微妙な10センチ。〜最終〜
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#501 [あき]
『あきが悪い!カバンなんて車に置くかぁ?相変わらず馬鹿なんだからっ。』
『…わかってるよぉ…』
『だーっ!!うぜーっ!〃』
口は悪い。
慰めたってくれたっていいじゃん。
大丈夫だよって、言ってくれてもいいじゃん。
優しい言葉なんて
何にも言わない。
言わないけど。
いつもいつも
私がピンチの時には、スーパーマンの様に現れて。
私が泣いてると
傍にいてくれる。
それが、なおちゃん。
:09/09/24 23:37
:W64S
:RZFU4G8o
#502 [あき]
そんな、なおちゃんの優しさが好きだった。
そんな、なおちゃんの全てが好きだった。
そんな、なおちゃんだって、わかってたのに。
なのに私は、求めるものが強すぎて。
そんな自分に負けた。
『てか、他に電話する所ないのか?会社は?もう大丈夫なのか?』
なおちゃんの言葉で、はたと思い出す。
:09/09/24 23:43
:W64S
:RZFU4G8o
#503 [あき]
『あ……やばい…』
西条さん。
最後に連絡をしたのは、もう何時間も前。
私は[一時間]という期限を切ったメールが最後だった。
あれから、私は、車上荒らしに合って、パニックになって、交番に連れてかれて、何時間も拘束されて……
そして、今、なおちゃんと二人で帰ってきた。
もう真夜中だ。
:09/09/24 23:46
:W64S
:RZFU4G8o
#504 [あき]
ソファーから起き上がると、バタバタと寝室に駆け込む。
引き出しを、ひっくり返して、書類を引っ張りだした。
『電話番号…電話番号……!!』
もちろん、携帯電話がない今、西条さんの番号すらわからない。
確か、この引き出しに入れたはずだと思えたボックスを漁ると、乱雑に折り曲げられた、書類が出てきた。
『あった!!』
彼の会社の番号。
ドタバタとリビングに戻って、なおちゃんの胸ぐらを掴む。
:09/09/24 23:50
:W64S
:RZFU4G8o
#505 [あき]
『ちょっ!!携帯!!貸してっ!!!』
私は、差し出された携帯に、彼の会社番号をプッシュする。
確か、前に聞いた事がある。夜勤の人がいるから、いつでも電話は繋がると。
祈るような思いで、私は携帯を握りしめた。
数回のコールで、夜勤の誰かに繋がる。
勿論、それは西条さんの声ではなかった。
名前を名乗り、西条さんの所在を尋ねる。
案の定、彼はとっくの前に帰社していた。
:09/09/24 23:55
:W64S
:RZFU4G8o
#506 [あき]
『恐れ入りますが、急用なので、連絡先を教えて下さい。』
そう伝える私に、電話の向こうの誰かは、簡単に、西条さんの携帯番号を並べてくれた。
お礼を言って、慌てて電話を切る。
直ぐ様、また、その11桁の番号をプッシュした。
これが、彼の天敵(勝手にそう思っている)なおちゃんの番号だとか、なんだとか、考えちゃいない。
とにかく、焦っていた。
:09/09/24 23:59
:W64S
:RZFU4G8o
#507 [あき]
呼び出し音が緊張を増す。
なかなか繋がらないコールは留守番電話に繋がった。
『お疲れ様ですっ。あきです。いろいろあって、連絡出来ませんでした。また連絡します』
そうメッセージを残す。
助かった…
正直、そう感じる。
苦笑いをしながら、なおちゃんに携帯を返した。
すると、直ぐ様、なおちゃんの携帯電話が鳴り響く。
画面を見つめ、私に手渡す。
『あきじゃねーの?』
画面を見ると、おそらく先程私がプッシュした、西条さんらしき番号。
『…ごめっ。借りる!』
私は、慌てて通話ボタンを押した。
:09/09/25 02:50
:W64S
:NwbTHFX6
#508 [あき]
『もしもしっ…』
《ああっ?》
明らかに不機嫌な西条さんの声は、私の心臓をえぐり抜いた。
『…ごめんなさい。』
《…何回掛けたと思ってんだよっ。電源切って、何してんだよ!?何?この番号?》
私の話はさて置き、彼はまず怒りを私にぶつける。
『帰りにね、寄り道したら…車上荒らしに合って。携帯盗られた。これ、今、借りてるの。』
《はあ??》
『…だから…交番に行ってて……』
:09/09/25 02:55
:W64S
:NwbTHFX6
#509 [あき]
《それならそうと、電話してこいよっ!!》
『だからっ…携帯も盗られちゃって…パニックなっちゃって…連絡忘れてた…。ごめんなさい…』
あの時。
なおちゃんの顔はすぐに思い出せても。
西条さんの事は、すぐに思い出せなかった。
《で?今どこにいるの?》
『家。で、さっき会社にかけたの。西条さんの番号教えて下さいって…』
なおちゃんに迎えに来てもらったなんて、死んでも言えなかった。
:09/09/25 03:00
:W64S
:NwbTHFX6
#510 [あき]
それから、西条さんは、何やらごちゃごちゃと御託を並べた。
どれだけ、心配したか。
とか。
何をしてんだ。
とか。
警察にはきちんと出来たのか。
とか。
私は、ただ返事をするのみで
私のこれからの行く末なんて。
私の不安なんて。
私の涙なんて。
気付いちゃくれなかった―…
:09/09/25 03:03
:W64S
:NwbTHFX6
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