先輩と旅立ちの唄
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#621 [あかり]
学校の目の前にある川沿いの道で、タクロウ先輩が一人、反対方向から歩いていた。
先輩は、紺のマフラーを首に巻いていた。
「あ…。」
先輩の姿に気づいた私は、無意識に声を出してしまい、その場で足を止めた。
先輩も私の目の前に立った。
:08/11/24 23:58 :SH705i :KS/NgqI2
#622 [あかり]
「あ…あのぅ…、
卒業、おめでとうございます…。」
社交辞令にと、こんな台詞を言った。
「ありがと。」
辺りが暗くてよく見えなかったけど、先輩が微笑んでるのが読み取れた。
「じゃ、また…。」
お辞儀をして、その場を後にしようとした。
「ああ…。」
先輩も、反対側から歩き始めた。
:08/11/25 00:04 :SH705i :JwgW5bj.
#623 [あかり]
そして、卒業式本番―
式は順調に行われていた。
卒業証書授与の時―
三年五組の担任の先生が、一人一人の生徒の名前を読み上げていた。
「…小松順也。」
:08/11/25 00:10 :SH705i :JwgW5bj.
#624 [あかり]
「あーいっ。」
タクロウ先輩と一番仲の良い順也先輩が、
真面目な式とはそぐわない、ひょうきんな返事をした。
静まり返った会場に、一瞬小さな笑いが起きた。
私もおかしくて、顔がニヤニヤしていた。
:08/11/25 00:13 :SH705i :JwgW5bj.
#625 [あかり]
「…塩見タクロウ。」
そして、タクロウ先輩の番が来た。
「はあぁぁいっっ!!」
先輩はこれでもかという大きな声で、起立をした。
クスクスクス…
順也先輩の時と同様、再び小さな笑いが起こった。
:08/11/25 00:15 :SH705i :JwgW5bj.
#626 [あかり]
私が好きだった時の先輩だ―
確かに、先輩はふざけることが多いし、下品なことばかりやってみせるし、
何でこんな人を好きになったんだろう?と思うこともあった。
でも確かに私は、そんな先輩に恋をしていて、憧れていた。
:08/11/25 00:19 :SH705i :JwgW5bj.
#627 [あかり]
私の目には、自然に涙が溜まっていた。
先輩に接触をしようと、あれこれ考えていた時のこと、
先輩と初めて会話した時のこと、
先輩をとにかく、追いかけていた日々。
今、私の視界には、ここから旅立とうとしている、先輩の姿しか見えていない。
:08/11/25 00:24 :SH705i :JwgW5bj.
#628 [あかり]
式最後の、卒業生退場の時―
パンパンパンパン…
在校生や先生たちで、拍手でその姿を見送る。
私は両手が痛くなる位、大きな拍手をした。
:08/11/25 00:32 :SH705i :JwgW5bj.
#629 [あかり]
そして、タクロウ先輩が起立をし、その場を立ち去ろうとした。
振り返った時、先輩は私の方を見ていた。
偶然なのか必然なのかは分からないが、私たちは、目が合った。
先輩はフッと視線を逸らし、会場を後にした。
:08/11/25 00:54 :SH705i :JwgW5bj.
#630 [あかり]
三年生全員が会場から姿を消した後、
二年生も、脚立イスを直したりした後、先生の指示で教室へと戻った。
各クラスのホームルーム中…
今頃、上の階にいる卒業生たちも、最後のホームルームを行っているだろう。
時々、上から拍手や歓声の音が聞こえた。
:08/11/25 01:22 :SH705i :JwgW5bj.
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