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#101 [◆LOSh2yD9/c]
明日学校行きたくねーなぁ。
玲司に何言われっかわかんねーし、絶対あいつ馬鹿にするな…


『あはは!ほら見ろよあんな軽そうな女、絶対浮気するって言っただろ〜まぁ一年持っただけでも良しと思えよ』


ぐあ…!!
痛い言葉が突き刺してくるー(想像上で)

俺は頭をガシガシ掻きながら、未那に言われた言葉を思い出していた。



『それにね、未那、一年持ったのって湊が初めてなの!だから未那にしてみれば良く持ったなって感じ♪じゃあ、今までありがと。じゃね〜!』

⏰:09/02/23 16:54 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#102 [◆LOSh2yD9/c]
あんな満面な笑顔で去られて、もう何て言うか、怒りとか悲しさを通り越した何とも言えない感情が、胸にしっかりちゃっかりぽっかりと大穴を開けた感じだった。


クソー
腹立つ!!
また潤んできやがったー
俺の涙腺崩壊っっ
ガアアアアッ情けねぇー
いっそのこと大泣きした方がすっきりするかな…

あーでも絶対目ェ腫れる…
男が失恋で大泣きして目腫らして学校休んで寝込むなんて……

そんな恥ずかしいこと出来るかあああああああっっっ

無理だムリムリ!!
落ち着け俺!
冷静になるんだっ

⏰:09/02/23 16:56 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#103 [◆LOSh2yD9/c]
「…はぁ。」

………何か疲れた。

アホらし…


ふわっと生暖かい風が吹いた。
木の葉が揺れる音が聞こえる。

今日が真冬じゃなくて良かったな…
と、星空に向かって小さく微笑んだ。

ちょっとベンチにでも座るかと思い後ろを振り返ると、丁度真後ろにベンチがあったので、俺はトボトボトと歩き出した。


「よいしょ…」

……俺はおっさんか!

と、心の中でツッコミを入れた。

⏰:09/02/24 02:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#104 [◆LOSh2yD9/c]
「…はぁー」

駄目だ。
全てにおいてもう、溜め息しか出ないや

「はぁ……」

…そのことにも溜め息が出る。



「………」



どのくらいそうしていたか、俺はずっと地面を見つめていた。
たぶん、ほんの二、三分程度だろう。
でも今の俺にとっては、時間の流れがスローに思える…

⏰:09/02/24 02:58 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#105 [◆LOSh2yD9/c]
「……はぁー」

もう一度大きく溜め息を吐くと、俺は顔を上げた。

夜空は先程と変わらず、光り輝いている。
とても綺麗で、また泣きそうになった。


俺ってこんな泣き虫だったかな…
あー最悪!
だっせー



「はぁ。」



そんなことを思っていると、隣から俺のではない小さな溜め息が聞こえてきた。

⏰:09/02/24 03:00 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#106 [◆LOSh2yD9/c]
「!!?」


俺は吃驚して、勢い良く声のした方へ顔を向けた。

そこには、長く伸びた脚を組み、頬杖を突いた男が座っていた。

「………」

「…っ???」


……なっ、ななっ?!
ななな何で此処に人がいんだあーっ!!?

開いた口が塞がらないとはこの事かと、声にならない声を上げて、俺は、強く思った…


「……は?なん、で…??」

⏰:09/02/24 03:04 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#107 [◆LOSh2yD9/c]
いつからだ?
いつからコイツは隣にいたんだ??!

つーか!そもそも何なんだ一体!?
此処に着いた時は誰もいなかった筈…
それに、気配とかで普通気付くよな……

俺が隣に突如現れた?男を凝視したまま一人でパニクっていると、そいつは視線だけこちらに向けて、またすぐに戻した。

「…っ?」

な、何なんだっ??
い、意味がわかんねーっっ!!
……あ!コイツは幽霊か?!
いやっ俺霊感ねーし!


「……あ、あのー…?」


俺は勇気を出して、とりあえず話しかけてみた。

⏰:09/02/24 03:06 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#108 [◆LOSh2yD9/c]
…冷静になれ、俺。
本当に幽霊なら溜め息は吐かない!!(筈!)


「…………」

そいつは、まるで俺のことなど眼中にないかのようにぴくりとも動かず、黙ったまま目を伏せた。

「………??」

俺は一瞬戸惑ったが、此処を離れるには今がチャンスだとふと思った。(何の根拠もないが…)

だってそうだろ?
こんなワケわかんねー奴が隣にいてさ。
しかもこんな真夜中に!
怪しすぎるっつの!!
今の世の中何が起こるかわかんねーし、早急にこの場から立ち去らねばっっ

⏰:09/02/24 03:11 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#109 [◆LOSh2yD9/c]
そう思った俺は、奴に気付かれないようそーっと腰を上げかけた。

…その時。


「行くの?」

「え?!!」

俺は驚いて奴の方を見ると、さっきと変わらず頬杖突いたままだが、今度はしっかりと顔を向けていた。

その瞬間、この夜と同じ色をした瞳と眼が合った。
どこまでも深い、吸い込まれそうな闇に……


「…いや……」

俺は慌てて目をそらし、上げかけた腰を戻した後、そう答えた。

⏰:09/02/24 03:15 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#110 [◆LOSh2yD9/c]
「…そ」

奴は小さく呟くと、また目を伏せてしまった。

「………??」

何か良くわかんねーけど、危害を加えるような危ない奴ではない……のかな?
怪しい奴だけど!


「………」

俺は再び夜空を見上げた。
何だか、不思議な気分だな…



「はぁ。」

そんなことを思っていると、再び小さな溜め息が奴から聞こえてきた。

⏰:09/02/24 03:18 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#111 [◆LOSh2yD9/c]
「…げ!!」

振り向くと、そこには負のオーラと言うか、重い空気と言うか…
兎に角、ドス黒いどよーんとした物体がのし掛かるように奴の周りを覆っていた。

そう!
まさにこの夜の公園と一体化しているかのように!!

……て、


「え?!ちょっ…大丈夫ですか??!」

俺は慌てて奴を揺さぶる。

「おいっしっかりしろって…!」

変な汗が出るとはこのことかっ……!!

と、奴の周りの変なオーラを振り払いながら一瞬思った。(変なとこ冷静)

⏰:09/02/24 03:22 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#112 [◆LOSh2yD9/c]
すると、相変わらず無表情のまま視線だけこちらに向けて答えた。


「…安心しろ。お前にもちゃんと憑いている」

「……はあああああっっ??!!」







――そう。


これが、俺と慧弥さんとの出会いだった……―――

⏰:09/02/24 03:25 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#113 [◆LOSh2yD9/c]
……成る程ね。

俺自身も、途轍もない巨大なドス黒い負のオーラを纏っていてこの夜と同化してて、あんたも同じくらいの負のオーラを発していたから、後から来た俺には既に夜の闇と一体化してたあんたに気付かなかったって訳だぁ!



「…って納得いくかボケェェェッッ!!」

「………」

「ったく何なんだよ。同化とかありえねーだろ……」

俺は自嘲気味に笑った。

「…事実だ」

「っ…あのなぁ……」

⏰:09/03/02 00:57 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#114 [◆LOSh2yD9/c]
相変わらずな態度のコイツは、顔を向けないまま淡々と言葉を発している。

「現に、お前は俺の存在に気付いていなかっただろう…?」

「ぅ゙………」

確かに、全く!気付かなかったけどさ…
だってあの時はそんな余裕なかったし…
しかも、同化とか非現実的だろ。
漫画の世界みたいで、何かもう笑えてくるぜ…


「それ程、気分が滅入っていたんだろう、お前も。…俺も」

「え……」

そう言ってまた目を閉じてしまった。
コイツも…何かあったから、こんな態度になっちゃってんのかな……

⏰:09/03/02 01:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#115 [◆LOSh2yD9/c]
「……似た者、同士だね」

無意識に俺は言っていた。
奴は静かに目を開くと、初めてちゃんと俺の方を向いた。


「………」

じぃーっと俺を見下ろす今のコイツの瞳は、今度はしっかりと俺を映していた。

「………何だよ」

淀みのない澄んだ闇色と視線が重なって、一瞬ドキッとした。
全て見透かされそうな気持ちになって、俺はバッと視線をそらした。


「……家出?」

「ばっ…!?ちげーよっ!!」

⏰:09/03/02 01:06 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#116 [◆LOSh2yD9/c]
「成績悪くて親と喧嘩とか?」

「……ちげっつの!」

「大事な物壊したとか?」

「……違う」

「友達と喧嘩?」

「…違う」

「んーじゃあ…」

「つか!俺そんな餓鬼に見えんのかよっ!」

「…高校生ぐらい?」

「大・学・生・だっ!!」

「……変わんねーだろ」

「ムッカー!!」

⏰:09/03/02 01:08 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#117 [◆LOSh2yD9/c]
「………」

「んだよあんただって俺とそんな変わんないんじゃねーの?二、三個上くらい?」

「…………28」

「に゙じゅっ?!!(十個上でしたあ〜!!)」


「……いや、あの、すみ゙ま゙せん゙でした…!!」

「は?」

「いや…何でもないっす……」

「………面白い奴」

⏰:09/03/02 01:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#118 [◆LOSh2yD9/c]
そう言って小さく笑うコイツを見て、この男結構美形かもなと思った。

少し離れた場所にある電灯と、月明かりだけが頼りだから暗くて気付かなかったけど。


それと同時に、未那の言葉を思い出して目の奥がジワッと熱くなった。


「…っ」

マズイ!!
ひじょーにマズイぜこの状況っ!!

穴が有ったら入りたいいぃ

「………」

すると今度は反対に脚を組み直し、そっぽを向きながら奴は言った。

⏰:09/03/02 01:13 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#119 [◆LOSh2yD9/c]
「……ふられたか」

「…!!」

「…まぁ、そんなに気に病むな」

「…………」

「……世の中にはもっと深刻な問題がある」

「…っ俺にとっては大問題なんです!!」



ついムキになって怒鳴ってしまった。
…仕方ねーじゃん?事実だし?


突然俺が声を荒げたので、奴は少し目を見開いて驚いているような顔でこっちを向いた。

⏰:09/03/02 01:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#120 [◆LOSh2yD9/c]
「………そうか」

しかし奴はそう呟くと、小さく微笑んだ。

「…そうだよっっ」

俺は奴の真意が分からず、今度は俺がそっぽを向いて答えた。


隣で、フッという小さな笑みが聞こえた。


クソ〜
馬鹿にしやがってぇー!!

少しの羞恥心と怒りがこみ上げてきて、文句言ってやろうとキッと振り返ってやった。

「っ……!?」

所がどーだ。
何て顔してやがる

⏰:09/03/02 01:20 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#121 [◆LOSh2yD9/c]
悲しそうに微笑むコイツは、とても人を嘲るような顔をしていなかった。


「そんなに……泣く程好きだった?」


俺の中で電流が走った。
グサッと突き刺さる言葉。

「………別に…あんな奴……」

もう駄目だ……

俺の涙腺は、再び崩壊した。


「……………本気だった。なのに、あいつは…っ…」


俺の中の自制心も、涙腺とともに崩壊し、もう止められなかった。
言葉が次々と溢れてくる。

⏰:09/03/02 03:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#122 [◆LOSh2yD9/c]
こんな、赤の他人…
ましてや、今さっき初めて逢った奴なんかに話した所で何もならないのに…


頭では分かっていても、俺は感情のまま奴にぶつけた。
その間、奴は嫌な顔一つせず、真剣に俺の話を聞いてくれていた。



「………」

大体のことを話し終えると、奴は腕を組み、黙り込んでしまった。


「……あのー?」

長い沈黙に耐えきれなくなった俺は、遠慮がちに声をかけた。

⏰:09/03/02 03:04 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#123 [◆LOSh2yD9/c]
やべー!!
やっぱマズかったよな…
急に見ず知らずの奴に、しかも男!から失恋話聞かされた挙げ句、泣かれてみろよ……

あ゙あ゙ぁ゙
ありえねーっ!!
何だコイツって思うよな?!
ぜってー思う!普通思う!!
俺が奴だったら絶対思うね!!!
馬鹿じゃんきめー泣き虫とか色々…

「あのさ……」

「へ?」


突然(俺が思考を張り巡らせている時に)話かけられたので、俺は間抜けな声を出してしまった。

そんなことは気にもとめずに、奴は言葉を続ける。

⏰:09/03/02 03:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#124 [◆LOSh2yD9/c]
「…今は、辛いかもしれないが……いつか、良かったと思える日が来ると思う。」


区切りを付けながら述べる奴は、俺に気を使い言葉を探しながら話しているようだった。


「お互いを想い合ってこその愛だろ?…お前にもきっと現れるよ。運命の人が……」



…心が、揺れ動いた気がした。

奴の瞳は真っ直ぐで、真剣で、とても優しかった。


「………」

⏰:09/03/02 04:26 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#125 [◆LOSh2yD9/c]
俺は暫く何も言わなかった。

いや、言えなかった。

言葉が出てこなかったんだ。


もっと馬鹿にされるかと思ったから…
少し、嬉しかったんだ。


「……あの、…ありがとう」


俺はそれだけ伝えると、一気に今までの恥ずかしさが増して、奴を直視していられなくなり下を向いた。

少しは、楽になった。
話して良かったかもしれない。

……恥ずかしさは半端ないけど!!

⏰:09/03/02 04:30 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#126 [◆LOSh2yD9/c]
隣でまた奴の鼻で笑う音が聞こえた。
今度はきっと、人を小馬鹿にしたような顔でいるに違いない!!


「…でも、少しはすっきりしただろ?あんだけ話して泣けば」

っんのヤロー!!
ぜってー嫌味だっ!!
前言撤回!!!


「はいはいお陰様で!!」

フンッと鼻息をたててそっぽを向いてやった。
ダサいのはもう充分承知だっての!
俺は怒り全開な態度で言った。


「はは……そう怒んなって」

⏰:09/03/03 08:56 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#127 [◆LOSh2yD9/c]
隣で呟く奴の声は、少し悲しみを帯びていた。

俺はそんな奴のことが少し気になって、わざと戯けたように聞いた。


「じゃー次はあんたの番!あんただって泣いてただろ?」

泣いてはなかったと思うけどね!
ふんっ嫌味返しだ!!


軽くあしらわれるだろうと思いながら奴の方に向き直すと、思いがけない姿があった。

「…………」



ずーん。

⏰:09/03/03 09:03 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#128 [◆LOSh2yD9/c]
…そう


どよーんと、奴の周りはまた負のオーラで覆われていた……。

黒い靄みたいなのがフワフワ浮いてるし…

ああ、これが同化ってやつね〜

…じゃねぇだろおおおおおお!!!


「ちょっ、ちょっとあんた何やってんだよ!?」


俺は思いのまま奴を激しく揺さぶったが、相変わらずどよーんとした物?は消えそうにない。

「………」

⏰:09/03/03 09:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#129 [◆LOSh2yD9/c]
あぁ…
最早コイツに俺の声は届いていない。

闇に押しつぶされているっ!!


おいおい
コイツも俺と同じくらいやべーんじゃないか?
いや、俺以上か?!


「お前も、ふられた…とか?」

恐る恐る聞いてみる。


ん?待てよ
こんな美形ふるなんてどんな女だよ?!
いや、そもそもふられたと決まった訳じゃないか…

でもこの落ち込みようは……

⏰:09/03/13 23:13 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#130 [◆LOSh2yD9/c]
「……言っただろう。もっと深刻な問題があると」

気付けば奴を取り巻く靄は消えていて、ガクッと項垂れていただけだった。


「…???」


「………離婚の危機だ」


「…っええぇ??!」


つか結婚してたのか!
もしや子供いたりすんのか?
まじかよ想像できねぇよ〜〜

⏰:09/03/13 23:51 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#131 [◆LOSh2yD9/c]
あ!思考が脱線したっっ

えと、何だっけ…?

あ、そう!!

ふ、ふられたとか言う以前の問題だよな…
俺なんかよりずっとやばくないか?
精神的ダメージが……


「………」


こ、言葉が出ない…!!

何を言ってあげれば良いんだ?

そもそも、俺に何が言えるんだ?!

⏰:09/03/14 02:28 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#132 [◆LOSh2yD9/c]
アドバイスっつったって俺は結婚の経験なんかないし、大体俺は奴より十個も年下で、人生経験もまだまだな訳で…


『新しい人見つければいーじゃん』


駄目だ。

これは結婚してる人に軽く言える台詞じゃねぇよな…


うわぁー

どーしよ?

この沈黙どーすりゃいい?!!

凄くいたたまれないんですけど!!

⏰:09/03/14 02:44 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#133 [◆LOSh2yD9/c]
………ん?待てよ?

危機?


「危機…ってことは、まだ大丈夫なんだろ?」

俺は言葉の違和感を感じた。
"危機"ということは、まだ離婚はしてないんだよな…?

「………」

奴は俺の問いに答えず、俯いたままだ。


あぁ…
地雷を踏んじまったかな

⏰:09/03/17 01:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#134 [◆LOSh2yD9/c]
馬鹿だ俺
家庭の事情に土足でズカズカ入ったようなもんだ
そんな最悪なことされて…
傷付いて悲しむのは良く知っている筈なのに。


「ご「シュレッダーの中から離婚届が出て来たんだ…」

「は?」

突然何言ってやがんだコイツは!!?
しかも俺が謝ろうとした時にっ
被っただろ!

「判子は押してなかったが、名前は書いてあったんだ…」

奴は俺が言いかけた言葉に気付いていない様子で言葉を続ける。

⏰:09/03/17 01:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#135 [◆LOSh2yD9/c]
まぁ、いいけどさ……


「シュレッダーの中…って、その紙は細断されててわからないんじゃ…?」

「あぁ、見事に細かく切り刻まれててわからなかった。だが気になって繋げた結果…」

「はぁあ??!あんな細かくなったもんを復元したのか?!」

「…職業柄、細かい作業には慣れている」

「いやそーゆー問題じゃね〜!!」

俺が透かさずツッコミを入れると、奴は小さく笑った。

⏰:09/03/17 01:59 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#136 [◆LOSh2yD9/c]
いや笑ってんじゃねーよ!
普通そんなことしないだろおおぉ
何かコイツ危なくないか?!
大丈夫かおいいぃ


そして奴は再び俯くと、悲しそうな顔を俺に向けて微笑んだ。

「…ちょっと最近すれ違い気味でさ。まぁ、俺が悪いんだけどな……」

ズキリと胸が痛んだ。

俺は必死に言葉を探す。

「でも離婚届をシュレッダーにかけたってことは、奥さんは思い留まったってことじゃないですか!?」

「そうだと思うけど…やっぱり、正直ショックだよな」

⏰:09/03/17 02:01 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#137 [◆LOSh2yD9/c]
ああ…

益々何も言えねぇよ


俺は何も言えないまま、奴の顔を盗み見る。

もっと深刻な問題…か

確かに、俺のことなんかと比べられるような問題じゃないよな

そもそも比べること自体間違ってるぜ…


「しかも…暫くは逢えないだろうし、また距離が広がってしまうな…」

⏰:09/03/23 21:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#138 [◆LOSh2yD9/c]
奴はそう言うと、嘲うかのように溜め息を吐いた。

「逢えないんですか…?」

"どうして"か気になったけど、深く聞いて良いものかと躊躇い、一歩引いた。

「うん…仕事の都合でね」

社会人は大変だなぁとぼんやり思った。


…他人事だな俺


「…あの、俺が言うのも何か…アレですけど、その、元気出して下さい。俺も、頑張りますんで!」

⏰:09/03/23 21:51 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#139 [◆LOSh2yD9/c]
ぐっはー!
俺は何意味不明なこと言っちゃってんだ〜

奴は一瞬驚いたような顔をした後、声を出して笑った。


「ははは。そうだな、お互い頑張ろうぜ」
俺はこの時、この人と奥さんが上手くいけばいいなと本当に思った。


「っと、おいもう3時過ぎてるぜ?お前学校あんだろ?」

「あー、最悪だ…」

「はは、大丈夫か?」

⏰:09/03/23 21:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#140 [◆LOSh2yD9/c]
「んー。たぶん」

俺は力無く笑う。

本当は休みたい所だけど、こんなことでサボりたくないし、休んだら何か悔しいじゃん?!


まぁでもそろそろ帰んないとまじでやばいかもな


―…でも何故か

まだ此処にいたいと思っている自分がいた。

この人と一緒にいたいと…

⏰:09/03/23 21:58 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#141 [◆LOSh2yD9/c]
「じゃあ…俺、帰るわ」

「…そ」

「…あんたは帰んなくていいの?」

「んー、俺もそろそろ帰るよ」

「そっか。じゃあ…」

そう言って俺はベンチから立ち上がった。
何だか、少し寂しい。


「ああ、気をつけて帰れよ未成年」

「はあ?何だそれ」

⏰:09/03/23 22:00 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#142 [◆LOSh2yD9/c]
俺は思わず吹き出すと、奴もつられたのか笑顔になる。


「…あのさ、俺明日フランスに戻るんだ」

「はあ?!」

突然フランスと言う言葉が出てきて、俺の目は点になる。

何こいつフランス人?

確かに悔しいがこいつは美形だけど、日本人以外には見えないぜ?!


「仕事の関係で今はフランスにいるんだよ。でもエリサを…妻を追って来たって訳」

⏰:09/03/23 22:08 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#143 [◆LOSh2yD9/c]
「は、はぁ…」

「でもあいつも忙しい身だからな、逢えなかった…。何も言わずに日本に来ちゃったから、明日には戻らなきゃマズいんだよ色々と」

「へぇー…」

何かややこしくなってきたぞ。

…ん?とゆーことは??


「え、じゃああんた帰る家ないの?」

「いや、家はある」

「そう、なら、いいけど…」

ボンボンか!!

⏰:09/03/23 22:11 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#144 [◆LOSh2yD9/c]
「…さて、俺も少しは頭冷めたし帰るか」

奴は無理矢理思考を遮断するかのようにして、膝をパンッと叩いて立ち上がった。

俺はそんな姿に少したじろぎ、頷くことしか出来なかった。

「あ、あぁ…」


これ以上はもう何も話せないだろう

直感的に、そう思った。


「お前はまだ若いんだし、これからなんだぜ?元気だせよ」

「うん…あんたもな」

⏰:09/03/23 22:14 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#145 [◆LOSh2yD9/c]
「じゃあな…」

「…じゃ」

そう言って俺たちは別れた。



…もう、二度と逢うことはないだろう


明日には奴は日本(此処)にいない訳だし

あー。何か不思議な体験をした気分だ

こんなこともあるんだな、と少し苦笑しながら歩いた。

まぁ…お陰で俺も少しは気が楽になったのは確かだし、奴に出会えて良かったのかもな

⏰:09/03/23 22:21 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#146 [◆LOSh2yD9/c]
名前くらい聞いときゃ良かったか

あ、そーいや俺も名乗ってないか


そんなことを考えながら、公園出入り口付近に停めておいたバイクの元へと向かった。

明日から、いや今日からか。
俺はまた頑張ろう!
あいつの言うように、まだ若いんだしな!

よし!!


―この奇妙な出会いが、俺の人生を大きく変えていく始まりにすぎなかったことを、この時の俺には知る由もなかった…―

⏰:09/03/23 22:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#147 [◆LOSh2yD9/c]
「わっははは…!」

「………」

真っ昼間のキャンパス内に、玲司の馬鹿笑いが響く。

他の学生は、何事かという感じで怪訝そうにこっちを見ている。

ヤメロ、そんな目で見ないでくれー

そんな周りの目を、玲司は気付いているのかいないのか、一向に笑うのを止めない。

…いや、前者だ。確実に前者だコイツは!!


「…お前さ、いつまで笑ってんだよ」

俺はイラつきを全面的に出しながら言った。

⏰:09/03/25 04:37 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#148 [◆LOSh2yD9/c]
「ははは、わりーわりー」

「てめぇ!わりーなんて微塵も思ってねーだろ!!」

くっそーケラケラ笑いやがって!!


俺の隣で笑っているこの憎たらしい野郎は、

笹峰玲司。

高校時代からの、 一 応 親友。



…それはさておき、

どうして俺が玲司に笑われているかというと、話は今日の明け方に遡る…

⏰:09/03/25 04:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#149 [◆LOSh2yD9/c]
――――――――――――


夜中に出会った、例の"奴"と別れた後、俺はすぐに帰宅し風呂に入った。

そしてそのまま倒れ込むようにして眠りについた。


目が覚めてからが大変だった。

思った以上に目が腫れていて、どうにかこうにか腫れを引かせ、朝飯を済まし、いつも通りに家を出た。


いつもと変わらない日常。

昨日のことが夢のように思えてくる。

⏰:09/03/25 04:45 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#150 [◆LOSh2yD9/c]
「おーっす!」

ウォークマンを聞いていても、こいつの声は良く通るからすぐわかる。

「…はよ」

俺は極力顔を合わせないようにして答えた。

「ん?何だお前テンション低くないか?」

そう言って顔を覗き込もうとする。

あ゙ーこっち見んなほっとけ

「ぶ!!あっはは何だお前どーしたよその顔っ」

…はいはいわかってましたよ

こうなることぐらい

⏰:09/03/25 04:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#151 [◆LOSh2yD9/c]
俺はウォークマンを片付けて、目だけ玲司の方に向けた。

「…そんなに目立つ?」

「んー、少しな」

「これでも引いたんだぜ…」

「…で、どうしたよ。そんなんでも来たことは褒めてやるよ」

「何だそれ。…まぁ昼にでも話すよ」

本当は、ぜってー馬鹿にするから話したくないけどな!

「…俺、何か想像出来るかも」

そう言ってにやける玲司。

⏰:09/03/25 04:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#152 [◆LOSh2yD9/c]
ふん、お見通しですか。ムカつくぜ!!

「……あっそ」

「おい不貞腐れんなよ〜。まぁ元気だせって」

「ふん」

そんな会話をしながら、俺たちはそれぞれの教室に向かった。




―…あっという間に午前の講義が終わり、俺と玲司は昼食を済ませた後キャンパス内のベンチに腰を下ろした。


そして俺は重い口を開く。

⏰:09/03/26 08:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#153 [◆LOSh2yD9/c]
未那にふられたこと

変な奴と出会ったこと


昨日あった出来事を一通り話した。


そして、案の定と言うか、昨日俺が想像していた言葉まんまを言って大笑いしているってワケ。

あったまくるぜホント!

逆に笑えてくるよな

失笑だぜしっしょー


…そんなこんなで、今に至るって訳だ。


――――――――――――

⏰:09/03/26 08:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#154 [◆LOSh2yD9/c]
「クク…まぁー機嫌直せって。これでも俺は心配してたんだぜ?」

「……そんな笑い堪えた顔で言われても説得力ねーよ」

「はは、悪いって〜」

「まぁ、結局はお前が正しかったってことだよなー…。俺が馬鹿だったよ」

「…恋愛に、何が正しい間違いなんてないんじゃね?湊は幸せだったんだろ?」

「………」

「でもさーその公園で逢ったって奴、凄くね?色々と。つかそんな漫画みたいなことってあるんだな」

⏰:09/03/26 09:06 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#155 [◆LOSh2yD9/c]
「あぁ、俺も吃驚だよ」

「これが男じゃなくて女だったら良かったのにな!そしたらまさに運命の出会いじゃね?!」

「ははっそうだな。でももう逢うことはないな。寧ろ逢わなくてホッとするぜ」

「醜態曝しちまったからな」

「………」

揚足取りやがって!!

俺の様子を見て、またクスクスと小さく笑う玲司。

別にいいけどな!もう慣れっこだぜ、ふんっ

⏰:09/03/27 08:45 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#156 [◆LOSh2yD9/c]
「さ〜て。そろそろ戻るか!」

隣で玲司が大きく伸びをしながら言ったので、俺は腕時計を見た。

「もうこんな時間か」

「本当はさ、学校終わったら慰めパーティーでもやってやりたい所だけど、今日はバイト休めねーんだ、悪いな」

そう言って少し気まずそうに頭を掻く玲司。

「…いいって。でもサンキューな」

「あぁ、じゃあ今度奢ってやるよ」

「おう、期待してるぜ」

⏰:09/03/27 08:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#157 [◆LOSh2yD9/c]
何だかんだ言って、色々と気を使ってくれる玲司。

少しだけ泣きそうになったことは、ぜってー言わねぇ!

また馬鹿にするに決まってるからな!!

…でも、感謝してるぜ。


まだ完全には未那のこと吹っ切れそうにないけど、昨日と今日で大分元気出てきたしな。

当分は、彼女とか、そういうのはゴメンだけど。

⏰:09/03/27 23:38 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#158 [◆LOSh2yD9/c]
―放課後


玲司と別れた後、俺は一人帰路を歩む。

ウォークマンからは、未那が良く口ずさんでいた歌が流れ出す。

「…はぁ。」

あーダメだ俺

何か、また泣きそうだ…

……情けねぇ


何となくその歌をずっと聞いていたくなって、リピートに設定した。

⏰:09/03/28 00:43 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#159 [◆LOSh2yD9/c]
地元の駅へと着き、駐輪場へ向かう。

ガソリン代が勿体無いから、通学時は基本バイクに乗らないようにしてるけど、今日は特別。(自分で決めた)

だって、…ねぇ?

チャリだと何気に時間かかんだよね家まで。

流石にそんな元気と時間に余裕がありませんでしたあああ!!


さーてと、帰ろ。


俺はバイクに跨りエンジンをかける。

⏰:09/03/28 03:20 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#160 [◆LOSh2yD9/c]
そこでふと思った。

まだ明るいし、昨日の公園に少し寄ろうかな…

駅から自宅に帰るまでの方向と大体同じなので、少し回り道する程度だから支障はない。

つか今日はバイクだから尚更問題ないしな。

よし、気晴らしに行くか!

俺は思い切りアクセルを踏んだ。


――…まさか、

そこでまた"奴"と再会するとは夢にも思わなかった……――

⏰:09/03/28 03:23 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#161 [◆LOSh2yD9/c]
昨日と同じ場所にバイクを停めて、ウォークマンを外す。

とりあえず、奴と出会ったあのベンチに行こうと思い足を進めた。

夜だと暗くて何も見えないけど、あそこは目の前が川なので、静かで落ち着ける場所だから俺は割と好きなんだよね。

…しかし。

相変わらず人のいない公園だ。

昔からそうだけど、この公園が賑わっている光景を俺は見たことがない。

ま、俺も頻繁には来ないけどさ。(こーゆーことがない限り!)

⏰:09/03/29 03:17 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#162 [◆LOSh2yD9/c]
「…ん?」

ブランコや砂遊び場を抜け、あのベンチが見えてきた。

が、そこで俺は気付いた。

ニット帽をかぶった男?が座っているじゃねぇか!?


先客か…、仕方ない

他に空いてるベンチを探すか


そう思い、引き返そうとした瞬間、俺は先客を二度見した。

⏰:09/03/29 03:19 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#163 [◆LOSh2yD9/c]
スケッチブックと何やら睨めっこしている様子。

俺は少し気になって、その先客に気付かれないようそっと近付いてみた。

少し距離を取って、背後から覗き込む。

「……!!」

スケッチブックに描かれている"それ"を見て、余りの上手さに俺は絶句した。

ニット帽は集中しているのか、俺に全く気付く様子もなく筆を進め始めた。


サササッと細かく丁寧に目の前の光景を忠実に描いている。

⏰:09/03/29 03:24 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#164 [◆LOSh2yD9/c]
それは本当に素晴らしい物で、俺の目は釘付けになっていた。

「すげぇ…!」


俺はそう呟いてしまい、しまったと思った時には遅く、ニット帽は吃驚したように後ろを振り返った。

「…ん?!」


やべっっ

「いやっあのっすいません!たまたま見えて、凄く上手いから吃驚して…」

⏰:09/03/29 03:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#165 [◆LOSh2yD9/c]
があああぁっ

何言ってんの俺〜

やべぇどーしよ勝手に見ちゃったからなぁ

マズかったかな…

でもこれは凄すぎるだろ、プロ級だぜ絶対!

色んな奴が見る価値あるって!!



そんなことを勝手に思っていたら、ニット帽は一瞬目を見開いた。

⏰:09/03/29 03:31 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#166 [◆LOSh2yD9/c]
「…!!お前…」

「え…?」

「……いや」

俺がはてなマークを浮かべていると、ニット帽は眼鏡をクイッと上げて、前へ向き直ってしまった。


…何だ?

どうしたんだ?


俺がそこに立ち尽くしていると、そこへ突風が吹いて筆セットみたいな物が派手にばらまかれた。

⏰:09/03/29 03:33 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#167 [◆LOSh2yD9/c]
とりあえず、俺も拾うのを手伝って、ニット帽に渡す。

「はい。これで全部か?」

「…あぁ、悪いな」


何か、そわそわしている感じで…

俺を見ようとしないって言うか…

何かこいつ、どこかで……?


「っあんた…!!?」

「………」

俺が言葉を発した瞬間、ニット帽はバッと顔を背けた。

⏰:09/03/29 03:34 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#168 [◆LOSh2yD9/c]
「……まさか、」

俺はニット帽の前まで移動する。


「もしかして昨日の?!!」

俺がビシッと指を指して叫ぶと、ゆっくりとこっちを見上げ、一言。


「…………バレた?」

「っ…はああはぁぁ??!!!」


辺り一面、いや公園全体に俺の声は響きわった。

と、思う。

⏰:09/03/29 03:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#169 [◆LOSh2yD9/c]
えええっ?!

な、何なにナニ???

何で、"奴"が此処にいるワケ?!

つか!そもそもフランスに戻ったんじゃ…?!

意味わかんねぇ!!!


俺が一人パニクっていると、奴はやれやれと言った感じで口を開いた。

「…まさか、またお前と逢うなんてな」

「……何であんたが…」

⏰:09/03/29 03:43 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#170 [◆LOSh2yD9/c]
此処に?

つか、何故ニットに眼鏡?

…昨日のスーツ姿みたいのからは想像出来ない程似合ってないぞ!

しかも何でこんなに絵がクソ上手いんだ!!

コイツに言いたいことや聞きたいことは沢山あったけど、言葉にならない。

俺が呆然と突っ立っていると、奴は周りに散らばしていたスケッチセットを整理して、俺に座るよう促した。

「ま、座りなよ」

「あ、ああ…」

⏰:09/03/29 03:45 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#171 [◆LOSh2yD9/c]
俺は少し遠慮がちに奴の隣へと腰掛ける。

げ、この位置は、まさに昨日と同じ!!

…ああっ!恥ずっ!!

もう、本当昨日から俺、ツイてない…

軽くイジメだぁぁ………!!


俺は俯く。

奴も黙ったまま動かない。

俺たちの間に、沈黙が流れる。

⏰:09/03/29 03:48 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#172 [◆LOSh2yD9/c]
その沈黙に耐えきれなくなった俺が、先に口を開いた。

「…あの!俺、超気マズイんですけど…」

「そうか?」

「は?」

「どちらかと言えば笑えるな」

「はぁ…?まぁ、わかる気もするよーな…」


やっぱりコイツって、ワケわかんない奴だな

⏰:09/03/29 03:50 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#173 [◆LOSh2yD9/c]
俺はそう思い小さく苦笑した。

奴はそんな俺を見て、不思議そうな顔をしていたけど。


「あれから俺は、朝一の便でフランスに戻ろうと空港に向かったんだ。そしたら、上司っていうのか?ま、社長みたいな人から電話がかかって来て、暫く日本にいていいって言われてさ…」

「ええっ?!それっていいのか?仕事は?」

「あーそれは俺も言ったんだが、問題ないと仕事用具一式速達で送られてきた」

「はあ?!」

⏰:09/03/29 05:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#174 [◆LOSh2yD9/c]
「まぁ大体はこっちにも揃えて置いてあるから困らないんだけどな」

「い、意味がわかんねぇ!!」

「要するに、期限までに終わらせれば問題ないって訳」

「そーじゃなくて内容が!」

「は?」

「つかそれならこんな所で絵なんか描いてていいのかよ?つかアンタ絵上手すぎなんだよ!!」

「ああ、これは慣らしみたいなもん」

「はああ?!」

⏰:09/03/29 05:12 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#175 [◆LOSh2yD9/c]
「…趣味みたいなもん」

「へぇー。でも本当凄いですよ、俺吃驚しましたから!趣味って言うレベルじゃないっつーかプロ並みだし!!」

奴は俺の絶賛に、少し照れた表情で微笑んだ。

「…鉛筆だけで描くのは、久しぶりなんだ」

「久しぶりでもあんなに凄いのが描けるなんてどーゆー腕してんだよ!風景がそのままモノクロの世界になった感じ!!」

俺は興奮したまま喋っていた。

だって俺、絵とか正直良くわかんねぇけど、感動したのは事実だし。

⏰:09/04/10 04:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#176 [◆LOSh2yD9/c]
「…お前って」

「え?」

「いや…」

「…?」

不意に真剣な眼差しに出会い、何だろうと不思議に思った。

でも問いかけるとその瞳はすぐに空に向けられてしまった。

「…でもな、俺は満足していない。やはり眼鏡をしていると視界が遮られて仕様がない」

「は?良く見えるようにかけてんだろ?嫌なら外せばいいじゃん」

⏰:09/04/10 04:28 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#177 [◆LOSh2yD9/c]
「これは伊達だ。俺だって好きでしてんじゃねぇよ、煩わしいのが嫌ならバレないようにすればいいってエリサが……」

「え?」

段々と声が小さくなっていき、奴は俯きだした。

エリサ…?

って確か、奥さん?

ん?ってコイツまたブルーになってやがる!!

「ど、どうしたんだよ?!」

俺が若干焦りながら奴の様子を伺っていると、我に返ってくれたのか奴は真顔を向けてきた。

⏰:09/04/10 04:30 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#178 [◆LOSh2yD9/c]
「…所でお前、学校はちゃんと行ったのか?」

「は?ちゃんと行ったし!お陰で友達に爆笑されたけどな!!」

「ははっだろうな」

「笑い事じゃねーよ」



それから俺たちは小さく笑い合い、お互いの今の心境を少し話した。

流石に昨日の今日だから、そんなに変化はないけどね。

⏰:09/04/10 04:32 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#179 [◆LOSh2yD9/c]
俺は、やっぱりまだ未那のことを引きずっているということを。

奴は、送られてきた荷物の整理をした後ずっとここで絵を描いていたから奥さんとは逢えていないということを。


「そういえば、お前はこの近くなのか?」

「え?あぁ、そうだなバイクで十五分くらい?」

「ふーん」

「あんたも近いの?」

「車で三十分くらい?」

「わ、わざわざ?近くはないんだね」

⏰:09/04/10 04:34 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#180 [◆LOSh2yD9/c]
「…近いんじゃない?」

…車だからだろ!

「じゃあ今日は車?」

「ああ。…と言うか、歩きでも然程変わらないと思う。此処まで来る道が入り組んでるし、昨日がそうだったから」

「ええっ?何で…」

「ふらふら歩いてたら此処に辿り着いた」

「………」

…俺と同じか

そりゃそうか。偶然って恐ろしいぜ…

⏰:09/04/10 04:40 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#181 [◆LOSh2yD9/c]
「ま、こんな荷物持って歩くのはごめんだしな」

「あぁ…」


そんなこんなで俺たちは会話を弾ませ、気がついたら日も暮れていた。

ベンチから見える景色はとても美しい。

オレンジ色の夕日が水面に反射し、ゆらゆらと揺れている。

ちょっとした隠れスポットだと思った。



……に、してもだ。

⏰:09/04/10 04:43 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#182 [◆LOSh2yD9/c]
こんなロマンチック(と言えるだろう)な場所に男二人肩並べてる俺らって…

あ゙あ゙ぁ゙あ゙〜〜〜

痛すぎる!!!


頭を抱えたくなる衝動に駆られていると、隣からボソッと声が聞こえて来た。

「綺麗だな」

「え?あ、ああ…」

「こういう風景、好きだ。昼間は日の光を浴びてキラキラ輝いていた」

「そうですね。俺地元なのにこんな場所があったなんて知りませんでしたよ」

⏰:09/04/10 04:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#183 [◆LOSh2yD9/c]
「…思えば、もう随分と描いていない…」

「……?」

言葉の意味を理解出来ずに首を傾げていると、奴は心ここに在らずと言ったように遠くを見つめていた。


「…そろそろ帰るか。お前ももう帰れ」

「え?」

少しの沈黙の後、突然奴が発言し、自分の持ち物を片付け始めた。

「一睡もしてない上に時差ボケも加わってんだ、流石に眠いし怠い。お前も似たような物だろう?」

「あ、ああ…」

⏰:09/04/10 05:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#184 [◆LOSh2yD9/c]
「じゃ、またな」

奴は片付けを済ますと早々に立ち上がった。


「ま、待って!!」



げ!

な、何引き止めてんだ俺?!

「…何?」

奴は座っている俺を見下ろす。

いや、奴は立っていて俺は座っているんだからそーなるのは普通なんだけど…

⏰:09/04/10 05:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#185 [◆LOSh2yD9/c]
コレどーしよ俺!

この状況はキマズイぜ俺!!

『考えるよりも先に行動しちゃったぜ』

的な状態だぜオイイイイ!!!



「あ…あのさ、アンタ、明日も此処に来るの?」

「………」

「絵の続き、描きに…とか?」

「あー…、たぶんな」

⏰:09/04/10 05:13 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#186 [◆LOSh2yD9/c]
「俺も来てもいい…ですか?」

「…ああ」

「そ、そっか…わかった。じゃあ、また」

「…じゃーな」

そう言って薄ら笑いを浮かべると、奴は去って行った。


……アイツ、また俺を馬鹿にしやがったな

まぁ、確かに俺は変だった。うん

キョドりすぎ

⏰:09/04/10 07:52 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#187 [◆LOSh2yD9/c]
…だってよ、なんか、このまままた別れるのは嫌だと思ったから

もっと色んな話をしてみたいと思ったから

もう二度と逢わないだろうと思っていた人間にまた逢ったんだ

なんか、興味がある
"奴"と言う一人の人間に
そしてあの絵に、何故か…引き込まれるんだ


「あ!!名前聞きそびれた…」

一人残ったベンチで、(結構)重要なことを聞き忘れていたことに気付いた俺だった。

⏰:09/04/10 17:40 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#188 [◆LOSh2yD9/c]
―――翌朝



あれから俺は、帰宅して夢の世界に直行したので今日の目覚めは頗る良いのだが、隣で歩いているコイツは頗る機嫌が悪いようだ。

「あーだりぃー」

「お疲れ。まぁ、お前にしては偉いじゃん?褒めてやるよ」

「てめぇ…!!」

ギロリと玲司が睨み付けてくる。

ふん、昨日のお返しだ!

⏰:09/04/18 07:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#189 [◆LOSh2yD9/c]
さて…

どうして玲司の機嫌が悪いのかって言うと、昨日バイトで残業があったらしく、殆ど寝られなかったらしい。

まさに昨日の俺状態。


「んでよりによって寝れねー講義なんだ」

「玲司は午後で帰れるんだから耐えろ」

「あ〜あ。今日は帰ったら即行寝よ」


頭をガシガシ掻いて怠そうに伸びをする玲司とは逆に、俺はまた"奴"に逢えるかもしれないという思いで、何故かわくわくしていた。

⏰:09/04/18 17:00 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#190 [◆LOSh2yD9/c]
そして玲司と別れ、教室に入る。


「はよー」

すれ違う奴に挨拶しながら席へと向かっていると、俺の鞄が引っかかり何かを落としてしまった。

「悪い!」

俺は慌てて拾い上げる。

「あぁ、いいよ」

拾い上げた雑誌を見て手が止まる。

全て英語の文字が並んでいたからだ。

うわーすげぇなコイツ。俺はこんなん読めないや

⏰:09/04/18 23:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#191 [◆LOSh2yD9/c]
そう思って表紙に写っている人物に目をやった。

「…ん?」

その時、何かの違和感を感じた。

「どうした?」

「いや…」

何だ?

何かひっかかる……気がする

「…っ!!コイツ昨日の!!?」

「はあ?!」

「コイツ何で雑誌なんかに載ってんだ?」

⏰:09/04/19 02:31 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#192 [◆LOSh2yD9/c]
「…お前何言ってんの?」

「俺昨日コイツと逢ったぜ?!」

俺が興奮気味に話していると、友人は若干呆れ顔で言った。

「…な訳ねーだろ、有名人だぜ?第一この人今日本にいないし。どーせ似てただけだろ」

「……だよなーははは」

そりゃそうか

良く見れば髪型とか違うし、似てるだけだよな〜

しかもそんな有名な奴が、ふらふらあんな所にいる訳ないしな!

⏰:09/04/19 03:45 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#193 [◆LOSh2yD9/c]
「でも俺この人の描く絵、何気好きなんだよね」

「絵?」

「ああ、この人外国では結構名の知れた画家だぜ」

「画家あ?」

「うん、ほら見てみろよ」

そう言って雑誌を開き、作品が載っているページを捲り俺に見せてきた。

「うわっすげー…」


俺はまじまじと雑誌を眺めた。

⏰:09/04/20 00:18 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#194 [◆LOSh2yD9/c]
色鮮やかに描かれている"それ"は、絵心を知らない俺でも、その人が何故有名であるか充分理解出来た。

流石、雑誌に取り上げられることはある。

「だろ?只、日本ではあんま知名度がないのが残念なんだよなー。まぁ外国で活動してるみたいだから仕方ないんだけど」

「へぇー、全然知らねーや」

「てかお前は他の画家も知らねーだろ!」

「ははっ確かに!」

「絵とか好きな奴なら日本人でも知ってる奴多いと思うぜ」

⏰:09/04/20 00:26 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#195 [◆LOSh2yD9/c]
――そして今日の全ての講義が終わった。

帰り支度を済ませ、学校を出る。

自然と俺の足取りは速くなった。

今日は学校が終わるの早いけど、アイツはもういるのだろうか。



―俺が公園に着くと

昨日と同じ場所に、同じニットと眼鏡をかけた"奴"が、もう其処にいた。

俺の気配に気付いたのか、奴が振り返る。

⏰:09/04/20 00:30 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#196 [◆LOSh2yD9/c]
「よう、今日は早いんだな」

「…どうも。アンタこそ、昨日はちゃんと寝られたのか?」

「ああ、もうバッチリだ。久々の長い睡眠だった」

心なしか、表情が少し明るくなったような気がして安心した。


俺は奴の隣に座り、スケッチブックを覗く。

「うお!」

「何だ」

そこにはほぼ完成した、昨日まで書きかけだった風景画があった。

⏰:09/04/20 00:32 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#197 [◆LOSh2yD9/c]
「すげー!もう完成ですね!」

「まだだ。ここからが重要なんだよ」

「え〜完成じゃないの?」

「細かい作業があんの。仕上げが大切」

「ふーん」

そうして、奴は丁寧にペンを走らせ始めた。

時折見えずらい、と言ったように眼鏡をずらしたりしている。

「…なぁ、そいやそれ伊達なんだろ?作業しにくいなら、描く時ぐらい外せばいいじゃん」

⏰:09/04/20 02:08 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#198 [◆LOSh2yD9/c]
「……この公園は、人があまり来ないのか?」

「は?」

またコイツは突拍子もないことを…

「んー、昔からあんま賑わうような場所じゃなかったし、最近じゃ子供も少なくなったから遊びに来る奴も減ったと思うぜ」

「…通りでな」

「え?」

「いや、昨日から思っていたんだが、昼間からずっといても、犬の散歩してる人やジョギングしてる人ぐらいしか見かけなかったから」

⏰:09/04/20 02:31 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#199 [◆LOSh2yD9/c]
「だろうね。此処に公園がある場所が場所だし」

「そうか」

奴はそう言うと、ニット帽と眼鏡を外した。

「こーゆーの、煩わしくて嫌い」

「だから!嫌ならやんなきゃいーだろ!」


俺たちは笑い合う。

何だろうな、玲司とはまた違った安心感。

コイツと一緒にいるのは居心地がいい。

⏰:09/04/20 02:33 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#200 [◆LOSh2yD9/c]
「その絵さ、今日中に終わるの?」

「お前、俺を誰だと思っている」

「っああー!!」

「突然何だ」

「何だかんだで言い忘れてたけど、俺、霧咲湊って言います宜しく!」


コイツに「お前」って言われて思い出した。

俺まだ名乗ってないし聞いてない!

でも俺が急に勢い良く自己紹介したもんだから、奴には可笑しかったようで急に笑い出した。

⏰:09/04/20 02:38 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#201 [◆LOSh2yD9/c]
「ふーん、お前…いや湊君は本当面白いな」

「…何笑ってんだよ。それに「君」はいらないよ」

「…そ?」

そう言って奴は頷くと、意味深な笑みを浮かべた。

んのヤロッ!ニヤつくなあああ


…何でかって?

馬鹿にされてるみたいだから!!

コイツに言われると特になっっ

⏰:09/04/20 02:40 📱:F906i 🆔:☆☆☆


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