【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#330 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:48 :P903i :LUmIhgZI
#331 [No.050◆vzApYZDoz6]
気が付けば辺りはすっかり暗くなっていた。
今もやまない雨が降りだしてからどれくらい経っただろうか。
既にびしょ濡れで、重くなった服のせいで動く気力も湧かない。
だが、それでも彼は待ち続けた。
彼女と交わした約束を、果たすために。
(急病なんだろうな。きっとそうだ)
だが彼は彼女に連絡はしなかった。
:08/11/03 21:48 :P903i :LUmIhgZI
#332 [No.050◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:49 :P903i :LUmIhgZI
#333 [No.051(1/2)◆vzApYZDoz6]
D−34:Δ
本日、未確認の惑星が発見された。
惑星の大気、地質、水質等を調査した結果、良好な環境を持つ惑星だったと推察される。
また惑星の7割ほどが水に覆われており、生命が現存する可能性は極めて高い。
惑星をTE01と名付け、慎重に調査を進めていく。
D−41:γ
TE01惑星の調査の結果、これまでに確認された生命体はおよそ300種類。
だが依然として新種の生命体は発見され続けており、この数字はほんの一部に過ぎないとみられている。
高知能生命体はまだ確認されていない。
しかし、多様な文明機器が発見されている事から、高度な知能を有した生命体が存在した可能性は高い。
何らかの原因により絶滅してしまったのかもしれない。
それにしても、文明が発展していたと思われる地域ほど、大気・地質・水質ともに汚染度が高いのが気になる。
:08/11/03 21:51 :P903i :LUmIhgZI
#334 [No.051(2/2)◆vzApYZDoz6]
L−08:Σ
高い知能を持つ生命個体が発見された。
我々には理解できなかったが、どうやら言葉を話せるようだ。
同行していた宇宙語学者によると、FK38星の言語とほぼ同じとの事。
我々はすぐさま同惑星に調査団の派遣を依頼した。10日後に到着する。
その間に簡単な質問をした。
その結果、やはり高知能生命体は絶滅してしまった事が判明した。
今回発見された個体はその生き残りらしい。
彼女(性別は雌性らしい。以降はこの個体をこう呼ぶ)によると、絶滅を免れた生き残りは他にもいるようだ。
とりあえず、これらの生命体にはTE−xと名付ける。
それにしても、TE−xと我々は外見が非常に酷似しているのが気になる。
もしかすると、我々と似たような進化をたどってきたのかもしれない。
L−18:Δ
調査団が到着した。
早速、生き残り達に質疑応答をしてもらった。
結果、絶滅の要因は、TE−x同士の大規模な争いによるものらしい。
彼女は、こう言ったそうだ。
『私達は、同じ種族で争うことでしか発展できない』と。
その結果絶滅する事になろうとは、皮肉なものである。
ところで、TE−xについて気になる事がある。
私は一度故郷に帰り、太古の文献から調べてみるつもりだ。
その事を明日、隊長に報告する。
(調査手記はここで終わっている)
:08/11/03 21:52 :P903i :LUmIhgZI
#335 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:54 :P903i :LUmIhgZI
#336 [No.052◆vzApYZDoz6]
彼女は自分の運命を呪った。
今日は彼との待ち合わせがあるのに、なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか。
窓から見える雨の勢いは依然として衰えず、やむ気配すら見せない。
この降り頻る雨の中、彼はまだあの場所で待っているのだ。
彼のためにも、何としてもこの状況を打破する必要があった。
周囲には武器になりそうな物もあるが、壁の向こうにいる者と自分とでは素早さが違いすぎる。
いや、恐怖に手がすくんで武器を握ることすらままならないだろう。
幸いは、向こうは恐らくまだ自分の存在に気付いていない事。
こちら側に出口は無いので、向こうが去っていくまで息を潜めて待つしかなかった。
(あーもう! なんでドアノブにゴキブリがいるのよ!)
殺虫剤を買っておけばよかったと後悔する彼女だった。
:08/11/03 21:55 :P903i :LUmIhgZI
#337 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:56 :P903i :LUmIhgZI
#338 [No.053◆vzApYZDoz6]
俺はどれくらいの時間、こうしていただろうか。
いつまで待っても手に抱える彼女が息を吹き返すことはない。それは分かっている。
既に敵も味方もいないこんな場所でじっとしていた所で何もない。それも分かっている。
だが、立ち上がる気力が湧いてこなかった。
立ち上がり、今も戦っている仲間の元へ一刻も早く駆けつけなければならない。
頭ではそれを理解していても、最愛の女の変わり果てた姿を目の当たりにした俺の体は、言うことを聞こうとしなかった。
流れ出る涙は止まらない。
いくら流した所で意味はないというのに。
見上げると、壮大なステンドグラスが目に入った。
天使を模した女性が、色とりどりの光を透過して輝いている。
その向こうからは、地鳴りの音が響いていた。
俺は背中に生える翼に手を掛けた。
竜族の血を半分引く俺には、翼が片方だけ生えている。
両方ともに翼がある他の竜族には劣るが、翔ぶことはできる。
その翼を、渾身の力を込めて引きちぎった。
激痛に思わず声を上げたが、歯を食いしばって耐えた。
彼女を寝かせ、俺の翼を捧げる。
ステンドグラスに映る女性のように、光ある場所へ飛び立つために。
翼を無くした苦痛によがろうとする体を押さえつけて立ち上がる。
戦いの音はまだ響いている。
翼が無くても、俺はまだ戦わなければならない。
最後に彼女を一瞥し、俺は仲間の元へ駆けていった。
:08/11/03 21:57 :P903i :LUmIhgZI
#339 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:59 :P903i :LUmIhgZI
#340 [No.054◆vzApYZDoz6]
田園に囲まれた長閑かな田舎町。
陽の傾いた散歩道を、彼は歩いていた。
今までに歩いた距離は計り知れない。
だが彼が歩くのには意味も目的もなく、ただただ土地を渡るのみ。
終着点はない。
時には道端の草を眺めたり、時には野良猫と遊んで引っ掛かれたり、時には街の人と世間話を交わしたり。
流浪の旅人ではあったが、旅をする目的は特にない。
しかし楽しければいいものと、彼はそう思っていた。
今もまた、摘み取った花の蜜に誘われた蝶々を、花に止まらせまいと遊んでいる。
彼は明日も明後日も、歩き続ける。
:08/11/03 21:59 :P903i :LUmIhgZI
#341 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:01 :P903i :LUmIhgZI
#342 [No.055、057◆vzApYZDoz6]
彼が持つサブバッグは、未知の能力が詰まっている。
物を小さくしたり大きくしたり、違う場所へ瞬間移動したり。
天気を操るのも思いのまま。
彼は青空が好きで、雨が降るといつも青空に変えてしまった。
今日も、ほら。
サブバッグから何かを取り出して、それを空に向ける。
すると、空は爽やかな青空へ姿を変えた。
でも彼の表情は浮かばれない。どうやら悩みがあるらしい。
彼は小さく呟いた。
「どこに行ったのかなぁ、のび太くん…」
:08/11/03 22:01 :P903i :LUmIhgZI
#343 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:02 :P903i :LUmIhgZI
#344 [No.056◆vzApYZDoz6]
「君、俺はとうとうやったぞ!」
「あら、どうしたんですか博士?」
「見ろ! この光輝く左手を!」
「それは…! とうとう凝を使えるようになったのですね!」
「ああ。よし、早速水見式だ!」
「水見式…ですか? 博士の系統は判明しているのに一体なぜ?」
「『念のため』だよ!」
「……あっ、そう」
「………冗談だ。すまん」
:08/11/03 22:03 :P903i :LUmIhgZI
#345 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:04 :P903i :LUmIhgZI
#346 [◆vzApYZDoz6]
>>219-345『SSS外伝・コラボ企画だ!怒濤の超短レス編57連発inラノベ祭り』
投下終了です
時間かけすぎてすまんw
ウラル貼ってなかったり失敗したりしてるけど、後程まとめスレにまとめるときに訂正します
つうか絵師の皆様、中途半端すぎてもうごめんなさいとしか…
イラスト提供&企画参加ありがとうです
次の方ドゾー
:08/11/03 22:09 :P903i :LUmIhgZI
#347 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
空き時間を使って書き上げたので投下します
使うイラストはNo.55
タイトルは『青空』です
:08/11/03 23:54 :SH905i :☆☆☆
#348 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「今日の空は百点っ!」
私は早朝の冷たい空気で肺を満たしつつ、空を仰いだ。
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/130私はこの空が好きだ。
曇り空でも快晴でもない、この空が。
透き通るような青さの中に水でぼかしたように白く霞む朝日の色。
絶妙な青空と雲の比率。
私の中ではなかなか巡り会うことの出来ない、文句なしで百点満点の澄み切った空。
:08/11/03 23:55 :SH905i :☆☆☆
#349 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「今日は何だか良いことがありそうな気がするなぁ」
鼻歌などを鳴らしながら上機嫌な私は、たぶん周りから見たら「良いことがあったのかな」と思わせるほどの笑顔に違いない。
いや、もしかしたら本当に良いことがあったのかもしれない。
この空に出会ったこと自体が幸福なのではないか?
だとしたら私は幸せ者に違いない。
依然として鼻歌混じりに軽い足取りのまま歩く私の遥か前方に、一人の男性の姿が映る。
:08/11/03 23:56 :SH905i :☆☆☆
#350 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「あっ!もしかしてあの後ろ姿は…うん、先輩だ!」
愛しい片想いの相手を見つけ、私は駆け出す。
不思議と、やはり足は軽くて、高揚した気分からかスキップになりそうなほどの感覚に包まれる。
空が運んできた幸福だろうか。
先輩の後ろ姿が大きくなっていく。
私は躊躇うことなく先輩の肩を叩いた。
:08/11/03 23:57 :SH905i :☆☆☆
#351 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
元気よく挨拶をすると、驚いたようにこちらを振り向く大好きな顔。
途端に輝くような笑顔に変わり、私の気分をより一層高揚させた。
恐らく先輩には訳がわからないだろうが、私は何の前触れもなく突然『青空』を語り始める。
「青空と雲の比率がポイントなんですっ!」
私の元気な声が早朝の冷たい空気に溶けていった。
…何か、良いことがあったような気がする。
そう、
私はこの空が好きだ。
:08/11/03 23:59 :SH905i :☆☆☆
#352 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
>>347-351イラストNo.55
『青空』です
訳のわからない話でごめんなさい!
次の方どうぞっ
:08/11/04 00:00 :SH905i :☆☆☆
#353 [向日葵]
Y005のイラストを使わせて頂きます。
タイトル「時間のぬくもり」
:08/11/04 00:02 :SO906i :1uZDS5G2
#354 [向日葵]
:08/11/04 00:03 :SO906i :1uZDS5G2
#355 [向日葵]
ねぇ、ほんの少しでいいの。
思い出して笑ってくれれば、それだけで嬉しいわ……。
―――――――――…………
「こんの……クソ親父ぃーっ!!」
どうして!?
私にその疑問がつきまとった。
私はすぐそばにあったクッションを親父に投げつける。
親父はそんなもの痛くもかゆくもないという風に大あくびをする。そんなだから、私の憤りの炎は大きくなる。
「今日がなんの日か忘れたってどういうことよ!」
「あのなぁサキ、人っていうのはどんどん老いぼれていくんだよ。それに比例して物忘れも激しくなる。オーケー?」
:08/11/04 00:04 :SO906i :1uZDS5G2
#356 [向日葵]
ぼりぼりと散髪に行かず伸ばしっぱなしの髪の毛をかき回す。
今日は珍しく親父の仕事が休みだし、丁度いいと思った私が馬鹿だった。
とどめとばかりに、持っていた学校鞄を親父のスネめがけて当ててやる。
これは効いたのか、親父はその場に声にならない悲鳴を上げてうずくまる。
「いってきますっ!!」
力任せに玄関の戸を閉めて、アパート階段をかけ降りる。
私のお母さんは、1年前に亡くなった。
もともと心臓が悪かったお母さんだけど、ニコニコ笑っていて大好きだった。
そんなお母さんが亡くなる前に言ったお願いがある。
:08/11/04 00:04 :SO906i :1uZDS5G2
#357 [向日葵]
それを……あの馬鹿クソ親父はぁーっ!!
―――――――――…………
学校が終わって、夕食の材料を入れたスーパーの袋を持った私は帰宅した。
居間から入ってくる風に気づいて覗いてみれば、ベランダに続く戸の戸口に親父が夕日を眺めていた。
「……ただいま」
「んー……」
私に背を向けたまま、親父はそう言った。
親父は確かに面倒くさがりだし、のんびり屋だし、根性曲がってる部分だってある。
:08/11/04 00:06 :SO906i :1uZDS5G2
#358 [向日葵]
それでも、お母さんが大好きだった事は知ってる。
なのに、そんなお母さんの最期の言葉すら、たった1年という短い間に忘れてしまえるのだろうか。
それが分からないから、私は憤りと共に不安にも似た気持ちを胸中につのらせる。
「親父の……馬鹿……」
気づけば涙で頬を濡らしていた。
「どうして……?本当に分からないの?お母さんの言葉は、親父にとってそんな簡単なものだったの!?」
親父は黙っている。
その背中からは、今どんな気持ちでいるのかは分からなかった。
「……分かった。もういい」
:08/11/04 00:06 :SO906i :1uZDS5G2
#359 [向日葵]
私は自分の部屋に行こうとした。
「忘れるわけないだろう」
私は足を止める。
目を見開いて親父を見るが、さっきと体勢は変わっていなかった。
ただ、さっき見た背中よりも悲しそうに感じた。
そして私にはなった言葉も、微かに震えている気がした。
「思い出したら……失ってしまった事に耐えれないと思った。当たり前だろ……、生涯愛すると誓った相手なんだからよ……」
私は知っていた……。
お母さんが亡くなった日、泣きじゃくる私を慰める為、自分は泣くまいと頑張っていた親父を。
:08/11/04 00:07 :SO906i :1uZDS5G2
#360 [向日葵]
通夜の後、皆が寝静まってしまった頃、もう冷たいお母さんの手を握り締めて、「ありがとう」と涙ながらに呟いていたことを。
でも、お母さんは言った。
「命日には、お母さんとの思い出を笑って話してねって約束したんだからさ、悲しむんじゃなくわらおうよ。そしたらさ、お母さんだって、きっと……」
「……そうだな」
亡くなった人の思い出は、年月と共に悲しくも薄れていく。
だからせめて1年に1度は思い出そう。
大好きな人と過ごした、愛しい時間達を……。
―fin―
:08/11/04 00:08 :SO906i :1uZDS5G2
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