○アダムの唄○
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#21 [紫陽花]
しかし、いくら希望の光が射そうともこの炎天下の中の危機的状況は変わらない。
変わったことと言えば野次馬が増えてきたことぐらいである。
しばらくの間、央里は黒スーツの男を見つめ、黒スーツの男も央里を見つめる。

この時央里は1分、いや、1秒をとても長く感じていた。
そんな央里にとって、今の状況は耐え難く、なかなか進まない。

⏰:08/07/25 23:17 📱:F905i 🆔:Zi..nvuo


#22 [紫陽花]
「誰かが警察を呼んだみたいですね。サイレンが聞こえます。まあ、貴方を殺した代償として私が牢屋に入るぐらいなら安いものですけど……」

不意に男が口を開いた。独り言にも近いその口調は、どこか満足げで、もしかしたら捕まるかもしれないというこの状況下には不釣り合いなほど弾んでいた。

⏰:08/07/25 23:19 📱:F905i 🆔:Zi..nvuo


#23 [紫陽花]
「はは……おじさん、シャレになんねーよ」

“こりゃ、マズいな……。警察を待ってらんねーみたいだ”


スーツの男は央里をこの人だかりの中で殺すことに怯えるわけでもなく、むしろ名誉に近いものを感じているようだ。
その証拠に、サイレンがだんだんと近づいてきても、物怖じせず、ずっしりと拳銃を構えている。

⏰:08/07/25 23:20 📱:F905i 🆔:Zi..nvuo


#24 [紫陽花]
“くそっ!!!逃げるしか……ないな!!”

そう思うのと、央里の体が動くのは同時だった。
右足に力を入れて右に駆け出す。もちろん黒スーツの男から視線は外していない。
それに続いて銃を構えていた男も右側へ腕を旋回させ――…

パンッッッ!!

打った。
弾丸は央里の左足元に着弾し、ガキンと鈍い音を鳴らす。

⏰:08/07/27 00:11 📱:F905i 🆔:8Tr2lYKI


#25 [紫陽花]
「キャ――――!!」

女性の叫び声が聞こえ、それを合図に人々は急に騒ぎ出し、狂ったようにその場から走り去った。

「逃がしません……」


黒スーツの男は首をキョロキョロと振り央里の姿を探すが、突然の銃声で人が波のように逃げ出したため姿を追うことは不可能に近いことは目に見えていた。

⏰:08/07/27 00:12 📱:F905i 🆔:8Tr2lYKI


#26 [紫陽花]
それに耳を澄ませばサイレンがだんだん近づいてくるのがわかる。

「チッ……」

スーツの男は舌打ちに近いものを発して、騒ぎ立てる人混みの中へ影のように静かに姿をくらました。

⏰:08/07/27 00:13 📱:F905i 🆔:8Tr2lYKI


#27 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

「あ――!!死ぬかと思った……俺が何したってんだよ!!!!!」

無事に人混みに紛れ逃げることが出来た央里は家の近くの道を歩いていた。
全力疾走して逃げたのだ、央里は肩で息をし、呼吸も荒々しい。
拭っても拭っても、額から、頬から、背中から汗が噴き出し薄っぺらいシャツを濡らしていく。

⏰:08/07/28 00:16 📱:F905i 🆔:RrJlWcGc


#28 [紫陽花]
「とりあえず、帰るか」

そう呟いて央里は夕日の沈む方へとまた足を進めた。

―――――――………

―――――………

「ただいまー」

「あら、お帰り。おうちゃん」

ここは、結構な金持ちたちが住む住宅地の一角であり、同時に央里とその家族の住む一軒家のある場所だ。
周りはアスファルトでできた家々が立ち並び、個々の持つ庭の季節にあわせた花々が凛々と咲き誇っている。

⏰:08/07/28 00:17 📱:F905i 🆔:RrJlWcGc


#29 [紫陽花]
>>28 訂正
× 周りはアスファルトで
○ 周りはコンクリートで


なんてミスだ……

⏰:08/07/28 00:19 📱:F905i 🆔:RrJlWcGc


#30 [紫陽花]
「おうちゃんって呼ぶなよ、お袋」

「え〜いいじゃない」

央里の母、真紀は台所で夕飯のカレーを作りながら、息子をからかうようにケタケタと笑いながら答えた。

カレーの少し辛い臭いの充満した台所で、笑う度に小刻みに揺れるショートカットが真紀が央里に背を向けていても、からかうことを心から楽しんでいる様子を連想させる。

⏰:08/07/28 00:19 📱:F905i 🆔:RrJlWcGc


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