○アダムの唄○
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#54 [紫陽花]
「あった……」
傳が取り出したのは一冊の古びた本。
本の厚さは3センチほどもあり、辞書の厚みをなくしA4サイズまで引き延ばしたような形をしている。
所々紙が剥げ、茶色く変色している表紙には「アダムの唄」と書かれていた。
:08/08/03 01:57
:F905i
:zJcFs6SU
#55 [紫陽花]
「こんな時に読書かよ!!」
央里は怒ったように傳を睨む。それに対して、傳は少し驚いたように央里を見てこう言った。
「君は“アダムの唄”についても知らないのか……」
はぁ、とため息を付きながら傳は立ち上がる。
「さて、“ネイク”の使者さんは、これを知ってるよね……?」
:08/08/03 23:37
:F905i
:zJcFs6SU
#56 [紫陽花]
強がってはいるが央里の膝が震えていると気付いていた傳は本を左手に持ち、傳は央里をかばうような形で一歩前に進む。
その傳の表情には余裕さえ感じられた。
「知っているも何も、我々の道標だよ、ソレは」
“ネイク”の使者である黒スーツの男は以前にもましてニタニタと気味の悪い笑みを浮かべていた。
少なくも、傳の後ろに隠れるように立っている央里にはそう見えた。
:08/08/03 23:39
:F905i
:zJcFs6SU
#57 [紫陽花]
「じゃあ、この本の裏技知ってる……?」
傳は、まるで悪戯を仕掛けた子供のようにニヤっと笑ったあと右手に持つ“アダムの唄”に視点を落としペラペラとページをめくっていった。
「裏技って?」
央里は一歩前にでている傳に問う。
「ねぇ、央里はここから逃げたい……?」
:08/08/03 23:40
:F905i
:zJcFs6SU
#58 [紫陽花]
「あ?そりゃ、逃げたいに決まってんだろ!!って、俺の質問はスルーか!?」
「じゃあ、ここから逃げたいって強く願ってて……」
訳が分からなかった。それでも央里は傳の言葉に圧倒され意識を集中するしかなかった。
「話し合いは終わったかね?」
黒スーツの男はニヤニヤと笑みを絶やさず笑いかけた。
:08/08/04 23:56
:F905i
:FvnuzxKY
#59 [紫陽花]
「まあね。央里、この本に手を当てて……」
「お、おう」
不安げな表情で央里は右手を本に添えた。
すると、古びた本から無数の光の泡が飛び出し二人の周りを覆っていく。
「な……!!」
ニヤニヤ顔のスーツの男もこの時ばかりは驚愕の表情を表した。
小さなピンポン球のような泡から、ソフトボール大の泡まで、様々な形の泡が本から溢れ出す。
もう央里たちの姿は見えないほどに泡は彼らを包み込んだ。
:08/08/04 23:57
:F905i
:FvnuzxKY
#60 [紫陽花]
その中心部あたりから傳の声が響きわたった。
「ばいばいネイクの使者さん。言っとくけど、僕は君達を絶対に止めるから……」
その声には先ほどまでの興味のなさそうなものとは違い、覇気のある意志を固めた力強さを思わせる。
そして、ヒュッと風が吹いたと思うと二人を包んでいた泡たちはシャボン玉のように風に吹かれ空へと消えた。
泡がなくなった後の場所には二人が立っているわけでもなく、夕焼けに照らされるアスファルトだけが残っていた。
:08/08/04 23:58
:F905i
:FvnuzxKY
#61 [紫陽花]
――――――………
―――――……
「おいッッッ!!お前はマジシャンか!?てか、ここどこだよ!?」
「もう、騒がしいなぁ。君が逃げたいって言ったから僕は手を貸しただけなのに……ここは君んちの近くさ……」
「それに普通、本から泡が出てくるか!?何の仕掛けがあんだよ?」
「あれは普通の本じゃないんだよ……」
:08/08/06 20:38
:F905i
:Zot1GjyU
#62 [紫陽花]
体に付いた小さな泡たちを片手で払いのけながら央里は口をとがらせた。
二人が口論になりかけたところで傳が「後で詳しく説明するから……」と、うなだれながら言ったのでその場は治まった。
「……分かったよ。絶対あの本のにタネを教えてもらうからな!!それとアイツから逃げられたことには、感謝してるから……」
央里の頬は照れからなのか、夕日のせいなのか、少し紅くなっていた。
:08/08/06 20:40
:F905i
:Zot1GjyU
#63 [紫陽花]
「そりゃ良かった……」
傳も少し垂れた目で央里に笑いかけた。
「じゃあ、俺帰るし」
央里は足下にあった鞄を肩にひっかけ周りを見渡す。
“本当に家の近くだ……アレ?俺アイツに家の場所教えたっけ?アレ?”
:08/08/06 20:40
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