うまく言えない
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#601 [紗奈]
そんな状態がずっと続いてた。


気付いた頃にはもう夏休み前。







うちはいつものように広場のすみの方に座っていた。

⏰:09/05/20 19:44 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#602 [紗奈]
「なあ」



後ろから声をかけられた。



「‥はい?」




背が低くて目がクリっとした男が立っていた。



‥誰?

⏰:09/05/20 19:46 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#603 [紗奈]
「いっつも何してんの?」

「‥は?」

「いきなり何?って感じやんな!!俺の名前は‥」

「自己紹介とかいらん。気安く声掛けんといて。」



うちは立ち上がってその場を去った。



‥鬱陶しい。

⏰:09/05/20 19:51 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#604 [紗奈]
だけどそいつはなぜか毎日毎日話しかけてくるようになった。


うちは完全にシカトしてるのに1人で勝手に横で喋ってた。




うちが立ち上がれば


「またな!」


って言ってた。

⏰:09/05/20 19:55 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#605 [紗奈]
名前も歳もしらない。


お互いのことを話すこともない。



別に何かあるわけでもない。




うちの中では



"勝手に話しかけてくる男"

⏰:09/05/20 19:57 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#606 [紗奈]
夏休みに入ってから、うちは相変わらずぼーっとしてた。


すると佳基さんからの着信


「もしもし?」

「あ、久しぶり」

「うん。何?」

「夏休みやん、帰って来やんの?」

「特に予定は無い」

⏰:09/05/20 20:28 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#607 [紗奈]
「帰っておいで。一緒に曜の墓参り行こうか」

「‥‥」



曜のお墓にはまだ行ってなかった。

行けなかった。

心と体がついていかなくて‥。

⏰:09/05/20 20:29 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#608 [紗奈]
「‥行くよ」



そろそろちゃんと曜に向き合うべきだ。

5ヵ月も向き合えずに、うちは何してるんだろうって思ったから。


「帰ってきたら連絡してな」


佳基さんはそう言って電話を切った。

⏰:09/05/20 20:31 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#609 [紗奈]
3日後、うちは地元に帰った。

佳基さんに連絡をして、迎えに来てもらった。



「痩せたな」

「そーかな」



それだけの会話。

そのまま無言で曜のところに向かった。

⏰:09/05/20 20:50 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#610 [紗奈]
曜のお墓の前に立つと、自然と涙が出てきた。


曜に言いたいことがたくさんあって、座って手を合わせた。


たくさんのありがとうと
たくさんのごめんね

そして

「愛しています」

⏰:09/05/20 20:54 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#611 [紗奈]
ずっとずっと泣き続けた。

お墓の前で泣き崩れた。




「曜は紗奈ちゃんの幸せを願ってるから。曜はそういう奴やったから。やから、紗奈ちゃんは紗奈ちゃんの道を進みや。幸せになりや。曜がそれを望みやることくらい、紗奈ちゃんもわかっとるやろ?」

⏰:09/05/20 20:58 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#612 [紗奈]
.





そのまま無言で帰った。





少し気持ちが軽くなった自分がいて、自分の中で考えがまとまった。

⏰:09/05/20 21:10 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#613 [紗奈]
曜を忘れることはこれからも有り得ない。

だけど、曜を引きずってこんな状態のうちを見たら曜は笑うよね。



笑うし、怒る。



曜はそういう奴だ。




すべてのものに向き合おう‥。そう決めた。

⏰:09/05/20 21:14 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#614 [紗奈]
.





だから、曜‥



見守っててね?







.

⏰:09/05/20 21:18 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#615 [紗奈]
夏休みが終わり、後期になった。


あれから広場で泣くこともなくなって、普通に大学生活を送った。



「待って!紗奈ちゃんっ!!!」



大学の帰り道、後ろから聞こえた聞き覚えのある声。

⏰:09/05/20 21:41 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#616 [紗奈]
「なんでうちの名前‥」


「あいつらに聞いた」


そいつは後ろの男集団を指差した。


「そ。」

「最近なんで来ーへんの?」

「行く理由が無いから」

⏰:09/05/20 21:43 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#617 [紗奈]
「‥今からどっか行かん!?」

「行かんし」

「‥じゃあ明日広場で待ってるから」



ここまで執着される意味がわからない。




だけどなんとなく‥ただなんとなく

次の日、広場に向かった。

⏰:09/05/20 21:47 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#618 [紗奈]
「ほんまに来てくれた!!」

「あんたが呼んだくせに何やん」

「あんたやなくて"柏岡 宏樹"」

「あっそ」

「俺3年やで?」

「‥まじ?笑」

「何年や思ってたん?」

「調子こいてる1年やと‥」

「まじナメてんな〜!!笑」

⏰:09/05/20 21:54 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#619 [卍のりMAMA卍]
感動しました
てか
イィ人こそ
早く亡くなるてのゎ本当ですね

⏰:09/05/20 21:59 📱:SH903i 🆔:0fAO.qos


#620 [紗奈]
そんなのあるんですかね?
わかんないですけど‥
やっぱり今でも切ないです。
よかったら最後まで
お付き合いください

⏰:09/05/20 23:10 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#621 [紗奈]
久しぶりに、ちょっと笑えた。

なんか良い奴じゃんって思って、とりあえずこの人と向き合ってみることから始めようと思った。



そこから友達の輪を広げていけばいいじゃないかって思った。

⏰:09/05/20 23:12 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#622 [紗奈]
それからうちは宏樹と話をした。

今まで一方的だったけど、ちゃんと言葉を返した。




うちの大学にはスポーツの科があって、うちは違うんだけど宏樹はそこの科だった。

そして陸上部だと言うことも知った。

関西弁丸出し、喋るの大好き。



宏樹と喋るのは楽しかった。

⏰:09/05/20 23:16 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#623 [紗奈]
「あ、今日練習来るか!?」

「は?嫌やしめっちゃお邪魔虫やん」

「みんな優しいから来てみ!!スタンドから観てるだけでもえーから」



うちは悩んだあげく行くことになった。



大学内には競技場があって、スタンドがある。

うちはそこに上がって座ってた。

⏰:09/05/20 23:21 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#624 [紗奈]
結構な人数が円になってミーティングをしてた。

うちはそれを見てた。


練習が始まったらしくて、みんながバラバラになると、宏樹が上がってきた。


「練習は?」

「俺怪我してるから練習できんへん」

⏰:09/05/20 23:24 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#625 [紗奈]
「うわーッ!!柏(宏樹)がナンパしよるー!!」

そう言うとみんながこっちを向いた。

まじで恥ずかしかった!!!


すると何人かがスタンドに上がってきた。

⏰:09/05/20 23:26 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#626 [紗奈]
「柏とどーゆー関係なん!?柏が女の影見せるとかまじ珍しすぎやん!!」

「ただの話し相手ですよ」

「紗奈ちゃん‥冷たいな‥笑」

「だってそーやん!!」

「そーやけど!!!」

そんなやりとりを見て笑う先輩たち。

うちはそのメンバーにすぐに馴染めた。

⏰:09/05/20 23:29 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#627 [紗奈]
練習が終わってから先輩たちと飲みに行くことになった。


大学2年目にして初めてのことだった。


メンバーは

宏樹
コウさん(4年♂)
晴也さん(3年♂)
めぐさん(3年♀)
真紀さん(3年♀)


うちらは近くの居酒屋に行った。

⏰:09/05/21 00:30 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#628 [紗奈]
飲み放題の店で、陸上部の卒業生が働いているらしくて


「ゆりみさん久しぶりで〜す」


とかってみんな挨拶してた。


ゆりみさんはうちの3つ上にあたる。

1年のときに4年っていう関係。

茶髪でゆるくウェーブのかかった髪。

笑顔が可愛くて、好かれそうな感じ。

⏰:09/05/21 00:37 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#629 [紗奈]
「初めましてやんね?うち、ゆりみ。仲良くしてね」

「あ‥はい。うちは紗奈です」



軽く挨拶を交わしてうちらは席に通された。

⏰:09/05/21 19:24 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#630 [ぁあぁい]
失礼します。

>>001-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800

⏰:09/05/22 02:20 📱:N705i 🆔:8UYw.VBo


#631 [紗奈]
とりあえず飲みまくった。

みんなよく飲むこと飲むこと。


色んな話をした。

めっちゃ楽しくて、あぁ、これが大学生かって思った。

⏰:09/05/22 02:56 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#632 [紗奈]
基本酒は強いんだけど、それよりみんなさらに強い。

もおいいだろってくらい飲んで酔いまくってふらふらなうちに対してまだ飲みまくるみんな。

いや〜真剣に焦った。


「そろそろおひらきにしよっか」

⏰:09/05/22 03:00 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#633 [紗奈]
「紗奈ちゃん、送ってくで」

宏樹はふらふらなうちを支えて立ち上がった。

「柏〜お持ち帰りとかなしやで!」

‥とめぐさん。

「大丈夫やて。まかしとき」


そうしてうちと宏樹は歩き出した。

⏰:09/05/22 03:03 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#634 [紗奈]
「‥宏樹、気分悪い‥」


酔ったまま動いて更に酔いが回ったかなんかで吐き気におそわれた。


「大丈夫か?ちょっと公園行こか」


うちらは近所の公園のベンチに腰を下ろした。

⏰:09/05/22 03:07 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#635 [紗奈]
「吐きそう?トイレ行くか?」

「公園のトイレとか怖いし嫌や。」

「ガキか!笑」



結局そのままトイレに行かずに宏樹に膝枕してもらってベンチに寝転がった。

⏰:09/05/22 03:09 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#636 [紗奈]
「なぁ、聞いてええか?」

珍しく真剣な口調の宏樹。

「ん?」

「‥何で泣いてたん?」






宏樹は少し気まずそうに言った。


酔ってたせいもあってか、涙があふれてきた。

⏰:09/05/22 03:11 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#637 [紗奈]
「ごめん。言えんならええんやけど‥!!ごめんな。泣かんといて?」


「‥‥ぃたい‥」

「ん?」




「逢いたいよっ‥‥」



うちは声をあげて泣いた。

なんかもう、自分じゃないみたいに‥。

⏰:09/05/22 03:15 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#638 [紗奈]
宏樹はうちが泣き止むまでずっと頭を撫でてくれてた。

「‥よくわからんけど、その人が運命の相手なら、またどこかで会えるはずやで?」

「‥何も知らんのにそんなこと言わんといてよ‥‥。逢いたくてももう‥逢えんのんやからっ‥!!」


何も知らない宏樹に曜を否定されたようで‥曜は運命の人やないんやって言われたみたいで‥悔しくて‥悔しくて‥宏樹を突き飛ばした。

宏樹なりの、精一杯の励ましだったんやろうけどね。うちには辛かった。

⏰:09/05/22 03:26 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#639 [紗奈]
うちはそのまま1人で家に帰った。

曜に逢いたいと‥願いながら‥。







宏樹、あのときはごめん。

知るわけ無いやんな。うちの事情なんか。


八つ当たりってゆーんかな?

とにかく‥ごめんな?

⏰:09/05/22 03:29 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#640 [紗奈]
次の日、学校に行った。

遠くに宏樹の姿が見えて、うちは急いで隠れた。


いつもみたいに笑顔じゃない宏樹。

うちのせいや‥って思った。

笑顔やない宏樹は宏樹やない。

やけど、宏樹に声をかけに行く勇気はなかった。

今、宏樹に声をかければ、多分‥また泣いてしまうから‥。

また宏樹を‥傷つけてしまうから。

⏰:09/05/22 03:33 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#641 [紗奈]
その一週間後、たまたま道でゆりみさんに会った。

「紗奈ちゃんやん!久しぶりやね」

「あ‥はい」

「なあ、紗奈ちゃんてバイトしてる?」

「してないですけど」

「うちでバイトしやん?人足りてなくてさあ」

「‥えっ」

「お願い!ほんま困ってんやあ‥」

⏰:09/05/22 03:38 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#642 [紗奈]
確かにバイトしないといけないとは思ってたし、時給も良いし、暇だし、ゆりみさんにこんな頭下げられてるし‥




考えたあげく、居酒屋でバイトすることになった。






居酒屋"海"

⏰:09/05/22 03:40 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#643 [紗奈]
海にはうちの大学の生徒も何人かいた。


みんな大歓迎してくれたし、スタッフ全員ノリが良くてすぐに馴染めた。



学校が終わってから2時までバイト。

帰って寝て起きて学校。



超ハードだった。

⏰:09/05/22 03:44 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#644 [紗奈]
そんなことが1ヶ月続いて、ゆりみさんと帰りが一緒になった。


「今からうちんち来やん!?」

次の日は土曜日だったし、うちはゆりみさんちにお邪魔することになった。



ゆりみさんちは海の近くで、広くて綺麗な部屋だった。



そして、コルクボードに貼ってある彼氏らしき人との沢山の写真。

⏰:09/05/22 03:49 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#645 [紗奈]
「彼氏ですか?」

「‥うん!!」

「仲良さそうですね」

「‥まあ正確に言えば‥彼氏だった人かな‥?」

「え‥?」




「2年前‥事故で亡くなってまった」

⏰:09/05/22 03:52 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#646 [紗奈]
‥確かに、写真の日付は2年前から止まっていた。


「‥あのっ‥」

「気にせんといて!!しょっぱなからこんな話してもおもんないやろ!?もっと明るい話っ‥‥」

「ゆりみさん‥うち‥」

「どした?」

「うちも‥3月に彼氏を失いました。」


同じ境遇の人が‥こんな近くにいるなんて‥。正直驚いた。

⏰:09/05/22 03:55 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#647 [紗奈]
ゆりみさんは、自分の話をしてくれた。


彼氏は大学の先輩で、彼氏が就職して遠距離になって、久しぶりに彼氏がゆりみさんに会いに来てくれて、その帰り道、事故で亡くなったらしい。


ゆりみさんは強いと思った。

毎日何もなかったように笑顔で生きてる。


だけど、まだ好きなんだろうな‥って部屋を見ればわかる。

⏰:09/05/22 04:01 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#648 [紗奈]
うちも曜の話をした。

傷の舐め合いとか思うかもしれない。

だけど、辛さを理解してくれる人がいるってことは、すごく安心できるんだ。


「彼が亡くなってから、彼氏ができなかったわけじゃないんだ。何人かと付き合った。だけど、彼の話をすると、傷物を扱うみたいにされちゃって‥ダメになっちゃうんやよ。‥全部を受け入れてくれるような人に出会わないかんね。紗奈ちゃんも、その彼を忘れろとかやなくて、ちゃんと前向いて歩きや?理解してくれる人なんて、案外近くにいてるんやと思うで?」

⏰:09/05/22 04:06 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#649 [紗奈]
ゆりみさんは続けた。


「てか‥柏と何かあった?」

「え?」

「柏、めっちゃ落ち込んでてさ、めっちゃ相談されてん。」

「‥宏樹は‥悪気があったんやないと思います。」

「柏は優しいから。凄い周り見てる子やから。柏、ほんま悩んでて、紗奈ちゃんから避けられてるって。良かったらちゃんと話してあげて?」

⏰:09/05/22 04:11 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#650 [紗奈]
宏樹にうちは何を話せばいいんだろう?

曜が亡くなってしまったこと?

曜に逢いたいってこと?




話して何になるんだろう?




宏樹はうちに何を求めてる?

⏰:09/05/22 04:14 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#651 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600

⏰:09/05/22 06:43 📱:D903i 🆔:8O2J4oUk


#652 [我輩は匿名である]
>>601-700

⏰:09/05/22 08:10 📱:D903i 🆔:8O2J4oUk


#653 [紗奈]
うちはその日、ゆりみさんちに泊まってから帰った。








‥宏樹には元気を貰ったけど、宏樹に曜のことを話す理由なんて無い。

⏰:09/05/22 09:44 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#654 [紗奈]
季節は冬。

12月‥。



時がたつのは早いな‥と思いながら、クリスマスムードになっていく街を見つめた。


相変わらず、あれから宏樹とは話してなくて、すれ違うときに感じる視線を、うちは無視していた。

⏰:09/05/22 10:24 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#655 [紗奈]
そんなある日、たまたま競技場の前を通りかかった。



「さっ‥紗奈ちゃんっ!!!!」


近付いてくるのは、紛れもなく宏樹だった。

うちの腕をつかむ宏樹。

「紗奈ちゃん‥あのさ‥」

「練習中やろ?練習しいや」

うちは掴む手を振り払った。

⏰:09/05/22 10:32 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#656 [紗奈]
「紗奈ちゃんごめん!!!」

「は?」

「ゆりみさんから聞いた‥。」

「‥何を?」

「彼氏のこと‥。俺‥無神経なこと言って‥‥‥」



ゆりみさん‥

何で言ったん?

そんな軽い話やないやん‥

⏰:09/05/22 14:11 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#657 [紗奈]
「‥ならもう話すこと無いやんね。そーゆーことやから。」

「待てやっ‥俺はっ‥」

「知られたくなかった。‥もううちに構わんといてくれるかな?何でそんなうちの中に入り込もうとするんかしらんけど‥鬱陶しいんやて」

⏰:09/05/22 14:16 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#658 [紗奈]
.



もう嫌や。



うちと曜の間に


誰も入らんとってよ‥。



嫌や。

⏰:09/05/22 14:26 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#659 [紗奈]
バイトやめようと思って店長に電話した。


「お願いやから辞めんといて」



そう必死に頼まれて、辞めるに辞められなかった。



「ゆりみさんが仕事入ってないときしか行かないですけどいいですか?」



どんだけ上から目線なん、うち(笑)

⏰:09/05/22 18:55 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#660 [紗奈]
店長は了承してくれた。

こんなわがままで申し訳ない。



そして冬休みに入り、冬休みが終わるまではとりあえず休みにしてもらって、うちは地元に帰った。

⏰:09/05/22 18:57 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#661 [紗奈]
「佳基さん、帰ってきたよ」

「じゃあ行こっか」

「うん」



佳基さんは車を走らせる。

曜の場所へ向かって‥。

⏰:09/05/22 21:54 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#662 [紗奈]
曜、寒くない?


うち、前に進めてるかな?



‥うち、まだ曜のこと好きで好きで仕方ないよ‥。



曜は、うちがどうしたら笑顔でいれるかな?



弱虫でごめんね

⏰:09/05/22 22:42 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#663 [紗奈]
帰り道の車の中、佳基さんが言った。


「好きな人とか、できた?」




「‥できるわけないやん」



「厳しいこと言うようやけど、曜はもう還って来ん。やから‥‥」


「佳基さんに何がわかるん?」

⏰:09/05/22 22:50 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#664 [紗奈]
「わからんよ。やけど、ことままじゃだめなことくらい紗奈ちゃんもわかっとるやろ!?」


「うちのペースでいいやん!何で佳基さんに強制されないかんのよっ‥」


「‥そうかもしれんな。やけどな、紗奈ちゃん、何も言わんかったらずっと今のままになるやろ?‥俺もずっと曜と一緒におって、曜にいっぱい紗奈ちゃんのこと聞かされて、紗奈ちゃんのことも見てきとんやって。‥やからわかるんや。」

⏰:09/05/22 23:01 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#665 [紗奈]
「‥時期が来れば進むから。ほっといて」



うちらはそれから無言だった。


佳基さんが心配してくれてることくらいわかってる。


佳基さんはうちのことすごく考えてくれてる。



‥わかってる

⏰:09/05/22 23:07 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#666 [紗奈]
うちはどうしたいんだろう?

前に進むって決めたじゃないか。



佳基さんの言葉も聞かず

宏樹のことも無視して‥



何も変わってないじゃないか。




曜はこんなこと望んでない。

⏰:09/05/22 23:54 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#667 [紗奈]
曜に会いに来るたび

色んなことを考えさせられるんだ。



それは今も変わってないよ。






今も、うちは曜に助けてもらいっぱなしだ。

⏰:09/05/22 23:56 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#668 [紗奈]
初詣、凌斗と美弥子とご一緒させていただいた。


お前絶対邪魔だろって思った方!!






それは正しい。

だけど誘ってきたのは凌斗。

美弥子も超乗り気だった。

⏰:09/05/23 10:39 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#669 [紗奈]
昔から、何でここまで良くしてくれるんだろう?ってくらい良くしてもらってた。

‥なんでかな?なんてゆーか、凌斗がいて、美弥子がいて、うちがいて、それがすごく成り立ってたんだろうね。


うちが地元離れるってとき、一番寂しがってたのなんだかんだでこの2人だったと思うもんね。笑

⏰:09/05/23 10:41 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#670 [紗奈]
もちろん2人は曜のことを知ってる。

だから、気晴らしに誘ってくれたってのも間違いじゃないと思う。


曜がいなくなってから、うちは全く2人に話してなかった。


一番素直になれる2人の前で、話してなかった。


何でかな?‥確信をつかれるのが怖くて、話せなかったのかもしれない。

⏰:09/05/23 10:57 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#671 [紗奈]
バカみたいな話ばっかりして、お詣りして、‥おみくじは引かなかった。


「うちはいいや」


って。



おみくじで何かいろいろ左右される気がして嫌だったから。

⏰:09/05/23 17:46 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#672 [紗奈]
.



初詣の帰り道、美弥子は言った。



「うちらはいつでも力になるから。やから、いつでも頼って?楽しいとき、嬉しいとき、悲しいとき、寂しいとき、悔しいとき、いつでも何でも言ってくれて良いから。うちらに遠慮とか無しやろ?うちらはいっつも紗奈の味方なんやからな。紗奈のそんな顔見るの嫌や。何で全部ひとりで背負いこむんよ‥」


そう言って、泣いてた。

⏰:09/05/23 17:56 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#673 [紗奈]
「紗奈はガキの頃から色んなこと経験しすぎとんや。それを全部持ちっぱなしなんやって。‥辛いとき、いつでも来てええから。たまには休憩したらええやん。」


凌斗もそう続けて言った。




「‥ごめんなっ」




2人はずっと、うちから言うのを待っとったんやろうな‥。

⏰:09/05/23 18:07 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#674 [紗奈]
その日は何も話さずに別れて帰った。



2人と別れてから帰る道のりで、久しぶりにあいつと会った。









‥七瀬

⏰:09/05/23 18:12 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#675 [紗奈]
何年ぶりやったんかな?

全く誰かわからんかった!


「紗奈やん!」


って言われて


頭の上には?ばっかりだった。



「七瀬やって!」

⏰:09/05/23 18:13 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#676 [紗奈]
‥落ち着いた?

‥そうでもないか(笑)

でも、変わってた。



「七瀬か。久しぶり」

「元気やったか?」

「まあまあかな」

「‥なんかお前変わったな」

「七瀬に言われたくないよ」

⏰:09/05/23 18:18 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#677 [紗奈]
「‥何かあったんか?」

「七瀬には関係ないやろ」

「‥何があったんか知らんけど
あんま思い詰めんなよ」

「ちょっとは大人らしいこと
言えるようになったんやね」

「まあもう成人やからな。
ちょうど良い節目かなー
とか思って(笑)」

「‥うちも変わらんとなぁ」

成人式も近い。

それを一つの節目にしよう。

⏰:09/05/23 18:23 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#678 [紗奈]
成人式の日‥


うちはめっちゃ早起きして化粧して髪セットして振り袖着て‥成人式の会場に向かった。


懐かしい顔が並ぶ。

ぷち同窓会みたいな感じ。

⏰:09/05/26 16:08 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#679 [紗奈]
そこで久しぶりに会った"夢"。

うちは高校入ってから志乃とばっかり連んでたし、夢とはそこまで連絡を取ってなかった。

(ちなみに志乃は違う市だから会場が違う。)

でも、うちの噂は少なからず聞いてたと思う。


「夢、久しぶりやね!」

「やんね!元気やった?」

少しの時間であのころみたいな仲に戻れた。

⏰:09/05/26 16:13 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#680 [紗奈]
なんか色々話聞いて‥

なんか酔っ払いが暴れ出した。



「あれ七瀬やん 笑」

「ほんまや。馬鹿やっとんの」


落ち着くんやなかったんかい!


って心の中で笑いながら見てた。

⏰:09/05/27 10:56 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#681 [紗奈]
しばらくしてから七瀬がこっち来た。



「一緒にあっちで飲む?」

「あ〜いや、いいわ」

「何でや〜!紗奈ちゃ〜んっ飲も!」


七瀬は強制的にうちをひっぱっていった。

それについてくる夢。

⏰:09/05/27 11:02 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#682 [紗奈]
でも、最悪な別れ方だったけど、なんだかんだ一番長く一緒にいた七瀬とこうやって話ができたりするのは、やっぱ嬉しかった。

時間が解決してくれるって、こーゆーことなんやろうね。

⏰:09/05/27 11:09 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#683 [紗奈]
とりあえずひたすら暴れる七瀬たちを見ながらうちらは爆笑。


それから一旦解散してから着替えて駅前。


中学に戻ったみたいやった。

少し大人になった七瀬が、時々かっこよく見えたりして‥。



まあ好きにはならんかったけどな 笑

⏰:09/05/28 11:09 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#684 [紗奈]
「あのときはごめんな」


落ち着いてきた頃、七瀬が言った。



「はは。もお気にしてないよ」

「まじで俺ガキやったわ‥ほんまにごめん。あとさ‥噂で聞いたけど‥あいつ‥‥曜ってやつ‥さ‥」

「あ〜‥うん。‥多分噂通りやよ」

「そっか‥‥‥」

⏰:09/05/28 18:40 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#685 [紗奈]
「でも、大丈夫やから。前に進みやるから」

「‥無理すんなよ。お前、すぐ強がるし」

「もーガキやないし大丈夫」




根本的なところはやっぱり許せないでいたけど、でも七瀬を憎むことはできなかった。


あと、やっぱ七瀬は七瀬だった。

⏰:09/05/28 21:16 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#686 [紗奈]
「七瀬、良い女できた?」

「一応、今結婚考えとる女がおる」

「一応って何やん!笑 よかったな。」

「まあまだわからんのやけどね。相手の親とか、色々問題あって。まだ俺も二十歳なったばっかやしさ」

「確かにまあ大変やろうね」

「でもな、こんなん言うのもなんやけど‥紗奈が一番良い女やったよ。‥これだけはほんまに言える。今の女よりも紗奈のが良い女。」

「何言いよん。彼女が可哀想やろ!」

⏰:09/05/29 00:10 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#687 [紗奈]
七瀬は続けた。

「やからな、紗奈には幸せになってほしいんや。あの頃は、素直に紗奈の幸せが願えんかった。紗奈を幸せにできるのは俺だけや!とか思っとった。そのせいで紗奈の周りの奴らいっぱい傷つけた。やけど今は、紗奈の幸せを願っとる。紗奈を幸せにするのは俺やなくてほかの誰かやけど、それでええから幸せになってほしい。‥俺が一番愛した女やから。」




七瀬のその言葉に、うちは何も返せなかった。

⏰:09/05/29 02:13 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#688 [紗奈]
家に帰って考えた。


幸せか‥。




時が来れば‥。






.

⏰:09/05/29 22:18 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#689 [紗奈]
七瀬が言ったことが本当なら、うちは七瀬と同じ気持ちだ。



うちが曜に対する気持ちと

七瀬がうちに対する気持ち。




これから先、上回る人なんかいない。

⏰:09/05/29 22:22 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#690 [紗奈]
それからうちは大学に戻った。

地元が楽しかったから戻りたくはなかったんだけど。


頑張らないといけない。



前に進むためにも。

⏰:09/05/31 19:34 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#691 [我輩は匿名である]
もう終わり?

⏰:09/06/03 02:27 📱:N906imyu 🆔:zsHZml3.


#692 [紗奈]
更新遅くてすみませんまだ続きます。
今二日酔いなんで更新できないですけどまた書きます

⏰:09/06/03 13:27 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#693 [紗奈]
.





「宏樹っ」





立ち止まり、振り向き、驚いた顔をする宏樹。

うちは宏樹に近付いていった。

⏰:09/06/04 01:13 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#694 [紗奈]
「えっ‥え?」


戸惑う宏樹に対してうちは冷静。


「話ある」



宏樹はそこにいた友達にことわり、うちについてきた。

⏰:09/06/04 01:23 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#695 [紗奈]
うちらは広場の隅に腰を下ろした。



うちらが出会った場所でもある。



「宏樹‥ごめん」

「なんで紗奈ちゃんが謝るん?謝るんは俺のほうやん‥」

「いや‥宏樹のこと何も考えてなかった。自分だけ被害者ぶってた」

⏰:09/06/04 01:43 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#696 [紗奈]
「俺、ずっと考えとった。紗奈ちゃんに何ができるんかな?って。でも、俺無力やなあ〜って思ってた」

「‥うちは、あのとき宏樹が話しかけてくれたことで変われた部分ってあるよ。宏樹は今までうちの近くにはおらんような人やったし、新鮮だった。しかも、宏樹が話しかけてくれてなかったら、色んな物と向き合うこともできんかった。やから、ありがとう。よかったらこれからも‥仲良くしてほしいです。」

⏰:09/06/04 01:51 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#697 [紗奈]
.



「ありがとう。俺も仲良くしたいから、よろしくな。」




それからうちらは馬鹿みたいに話した。

ほぼ毎日宏樹と広場で話してた。

自然と陸上部の先輩たちも広場に来るようになって、うちもたまに陸上部の競技場に行くようになった。

⏰:09/06/05 02:09 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#698 [紗奈]
ある日、うちが競技場に行くと、4年生のキャプテンと咲香さんが来た。


「お願いがあるんやけど‥」


超深刻な咲香さん。




話を聞けば、マネージャーをやってほしいとのことだった。

⏰:09/06/05 03:05 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#699 [紗奈]
咲香さんは3年生。

陸上部のマネージャーは、咲香さんだけで、4年になれば就活も忙しくなるし、部活にもあまり出れなくなるかもしれない。

だけどマネージャーがいないと成り立たないため、ずっとマネージャーを探していたらしい。

その時ちょうどいたのがうちってわけだった。

4年のキャプテンはそれをうちに頼むだけのためにその日部活に来ていたらしい。

⏰:09/06/05 03:14 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#700 [紗奈]
「うちまじでそーゆーことしたことないんですけど。スポーツとか全く興味無いですし」


だってそうやん。

今まで遊びまくってきたうちが、何で陸上部のマネージャー?みたいな。



そんな純粋で爽やかな世界無理やし。笑

⏰:09/06/05 03:16 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#701 [紗奈]
「紗奈ちゃんならみんな受け入れてくれると思うしっ!ほんまにお願い!」


「いくら咲香さんのお願いでも無理ですわ。ほんまにすんません」


うち、世話するよりされるほうやし。
これだけは譲らんかったな。

でも、競技場に顔出したときは必ず、何かしら手伝うようにはなった。

部員になってしまえば責任が生じるけど、そうじゃなかったら責任なんかないからマネージャーやらなかったってのもあるかもな。

⏰:09/06/06 02:34 📱:D905i 🆔:☆☆☆


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