○アダムの唄○
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#74 [紫陽花]
「おうちゃんも食べれるときに食べときなさい。腹が減っては戦は出来ぬってね!!」

「はぁ?戦ってなんだよ。戦って」

渋々、央里は傳や真紀に突っかかることを止め一口一口ゆっくりとカレーを頬張った。
甘口のはずのカレーが口の中をピリピリと刺激する。

⏰:08/08/08 00:27 📱:F905i 🆔:vLwGHzXU


#75 [紫陽花]
「ただいま〜!!あれ、兄ちゃんのお友達さん?」

母譲りの元気な声で帰宅したのは、央里の弟である榎久(カク)だった。

切れ長の目を持つ央里とは反対にクリクリとした瞳を持ち、それと同時に、野球部でもある榎久は頭もクリクリの坊主である。

「まぁ、友達……かな」

制服のままに駆け寄ってきた榎久の頭を撫でながら苦笑いで傳のことを説明する。

央里にとって榎久は、いや、榎久のクリクリ坊主頭は癒しそのものであった。

⏰:08/08/08 00:28 📱:F905i 🆔:vLwGHzXU


#76 [紫陽花]
「かくちゃん〜ご飯食べる前は手洗いうがいでしょ。いい子なんだから早く手洗っといで」

榎久の分のカレーをつぎながら真紀は指示を出す。

「あ〜い!!ったくもう、すぐ子供扱いするんだから」

プリプリと不満を漏らしながら榎久は洗面所へと姿を消した。

⏰:08/08/08 00:31 📱:F905i 🆔:vLwGHzXU


#77 [紫陽花]
「弟さん……?」

今まで4杯目のカレーにラストスパートをかけていた傳が、榎久の向かった洗面所へと目線だけ動かし口を開いた。

「あぁ、坊主可愛いだろ?」

ニカっと笑う央里を横目に、傳はカレーに最後のラストスパートをかけていた。

⏰:08/08/08 00:32 📱:F905i 🆔:vLwGHzXU


#78 [紫陽花]
―――――………

――――……

「なぁ、そろそろアダムの何とかって本の秘密教えてくれよ!!」

「ダメ!!まだ衛さんが帰ってきてない……」

「親父になんの関係があんだよ〜」

央里と傳は、もう3回ほどこの会話を繰り返していた。

⏰:08/08/09 23:43 📱:F905i 🆔:zljB7mjM


#79 [紫陽花]
家族そろうまでアダムの唄の話をしないなんて絶対におかしい。
家族会議でもしなければならないのか?

央里の本に対する疑問は更なる疑問を招き、考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。

「ただ〜いま〜「親父だ!!」

やはり一番早く衛の帰りに気付いたのは央里である。

ちょうどいいタイミングで風呂に入っていた榎久も風呂から上がり、真紀も食器をなおし終え、衛もリビングへと姿を現した。

⏰:08/08/09 23:45 📱:F905i 🆔:zljB7mjM


#80 [紫陽花]
衛はカッターシャツのボタンをニ三個外し、右手に持ったタオルで額を拭く。
かけていた黒縁のめがねを取り、汗でくっついた前髪をかきあげると央里とそっくりな切れ長の瞳が現れた。

そして衛の少し出っ張り始めたお腹が、どこか憎めないコロコロとした優しい印象を与える。

⏰:08/08/11 21:42 📱:F905i 🆔:hqB5Bdl.


#81 [紫陽花]
「おっ!!野胡瀬 傳君かね?」

「おじゃましてます。あの、央里にあのことを……」

「分かってる。俺は口べたなんでね。君から話してほしい」


衛の言葉を聞いた瞬間、傳の表情は不安と困惑の混じった不可解なものとなっていた。

“こんな傳見たことない……”

⏰:08/08/11 21:43 📱:F905i 🆔:hqB5Bdl.


#82 [紫陽花]
会ってまだ数時間しかたっていないが、こんなに不安げな表情をする傳がおかしく思えた。

黒スーツの男から逃げたときのあの傳の余裕が今では懐かしい。

「なにビビってんだよ!!あの本ってそんなに大事なわけ?」

「本も大事だけど、一番大切なのは君なんだよ……」

「はぁ?」

頭がついていかない。
衛も真紀も真剣な表情で央里を見つめている。

⏰:08/08/11 21:44 📱:F905i 🆔:hqB5Bdl.


#83 [紫陽花]
「訳分かんないから!!俺がどうしたの?」

本の秘密なんてどうでもよかった。
一人だけ話について行けていない自分が歯がゆい、それだけだった。

「央里分かったから。とりあえず、座ろう」

衛の提案で木で出来たクリーム色の四人掛けのテーブルに座る。

⏰:08/08/11 21:44 📱:F905i 🆔:hqB5Bdl.


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