微妙な10センチ。〜最終〜
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#527 [あき]
『うん。警察は、大丈夫なのかな?』
『…はい。被害届けは出して来ました。』
『そっか。とにかく、詳しい話はまた後にして、今日からの一週間の書類は、改めて集めなおしたから。とにかく、君の代わりがいないから、気持ち入れ替えて、今から行ってくれっ。新幹線。間に合うよな?』
上司は、精一杯の優しさを私に向ける。
私の運命は、この一週間の仕事を終えた時に決まるんだと感じる。
『…はい…。行ってきます。
申し訳ございませんでした。』
私は、上司に再び頭を下げて、次にインテリメガネ女上司のデスクの前に立った。
:09/09/28 20:15
:W64S
:AzvUcxQs
#528 [あき]
『…申し訳ございませんでした。』
再び、同じ台詞を言いながら、精一杯頭を下げた。
いつも、ピシリとしていたインテリメガネ女上司の髪が乱れているのは、昨夜の大騒動の表し。
『とにかくっ、間に合って良かった。もう三十分報告が遅れてたら、コンピュータシステムが落ちちゃうから、もう手遅れだったんだから、もっと大変な事態になってたわよ!』
『…はいっ…。申し訳ございません…』
インテリ女上司は、そんな私に、苦笑いをしながら、肩をポンと叩いて
『後の事は任せなさい。大丈夫よ』
と小さく笑った。
:09/09/28 20:21
:W64S
:AzvUcxQs
#529 [あき]
だけど、彼女の《大丈夫よ》は、全く効力を示さなかった。
いや。
彼女なりの大丈夫よ。は…
うん。
大丈夫だったんだ。
だけど。
それは
私にとっては、地獄の始まりにしか過ぎず。
益々、私の運命を狂わせた。
:09/09/28 23:20
:W64S
:AzvUcxQs
#530 [我輩は匿名である]
あげ
:09/10/02 11:58
:PC
:☆☆☆
#531 [あき]
匿名さん。ありがとう!
――――――――
『なんで辞めないの?』
今突然に、そう言われた言葉を、私はかみ砕き理解するのに、少しの時間を要した。
『…え…?』
『おかしいでしょ。』
『……』
あの事件の翌日から一週間。
予定通り任せられた大役を何とか果たして、出社。後処理的デスクワークに追われ、一息着いたお昼過ぎ。
偶然にも出くわした同部署先輩に…突然にそう言われた。
:09/10/02 23:50
:W64S
:oKiBhd.g
#532 [あき]
『聞いたけどっ。大変な事しでかしたみたいじゃん』
ついさっき、廊下でバッタリと出くわした彼女。すれ違い様、会釈をする私を呼び止めてそう言った。
『…はい。ご迷惑おかけしました…』
私は、頭を下げる。
もっぱら部署内、いや、社内で、あの事件の話は出回っていて。
私は、頭を下げる。
事情を聞かれる度に、同じ話を何度も繰り返し、頭を下げた。
そして、また彼女もそう声をかけてきたのだ。私は立ち止まり、頭を下げた。
そして、たった今の発言に繋がる。
:09/10/02 23:56
:W64S
:oKiBhd.g
#533 [あき]
『…けっこうな損害でしょ?』
『…まだ正式な金額は割り出されてないんですけど。恐らくは。』
盗まれたのは、現金はもちろん。
売れば、いい値がつく代物に。
顧客の個人データ。
その他諸々は、金額で換算すると、おそらくは、とんでもない金額になるだろう。
もちろん、そこには、紛失さた事により、再度、集め直した経費も含まれる。
単純計算しただけで、私の給料では追いつかない位の損害額、経費だった。
:09/10/03 00:04
:W64S
:NSE6Ond6
#534 [あき]
『…ならさぁ。かなりの迷惑かけたのはわかるよね?』
『…はい。』
『なのに、どうしてまだいるの?』
『……』
『辞めないの?普通は、辞めるよね?』
『……すみません。』
彼女は、私を見つめる。その冷たい目に私は恐怖を覚え、ただ俯き、頭を垂れた。
:09/10/03 00:07
:W64S
:NSE6Ond6
#535 [あき]
『…どうして、あの仕事行ってんの?どうして、まだ来てんの?どうして仕事が決まってんの?』
『…すみません…』
私は、何度も頭を下げた。
確かに、あの事件の翌日。
変わる事なく、私は大役の案件を任された。
外されるのは覚悟していたが、何故か私がそのまま担当したのだ。
それどころか、その案件が一段落ついた今も、他にも抱えていた担当、案件、一向に外されず気配もなく。
私は、相変わらず毎日出社しては、与えられた仕事を、何とかこなす日々だった。
私自身が戸惑いの日々だったのだから、この質問は致し方ない事だろう。
:09/10/03 00:15
:W64S
:NSE6Ond6
#536 [あき]
『…正式な損害額が出るまでは処分は保留って事だと思うんです。私も、その覚悟はしてます。』
恐る恐る目を見つめ、相変わらずの冷たい目に、そう返事する事で、古の場をやり過ごそうとそう思った。
『ふーん…』
その覚悟とは、もちろん、責任問題による…依願退職と名のつく首切りだ。
『…それまでは任された仕事は最後までやり遂げるつもりです。』
:09/10/03 00:23
:W64S
:NSE6Ond6
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