【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#235 [No.008(1/2)◆vzApYZDoz6]
「よぉ」
「……誰? どこにいるの?」
「お前の後ろだ」
「後ろ…? 誰もいないじゃないか」
「当たり前だろ。俺は、お前の『影』だ」
「影…?」
「ここはお前の精神世界だ。お前は青く、俺は真っ黒で長い。お前は今、心に深い闇を抱えている。だがそれは不変的なものではなく、変えようと思えば変えられるものだ」
「……つまりは僕次第、か……」
「言ってみろよ。俺にはお前が何を抱えているかまでは判らない」
:08/11/03 19:22 :P903i :LUmIhgZI
#236 [No.008(2/2)◆vzApYZDoz6]
「……話したところで…君に何かできるのかい? この寂しさを救えるのかい?」
「甘ったれるなよ。さっきも言っただろう、変わるかどうかは他ならぬお前次第だ」
「判っているさ。でも、僕は君ほど強くなれそうにない」
「んなこたぁねーよ。俺はお前の影だぞ? 俺は、お前だ。俺にできることはお前にもできるんだよ。全てはお前次第だ」
「………」
「立ち上がれ。でなきゃ俺は…ひいてお前はいつまでも小さいままだ。前進しなくちゃ始まらないんだ。それでも不安なら一度後ろを向けよ。俺は、いつだってそこにいる」
「……そうだね。全ては僕次第なんだ…」
「たまに落ち込んだって誰も何も責めやしねーよ。だが、ずっとそのままじゃできることもできないんだぜ?」
「うん…思い出したよ。僕にはまだやることがあるんだ」
「1人でいたくなったらまた来な。ここにいるのはお前1人だが、独りぼっちじゃない」
「……ありがとう。もう起きるよ」
「そうしとけ。精々気張れよ」
「それじゃ」
「ああ。達者でな」
:08/11/03 19:23 :P903i :LUmIhgZI
#237 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:25 :P903i :LUmIhgZI
#238 [No.009◆vzApYZDoz6]
白い雲のはるか上、おとぎ話でよく見る空に浮かぶお城の庭に、2人はいた。
肩を並べて庭の端から足を投げ出して、今日も下界を眺めていた。
向かって右の気だるそうな男が悪態をつく。
「ひでぇよなー、神様にしてくれるっつーもんだからお願いしたら、その代償が『一生童貞』だもんな」
「ひどい…」
「神様つっても童貞卒業する権利くらいあるよな?」
「あると思う…」
「待てよ、神様なんだから何でもできるだろ? 女の子を作ればいいじゃん」
「試したけど無理だった…」
「試したのかよ…まぁでも、地上の女の子を拐えば問題ないよな?」
「拐ったけど無理だった…」
「拐ったのかよ…つうか何で神様を童貞にできるの? この話、誰に持ちかけられたんだっけ?」
「知らない…」
「あれ? あれは確か俺が女子更衣室に行こうとしたときに…あれ?」
「デジャヴ…」
2人は今日も童貞。
明日も明後日もその次も、2人はずっと童貞だ。
:08/11/03 19:26 :P903i :LUmIhgZI
#239 [◆vzApYZDoz6]
>>238『the・童貞』
童貞はどこまで行っても童貞でした。
:08/11/03 19:27 :P903i :LUmIhgZI
#240 [No.010◆vzApYZDoz6]
日射しが強い。
見渡す限りの砂漠。渇いた砂粒が吹き荒ぶ中、幾重にもうねる砂丘の中腹に彼女はいた。
焼き付くように照りつける太陽の光を背に受けて、彼女はうずくまっている。
やがて小さなため息をつき、目の前にある中身のない宝箱の蓋を静かに閉じた。
「これもハズレかぁ……」
手にしていた巻き紙を広げ、目を細めて繁々とそれを眺めた。
1人の男が残した置き手紙。
祖国の英雄であり、実の父親でもあるその男が彼女の前から姿を消したのは、およそ2年前。
早朝、彼女が男を起こすために向かった時には、すでにもぬけの殻と化していた部屋。
その中央に置かれた羊皮紙には、ある大陸の地図に加えて男の筆跡で一文が記されていた。
『近く蛻と成るその日までここにいる。願わくば捜し当てよ』
当時は祖国から捜索隊が編成されもしたが、消えた目的すら不明なために暫くして捜索は打ち切られた。
だが彼女は捜し続けた。
『蛻』とは死者の事。つまりそれは、男の死期が近い事を示唆する手紙だった。
彼女は手紙が自分宛であると思っていた。
俗世を嫌った父親の最初で最後の我儘に、自分を付き合わせたのだろう、と。
「……次は何処だっけ」
物思いに耽る思考を振り払い、紙を丸めて立ち上がる。
コンパスを取り出して目指す指針を確認した。
次は、北だ。
「絶対に見つけてやるんだから」
果てなく続く砂漠の道を、彼女は1歩踏み出した。
:08/11/03 19:28 :P903i :LUmIhgZI
#241 [◆vzApYZDoz6]
>>240『父を求めて三千里』
これは作者の中で設定が浮かびまくって、泣く泣くSSSにしました
なんか親父の手紙の暗号を考えたりしたなー
:08/11/03 19:30 :P903i :LUmIhgZI
#242 [No.011◆vzApYZDoz6]
先日、中学の同窓会があった。
僕は出席したけど、同じクラスのサラは諸事情で行けなかった。
「また机に座って…胸見えてるぞ」
「いいじゃねーか。触りたきゃ触ってもいいんだぜ?」
「馬鹿。…ほら、写真。みんなサラに会いたがってたよ」
「おおー、みんな元気そうだな…誰だこれ? え、岸田? すごい変わりようだな…やっぱ女は変わるもんだなぁ」
「あとは、水嶋と黒崎が付き合ってるんだってさ」
「そういや卒業前に告ってたなアイツ! そうか、うまくやってんだなぁ…」
「それで、今度サラんちに遊びに行きたいって言ってたんだけど…」
「あー…まぁ無理だな。ばーちゃんの事もあるし」
「様子は? どうなんだい?」
「あいっかわらず。俺が誰なのかもわかってねぇよ」
「……良くなるといいね。そしたら今度はサラも……」
「いや、いいんだ。良くならない病気だしな。
……俺さ、働くまでばーちゃんに恩返しなんてできやしねーとか思ってて、早く大人になりたいとか思ってたじゃん?
でも今さ、高校生のままで恩返しできてるわけじゃん? 超ラッキーじゃね?」
その言葉が強がりなのは痛い程に判っていて、僕は何も答えられなかった。
いくらか本心が混ざっていたとしても、掛ける言葉が見つからなかっただろう。
僕はこの粗野で乱暴で愛に溢れる口の悪い少女を、今のクラスメイトと同じように嫌うなど、考えられなかった。
いつまでも一緒にいたいと、そう強く願った。
:08/11/03 19:31 :P903i :LUmIhgZI
#243 [◆vzApYZDoz6]
>>243『クラスメート』
仲良くなるには、何だかんだで時間がいる
高校の友達だって、最初はそういうもんだと思う
:08/11/03 19:33 :P903i :LUmIhgZI
#244 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:34 :P903i :LUmIhgZI
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