○アダムの唄○
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#219 [紫陽花]
この部屋に漂う違和感はそのせいだろう。

央里が感じた違和感とは……

「人がいない?」

外見からは想像できないほど綺麗に整えられた役場内部には、誰一人として“働く人”の姿が見られなかった。

いくら小さな村とは言え、村の中心である役場に人がいないなんて不自然きわまりない。

⏰:08/10/01 17:57 📱:F905i 🆔:V1UNLGhA


#220 [紫陽花]
「傳、どーゆう事だよ!?」

空っぽの部屋に驚きを隠せず、央里は左後ろに立っている傳を振り返り、声を荒げる。

「僕に八つ当たりされても困るよ……」

傳も不思議そうに眉をひそめ、一歩、また一歩、役場の中へ入っていく。

「だけど、こんな「二人とも何してんの?」

不意に、傳のさらに後ろから声が飛び出した。

⏰:08/10/01 18:02 📱:F905i 🆔:V1UNLGhA


#221 [紫陽花]
突然の声に二人は一瞬驚きに肩を震わせた。

だがそこに立っていたのは、

「羽梶 ハルキ……さん?」

思ってもみない登場に二人は目を丸める。

ハルキの家がどこにあるのかは知らないが、30分ほど前に彼女は央里たちに背を向けて走り去った。

ならば家は南の方角にあると考えていいだろう。

⏰:08/10/03 19:15 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#222 [紫陽花]
南にある家に荷物を置き、反対側である北の役場に着くのが央里たちとほぼ同時というのは、いくら何でも早すぎる。

ハルキの呼吸は落ち着いたもので、走ってきたわけではなさそうだ。

「もう一回聞くけど、アンタ達何してんの?」

開け放たれた戸に寄りかかるような体勢をとりながら央里達を見るハルキの瞳には、少しだけ苛立ちの色が現れていた。

心なしか、風になびく灰色の髪でさえ刺々しく見える。

⏰:08/10/03 19:17 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#223 [紫陽花]
「いや、だから、君に言われたように役場に来たんだけど……」

「アンタ達……。どう見たって、ここに人がいないでしょ!?だったら他の階を探すとか、人を探すとか、なんか色々できるでしょ!!黙って見てれば……応用力のない人間ね!!!!」

ハルキの苛立ちの原因は、部屋の中に呆然として立ち尽くしている央里たちにあったらしい。

「あんたらそれでも運命を変える救世主なわけ!?ったく苛々する!!!!!」

⏰:08/10/03 19:18 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#224 [紫陽花]
少し口を開け、唖然とする央里たちを差し置いてハルキの口は次々と毒を吐く。

「本当にあんたちに運命なんて変えられんのかしらね!?」

それも“馬鹿”“阿呆”などの直球的なものではなく、嘲るような皮肉のこもった毒。

そしてその毒の言葉は確実に央里の痛いところをついていた。

⏰:08/10/03 19:20 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#225 [紫陽花]
だが、いくら女だからといって初対面に近い人物からこんなにも皮肉を言われる筋合いは、ない。

央里の苛立ちも限界に近づいていた。

「こっちだって黙って聞いてれば、おま「ハルキ、そこら辺でやめときなさい」

央里が反撃しようと口を開いた瞬間、背後からしゃがれた低い声が飛び出した。

⏰:08/10/03 19:21 📱:F905i 🆔:efzwfXwo


#226 [紫陽花]
その声は張りつめていた刺々しい空気を一瞬にして、そして、たった一言で雪解けの春のようにふんわりと和ませる。

「ったく、儂の孫はとんだ暴れ馬だな……」

それと同時に、また違う声も聞こえた。

しかし今度の声はしゃがれたものではなく、芯のあるしっかりとした張りのある声。

⏰:08/10/05 17:52 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#227 [紫陽花]
「じいちゃんに、しげ爺……」

さっきまで罵倒の言葉を吐いていたハルキも驚きの表情を浮かべる。

央里と傳はハルキが落ち着いたのを確認してからゆっくりと振り返った。

背後からの声に殺気や悪意は、ない。

数は少ないが、何度も修羅場をくぐり抜けてきた二人の耳がそう伝えていた。

⏰:08/10/05 17:53 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


#228 [紫陽花]
すべてを包み込むような柔らかい声に、いつの間にか二人の警戒心は解かれていた。

「央里殿に傳殿だな?先程は儂の孫が失礼した」

二人の目に飛び込んできたのは、こちらもまた二人の老人たち。

⏰:08/10/05 17:55 📱:F905i 🆔:OpvDvjGI


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