【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#284 [No.027、036(3/4)◆vzApYZDoz6]
「やっぱりアレね、女よ女。彼女作っちゃいなさい」
「いいよ、彼女なんて。めんどくさいし」
「いい若者が何言ってるの。あなた黙ってればそれなりにカッコいいんだから、彼女ぐらいすぐできるわよ」
「どういう意味だよ…」
「そのままよ。あなたのお守りも楽じゃないんだから」
「…そういう事ね」
コーヒーを一気に飲み干し、カップを置く。
少しだけ口に苦味が残っていた。
彼女ができたところで、俺の気分は晴れないと思う。
曇りの原因は分からないけど、そんな気がする。
「ご馳走さま」
「おかわりはいい?」
「うん」
俺はまた天井を仰いで、目を閉じた。
やっぱり、ここが一番落ち着く。
いつもボーッとしてるか先生と世間話をしてるだけだけれど、それだけで気分が良くなった。
ふと目を開けると、先生がかなり間近で俺を覗きこんでいた。
:08/11/03 20:31 :P903i :LUmIhgZI
#285 [No.027、036(4/4)◆vzApYZDoz6]
「…顔が近いよ、顔が」
「寝られでもしたら困るからね。ドキドキした?」
ふふっ、と笑いながら、カップとお盆を片付けに再び給湯室に向かっていった。
それを目で追っていると壁の時計が視界に入った。
すでに午後5時半を回っている。
俺は少ない荷物を持って立ち上がる。
ちょうど給湯室から先生が出てきた。
「んじゃ、帰るわ」
「うん、おつかれさま。気をつけてね」
そのまま踵を返し、ドアに向かう。
ドアノブに手をかけたところで、また呼び止められた。
「明日の放課後もちゃんと来なさいよ」
見ると、先生がひらひらと手を振っていた。
「……気が向いたらね」
帰り道、理科室の方に目をやると、俺が座っていた回転椅子に先生が座っているのが見えた。
たぶん、明日の放課後も俺はあの椅子に座っているのだろう。
俺は少しだけ笑って、自転車を漕ぎだした。
:08/11/03 20:32 :P903i :LUmIhgZI
#286 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:35 :P903i :LUmIhgZI
#287 [No.028◆vzApYZDoz6]
現代とはまた異なる世界。そこには、半獣と呼ばれる人達が暮らしていました。
ライオンの半獣ライとウサギの半獣ビイは仲良しです。
「ね、ライ。肩車して」
「肩車好きだな、ビイは。ほら」
「わぁ、高い高い!」
無邪気に喜ぶビイを、ライは微笑ましく眺めています。
そこへ、どこからか小鳥がやってきました。
鳥たちは楽しげに囀り、ビイの回りを飛び回ります。
「やっぱりライに肩車してもらうと楽しいね」
「そうか。それならいつでもしてあげるよ」
「やったぁ!」
ビイは喜び、鳥たちと一緒に口ずさみました。
ライは嬉しそうにそれを眺めていました。
:08/11/03 20:37 :P903i :LUmIhgZI
#288 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:39 :P903i :LUmIhgZI
#289 [No.029◆vzApYZDoz6]
(うおー! 待ちに待った初デート! どうしよう何喋っていいか分からないぞ…何の話題がいいんだろう? 趣味とか? いやそれじゃありきたりすぎるよな…いや、こうしてる間にも時間は過ぎていくんだ、何としても彼女が飽きないようにしなければ! 何を喋れば…いや、ここはひとまず行動だな…よし!)
(キャー! まさか彼から誘ってもらえるなんて…どうしよう緊張して何すればいいのか分からない…うわっ、いつの間にか変な歩き方してた! 恥ずかしー…彼は見てないっぽい、かな…どうしよう何か変な間ができちゃった、あたしのせい? あたしのせいよね? 謝った方がいいのかな、いやでもいきなり謝るのも何か変だし、でも何か変な空気だし、せっかく誘ってくれたのに…うん、とりあえず謝ってみよう…よし!)
「「…あのっ!」」
「…え? あ、いや…どうしたの?」
「ううんあたしは別に…あなたこそ… ……?」
「? …あっ、雪だ…」
「………ふふっ」
「………あははは」
「…綺麗ねー…」
「そうだね」
「…あの、今日は誘ってくれてありがとう」
「いや…うん。…じゃあ、行こっか」
「……うん!」
完…?
:08/11/03 20:39 :P903i :LUmIhgZI
#290 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:41 :P903i :LUmIhgZI
#291 [No.030◆vzApYZDoz6]
サンタクロース。
クリスマスの前夜に、子供たちへ夢と笑顔を運んでくるお爺さん。
出身地はデンマーク領のグリーンランド。
現在、公認サンタクロースは129人いて、クリスマスイブの夜にトナカイが引くソリに乗って子供たちにプレゼントを配る。
恰幅のよい体型に真っ白でふくよかな口髭、赤と白のサンタ服に身を纏った、夢と希望の象徴だ。
「──っていうのがサンタクロースだと思ってたんだけどな、俺は」
「ハン、そんなもん人間が作り出した偶像じゃろが。実際は赤いブーツと白い口髭以外自由じゃわい」
「口が悪いサンタだな…」
「知っとるか? サンタは良い子にはプレゼントを配るが、悪い子には豚の内臓を配るんじゃよ」
「やめてくれ、気分が悪くなる」
12月24日深夜、イギリスはマンチェスター郊外の小さな酒屋、その裏手。
俺は『本物の』サンタクロースに弟子入りした。
その修行として、今からヨーロッパ地区の子供たちにプレゼントを配るところだ。
:08/11/03 20:42 :P903i :LUmIhgZI
#292 [No.030(2/3)◆vzApYZDoz6]
「0時ちょうどから始めて、5時までには終わらせなきゃいかん。チンタラしとる暇はないぞ」
小さな酒樽の上であぐらをかき、三つ編みの白い口髭をいじっているこのジジイが、本物のサンタクロースらしい。
「移動手段はこのバイクじゃ。ワシの力で排気音は聞こえんし、姿も見えないようにしておる。空も飛べるわい」
「リアリティーがあるのかないのかハッキリしろよ」
「空飛ぶバイクもファンタスティックじゃろ?」
「ファンタスティックの使い方間違えてるだろ…」
気にしたら負けじゃ、とジジイは高らかに笑った。
「今年はヨーロッパをお前さんに任せる。ヨーロッパと言っても、地中海周辺の国も入るから結構広い。回り方を確認するぞい」
ジジイはそう言って、懐から地図を取り出した。
ヨーロッパとその周辺の世界地図だ。
ジジイは言葉に合わせて地図をペンでなぞりながら説明した。
「まずはロンドン経由でフランス北部を迂回し、ベルギーじゃ。
そこからドイツとその周辺を時計回りに回ってスイスからフランス南部へ、今度は地中海沿岸の国を左回りじゃ。ポルトガルを忘れるなよ。
トルコまで来たら黒海を左回りでギリシャまで向かい、海を渡ってイタリアへ。
イタリアを北に抜けたらあとは内陸じゃ。回り方は自由じゃからな。
終わったらモスクワに入って、フィンランドからノルウェーまで経由、そこからアイスランドへ飛んで、最後にアイルランドとイギリス北部を回っておしまいじゃ。
分かったか?」
:08/11/03 20:43 :P903i :LUmIhgZI
#293 [No.030(3/3)◆vzApYZDoz6]
「ちゃんと覚えてるよ」
「ならいい。さぁ、そろそろ0時じゃ、バイクに乗れ」
ジジイが地図をしまいながら、傍らにあるバイクのサドルをポンポンと叩いた。
俺はプレゼントの入った袋を担ぎ上げ、促されるままにバイクに乗り、エンジンをかける。
エンジンはかかったが、驚いた事に排気音はしない。ジジイが言ってたやつだろう。
たぶん、姿も見えていないはずだ。空の飛び方は分からないが何とかなるだろう。
「ワシは他を回らんといかんからついていかんぞ。まぁせいぜい頑張れや」
腕時計で時間を確認し、秒読みを開始する。
23時59分54秒。…5、4、3、2、1──
「──じゃあ、行ってくる!」
「失敗するんじゃないぞ」
0と同時に地面を蹴り、スロットルを回す。
ほとんど間もなく、車輪が地面から離れて車体が浮き上がった。
続いて急激な加速上昇。
こちらを見上げて手を振るジジイに続き、眼下に広がる郊外の街も、みるみる小さくなっていく。
「最初はロンドン経由でフランス北部、だったな」
頭の中で地図を確認し、後ろに目をやる。
プレゼントが詰め込まれた袋についているワッペンが、ニヤニヤといやらしくこちらを見ていた。
これはジジイの趣味らしい。
「ヘマなんかするかよ。さて、と…行くか!」
高度が十分上がったところで、スロットルを回した。
今夜の俺は、サンタクロースだ。
俺が乗ったバイクは、イギリスの上空を静かに駆け抜けていった。
:08/11/03 20:44 :P903i :LUmIhgZI
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