだよ!!」

「ぅお、傳がなんか焦ってる!!」

会話が成り立たない……。
傳の中で張りつめていた何かがプツンと切れ、肩に入っていた力は空気の抜けた風船のようにふにゃふにゃとしぼんだ。

「央里……。とりあえず、避難しよう。僕らがここにいても邪魔になるだけだ……」

⏰:09/02/24 00:48 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#272 [渚坂さいめ]
何もできない自分が悔しいが、幸いにも隣には瞬光村が位置している。いきなり現れたネイクへの戦闘にも対応できるだろう。そう、今はこれが一番の得策。

傳はそう考えていたのだ。


「馬鹿言うな。何のために親方のところで修行したんだと思ってんだ!!俺の出番に決まってんだろーが!!」

そう言って央里は腰につけていた革のベルトからあるものを抜き取った。

⏰:09/02/24 00:48 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#273 [渚坂さいめ]
眩しい太陽の光をも吸い込む漆黒の側面。その小さく無機質な体に似合わないシャープなライン。

どこからどう見ても拳銃。
いきなり目の前に現れたソレにさすがの傳も焦りを隠せなかった。


「な、央里!!それ本物なのか……?」

「馬鹿!!ただのエアガンだよ。
本物なんて持ってたら銃刀法違反じゃねーかよ!!」

⏰:09/02/24 00:49 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#274 [渚坂さいめ]
けらけらと笑って銃身を振り回す央里。本物の拳銃ならば、その鉛の銃身を央里のような少年が軽々と振り回す事なんて不可能だろう。


「親方がくれたんだけどさ、今のエアは馬鹿に出来ねーよ」

そういって銃身を見つめる央里。まるで傷ついた体の一部を癒すように優しい視線は、もうこの銃が央里によく馴染んでいることを示していた。

⏰:09/02/24 00:49 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#275 [渚坂さいめ]
「で、それを使ってどーする気……?」

「聞きたい?」

「…………」


またもケラケラと笑う央里。

隣を走り去る單柵村の大人たちは、まるで異端なものを見るかのような怪訝な顔をして央里たちを見ていた。

⏰:09/02/24 00:50 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#276 [渚坂さいめ]
「とりあえずネイクの所に行こうぜ。俺の修行の成果を見せてやるから!!」

銃をベルトにしまい央里は声を張る。その声には不安や迷いなどはなく、ただただ央里の自信ばかりが響いた。

⏰:09/02/24 00:50 📱:F905i 🆔:ri4.PPek


#277 [渚坂さいめ]
―――――…………

――――………

一方、黒いスーツの集団を従えた浅葱は單柵村の村人の抵抗もむなしく、まさに村へと強行突破を試みようとしていた。

人数が多いのを武器にして單柵村の周りの木々たちを片っ端から倒していくスーツの集団。

もちろん、その指揮を執っているのは水色のスーツを身にまとった三鬼心の一人である浅葱だ。

⏰:09/03/01 00:13 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#278 [渚坂さいめ]
「あ゙ー、なんで俺が……」

そう言い捨てて彼は自分の前髪をかきあげる。

ズシンと音を立ててなぎ倒される木々たちの頭上には皮肉なほど真っ青な青空が広がっていた。

そう、まるで浅葱のスーツのように鮮やかな青空。

浅葱は以前チョークのような「神の足跡」と呼ばれるものを持っていたが、今回彼の手には何も握られていなかった。

⏰:09/03/01 00:13 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#279 [渚坂さいめ]
「浅葱様。今回は神の足跡を持ってこなくて良かったのですか?」

青空の下、腕を組みぶっちょうずらの浅葱に対して一人の黒スーツの男が話しかけた。

男は自分よりはるかに年下の少年に敬語で、それもかなり腰を低くして話しかけなければならないということをどう思っているのだろうか。

だが、そんな不満などを漏らせば確実に消される。それがネイクという組織だった。

⏰:09/03/01 00:13 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#280 [渚坂さいめ]
「いいんだよ。今回は朽葉様からのお届けものを宇峰央里に渡してやるだけだからね」

浅葱は組んでいた腕をパッと開き胸ポケットから白い封筒を取り出した。

さながら、それが先ほど浅葱が言っていた『お届けもの』なのだろう。

⏰:09/03/01 00:14 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#281 [渚坂さいめ]
「そ、そうですが、いつ戦闘になるかも……」

「五月蝿いな。お前、何が言いたいわけ?」


男は生唾とともに言いかけた言葉をゴクリと飲み込んだ。

生々しい音が静かな森の中に響き渡る。

「あのさぁ、誰に向かって言ってるか分かってんの?」

⏰:09/03/01 00:14 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#282 [渚坂さいめ]
まだ夏だというのに、周りの温度がいきなり氷点下を下回ったかのように凍りついた。

浅葱の言葉は鋭いナイフのように、黒スーツの男の心を引き裂いていく。

そして、切り裂かれた心から溢れ出す鮮血を拭き取る間もなく、最後の一撃が浅葱の口から放たれた。

⏰:09/03/01 00:15 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#283 [渚坂さいめ]
「お前邪魔。消えろ」


男は裏がえる声で「は、はいっ!!」と短く返事をしてその場から走り去っていった。

「消えろって言ったのは死ねって意味だったのに……。まぁ、いいか」


“ここでアイツを殺すのもめんどくさいし”

そう呟いて浅葱はまた腕を組み央里たちがやってくるのを待つのだった。

⏰:09/03/01 00:15 📱:F905i 🆔:iz.avE96


#284 [渚坂さいめ]
――――――………

―――………

央里たちは村の外側の森に向かって走っていた。

途中何度も村人に引き返せと忠告を受けたものの、央里の足はスピードを緩めず前へ前へ風を切って進んだ。

浅葱の元へ一直線に。

⏰:09/03/15 13:15 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#285 [渚坂さいめ]
「おい。あの目立つ水色のスーツ着てる奴誰だ?」

しばらく走ったところで央里が口を開いた。浅葱たちの元へ到着したのだ。

二人はまだ薙ぎ倒されていない木の影に身を潜ませる。


「あいつは浅葱だ……」

「浅葱?もしかして三鬼心の?」

「そうだ。No.3の浅葱だよ……」

⏰:09/03/15 13:15 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#286 [渚坂さいめ]
浅葱は腕を組み、わずかに顎を傾け空を仰いでいた。


だが次の瞬間、少しだけ口元に笑いを浮かべ、空を仰いでいた目を央里たちに向けた。

「出てこい。そこに隠れていることは分かってるよ。
お互い、もうかくれんぼをするような歳じゃないだろう?

⏰:09/03/15 13:15 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#287 [渚坂さいめ]
「なんだバレバレだったのか。おら、傳行くぞ」

央里は勢いよく木の影から姿をさらけ出し、スタスタと浅葱の元へ足を進める。

「ちょ、央里……」

後れをとらぬよう傳も姿を現した。

⏰:09/03/15 13:16 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#288 [渚坂さいめ]
「初めまして、だよな?
俺は浅葱。この前は紅が世話になったみたいだね」

浅葱は右手を、まるで探偵のように顎の下に持っていく。

そして、その手の上では余裕の表れからだろうか、悪戯っぽい笑いが口元を彩っている。

そして浅葱は央里たちが何も言わない内に話を進めだした。


「よし、初めましてだし宇峰央里ね実力見せてもらうよ」


そして、浅葱が顎をちょっと動かすと彼の左脇から三人の黒スーツの男が飛び出した。

⏰:09/03/15 13:16 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#289 [渚坂さいめ]
一人はナイフを右手に持っていた。小さなものだが央里の頸動脈を切り裂くには十分すぎるエモノだ。

そして一人は斧。
黒光りするソレを振り上げながら走ってくる。

一人は両手に黒い手袋をはめていた。よく目を凝らさないと見ることは出来ないが、その手袋の指先からはピアノ線のような細い糸が伸びている。
そう、男の武器はその細い糸なのだ。

三人は足音を立てずに央里へと距離をつめる。

⏰:09/03/15 13:17 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#290 [渚坂さいめ]
「央里!!!!」

逃げるぞ、と言いかけて傳は口をつぐんだ。
傳の真横で央里はすでに彼らに銃口を向けていた。

肉食獣が小動物を狩るときのような鋭い瞳。
もう央里の心、そして身体は完全に戦闘態勢へと移行していたのだ。

「央里……」

「ちょっと黙ってろ。すぐ終わらすから」

そして、央里は引き金を連続して三回引いた。

⏰:09/03/15 13:17 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#291 [渚坂さいめ]
銃口を自分の前に固定させ三発。銃口は決して揺らしていない。あくまで直線上に三発放った。


そのとき傳は央里が一人に向けて三発打ったのだと思っていた。

央里は銃口を動かさず、ある一点のみを狙っていたことからも傳の予想はまず間違っていないだろう。

⏰:09/03/15 13:17 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#292 [渚坂さいめ]
……しかし、正面を見たときに目に飛び込んだ景色は傳を大いに驚かせた。

目の前には首筋を押さえてうずくまる三人の黒スーツの姿が。

央里の放った三発は一発も外れることもなく黒スーツ男の首筋にヒットしていたのだ。

そして傳の真横では満面の笑みを浮かべる央里の姿が。

⏰:09/03/15 13:18 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#293 [渚坂さいめ]
「どう?スゴいだろ」


えへへ、と無邪気に笑う央里。

「ふーん、宇峰央里の実力はよく分かった。じゃあ俺はめんどくさくなる前に仕事終わらそっかな」

⏰:09/03/15 13:18 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#294 [渚坂さいめ]
一部始終を見ていた浅葱は組んでいた腕をパッとほどいて胸ポケットから一枚の封筒を取り出した。

「はい、これ。朽葉様からの招待状だよ」

浅葱はスタスタと二人に近付き、ひらひらと揺れる薄っぺらい封筒を央里へ渡す。


「じゃ、仕事も終わったし俺は帰ろっかな」

まだ木を薙ぎ倒している黒スーツの男たちに「帰るぞー」と声をかけ、数分もしない内に浅葱たちはこの森から姿を消した。

⏰:09/03/15 13:19 📱:F905i 🆔:CPJGjg/I


#295 [渚坂さいめ]


9頁
《返答》

⏰:09/03/30 22:55 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#296 [渚坂さいめ]
嵐のように訪れた浅葱たちが去っていくのを見届けた二人は一枚の紙をのぞき込んでいた。

「招待状って言ってたけど……」

「あからさまに罠だよな」

⏰:09/03/30 22:55 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#297 [渚坂さいめ]
―――――――――――――――
ごきげんよう

この度あなた方をネイクの
本拠地へと招待いたします

場所は單柵村から
数十キロ南へ進んだ所です

本音を言いますと
あなた方はたいへん邪魔です
ゴミ並に邪魔です

今までのことも含めて
そこで決着をつけましょう

ネイクNO.1 朽葉
―――――――――――――――

⏰:09/03/30 22:56 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#298 [渚坂さいめ]
「なんか最後のほう怒ってるし」

「でも、行かなかったら行かなかったで大変なことになりそうだよね……」


うーん、と考え込む二人。
そこへ單柵村村長の重守と、瞬光村村長のマサムネが多くの武装した瞬光村の村人を連れてやってきた。

⏰:09/03/30 22:56 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#299 [渚坂さいめ]
ある者は刀。
ある者は包丁のような刃物。
ある者は薙刀。
ある者は弓矢。

瞬光村の村人は、それこそ先頭集団の「ヤマト」だったころを思わせるような重装備。

その中でも、一際殺気立っているマサムネは腰に日本刀をさげている。


「あ、親方!!俺の初陣見てくれました?圧勝でしたよ!!」

「……うむ、ここにネイクの連中がいないのを見るとそのようだな」

⏰:09/03/30 22:57 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#300 [渚坂さいめ]
そう、央里はつい数分前にネイクの三人を一瞬で片づけてしまったのだ。

「そのことでちょっと聞きたいんだけど……」

傳は右手を挙げながら、先生に質問する生徒のようにおずおずと声を発した。

「央里は何したの?てか、マサムネさんの所で何したの……」

傳はちらりと央里の顔を伺う。
そして央里は不敵に笑った。


「……修行だよ、修行!!」

⏰:09/03/30 22:57 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


#301 [渚坂さいめ]
――――――…………

――――………

時は数週間前、つまり央里がマサムネに嘆願していたところまでさかのぼる。

もう足手まといは嫌だ、と叫ぶ央里にマサムネは心打たれ、修行をつけると約束していたのだった。

そして央里はマサムネに連れられ、瞬光村の端にある森林までやってきていた。

⏰:09/03/30 22:58 📱:F905i 🆔:1TN7Tc2k


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