【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#219 [No.001◆vzApYZDoz6]
「君には世界を救う指名がある」
数年前のある日突然、学校帰りの駅のホームでそう言われた。
あぁ、そういやそろそろ総選挙だったか。こういう勧誘は迷惑極まりないな。
なんて思いながら無視して歩く俺の前に、話しかけてきた男はご丁寧に回り込んだ。
「君にしかできないことなんだ。拒否権は存在しない」
そう言って手にしていた小包を、半ば無理矢理押しつけてきた。
そのまま踵を返しながら、俺を睨むように一瞥した。
「それが世界を救う鍵となる」
山程ある聞きたい事を口にする前に、男は雑踏の中に消えた。
仕方なく家に帰って小包を開けると、『鍵』とやらが入っていた。
お玉とエプロンと鍋つかみ。意味が分からない。
だから、とりあえず味噌汁を作ってみた。
美味かった。
そして今、俺は世界の恵まれない子供達に味噌汁を配ってまわっている。
:08/11/03 19:04 :P903i :LUmIhgZI
#220 [◆vzApYZDoz6]
>>219『救済者』
味噌汁で世界を救った男のお話。
この時期の層化は厄介
:08/11/03 19:06 :P903i :LUmIhgZI
#221 [No.002◆vzApYZDoz6]
閉めきった教室。
窓側の一番後ろの席が、彼の探偵事務所だった。
彼は依頼が来た時以外はいつも決まって、眼下に広がるグラウンドを腑抜けた顔で眺めていた。
人はそれを見れば頼りない印象を持つだろう。
だが一度依頼が来れば彼は豹変する。
冷静沈着に物事を見つめ、どんな難事件であろうとたちどころに解決してしまう名探偵となる。
彼の噂は方々に広がり、毎日依頼が絶えなかった。
そして今日も、難題を抱えた一人の少女が教室のドアを開ける。
「まだいたの? あなたも毎日よくやるわね。あたしもう帰るから、最後鍵かけてよね」
そう言って少女は手にしていた鍵を放り投げ、そのまま帰ってしまった。
ちなみにこの教室のドアは立て付けが悪く、鍵をかけづらい。
「これは難題だ」
独り言にツッコミを入れてくれる相方はいなかった。
:08/11/03 19:07 :P903i :LUmIhgZI
#222 [◆vzApYZDoz6]
>>221『高校生探偵の苦悩』
立て付け悪いとイライラするよね。
:08/11/03 19:08 :P903i :LUmIhgZI
#223 [No.003◆vzApYZDoz6]
ジンベエ の こうげき!
マシンガントーク!
「ちゃーっす! 俺ァ巷で流離のジンベエってぇ呼ばれてる現代に生きる武士(もののふ)よ! ん? このデコの傷? こりゃ昔だな、市政を苦しめる流れモンを懲らしめた時に一発食らっちまってな! ま、最終的には俺が勝ったんだけどよ! まぁいわゆる男の勲章ってやつよ! え? なんで他に傷がないかって? いやさ、戦った連中はたくさんいるけどよ、どいつもこいつも弱いのなんのって! 打ち出す拳にハエが止まるんじゃねーかってぐらい遅い遅い! いや本当にさぁ…ん? 便所で転んだんじゃねーか、ってあるわきゃねーだろんなこと! …色白なのは体質だよ体質! ほら舞い散る落葉に映えるだろ? 俺って秋生まれだからさ、そこら辺は意識しとかねーと! カッコいいだろ? そうそう、近くにいい場所知ってるんだけどよければ行かない? 俺の手にかかれば3分で絶頂n」
「行くかボケ」
こうげきは しっぱいに おわった!
:08/11/03 19:08 :P903i :LUmIhgZI
#224 [◆vzApYZDoz6]
>>223『ポケモン的なシュール』
ジンベエ は ハートブレイク に なった!
:08/11/03 19:09 :P903i :LUmIhgZI
#225 [No.004◆vzApYZDoz6]
暑い。冬なのに暑い。
とにもかくにも暑い。
ふと室温計を見ると、35℃を示していた。暑い。
隣の湿度計は80%の位置に針が振れている。蒸し暑い。
優勝者には海外旅行が貰えるらしいけど、これ以上絶えられそうにない。暑い。
奥からデブの男がお盆を持って現れた。暑苦しい。ついでに見苦しい。
お盆の上に乗っているのは湿度80%の環境でも湯気が出ちゃうくらい熱々のうどん。あれ絶対熱いよ。舌火傷するよ。
とりあえずふうふうしてみるが、果たして意味があるのだろうか。なんにせよ熱い。
とりあえず啜ってみた。案の定熱い。
もうやめよう。バカらしい。体調も悪くなってきた。大体暑い。当然だけど暑い。
「暑いですねぇ」
そりゃそうでしょ、誰よそんな素っ頓狂なこと口に出して言ってんのは…ん?
「この大会にはダイエット目的で参加したの。あなたも?」
何でだっけ?
なんか海外旅行目当てで軽いノリで来たような気がする。
「まぁ、お互い頑張りましょう」
うーん。
まぁこの際ダイエットもアリか。
とかって考えたら心なしか気分が優れた気がする。暑いけど。
:08/11/03 19:10 :P903i :LUmIhgZI
#226 [◆vzApYZDoz6]
>>225『我慢大会にて』
我慢大会に参加して、友達みつけました
:08/11/03 19:11 :P903i :LUmIhgZI
#227 [No.005◆vzApYZDoz6]
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「腕、組んでもいい?」
「ああ、いいぞ」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「進路決まったよ」
「そうか。勉強頑張れよ」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「こないだ彼氏できたんだ」
「そうか。今度きっちり紹介しろよ」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「だし巻き玉子、ちゃんと作れるようになったよ」
「そうか。今度作ってくれよな」
:08/11/03 19:13 :P903i :LUmIhgZI
#228 [No.005◆vzApYZDoz6]
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「こないだ、おばあちゃんに『お母さんに似てきた』って言われたんだ」
「そうか。それならお前は美人になるぞ」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「本当はね、ちょっと寂しかったんだ」
「そうか。俺は悲しかったけど寂しくはなかったぞ。お前がいるからな」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「今日はこのまま一緒にいてもいい?」
「ああ、いいぞ」
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「……ありがと」
:08/11/03 19:13 :P903i :LUmIhgZI
#229 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:15 :P903i :LUmIhgZI
#230 [No.006◆vzApYZDoz6]
「なあ」
「なぁにー?」
「水銀燈って何だ?」
「えっとぉ、ローゼンメイデンっていうアニメの登場人物なの。小馬鹿にしたような猫なで声で喋る子(Wiki情報)なんだって」
「それ+甘い感じがお前か…そんな感じで合ってんの?」
「そんなの分からないよ。私は、あなたに動かされているもの」
「いや、だって甘い感じの女なんて書いた事ねーしローゼンメイデンなんて見た事ねーし…まぁ大食いでもしてりゃ──」
「あっ、このシュウマイあと10人分おねがいしますぅ」
「あいよ! お嬢ちゃんよく食べるねぇ!」
「だぁって、おいしんだもん、このシュウマイ。生きててよかったぁ」
「あら嬉しいこと言うねぇ!ほら10人前だよ、たんとお食べ!」
「やったぁ♪ いただきまーすっ」
「──って、もう大食いやってたね。しかしカオスだなこりゃ、地の文が無いから誰が喋ってるのか分かりゃしねぇ」
「あれぇ?食べないの?」
「見てるだけでお腹一杯になりました」
「かわいそかわいそなのです☆」
「それはまた別のキャラだろ!」
:08/11/03 19:16 :P903i :LUmIhgZI
#231 [◆vzApYZDoz6]
>>230『中の人と対話、その1』
要するに作者が力量不足でノータリンなだけです。ごめんなさい。
:08/11/03 19:17 :P903i :LUmIhgZI
#232 [No.007◆vzApYZDoz6]
体が沈む。
さっきから何度も何度も手を掻き回しもがいているが、浮き上がる気がしない。
確実に沈んでいる。
ここは何処だろうか。
遥か頭上で、小さく弱々しい光源が靄を湛えて揺れている。
体は無重力の最中にいるかのように浮わついていた。
見えない圧力が微かに全身の肌に伝わる。感触は酷く冷たく、水のそれに近い。
だが息苦しさはなかった。むしろ気持ちよくすらある。
脳は頭上の光を追えとしきりに叫んでいるが、体が底へ底へと導かれているようだった。
次第に脳も叫び疲れ、沈んでいく体に身を預けていく。
目がまどろみ、瞼が重くなり、意識が薄れていく。
「ねぇ」
透き通った女性の声。
閉じかけていた瞼を開くと、沈んでいく先の底に女が立っていた。
白装束を身にまとい、後ろ手に巨大な刀のようなものを持っており、異様な雰囲気を感じる。
何より肌が極端に白い。白すぎて青緑色に見えるくらい白い。
長い前髪で顔はよく分からないが、薄く微笑む口元も色がなく、生気が感じられない女だ。
:08/11/03 19:18 :P903i :LUmIhgZI
#233 [No.007◆vzApYZDoz6]
「抗わなくていいの?」
数メートル先に見えている底から俺を見上げ、無感情に聞いてきた。
「ここは意識の大海。底まで沈むことは、意識の底辺に辿り着いた事…つまり『死』を意味するの」
ふふふ、と不気味に笑いながら、女は後ろ手の刀を担ぎ面にふりかぶる。
「そして私の役目は、底辺に辿り着いた人間の命を刈り取る事」
女との距離はすでに1メートルもない。
切迫する死を避けようにも、すでに俺の体が脳の拘束を振りほどいていた。
女は足を広げ、柄を握る手を静かに引き絞る。
俺の体はその所作に導かれるままに、女の正面に向かっていった。
「さようなら。罪深き人間」
意識の海底に足がつく。
同時に、女が俺の体を肩から袈裟懸けに斬り裂いた。
:08/11/03 19:19 :P903i :LUmIhgZI
#234 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:21 :P903i :LUmIhgZI
#235 [No.008(1/2)◆vzApYZDoz6]
「よぉ」
「……誰? どこにいるの?」
「お前の後ろだ」
「後ろ…? 誰もいないじゃないか」
「当たり前だろ。俺は、お前の『影』だ」
「影…?」
「ここはお前の精神世界だ。お前は青く、俺は真っ黒で長い。お前は今、心に深い闇を抱えている。だがそれは不変的なものではなく、変えようと思えば変えられるものだ」
「……つまりは僕次第、か……」
「言ってみろよ。俺にはお前が何を抱えているかまでは判らない」
:08/11/03 19:22 :P903i :LUmIhgZI
#236 [No.008(2/2)◆vzApYZDoz6]
「……話したところで…君に何かできるのかい? この寂しさを救えるのかい?」
「甘ったれるなよ。さっきも言っただろう、変わるかどうかは他ならぬお前次第だ」
「判っているさ。でも、僕は君ほど強くなれそうにない」
「んなこたぁねーよ。俺はお前の影だぞ? 俺は、お前だ。俺にできることはお前にもできるんだよ。全てはお前次第だ」
「………」
「立ち上がれ。でなきゃ俺は…ひいてお前はいつまでも小さいままだ。前進しなくちゃ始まらないんだ。それでも不安なら一度後ろを向けよ。俺は、いつだってそこにいる」
「……そうだね。全ては僕次第なんだ…」
「たまに落ち込んだって誰も何も責めやしねーよ。だが、ずっとそのままじゃできることもできないんだぜ?」
「うん…思い出したよ。僕にはまだやることがあるんだ」
「1人でいたくなったらまた来な。ここにいるのはお前1人だが、独りぼっちじゃない」
「……ありがとう。もう起きるよ」
「そうしとけ。精々気張れよ」
「それじゃ」
「ああ。達者でな」
:08/11/03 19:23 :P903i :LUmIhgZI
#237 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:25 :P903i :LUmIhgZI
#238 [No.009◆vzApYZDoz6]
白い雲のはるか上、おとぎ話でよく見る空に浮かぶお城の庭に、2人はいた。
肩を並べて庭の端から足を投げ出して、今日も下界を眺めていた。
向かって右の気だるそうな男が悪態をつく。
「ひでぇよなー、神様にしてくれるっつーもんだからお願いしたら、その代償が『一生童貞』だもんな」
「ひどい…」
「神様つっても童貞卒業する権利くらいあるよな?」
「あると思う…」
「待てよ、神様なんだから何でもできるだろ? 女の子を作ればいいじゃん」
「試したけど無理だった…」
「試したのかよ…まぁでも、地上の女の子を拐えば問題ないよな?」
「拐ったけど無理だった…」
「拐ったのかよ…つうか何で神様を童貞にできるの? この話、誰に持ちかけられたんだっけ?」
「知らない…」
「あれ? あれは確か俺が女子更衣室に行こうとしたときに…あれ?」
「デジャヴ…」
2人は今日も童貞。
明日も明後日もその次も、2人はずっと童貞だ。
:08/11/03 19:26 :P903i :LUmIhgZI
#239 [◆vzApYZDoz6]
>>238『the・童貞』
童貞はどこまで行っても童貞でした。
:08/11/03 19:27 :P903i :LUmIhgZI
#240 [No.010◆vzApYZDoz6]
日射しが強い。
見渡す限りの砂漠。渇いた砂粒が吹き荒ぶ中、幾重にもうねる砂丘の中腹に彼女はいた。
焼き付くように照りつける太陽の光を背に受けて、彼女はうずくまっている。
やがて小さなため息をつき、目の前にある中身のない宝箱の蓋を静かに閉じた。
「これもハズレかぁ……」
手にしていた巻き紙を広げ、目を細めて繁々とそれを眺めた。
1人の男が残した置き手紙。
祖国の英雄であり、実の父親でもあるその男が彼女の前から姿を消したのは、およそ2年前。
早朝、彼女が男を起こすために向かった時には、すでにもぬけの殻と化していた部屋。
その中央に置かれた羊皮紙には、ある大陸の地図に加えて男の筆跡で一文が記されていた。
『近く蛻と成るその日までここにいる。願わくば捜し当てよ』
当時は祖国から捜索隊が編成されもしたが、消えた目的すら不明なために暫くして捜索は打ち切られた。
だが彼女は捜し続けた。
『蛻』とは死者の事。つまりそれは、男の死期が近い事を示唆する手紙だった。
彼女は手紙が自分宛であると思っていた。
俗世を嫌った父親の最初で最後の我儘に、自分を付き合わせたのだろう、と。
「……次は何処だっけ」
物思いに耽る思考を振り払い、紙を丸めて立ち上がる。
コンパスを取り出して目指す指針を確認した。
次は、北だ。
「絶対に見つけてやるんだから」
果てなく続く砂漠の道を、彼女は1歩踏み出した。
:08/11/03 19:28 :P903i :LUmIhgZI
#241 [◆vzApYZDoz6]
>>240『父を求めて三千里』
これは作者の中で設定が浮かびまくって、泣く泣くSSSにしました
なんか親父の手紙の暗号を考えたりしたなー
:08/11/03 19:30 :P903i :LUmIhgZI
#242 [No.011◆vzApYZDoz6]
先日、中学の同窓会があった。
僕は出席したけど、同じクラスのサラは諸事情で行けなかった。
「また机に座って…胸見えてるぞ」
「いいじゃねーか。触りたきゃ触ってもいいんだぜ?」
「馬鹿。…ほら、写真。みんなサラに会いたがってたよ」
「おおー、みんな元気そうだな…誰だこれ? え、岸田? すごい変わりようだな…やっぱ女は変わるもんだなぁ」
「あとは、水嶋と黒崎が付き合ってるんだってさ」
「そういや卒業前に告ってたなアイツ! そうか、うまくやってんだなぁ…」
「それで、今度サラんちに遊びに行きたいって言ってたんだけど…」
「あー…まぁ無理だな。ばーちゃんの事もあるし」
「様子は? どうなんだい?」
「あいっかわらず。俺が誰なのかもわかってねぇよ」
「……良くなるといいね。そしたら今度はサラも……」
「いや、いいんだ。良くならない病気だしな。
……俺さ、働くまでばーちゃんに恩返しなんてできやしねーとか思ってて、早く大人になりたいとか思ってたじゃん?
でも今さ、高校生のままで恩返しできてるわけじゃん? 超ラッキーじゃね?」
その言葉が強がりなのは痛い程に判っていて、僕は何も答えられなかった。
いくらか本心が混ざっていたとしても、掛ける言葉が見つからなかっただろう。
僕はこの粗野で乱暴で愛に溢れる口の悪い少女を、今のクラスメイトと同じように嫌うなど、考えられなかった。
いつまでも一緒にいたいと、そう強く願った。
:08/11/03 19:31 :P903i :LUmIhgZI
#243 [◆vzApYZDoz6]
>>243『クラスメート』
仲良くなるには、何だかんだで時間がいる
高校の友達だって、最初はそういうもんだと思う
:08/11/03 19:33 :P903i :LUmIhgZI
#244 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:34 :P903i :LUmIhgZI
#245 [No.012◆vzApYZDoz6]
ξ゚听)ξ「あら、中の人じゃない。あんた傘もささずに何やってんのよ」
(;^ω^)「……おっ!? 僕なんでブーンになってるお!? ってなんか喋り言葉も変わってるお!」
ξ゚听)ξ「知らないわよ。にしても携帯でブーン小説は厳しいものがあるわねー、AAが行の半分埋めてるじゃない」
( ^ω^)「確かにせまっ苦しいお。『イラストがツンとブーンみたい』って言われたからやってみたけど、どうにも携帯には向いてないお…タグ使えば大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「一応知らない人のために説明すると、ブーン小説ってのは2chはニュー速VIP板で投下されてる小説よ。会話が多いのと、AAが会話の頭にくる以外は普通の小説と変わんないけど。まぁこんな感じだと思えばいいわよ」
( ^ω^)「3行で」
ξ゚听)ξ「VIPで投下
AAあり
あとは一緒
……なんか産業説明も端っこすぎてしまらないわね…っていうか産業するほど難しいこと言った?」
(;^ω^)「ところであまり2ch用語は使わない方が…」
ξ゚听)ξ「って、じゃあなんでこんなテイストなわけ?」
( ^ω^)「僕が投下したイラストだからやりたい放題だおwww読者の期待?知らねーおwww」
ξ#゚听)ξ ビキビキ
(;^ω^)サーセン
:08/11/03 19:35 :P903i :LUmIhgZI
#246 [◆vzApYZDoz6]
>>245『中の人と対話、その2』
『ツンとブーンっぽい』って言われたからやってみた。後悔はしていない。反省はしてる。
ブーン系は容量も食うなぁ…
:08/11/03 19:37 :P903i :LUmIhgZI
#247 [No.013◆vzApYZDoz6]
どれくらい時間が経ったか。
夜中の河川敷。真ん中に立っている木刀を持つ男の周囲には、少なくとも50人は倒れている。
「ちっ…いい加減諦めろよ!」
それでもなお、100人近い人間が男を囲っていた。
男への攻撃がないわけではないが、殆んど当たっていなかった。
当たっても致命傷にすらなっていない。
この抗争が終わるには、群がる人間がごめんなさいもうしませんと謝って帰るか、もしくは男に全員倒されるか、その2つしかなかった。
「俺は途中でやめる気はない。抜かれるわけにはいかないからな」
男は1人ではなかった。だが、戦えるのは男1人しかいなかった。
背後には、絶対に抜かれてはならない場所がある。
「俺は死なないぜ。いつか俺が俺を殺すまでな!」
体当たりしてきた相手の頭を木刀で叩き割り、男は再び前進した。
:08/11/03 19:37 :P903i :LUmIhgZI
#248 [◆vzApYZDoz6]
>>247『殺し屋さん』
人は大なり小なり護るものを持っています。
:08/11/03 19:39 :P903i :LUmIhgZI
#249 [No.014◆vzApYZDoz6]
「俺はエスプレッソください」
「じゃあ俺は牛乳で。冷たいヤツね」
「はいっ? …あ、かしこまりました、牛乳ですね」
「……おい中の人よ、やる気あんのか?」
「不細工な店員ならあんな注文はしないぜ俺は」
「じゃなくて中の人シリーズやりすぎだろ! まだ14なのに3回目ってさすがに多いぞ!」
「おk、把握したから時に落ち着け。ほら来たぞエスプレッソと牛乳」
「仕方ないな。…お、美味い」
「僕はコーヒー飲まないんですよ。嫌いじゃないんですけどね」
「いきなり敬語になるなよ。読者が困惑するぞ」
「いやどっちがどっちか分かりづらかったからさ。ところで俺には君がDir en grayの京くんにしか見えないんだが」
「また何て言えばいいのかわからんことを言うな…」
「まぁこれが言いたかっただけなんだけどね」
「絶対やる気ねーだろてめぇ!!」
:08/11/03 19:40 :P903i :LUmIhgZI
#250 [◆vzApYZDoz6]
>>249『中の人と対話、その3』
いや……似てない?
とりあえず反省はしてます。ごめんなさい。
:08/11/03 19:41 :P903i :LUmIhgZI
#251 [No.015◆vzApYZDoz6]
「泣いてるの?」
「えっ?」
「それとも笑ってるの?」
「……どうだろ。わかんない」
「そう。でも気にしてない」
「うん……ごめんね」
「どうして僕にあやまるの?」
「……わかんない」
「そう。でも大したことじゃない」
「うん……そうだね」
「泣き止んだね」
「えっ?」
「なんでもない」
:08/11/03 19:41 :P903i :LUmIhgZI
#252 [◆vzApYZDoz6]
>>251『私と涙』
なんか『僕と影』っぽくしようと思ったがネタが全部思い付かなかった。すまん。
:08/11/03 19:42 :P903i :LUmIhgZI
#253 [No.016◆vzApYZDoz6]
「さぁ始まりました恒例の中の人シリーズ! 今回で早くも4回目となったこのシリーズですが、今回のゲストの制服の女の子さん、どうですかお気持ちは?」
「『早くも』って分かってるなら自重したほうがいいんじゃ…」
「これがNo.016だから、ざっと考えて4回に1回。まだ大丈夫…だと思います多分」
「いや大丈夫じゃないと思うんですが…だって私の中の人であるMIさんのイラスト4つ使った内、2回も中の人シリーズってのはさすがに…」
「……正直に言うとネタが思い付かなかっただけなんです。後回しにしまくった結果なんです。ごめんなさい」
「……まぁ、がんばってください…」
:08/11/03 19:43 :P903i :LUmIhgZI
#254 [◆vzApYZDoz6]
>>253『中の人と対話、その4』
なんかもう何言っても言い訳にしかならないので何も言いません。ごめんなさい。
:08/11/03 19:44 :P903i :LUmIhgZI
#255 [No.017(1/2)◆vzApYZDoz6]
これは、とある女の人のお話。
美しい緑野の丘。
暖かい陽気をもたらす太陽の下では、たくさんの色鮮やかな花が咲き誇り、甘い香りに誘われた蝶々がひらひらと舞い遊んでいます。
そんな緑野の片隅で、彼女は1人で住んでいました。
彼女は花を摘んだり蝶々と戯れながら、たった1人で住んでいました。
彼女が1人、周囲の人間から離れるには、理由がありました。
美しく平和な世において、彼女は調和を乱してしまうからです。
彼女の手にかかると、すべては正常に動きませんでした。
水を汲もうと井戸車を回転させれば、それは土を掘りました。
辺りを照らそうと松明を握れば、たちまち火が燻りました。
会話に混ざろうと隣人たちの中に入れば、いつも隣人たちを困惑させました。
だから、彼女は1人でいなければなりませんでした。
それでも丘の住人たちは孤立した彼女を憐れみ、手を引いて調和の中に引き戻そうとします。
でも、それに従った結果はいつも同じでした。
いつしか彼女は、手を引かれる事を拒むようになりました。
そうしても『孤立した存在がある』という事実が丘の住人たちを苛み、調和を乱してしまいました。
彼女と世界の間には、越えがたい隔絶が横たわっていました。
そんな彼女には、双子の妹がいました。
:08/11/03 19:46 :P903i :LUmIhgZI
#256 [No.017(2/2)◆vzApYZDoz6]
世界に受容されない彼女に対し、妹は世界に寵愛されていました。
彼女は妹を介してでしか調和を手にすることができません。
土を掘った桶に妹が触れれば、土はたちまち水へと変わりました。
燻り煙が立つ松明を妹が握れば、みるみるうちに立派な火が灯りました。
妹が彼女の手を引いて隣人たちの中に入れば、そこには笑顔が溢れました。
情深く慈愛に満ちた人格の妹は、関わる全ての人々に幸福をもたらしました。
彼女も妹が側にいるとき、あるいは妹の呼び掛けに手を振るときなどは、気持ちが多く満たされていました。
いつしか彼女は、妹を欲し妹と共にありたいと強く望むようになりました。
それに連なり、彼女が妹の側にいる時間は長くなっていきました。
しかし、美しく平和な世において、彼女が正常者になることを、世界は拒みました。
世界が拒んだその瞬間、天に雷雲が立ち込めます。
雷鳴が轟き、彼女の側にいた妹は稲妻と共に雷に打たれました。
物言わぬ姿となった妹を見た他の住人たちは、とうとう耐えきれず、調和を乱す彼女を罵ります。
彼女は住人たちを拒みました。
住人たちの罵詈雑言に、耳を抑えて悲鳴を上げました。
その瞬間、再び雷鳴が轟き、雷が次々と住人たちを打ち付けていきました。
彼女は妹の亡骸を抱え、一晩中悲哀に暮れました。
いつの間にか眠ってしまった彼女が目を覚ますと、妹はおらず、さらには物言えず耳も聞こえなくなっていました。
代わりに調和を手に入れた事に彼女が気付くのは、彼女が永遠の孤独を認識する直後の事でした。
:08/11/03 19:47 :P903i :LUmIhgZI
#257 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:48 :P903i :LUmIhgZI
#258 [No.018◆vzApYZDoz6]
荒れ果てた大地で、男は限界に刻一刻と近づいていた。
敵は予想外に多い。だが、彼はそれでいいと思っていた。
でなければ自分がここにいる意味がない。
「でも…倒れる訳にはいかない…!」
殿軍とは厳しいものだ。
多勢を相手にしなければならず、決して帰還は許されない。
褒め称えるものがいたとしても、それを見るのは叶わない。
だが、それでもいいと思っていた。
少なくとも仲間を守るための覚悟は背負ってきた。
そしてそれは、彼だけではなかった。
「よう、ボロボロじゃねーか兄さん」
「!?」
:08/11/03 19:50 :P903i :LUmIhgZI
#259 [No.018◆vzApYZDoz6]
目の前に現れたのは、同じ覚悟を背負った者。
己の命と等しく大切な戦友だった。
「お前ら……何しに?」
「何しにってそりゃー、てめーを助けに来たに決まってんだろ」
「さてと。後は私たちがやるけど…どうする?」
「ま、無理はしねー方がいいんじゃねーの?」
「……ふん。これぐらい…どうってことないさ!」
体に力が湧いてくる。
背負ったものが、少しだけ軽くなった気がした。
「そんじゃー、いっちょ暴れてやりますか!」
「2人とも気をつけてね」
「ああ。…生きて帰って、酒でも飲もうぜ!」
頷きあい、3方に別れて敵の元へ駆け出す。
勝ちは見えない殿戦闘。それでも3人は戦った。
例え彼らの望みが叶わなくとも、同じ覚悟を背負っている仲間がいるから。
:08/11/03 19:50 :P903i :LUmIhgZI
#260 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:55 :P903i :LUmIhgZI
#261 [No.019◆vzApYZDoz6]
「うーん……」
「どうしたの女将?」
「僕はなんで女将をやってるんだろう、って思って」
「そりゃあ女顔だからでしょ?」
「いや僕男だよ?女将って女性がやるものじゃないのかなぁ…」
「まぁ先代の女将が病気で引退したはいいけど、代わりがいなかったもんねぇ。あなた次男だしいいんじゃない?」
「いや次男だからといって女将になる必要はない気がするんだけど…」
「気にしないの。さ、お仕事、お仕事っと」
「はぁ…もしかしてずっと女将続けなくちゃいけないのかなぁ…せめて声がもっと低ければ断る理由も──」
「すみません、予約してた鈴木です」
「──はいはい、ありがとうございます。鈴木様ですね、あちらのお部屋ですよ!ご案内致しますね〜」
「……何だかんだでやっぱりサマになってるじゃない。さ、お仕事、お仕事っと」
「……はぁ…僕、本当にこれでいいのかなぁ…」
:08/11/03 19:56 :P903i :LUmIhgZI
#262 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:59 :P903i :LUmIhgZI
#263 [No.020(1/2)◆vzApYZDoz6]
「125、126、127・8・9…130!」
先程から数えているのは、倒した敵の数だった。
倒しても倒しても湧いてくる敵を前に、途中から数を数えて今のでちょうど130人目。
実際はもっと倒しているはずだ。
近くの敵を粗方倒したところで、仲間と背中合わせになった。
「オメー何人やった?」
「さぁ…いちいち数えていない」
「なんだ、つまんねーの」
言いながら、向かってくる敵に銃口を向ける。131人目。
それにしても数が多い。2人合わせて300人以上は倒してる筈だが、一向に減る気配がない。
敵の銃弾はほとんど当たらないが、さすがに集中力は続かない。
こちらの銃は弾装無限のコスモガンだから、弾切れはありえない。
しかし敵は一個大隊なので、向こうのネタ切れもありえない。
敵が弾を撃ち尽くすまでに、こちらの集中力が切れて撃ち殺されることも否めない。
なんとかする必要がある。
:08/11/03 20:01 :P903i :LUmIhgZI
#264 [No.020(2/2)◆vzApYZDoz6]
「オメー何か考えろよ。このままじゃちょっとキツいぜ?」
「君が裸になればいいじゃないか。口調は男でも性別は女だしね」
「んなこと言ってるとオメーを先にブチ殺すぞ!!……チッ、湧いてくるんじゃねーよ!」
次から次へと襲いかかる敵を前に、軽口を叩く仲間を相手にする暇もない。
寄ってくる相手から順に撃ち落とす。135人目。
だが依然として数が減る気配はない。
こうやって確実に倒していくしか方法はないだろう。
135人目が地に臥したのを合図に、軽口な男も銃を構える。
「じゃ、そっちは頼んだよ。いつでも服を脱いでくれ」
「うるせー、大きなお世話だこのド変態が!」
それを口火に、群がる敵の中へ轟音とともに駆け出した。
:08/11/03 20:02 :P903i :LUmIhgZI
#265 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:04 :P903i :LUmIhgZI
#266 [No.021◆vzApYZDoz6]
日もどっぷり浸かった放課後の音楽室。
茜色の夕陽が射し込む部屋の片隅で、フルートを奏でる少女がいた。
軽やかでいて心に響く音色に誘われた1人の青年が、窓からその少女を眺めている。
演奏が終わると、青年は手を叩いて喜んだ。
「すげーすげー、感動しちゃったよ俺」
「ありがとう。…あなたは?」
「ああ、俺? これだよこれ」
そう言って青年は、おもむろに懐から1枚の布切れを取り出した。
否、布切れではない。淡いピンク色で、レースの装飾がついている。
「体育館のロッカー室でこれ盗ってきた帰りにフルートの音色が聞こえてさー、来てみたr」
「キャー!! 下着泥棒よ、誰かー!!」
:08/11/03 20:05 :P903i :LUmIhgZI
#267 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:07 :P903i :LUmIhgZI
#268 [No.022(1/2)◆vzApYZDoz6]
「隊長、敵襲です! 敵の数は1体、夜目の使いすぎによる疲労感が蓄積された充血眼です!」
『よし、疲れ目対応式ビタミン配合目薬を使うぞ。兵隊はリフトの用意、戦車隊は発射口の蓋を外す準備に取りかかれ! 機動隊は対象の瞼とまつ毛の固定だ! 総員、直ちに行動開始!』
「了解!」
「こちら機動隊、大変です隊長! 敵はドライアイも併発しているらしく、まばたきが多すぎて瞼を固定できません!」
『何だと!? 仕方ない、手が空いた隊員をいくらかそちらへ送る! 固定は目薬発射の瞬間だけでいい、俺が合図を出したら全力で固定にかかれ!』
「了解!」
「隊長! こちら兵隊、リフトの準備完了しました!」
「こちら戦車隊、蓋の取り外し完了しました!」
『よし、戦車隊は照準の補正に取りかかれ! 兵隊は5名で発射台の固定、それ以外は直ちに機動隊の援護に向かえ!』
「了解!」
「こちら機動隊! 照準補正完了しました! いつでも発射できます!」
『よし、発射準備! 機動隊総員、瞼の固定に取りかかれ!』
「了解!」
:08/11/03 20:08 :P903i :LUmIhgZI
#269 [No.022(2/2)◆vzApYZDoz6]
「固定完了しました!」
『よくやった。戦車隊、目薬発射!』
「発射!!」
びちゃっ
『バカ、量が多すぎる…まぁいい! 機動隊、瞼の固定を解除! 目の周りを拭われる前に直ちにその場から待避だ! 総員、待避せよ!』
「了解!」
「総員、待避ー!!」
「隊長! 総員待避完了しました! 欠員ありません!」
『よし、よくやった。戦車隊は目薬の格納だ』
「あっ…申し訳ありません隊長!」
『どうした!?』
「蓋を現場に忘れてきてしまいました!」
『馬鹿野郎ー!!』
完…?
:08/11/03 20:09 :P903i :LUmIhgZI
#270 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:10 :P903i :LUmIhgZI
#271 [No.023◆vzApYZDoz6]
「ないてるの?」
「……ちがうもん」
「ねぇ、あるいてもあるいてもおつきさまのいちがかわらないのって、なぜかしってる」
「えっ?」
「きみがさみしくないように、だって」
「……さみしくなんかないもん」
「そうだね、きみにはかえるおうちがある。おかあさんがさみしいよ」
「……うん。じゃあかえるね。ばいばい、くまさん」
「うん、ばいばい」
:08/11/03 20:11 :P903i :LUmIhgZI
#272 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:13 :P903i :LUmIhgZI
#273 [No.024◆vzApYZDoz6]
「おーっし、揃ったな。点呼!!」
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「欠員なし! お前ら、準備はいいか!」
「はいっ!」
「よし、行くぞ野郎共!!」
「おおー!!」
「え、サッカーは11人いないと参加できませんよ」
「なにー!?」
完…?
:08/11/03 20:14 :P903i :LUmIhgZI
#274 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:15 :P903i :LUmIhgZI
#275 [No.025、026、031(1/3)◆vzApYZDoz6]
かつて無力だった人間は、神に祈り力を求めた。
そして神は望むように力を与えた。
しかし、人間はその与えられた力で争いを始めた。
「……出てこい、そこにいる者」
そしてまた今日も、新たな争いが始まろうとしている。
「よく分かったな」
「その手に握られた木刀、見紛うわけがない。『猛虎』画竜点睛、手合わせ願う」
「その呼び名いつも思うけど虎か竜どっちかにしろよ。俺?俄然タイガースwww」
「うるさい! 一瞬で息の根を止めてやる!!」
「やってみな。最強のケチャップ使いの実力、思い知らせてやるよ」
互いに、未開封のケチャップを懐から取り出した。
素早く封を開ける。
「ちゃんと内ブタも剥がさねぇとな」
「遅いッ!! 死神の大釜と言われた実力見せてやる!」
内ブタを剥がしている猛虎なんちゃらさんに死神の大釜が詰め寄る。
「必殺・ケチャップキーック!」
大釜さんの右足がドゴオォォ!とかいうなんか凄い音を立て画竜さんの腹に突き刺さった
いや大釜使えよ大釜
つうかケチャップはどうした!
:08/11/03 20:16 :P903i :LUmIhgZI
#276 [No.025、026、031(2/3)◆vzApYZDoz6]
「おぅふ!!」
崩れ落ちる画竜さん、勝利を確信し笑う大釜さん。
「口ほどにもない…最強のケチャップ使いが聞いて呆れる」
しかし画竜さんは、何事もなかったかのように起き上がった。
「うっそぴょーんwwwwwwww」
「なっ…!?」
「どうした? 夏休みの宿題を7月中に終わらせて9月1日に意気揚々と宿題を提出しようとしたら1教科まるまるやり忘れてる事に気付いた時みたいな顔して」
「うるさい! だがなぜ? 今のケリを食らって立てるはずが…」
「落ち着けよ。自分の足見てみな」
言われるがままに足を見ると、ケチャップがたっぷりと付着していた。
「ケチャップを壁にした。ただそれだけ」
「ケチャップが…服に…貴様アァァ!! よくもこの私の服を汚したn」
「まぁこんなくだらない話にレス数使ってられないしお前死刑でいい? よし分かった」
「待て! まだ何も言ってn」
「奥義・ハイドロケチャップ!!」
思い切りケチャップのボトルを握りしめた。
フタが飛び、大量のケチャップが吹き出す。
大釜さんはケチャップまみれになって死んだ。ケチャップ(笑)
:08/11/03 20:17 :P903i :LUmIhgZI
#277 [No.025、026、031(3/3)◆vzApYZDoz6]
こうして争いは幕を閉じた。
「姉さん!? 姉さん!!」
だが、争いは新たな争いを呼ぶ。
「あっ、おっぱいでかい可愛い子が。そして舌を出している!」
「ケチャップまみれで死んでる…あなた、姉さんに何をしたの!?」
「律儀にやるなぁ。まぁ安心しな、すぐにお姉さんのところへ行かせてやろう」
「許しません…あの世で姉さんに詫びなさい!」
「姉さんよりかは言葉遣いはいいな」
互いにケチャップの封を開ける。
だが互いに動かず、静寂が訪れた。
「……そろそろ帰っていい?」
先に静寂を破ったのは画竜さんだった。
手慣れたように間合いを詰める。
「くっ…!」
大釜さんの妹もケチャップで牽制する。
「うめぇ」
だが画竜さんはケチャップを食べていた。
「そんな…」
:08/11/03 20:21 :P903i :LUmIhgZI
#278 [No.025、026、031(4/3)◆vzApYZDoz6]
「よし、もう2つ以上の意味で面倒だし殺しちゃうぜ!」
画竜さんが一瞬で間合いを詰める。
「秘奥義・木刀ケチャップ!!」
ケチャップが塗りたくられた木刀が振り下ろされ、大釜さんの妹は絶命した。
こうして、争いは幕を閉じた。
「ケチャップうめぇwwww」
最強のケチャップ使い、画画竜さん。
後の弁慶である。
:08/11/03 20:22 :P903i :LUmIhgZI
#279 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:24 :P903i :LUmIhgZI
#280 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:25 :P903i :LUmIhgZI
#281 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺はここのところ毎日、放課後になると理科室に足を運ぶ。
今日も回転椅子に座って、片付け忘れられた試験管に入ったよく分からない液体を、ただただぼんやりと眺めている。
特に目的も意味もない。
人気のない旧校舎の端にある、薬品臭の漂うこの部屋が、何となく落ち着くだけ。
「まーた来てる、この子ったら。いつも私の椅子に座るんだから」
というのは建前で、本当は試験管ごしに俺を覗きこむ科学担当の美人教師に会うためだったりする。
別に好きだとかそんな訳じゃない。
学校嫌いな俺が話していて唯一落ち着くのが、この先生だからだ。
「別にいいだろ。それより何これ、ピンク色だけど」
「アンモニアとフェノールフタレインを混ぜた溶液よ。小学校でやらなかった?」
先生は答えながら近くの実験机からパイプ椅子を引っ張ってきて、俺の隣に腰掛けた。
「さぁ……どうだったかな」
「そんなことより。あなた、今日体育サボってたでしょ? ダメよ、遊んでないでちゃんと授業出なきゃ」
「んー……」
ほら、と先生が俺の手から試験管を取り上げた。
手持ちぶさたになった右手を腹の上に乗せて、今度は天井を眺めた。
先生は試験管立てに試験管を差して、奥の給湯室に向かった。
「今日はコーヒーか紅茶、どっちにする?」
「……コーヒー」
:08/11/03 20:27 :P903i :LUmIhgZI
#282 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。
「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」
「サンキュ」
角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。
先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。
「あなた最近元気ないわね」
先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。
%8
:08/11/03 20:29 :P903i :LUmIhgZI
#283 [No.027、036(2/4)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。
「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」
「サンキュ」
角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。
先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。
「あなた最近元気ないわね」
先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。
「うーん…」
「授業もサボりがちみたいだし。学校は楽しくない?」
「……どうなんだろ」
つまらない訳じゃない。
友達もそれなりにいるし、放課後の理科室も好きだ。
けど、何か物足りないというか、満たされる事がない。
やりたいことがあるわけでもない。
何もしていないのに疲れていくような感覚がある。
心から楽しいかと言われると、たぶん楽しくない。
:08/11/03 20:30 :P903i :LUmIhgZI
#284 [No.027、036(3/4)◆vzApYZDoz6]
「やっぱりアレね、女よ女。彼女作っちゃいなさい」
「いいよ、彼女なんて。めんどくさいし」
「いい若者が何言ってるの。あなた黙ってればそれなりにカッコいいんだから、彼女ぐらいすぐできるわよ」
「どういう意味だよ…」
「そのままよ。あなたのお守りも楽じゃないんだから」
「…そういう事ね」
コーヒーを一気に飲み干し、カップを置く。
少しだけ口に苦味が残っていた。
彼女ができたところで、俺の気分は晴れないと思う。
曇りの原因は分からないけど、そんな気がする。
「ご馳走さま」
「おかわりはいい?」
「うん」
俺はまた天井を仰いで、目を閉じた。
やっぱり、ここが一番落ち着く。
いつもボーッとしてるか先生と世間話をしてるだけだけれど、それだけで気分が良くなった。
ふと目を開けると、先生がかなり間近で俺を覗きこんでいた。
:08/11/03 20:31 :P903i :LUmIhgZI
#285 [No.027、036(4/4)◆vzApYZDoz6]
「…顔が近いよ、顔が」
「寝られでもしたら困るからね。ドキドキした?」
ふふっ、と笑いながら、カップとお盆を片付けに再び給湯室に向かっていった。
それを目で追っていると壁の時計が視界に入った。
すでに午後5時半を回っている。
俺は少ない荷物を持って立ち上がる。
ちょうど給湯室から先生が出てきた。
「んじゃ、帰るわ」
「うん、おつかれさま。気をつけてね」
そのまま踵を返し、ドアに向かう。
ドアノブに手をかけたところで、また呼び止められた。
「明日の放課後もちゃんと来なさいよ」
見ると、先生がひらひらと手を振っていた。
「……気が向いたらね」
帰り道、理科室の方に目をやると、俺が座っていた回転椅子に先生が座っているのが見えた。
たぶん、明日の放課後も俺はあの椅子に座っているのだろう。
俺は少しだけ笑って、自転車を漕ぎだした。
:08/11/03 20:32 :P903i :LUmIhgZI
#286 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:35 :P903i :LUmIhgZI
#287 [No.028◆vzApYZDoz6]
現代とはまた異なる世界。そこには、半獣と呼ばれる人達が暮らしていました。
ライオンの半獣ライとウサギの半獣ビイは仲良しです。
「ね、ライ。肩車して」
「肩車好きだな、ビイは。ほら」
「わぁ、高い高い!」
無邪気に喜ぶビイを、ライは微笑ましく眺めています。
そこへ、どこからか小鳥がやってきました。
鳥たちは楽しげに囀り、ビイの回りを飛び回ります。
「やっぱりライに肩車してもらうと楽しいね」
「そうか。それならいつでもしてあげるよ」
「やったぁ!」
ビイは喜び、鳥たちと一緒に口ずさみました。
ライは嬉しそうにそれを眺めていました。
:08/11/03 20:37 :P903i :LUmIhgZI
#288 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:39 :P903i :LUmIhgZI
#289 [No.029◆vzApYZDoz6]
(うおー! 待ちに待った初デート! どうしよう何喋っていいか分からないぞ…何の話題がいいんだろう? 趣味とか? いやそれじゃありきたりすぎるよな…いや、こうしてる間にも時間は過ぎていくんだ、何としても彼女が飽きないようにしなければ! 何を喋れば…いや、ここはひとまず行動だな…よし!)
(キャー! まさか彼から誘ってもらえるなんて…どうしよう緊張して何すればいいのか分からない…うわっ、いつの間にか変な歩き方してた! 恥ずかしー…彼は見てないっぽい、かな…どうしよう何か変な間ができちゃった、あたしのせい? あたしのせいよね? 謝った方がいいのかな、いやでもいきなり謝るのも何か変だし、でも何か変な空気だし、せっかく誘ってくれたのに…うん、とりあえず謝ってみよう…よし!)
「「…あのっ!」」
「…え? あ、いや…どうしたの?」
「ううんあたしは別に…あなたこそ… ……?」
「? …あっ、雪だ…」
「………ふふっ」
「………あははは」
「…綺麗ねー…」
「そうだね」
「…あの、今日は誘ってくれてありがとう」
「いや…うん。…じゃあ、行こっか」
「……うん!」
完…?
:08/11/03 20:39 :P903i :LUmIhgZI
#290 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:41 :P903i :LUmIhgZI
#291 [No.030◆vzApYZDoz6]
サンタクロース。
クリスマスの前夜に、子供たちへ夢と笑顔を運んでくるお爺さん。
出身地はデンマーク領のグリーンランド。
現在、公認サンタクロースは129人いて、クリスマスイブの夜にトナカイが引くソリに乗って子供たちにプレゼントを配る。
恰幅のよい体型に真っ白でふくよかな口髭、赤と白のサンタ服に身を纏った、夢と希望の象徴だ。
「──っていうのがサンタクロースだと思ってたんだけどな、俺は」
「ハン、そんなもん人間が作り出した偶像じゃろが。実際は赤いブーツと白い口髭以外自由じゃわい」
「口が悪いサンタだな…」
「知っとるか? サンタは良い子にはプレゼントを配るが、悪い子には豚の内臓を配るんじゃよ」
「やめてくれ、気分が悪くなる」
12月24日深夜、イギリスはマンチェスター郊外の小さな酒屋、その裏手。
俺は『本物の』サンタクロースに弟子入りした。
その修行として、今からヨーロッパ地区の子供たちにプレゼントを配るところだ。
:08/11/03 20:42 :P903i :LUmIhgZI
#292 [No.030(2/3)◆vzApYZDoz6]
「0時ちょうどから始めて、5時までには終わらせなきゃいかん。チンタラしとる暇はないぞ」
小さな酒樽の上であぐらをかき、三つ編みの白い口髭をいじっているこのジジイが、本物のサンタクロースらしい。
「移動手段はこのバイクじゃ。ワシの力で排気音は聞こえんし、姿も見えないようにしておる。空も飛べるわい」
「リアリティーがあるのかないのかハッキリしろよ」
「空飛ぶバイクもファンタスティックじゃろ?」
「ファンタスティックの使い方間違えてるだろ…」
気にしたら負けじゃ、とジジイは高らかに笑った。
「今年はヨーロッパをお前さんに任せる。ヨーロッパと言っても、地中海周辺の国も入るから結構広い。回り方を確認するぞい」
ジジイはそう言って、懐から地図を取り出した。
ヨーロッパとその周辺の世界地図だ。
ジジイは言葉に合わせて地図をペンでなぞりながら説明した。
「まずはロンドン経由でフランス北部を迂回し、ベルギーじゃ。
そこからドイツとその周辺を時計回りに回ってスイスからフランス南部へ、今度は地中海沿岸の国を左回りじゃ。ポルトガルを忘れるなよ。
トルコまで来たら黒海を左回りでギリシャまで向かい、海を渡ってイタリアへ。
イタリアを北に抜けたらあとは内陸じゃ。回り方は自由じゃからな。
終わったらモスクワに入って、フィンランドからノルウェーまで経由、そこからアイスランドへ飛んで、最後にアイルランドとイギリス北部を回っておしまいじゃ。
分かったか?」
:08/11/03 20:43 :P903i :LUmIhgZI
#293 [No.030(3/3)◆vzApYZDoz6]
「ちゃんと覚えてるよ」
「ならいい。さぁ、そろそろ0時じゃ、バイクに乗れ」
ジジイが地図をしまいながら、傍らにあるバイクのサドルをポンポンと叩いた。
俺はプレゼントの入った袋を担ぎ上げ、促されるままにバイクに乗り、エンジンをかける。
エンジンはかかったが、驚いた事に排気音はしない。ジジイが言ってたやつだろう。
たぶん、姿も見えていないはずだ。空の飛び方は分からないが何とかなるだろう。
「ワシは他を回らんといかんからついていかんぞ。まぁせいぜい頑張れや」
腕時計で時間を確認し、秒読みを開始する。
23時59分54秒。…5、4、3、2、1──
「──じゃあ、行ってくる!」
「失敗するんじゃないぞ」
0と同時に地面を蹴り、スロットルを回す。
ほとんど間もなく、車輪が地面から離れて車体が浮き上がった。
続いて急激な加速上昇。
こちらを見上げて手を振るジジイに続き、眼下に広がる郊外の街も、みるみる小さくなっていく。
「最初はロンドン経由でフランス北部、だったな」
頭の中で地図を確認し、後ろに目をやる。
プレゼントが詰め込まれた袋についているワッペンが、ニヤニヤといやらしくこちらを見ていた。
これはジジイの趣味らしい。
「ヘマなんかするかよ。さて、と…行くか!」
高度が十分上がったところで、スロットルを回した。
今夜の俺は、サンタクロースだ。
俺が乗ったバイクは、イギリスの上空を静かに駆け抜けていった。
:08/11/03 20:44 :P903i :LUmIhgZI
#294 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:48 :P903i :LUmIhgZI
#295 [No.032(1/2)◆vzApYZDoz6]
「兄ちゃん、ミルクちょうだい」
「瓶1本だね。200セントだよ」
「え、高くない? もうちょっとまけてよ」
「そんな事言われてもねぇ…じゃあ10セントだけなら」
「んなもん消費税にすらならないじゃん! 200セントまけてよ」
「それじゃタダじゃないか…どこの子か知らないけど困ったねぇ」
:08/11/03 20:49 :P903i :LUmIhgZI
#296 [No.032(2/2)◆vzApYZDoz6]
「アメあげるからさ。お願い、母ちゃんに安く買ってこいって言われてるんだよ!」
「すごい母ちゃんだな…仕方ない、じゃあ20セントおまけだ。これ以上は無理だよ」
「実は150セントしか持ってなくて…」
「絶対にそれが理由でしょ。……仕方ない、今回は150セントにしてあげるけど、次からはちゃんと持ってくるんだよ?」
「やりー! 150セントって言ったね!?」
ちゃりちゃりーん
「って200セントあるじゃん!」
「言ったんだから150セントで売ってよ」
「まったく仕方ないな。ほら、売ってあげるよ」
「へへへ、母ちゃん喜ぶぞー。じゃあね、兄ちゃん!」
「次からはちゃんと買うんだぞー!」
「分かってるってー!」
「……ふー、行っちゃったか。…お釣りを渡さなかった事には気付かれなかったな。大人を騙そうなんて20年早いぜ少年!」
完…?
:08/11/03 20:50 :P903i :LUmIhgZI
#297 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:51 :P903i :LUmIhgZI
#298 [No.033◆vzApYZDoz6]
今日も1人の夜がやって来る。
窓から見える月を眺めながら、今日も想う。
あなたはどんな未来を見るのだろうか。
私はどんな未来を見ていたのだろうか。
その未来はもう叶わない。
あなたはどんな未来を望んでいたの?
あなたはどんな未来を築こうとしたの?
「……ねぇ、あなたの──」
私が共に歩むのは駄目だったの?
あなたの未来はそこにしか無かったの?
絶対に、私はあなたの隣を歩けないの?
1人の夜は、もう嫌だから。
「──後を追ってもいいかな?」
:08/11/03 20:52 :P903i :LUmIhgZI
#299 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:53 :P903i :LUmIhgZI
#300 [No.034、039◆vzApYZDoz6]
蝉の鳴き声をBGMに、真っ白な砂浜。
キラキラと光る方に目をやると、そこには波打つガラス。
空にはやたらめったらもこもこした積乱雲。なんか青雲のCMに出てきそうな。
「そう、海!」
「海だな」
「感動が薄いですよ、ワトソン君!」
「それは忝ない、何に感動すればいいか教えてくれんかね」
「だから海に!」
「うん、コンクリ抱えてダイブはきっと気持ちいいぜ姐さんよ」
「いえなんでもありませんアニキ! でもすごいねー、こんなところに海があったなんて」
「いや、でも車停めて見るほどか…?」
「これだから男は…この綺麗な海を堪能しようとは思わないの?」
「水着すら無いのに海で何するんだよ…」
「だから感d「よし帰ろう」
:08/11/03 20:54 :P903i :LUmIhgZI
#301 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:56 :P903i :LUmIhgZI
#302 [No.035◆vzApYZDoz6]
「イタズラとは違うのよ」
そう彼女は言って、今できあがったばかりのたこ焼きを口に運んだ。
ハフハフと口の中でたこ焼きを転がし、ちょうどいい熱さまで冷ましてから口を動かす。
「その気になればあんただってすぐに消せるわ。こんな見た目じゃ分からないでしょうけど」
それを言うなら俺だってそうだ。いやむしろ俺のが強いに決まってる。
だが、可哀想なので口には出さなかった。
かわりに俺もたこ焼きに爪楊枝を突き刺す。
以外と硬い、見た目より肉厚なようだ。
「狐っていう動物は古今東西様々な場面で出てきた。私は特に日本でね」
彼女は頬張っていたものを早々と燕下し、すぐに次のたこ焼きを口に入れる。
狐は猫舌ではないらしい。
「今回は、その連中が全員一堂に会するの」
全員ってことは多少、いや、多くの取材がいりそうだ。
彼女が3つめのたこ焼きに手をつけたので、つられて俺も2つめに口を運んだ。
残るたこ焼きはあと1つ。
「まぁ、メインは私になるんだけど、それもあなた次第ね。……そろそろ時間だ、じゃあ」
俺次第だと空気になってしまいそうな気がするが。
去っていく彼女を見送りながら、最後のたこ焼きを頬張った。
:08/11/03 20:57 :P903i :LUmIhgZI
#303 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:59 :P903i :LUmIhgZI
#304 [No.037(1/2)◆vzApYZDoz6]
子供の頃、何度も同じ夢を見た。
自分と同じくらいの女の子と遊ぶ夢。
知らない公園の砂場で、知らない家の庭で、知らないデパートの屋上で。
夢の中での彼女との遊びは、いつも楽しかった。
しかし、小学校に入って間もない頃を境に、ピタリと見なくなってしまった。
そしていつしかそんな夢を見ていた事も忘れ、何事もなく学生時代を送っていた。
ところが、高2になった最近に、またその夢を毎晩見るようになった。
夢の中の彼女はすっかり成長していた。
おっとりした仕草やセミロングの髪型は変わらないが、背丈も伸びてるし胸も膨らんでいる。
遊びの内容も追いかけっこやままごとなんかから、カラオケだったり買い物に行ったりと大人になっていた。
それを不思議に思いながらも少し楽しんでいたある日、父が転勤する事になった。
「さ、とうとうこの町ともお別れねー。しっかり目に焼き付けておきましょうか…」
「ああ…」
母さんと庭に立って、住み慣れた町並みに別れを告げる。
別に特別何かあるわけでもない、何の変哲もない住宅街だが、やはり自分が生まれ育った町にサヨナラするのは感慨深いものがあった。
:08/11/03 21:00 :P903i :LUmIhgZI
#305 [No.037(2/2)◆vzApYZDoz6]
こうして俺は片田舎から、都心部郊外の住宅街に引っ越した。
引っ越した住宅街は最近できたらしい。
ニュータウンとでも言うのだろうか、できたばかりの家やマンションが数多く建ち並んでいた。
新しい家は思ったよりデカイ。母さんの話では一人部屋を貰えるらしいので楽しみだ。
とりあえず必要最低限の荷物を運び込んでから、近所の挨拶回りをすることにした。
向かって左隣の家から始めて、最後の家、つまりぐるっと回って右隣の家まできた。
インターホンを押して、挨拶に来た旨を伝えると、俺のお隣さんになる人が出てきた。
「はーい、こんにちh」
「どうも、新しく越しt」
「「!!??」」
なんという事だろうか。
間違いない。
出てきたのは、夢で何度も見た彼女だった。
「マジかよ…」
「うそ…」
驚いて2人同時に呟く。
「ああああの、今日からよろしくおおおお願いします!!」
「こここちらこそ、よよよろしくね!!」
そして2人同時にカミカミのご挨拶。
互いに顔を見合わせて、また2人同時に小さく笑った。
やっべー、現物超カワイイ。
俺の人生始まったわ。
:08/11/03 21:11 :P903i :LUmIhgZI
#306 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:13 :P903i :LUmIhgZI
#307 [No.038(1/2)◆vzApYZDoz6]
夕刻の河川敷。
陽は地平線の向こうにどっぷりと浸かり、空は既に青黒くなっている。
つい先程までは橙色を反射し幻想的に光っていた川の水面は、不安感と焦燥感を掻き立てるような夜独特の深く暗い波を漂わせていた。
そんな川を傍目に、1人の少女とその後ろに隠れる少年が、異形の生物と対峙していた。
「我が言の葉を媒し言霊よ、その力を封する言弾となれ…『刺』!」
少女が手にする拳銃の銃口を下唇に当てる。
横笛を吹くかのようにふっと息を吐きかけると、銃口が鈍い光に覆われた。
すかさず銃を構え、引き鉄を引く。
撃ち出された光る銃弾は槍の先端へと姿を変えて、異形の生物の腹あたりに突き刺さった。
「ぎゃああああ!」
「まだ生きているか…言弾となれ、『斬』!」
再び息を吹きかけ、引き鉄を引く。
今度は光る刃となった銃弾が、異形の生物を両断した。
:08/11/03 21:15 :P903i :LUmIhgZI
#308 [No.038(2/2)◆vzApYZDoz6]
断末魔と共に、異形の生物は跡形もなく消えていく。
少女の脇に隠れていた少年が、少女を心配げに見上げた。
「なっちゃん…」
「大丈夫。怪我はない」
少女が小さく笑って頷き、銃を懐にしまい込む。
「まずは1匹、だな」
「本当に大丈夫なの?」
「怪我はない。見ていただろう?」
「じゃなくて…もう1匹倒しちゃったんだから、これから数えきれないくらいの悪魔を倒していかなくちゃならないんだよ?」
少女は少し目を伏せ、歩き出した。
「そうしないと、君は人間に戻れないんだろう?」
「でも…」
「大丈夫。これは私が決めた事だ。必ず、君を人間に戻す」
「なっちゃん…」
「さぁ、家に帰ろう」
少女は少年の頭を優しく撫でて、帰路を歩いた。
:08/11/03 21:15 :P903i :LUmIhgZI
#309 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:21 :P903i :LUmIhgZI
#310 [No.040(1/3)◆vzApYZDoz6]
窓から見える桜の木を見下ろしながら、俺は何本目かも分からない煙草に火を付けた。
煙は吸わない。いや、吸う気にならない。
なら火をつけなければいいだろうと言われそうだが、長年吸ってきたせいで、煙草がないと口が落ち着かない。
「ははっ」
俺は自嘲気味に笑った。
禁煙である病室でも口にする程に依存した煙草が原因で、死を免れぬ病気になってしまうとは。
運命とは皮肉なものだ。
唯一の救いは、今年で5歳になる娘が毎日のように病室に来てくれる事。
いや、母親は事故で死に、父親も自業自得の病に冒され後を追おうとしている。
娘にとっては救いでも何でもないだろう。
本当に馬鹿で間抜けな父親だ。
口に加えた煙草が吸われることなくフィルター近くまで灰になった頃に、病室のドアが開いた。
「パパー!」
開くやいなや、娘が俺のベッドに駆け寄ってくる。
俺は灰を落とさないように注意しながら煙草を灰皿に押し付け、飛び付いてくる娘を抱き止めた。
「パパ、今日も来たよー!」
「ありがとう。お前はいい子だな」
娘をベッドに座らせ、頭を撫でてやる。
娘はへへへ、と無邪気に笑った。
:08/11/03 21:22 :P903i :LUmIhgZI
#311 [No.040(2/3)◆vzApYZDoz6]
俺は娘を一瞥してから、隣の女性に頭を下げた。
「すみません、お義母さん」
「いいのよ。…少しでもこの子との時間を過ごしてちょうだい」
俺の両親はどちらも早くに亡くなっている。
他に兄弟もいないので、嫁の両親に娘を育ててもらえないかとお願いすると、泣きながらに快諾してくれた。
義母も義父も娘を大切に育ててくれるだろうし、俺の気持ちまで案じて、こうして毎日のように娘を連れて病気に来てくれる。
こんな不良上がりな父親に育てられるよりは、娘もいい子に育つだろう。
結果として、良かったと思う。
お義母さんやお義父さんには申し訳ないけど、俺の身内はほとんど死んでしまっているし、悲しむ奴もそんなにいない。
医者に宣告された余命はあと2か月。
思い残す事なんて、何もない。
そう、何もないんだ。
「パパ…?」
ハッと我に帰ると、娘が俺の膝の上で不思議そうに見上げていた。
「どうしたの?」
「……いや……」
娘の顔を見ていると、急に死が怖くなる。
もう思い残す事などないと思っていても、そう思い聞かせても、俺の脳は頑なにそれを拒絶する。
死にたくない、生きていたいと、悲痛の叫びを上げる。
:08/11/03 21:23 :P903i :LUmIhgZI
#312 [No.040(3/3)◆vzApYZDoz6]
うるせぇよ、どうせ何やっても助からないんだ。
希望なんて、持つだけ無駄なんだ。
俺は、2か月後にはこの世にいないんだよ。
「パパ? 泣いてるの?」
娘の顔がちらつくが、視界に霞んで良く見えなかった。
続いて頬を滴が伝っていく。
俺は無意識に娘を抱き締めていた。
「パパ…? どうしたの?」
横でお義母さんがすすり泣く声が聞こえる。
そうだよ。俺はまだ死にたくない、生きていたい。
そんなの当たり前だ。
でも、死ぬんだ。
2か月後には、俺の存在はこの世から消えるんだ。
この世に未練なんて残せないんだ。
「……パパ、早く元気になってね。また一緒に遊ぼうね」
娘が小さな腕で、か弱い力で抱き返してきた。
まだ小学生にもならない娘にまで気を遣わせるなんて、最悪な父親だ。
:08/11/03 21:25 :P903i :LUmIhgZI
#313 [No.040(4/3)◆vzApYZDoz6]
「…ああ…元気になったら、一緒に遊ぼう」
そうして娘の頭を撫でてやりながら、思った。
俺が未練を残そうが残すまいが、死にたがろうが生きたがろうが、2か月後には死ぬ。
俺ができることは、俺自身が死に備えることじゃない。
少しでも他の連中が悲しまないようにすることだ。
俺はもう一度、娘の頭を撫でてやった。
娘が帰った後で、俺は煙草に火をつけた。
今日何本目かも分からない、でも今日初めての煙草は、少しだけ苦かった。
:08/11/03 21:25 :P903i :LUmIhgZI
#314 [No.040(4/3)◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:31 :P903i :LUmIhgZI
#315 [No.041、046(1/3)◆vzApYZDoz6]
どこにでもあるような神社の片隅。
(*゚ー゚)「……なんだろう、これ?」
(*゚∀゚)「きっと洞窟じゃない?」
(*゚ー゚)「それは見ればわかるよ…にしてもこんな場所があっあんだねー。この鈴は…なんだろう?」
(*゚∀゚)「行ってみよ!」
(*゚ー゚)「えっ、ダメだよ…まだ稲刈り終わってないし」
(*゚∀゚)「そんなのあとでやればいいじゃん!」
:08/11/03 21:32 :P903i :LUmIhgZI
#316 [No.041、046(2/3)◆vzApYZDoz6]
(*゚∀゚)「……はい、というわけで洞窟の中!」
(;゚ー゚)「…誰に説明してるの?」
(*゚∀゚)「気にしない気にしない」
( ((( ∵)すす〜っ
(*゚∀゚)「うわっ!」
(;゚ー゚)「だ、誰ですか?」
( ∵)σ「………」
(*゚∀゚)「何、この鈴がどうかしたの?」
(*゚ー゚)「あっ、鈴にこの人の顔が…」
(*゚∀゚)「入口にあった鈴に顔…てことはあなたの家だったり?」
( ∵)「……」
(;゚ー゚)「……みたいだね」
(*゚∀゚)「それはどうも、お邪魔しました〜」
:08/11/03 21:33 :P903i :LUmIhgZI
#317 [No.041、046(3/3)◆vzApYZDoz6]
(*゚∀゚)「はい、ところ変わって再び神社の片隅!」
(;゚ー゚)「だから誰に説明してるの?」
(*゚∀゚)「気にしない気にしない」
(*゚ー゚)「でも、まさか人の家だったなんて…」
(*゚∀゚)「ていうかここって私たちの敷地じゃなかった?」
(*゚ー゚)「………」
(*゚∀゚)「………」
(;゚ー゚)「……あの人、何者なんだろう……」
(*゚∀゚)「気にしない気にしない。さぁ稲刈り再開!」
完…?
:08/11/03 21:33 :P903i :LUmIhgZI
#318 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:36 :P903i :LUmIhgZI
#319 [No.042◆vzApYZDoz6]
「原因を究明しようか」
明け方に近い深夜のファミレス。
店主とみられる男と、バイトか何かであろう少女が、店を閉めた後の静かな2人掛けのテーブルを挟んでいた。
「まずは情報を整理しよう。事が起きたのは何時頃だ?」
「午前1時過ぎだと思います…」
「確か16番テーブルだったな?」
「はい、1時前までは確かにお客様がいました…」
「そして君が少し目を離した、間にお客様が消え失せていた、と」
「はい、すみません……」
「これは誘拐か、それとも殺人か…何れにせよ数分の間にお客様を連れて消えたことになる。だが窓は破られていないし、入り口を通れば気付くはずだ…一体どうやって……」
(ただの食い逃げだと思うけどなぁ……)
:08/11/03 21:37 :P903i :LUmIhgZI
#320 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:38 :P903i :LUmIhgZI
#321 [No.043◆vzApYZDoz6]
気が付くと俺は屋根に登っていた。
辺りがやけに明るい。
見上げてみると、きれいな満月があった。
「くっ…」
月は太陽の光を反射して光っているのは有名だが、月が反射した太陽光にはブリーツ波が含まれる。
そして、満月の時だけブリーツ波が170万ゼノという数値を超えるのだ。
宇宙には大小様々な月が数多くあるが、不思議なことにどの月も満月にならないと170万ゼノを超えない。
ブリーツ波は目から吸収でき、170万ゼノ以上を吸収すると体に変化が起きる。
「左手が疼く……」
:08/11/03 21:38 :P903i :LUmIhgZI
#322 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:39 :P903i :LUmIhgZI
#323 [No.044◆vzApYZDoz6]
「喉渇いた。ねぇあんた、飲み物買ってきて」
「自分でなんとかしろよ…『へそが茶を沸かす』」
彼が言葉を発した瞬間、彼女のへそからみるみる熱いお茶が溢れでてきた。
「はい、湯飲み」
「ありがと」
「おいお前ら、すげー情報仕入れたぞ! これ聞いたら『目玉が飛び出る』ぞ!」
「ちょっと…」
今来た彼の言葉に反応し、2人の目玉が飛び出る。
「急に変なこと言わないでよ! あーびっくりした…」
「『びっくりする』って意味だからな」
「言ってる場合か!」
:08/11/03 21:40 :P903i :LUmIhgZI
#324 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:42 :P903i :LUmIhgZI
#325 [No.045◆vzApYZDoz6]
「さて、そろそろネタも尽きてきた訳だが」
「私が知るわけないでしょ。なんとかしなさいよ」
「なんかミクに似てるからそっち系でなんとかしようかと思ったけど、どーにもなー」
「銃持ってるし無理?」
「ミクはもっと髪長いしな」
「ただの逃亡の言い訳でしょ」
「屁理屈は通れば理屈になるんだよ!」
「あらこんなところに45口径が。試しに死んでみる?」
「ごめんなさい」
:08/11/03 21:42 :P903i :LUmIhgZI
#326 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:44 :P903i :LUmIhgZI
#327 [No.047、048◆vzApYZDoz6]
「来たわ」
「あら、結構カッコいい人…じゃ、行くわね」
「頑張って!」
「魔泡使いの腕を見せてあげるんだから。いっけー、モコモコクリーム!」
ボボボボボ…
「よーし、モコモコクリーム設置完了!」
「オッケー。この両刃剃刀の威力は凄いわよ! 食らえ、シェイビングスラッシュ!!」
シュババババッ
「……髭剃り、完了!」
「最後よ、パワーズリキッド!」
バッシャー
「クリーム洗浄、完了!」
「お仕事、終わりっと」
:08/11/03 21:44 :P903i :LUmIhgZI
#328 [No.047、048◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:46 :P903i :LUmIhgZI
#329 [No.049◆vzApYZDoz6]
「うーん…」
若い男が、鏡に向かって唸っていた。
顎や頬、鼻、額など、あらゆるところを手で擦っている。
そこへ、若い女がやって来た。
「どうしたの?」
「いや…肌がちょっとざらついてる気がして」
「いいんじゃないかな…男の子なんだし」
「男だって肌荒れには気を使うもんだぜ。…あっ、そうだ」
「なに?」
「顔用パック貸してくれね?」
:08/11/03 21:47 :P903i :LUmIhgZI
#330 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:48 :P903i :LUmIhgZI
#331 [No.050◆vzApYZDoz6]
気が付けば辺りはすっかり暗くなっていた。
今もやまない雨が降りだしてからどれくらい経っただろうか。
既にびしょ濡れで、重くなった服のせいで動く気力も湧かない。
だが、それでも彼は待ち続けた。
彼女と交わした約束を、果たすために。
(急病なんだろうな。きっとそうだ)
だが彼は彼女に連絡はしなかった。
:08/11/03 21:48 :P903i :LUmIhgZI
#332 [No.050◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:49 :P903i :LUmIhgZI
#333 [No.051(1/2)◆vzApYZDoz6]
D−34:Δ
本日、未確認の惑星が発見された。
惑星の大気、地質、水質等を調査した結果、良好な環境を持つ惑星だったと推察される。
また惑星の7割ほどが水に覆われており、生命が現存する可能性は極めて高い。
惑星をTE01と名付け、慎重に調査を進めていく。
D−41:γ
TE01惑星の調査の結果、これまでに確認された生命体はおよそ300種類。
だが依然として新種の生命体は発見され続けており、この数字はほんの一部に過ぎないとみられている。
高知能生命体はまだ確認されていない。
しかし、多様な文明機器が発見されている事から、高度な知能を有した生命体が存在した可能性は高い。
何らかの原因により絶滅してしまったのかもしれない。
それにしても、文明が発展していたと思われる地域ほど、大気・地質・水質ともに汚染度が高いのが気になる。
:08/11/03 21:51 :P903i :LUmIhgZI
#334 [No.051(2/2)◆vzApYZDoz6]
L−08:Σ
高い知能を持つ生命個体が発見された。
我々には理解できなかったが、どうやら言葉を話せるようだ。
同行していた宇宙語学者によると、FK38星の言語とほぼ同じとの事。
我々はすぐさま同惑星に調査団の派遣を依頼した。10日後に到着する。
その間に簡単な質問をした。
その結果、やはり高知能生命体は絶滅してしまった事が判明した。
今回発見された個体はその生き残りらしい。
彼女(性別は雌性らしい。以降はこの個体をこう呼ぶ)によると、絶滅を免れた生き残りは他にもいるようだ。
とりあえず、これらの生命体にはTE−xと名付ける。
それにしても、TE−xと我々は外見が非常に酷似しているのが気になる。
もしかすると、我々と似たような進化をたどってきたのかもしれない。
L−18:Δ
調査団が到着した。
早速、生き残り達に質疑応答をしてもらった。
結果、絶滅の要因は、TE−x同士の大規模な争いによるものらしい。
彼女は、こう言ったそうだ。
『私達は、同じ種族で争うことでしか発展できない』と。
その結果絶滅する事になろうとは、皮肉なものである。
ところで、TE−xについて気になる事がある。
私は一度故郷に帰り、太古の文献から調べてみるつもりだ。
その事を明日、隊長に報告する。
(調査手記はここで終わっている)
:08/11/03 21:52 :P903i :LUmIhgZI
#335 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:54 :P903i :LUmIhgZI
#336 [No.052◆vzApYZDoz6]
彼女は自分の運命を呪った。
今日は彼との待ち合わせがあるのに、なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか。
窓から見える雨の勢いは依然として衰えず、やむ気配すら見せない。
この降り頻る雨の中、彼はまだあの場所で待っているのだ。
彼のためにも、何としてもこの状況を打破する必要があった。
周囲には武器になりそうな物もあるが、壁の向こうにいる者と自分とでは素早さが違いすぎる。
いや、恐怖に手がすくんで武器を握ることすらままならないだろう。
幸いは、向こうは恐らくまだ自分の存在に気付いていない事。
こちら側に出口は無いので、向こうが去っていくまで息を潜めて待つしかなかった。
(あーもう! なんでドアノブにゴキブリがいるのよ!)
殺虫剤を買っておけばよかったと後悔する彼女だった。
:08/11/03 21:55 :P903i :LUmIhgZI
#337 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:56 :P903i :LUmIhgZI
#338 [No.053◆vzApYZDoz6]
俺はどれくらいの時間、こうしていただろうか。
いつまで待っても手に抱える彼女が息を吹き返すことはない。それは分かっている。
既に敵も味方もいないこんな場所でじっとしていた所で何もない。それも分かっている。
だが、立ち上がる気力が湧いてこなかった。
立ち上がり、今も戦っている仲間の元へ一刻も早く駆けつけなければならない。
頭ではそれを理解していても、最愛の女の変わり果てた姿を目の当たりにした俺の体は、言うことを聞こうとしなかった。
流れ出る涙は止まらない。
いくら流した所で意味はないというのに。
見上げると、壮大なステンドグラスが目に入った。
天使を模した女性が、色とりどりの光を透過して輝いている。
その向こうからは、地鳴りの音が響いていた。
俺は背中に生える翼に手を掛けた。
竜族の血を半分引く俺には、翼が片方だけ生えている。
両方ともに翼がある他の竜族には劣るが、翔ぶことはできる。
その翼を、渾身の力を込めて引きちぎった。
激痛に思わず声を上げたが、歯を食いしばって耐えた。
彼女を寝かせ、俺の翼を捧げる。
ステンドグラスに映る女性のように、光ある場所へ飛び立つために。
翼を無くした苦痛によがろうとする体を押さえつけて立ち上がる。
戦いの音はまだ響いている。
翼が無くても、俺はまだ戦わなければならない。
最後に彼女を一瞥し、俺は仲間の元へ駆けていった。
:08/11/03 21:57 :P903i :LUmIhgZI
#339 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 21:59 :P903i :LUmIhgZI
#340 [No.054◆vzApYZDoz6]
田園に囲まれた長閑かな田舎町。
陽の傾いた散歩道を、彼は歩いていた。
今までに歩いた距離は計り知れない。
だが彼が歩くのには意味も目的もなく、ただただ土地を渡るのみ。
終着点はない。
時には道端の草を眺めたり、時には野良猫と遊んで引っ掛かれたり、時には街の人と世間話を交わしたり。
流浪の旅人ではあったが、旅をする目的は特にない。
しかし楽しければいいものと、彼はそう思っていた。
今もまた、摘み取った花の蜜に誘われた蝶々を、花に止まらせまいと遊んでいる。
彼は明日も明後日も、歩き続ける。
:08/11/03 21:59 :P903i :LUmIhgZI
#341 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:01 :P903i :LUmIhgZI
#342 [No.055、057◆vzApYZDoz6]
彼が持つサブバッグは、未知の能力が詰まっている。
物を小さくしたり大きくしたり、違う場所へ瞬間移動したり。
天気を操るのも思いのまま。
彼は青空が好きで、雨が降るといつも青空に変えてしまった。
今日も、ほら。
サブバッグから何かを取り出して、それを空に向ける。
すると、空は爽やかな青空へ姿を変えた。
でも彼の表情は浮かばれない。どうやら悩みがあるらしい。
彼は小さく呟いた。
「どこに行ったのかなぁ、のび太くん…」
:08/11/03 22:01 :P903i :LUmIhgZI
#343 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:02 :P903i :LUmIhgZI
#344 [No.056◆vzApYZDoz6]
「君、俺はとうとうやったぞ!」
「あら、どうしたんですか博士?」
「見ろ! この光輝く左手を!」
「それは…! とうとう凝を使えるようになったのですね!」
「ああ。よし、早速水見式だ!」
「水見式…ですか? 博士の系統は判明しているのに一体なぜ?」
「『念のため』だよ!」
「……あっ、そう」
「………冗談だ。すまん」
:08/11/03 22:03 :P903i :LUmIhgZI
#345 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 22:04 :P903i :LUmIhgZI
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