先輩と旅立ちの唄
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#631 [あかり]
「あかりちゃん。」
帰りの会が終わった後、いのちゃんが話し掛けにきた。
「三年生、個性的で面白い人が多かったから、何だかもういなくなるなんて、寂しいね。」
いのちゃんが窓の景色を見ながら、私に言った。
「うん…。」
:08/11/25 01:25
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:JwgW5bj.
#632 [あかり]
「あー!」
突然、いのちゃんが叫んだ。
「な、何、いのちゃん!?」
「あかりちゃん、カモノハシのキーホルダー、自分のかばんに着けてどうすんのよ!?」
いのちゃんが、机の横に掛けていた、私のかばんを指差しながら言った。
:08/11/25 01:29
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#633 [あかり]
「え?えっと…」
「これは塩見先輩にあげるものでしょ!?
自分のものにしちゃいけないじゃん!」
「タクロウ先輩のことは、竜樹くんに忘れるって言ったから…。」
「それとこれとは、話が別じゃない!?
あかりちゃんいつも言ってたじゃん、塩見先輩に『ありがとう』が言っていたって!」
:08/11/25 01:41
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#634 [あかり]
「塩見先輩とは、もう会えなくなるんだよ?
このままだと、後悔しちゃうんじゃない?」
「うっ、うん…。」
「あたし、塩見先輩のことが好きなあかりちゃんが、好きだったよ。
あの頃のあかりちゃんの為にも、ここは一つ、いい踏ん切りをつけようよ!」
:08/11/25 02:14
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#635 [あかり]
私といのちゃんは、一つ上の卒業生の階へと上がった。
私の右手には、カモノハシのキーホルダーが握られていた。
全クラスはまだ、ホームルームが行われているようで、
廊下は人っ子一人いなかった。
私たち二人は、三年五組の教室の前で立っていた。
:08/11/25 02:45
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#636 [あかり]
他の教室から、わらわらと卒業生が、廊下に出てきた。
「あ!あかりちゃん、ちょっと人捜ししていい?
三年五組はまだ終わってないみたいだし…」
「うんっ。」
私といのちゃんは、いのちゃんと同中だった先輩に声を掛け、少し談話をした。
:08/11/25 03:12
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#637 [あかり]
「あ!五組の方、終わったみたい!
もっかいあっち行こ!
じゃあ先輩…また!」
私といのちゃんは、再び五組の教室まで駆けていった。
廊下には人が密集してて、少し通りにくかった。
私たちは周りにいる人を避けながら足早に歩いた。
:08/11/25 03:18
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#638 [あかり]
「すみません!塩見タクロウ先輩いますか?」
私は五組の人らしき男の先輩に、声を掛けた。
「えっ?しおみんならさっき帰ったみたいだけど―…」
―
あまりに一瞬のことで、私は言葉が出なかった。
咄嗟に、いのちゃんを置いて、足は玄関の方へと向かっていった。
階段を四階分下り、室内スリッパのまま外を飛び出した。
:08/11/25 03:24
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#639 [あかり]
すると、昨日タクロウ先輩と会った川沿いの道に、彼の姿が―
息を切らしながら、先輩に追い付こうと、全速力で走った。
「し…塩見先輩っ!」
私の呼ぶ声に、先輩が振り返った。
:08/11/25 03:27
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#640 [あかり]
「こ、これ…。
お、遅くなったけど…修学旅行の…お土産…です…ハァハァ…。」
やっとの思いでいいながら、カモノハシのキーホルダーを目の前に出した。
「タハハ。またマイナーなのを買ったもんやな〜。」
私の手からキーホルダーを受け取った先輩は、まじまじと見つめながら言った。
:08/11/25 03:32
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