微妙な10センチ。〜最終〜
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#657 [あき]
『馬鹿にするのもいい加減にしろよっ!!』
頭を隠した腕をまた捕み力付くで引き寄せる。よろけた体は、彼に簡単によりかかった。
『ごめんなさい!ごめんなさい!!』
幼きあきは、ただ必死にこれから我が身に降り掛かるんであろう痛みに耐える準備を初め、無駄だとわかりながらそれでも、許しを得ようと必死に訴える。
怒りに満ちた彼には、その姿は、ただ怒りを助長させるだけだった。
:09/10/20 10:23
:W64S
:fRxoxp1Q
#658 [あき]
遠く離れた場所から、電波を通しての怒号。
怖くない。
私は、怒りを克服したんだと。
そう感じていた。
だけど、本当は、ただ遠く離れた場所に守ってもらってただけ。
殴られる事はない。
そんな安心感が、彼の怒りにはあった。
私は、それをただ、強くなれたんだと勘違いしていた。
:09/10/20 10:29
:W64S
:fRxoxp1Q
#659 [あき]
『お前はいつもどうして俺の言う事が聞けないんだ!!』
『ごめんなさいごめんなさい…』
睨み付けるように顔を覗き込むその目の恐怖に私は、視線を合わせられなかった。
幼きあきは、ただ震えて小さくなるばかり。
ギロリと睨まれる目に、私はただ震えるばかりだった。
:09/10/20 10:56
:W64S
:fRxoxp1Q
#660 [あき]
そうか。この人。
私のお父さん…あの怪獣に似ているんだ。
幼き頃、彼が姿を表す度に私は体が萎縮して小さく震えた。
大きな音と、お母さんの泣き声。
それに耳をふさいで小さな妹弟と三人部屋の隅で丸くなった。
あの記憶に似ている。
大きな男が、大きな音を立てて私の前に来る。
本当のお父さんは優しいはずなのに、あきが悪い子だから。
あきのせいで、お母さんが殴られて。
あきのせいで、妹弟が殴られて。
あきが駄目な子供だから。
お父さんはあきを殴る。
あの記憶に似ている。
:09/10/20 11:10
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:fRxoxp1Q
#661 [あき]
『…ごめんなさいごめんなさい。あきが悪かったからっ…だから、怒らないで。』
自然に涙が溢れてきた。この涙を彼には、どんな涙に見えたのだろうか。
私は、あんな男なんて大嫌いだと強く強く誓った、恨んで憎んで…。
なのに、結局、あの時、私は父親に似た彼を選んでいた。
本当は、会いたくて抱きしめて欲しくて。
大好きな父親。
女の子は父親に似た人を選ぶ。
そんな昔からの言葉をふと思い出す。
目の前で怒る彼の姿をどこか遠くで眺める自分がいて。
自分の弱さ。
情けなさに涙が溢れてきた。
:09/10/20 11:26
:W64S
:fRxoxp1Q
#662 [あき]
女の涙は強い。
これもまた昔からの言葉であり、やはり正しいのかもしれない。
本当の涙の意味なんて知るよしもない彼は、ポロポロと涙を溢す姿に、怒りを急速に低下させ掴む腕の強さが弱めた。
『俺から離れてかないでよ。』
そして、精一杯の愛を私に向ける。
これも、父親に似ている。
怒りをぶちまけるだけぶちまけると、後は、何事も無かったように。
いや、恐らく冷静になったと同時に優しさを与える。
彼もまた翌日、私が目覚めると、リビングには、流行りのお人形が置いてあった。
時には、大きなエレクトーンが届けられたり、時にはまだ珍しい流行りのテレビゲーム。
そうやって、彼は私への愛を現した。
:09/10/20 11:42
:W64S
:fRxoxp1Q
#663 [あき]
『…もう仕事辞めてくれ。俺の傍にいて俺を安心させてさえくれたら、俺だってこんなに怒らないんだ。』
そう言って今度は強く抱きしめられる。
私は、一生ここから抜け出せない。そう感じた。
あの父親からも、どんな恐怖からも、どんな孤独からも、いつも守ってくれた。
心底愛したなおちゃんを、最後まで信じきれなかった私が。
たった数ヶ月の西条さんには信じて欲しいと訴え続けた。
そんな、自分勝手な私に下された結末。
力無くただ腕の中に収まる私に、彼は優しく頭を撫でて。
また唇を私に押しあてた―…
:09/10/20 12:05
:W64S
:fRxoxp1Q
#664 [☆]
:09/10/21 11:23
:SO903iTV
:UXIJoV0E
#665 [☆]
:09/10/21 22:03
:SO903iTV
:UXIJoV0E
#666 [あき]
―――――――
もう逃げられないと思った。
寝室で露になった胸板から目を反らし、剥ぎ取った薄いシーツに、また露になった自身をくるませる。
キッチンに立ち、換気扇の下、煙草に火をつけ、轟音の下で細く静かに白い煙を吐き出す。
そう
私はもう彼から逃げられない。
:09/10/26 23:54
:W64S
:OYfTDteY
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