微妙な10センチ。〜最終〜
最新 最初 🆕
#691 [あき]
咄嗟に歌手名を探す。
洋楽に無知な私にも、わかるようにの配慮なのか、優しさなのか。

それは米国で歌姫と呼ばれているアーティストだった。
唄い終えた彼に私は聞いた。

《この人は知ってるっ!!で?どうゆう意味なの??〃》

《んー…簡単に言えば、アナタなしでは生きてけない。って意味かな?いい曲だろ?》

《へ〜〃》

大好きな、なおちゃんが初めて唄った優しい声。綺麗なメロディ。
何より、言葉の意味を知った私は。
その夜から、この曲が一番好きになった。
なおちゃんへの想いが強くなればなる程、この曲が大好きになった。その夜から、なおちゃん専用の着信音に変わった。もう、何年も、何年も。なおちゃん専用の着信音―…

アナタなしでは生きてけない。

⏰:09/10/28 04:44 📱:W64S 🆔:RO.QxrWQ


#692 [あき]
なおちゃん専用の着信音なだけに、彼自身私の携帯電話から流れ出すこのメロディを知らない。私が好きだと言う音楽の中で

[なおちゃんが好きだから好きになった曲]
なのに

[俺も好きだけど、あきも好き]

に勝手にすり替えられたあの曲よりも
あの夜から、私が一番大切にしているこの曲の存在を、なおちゃんは知らない。

⏰:09/10/28 04:51 📱:W64S 🆔:RO.QxrWQ


#693 [あき]
『…んー微妙だね!〃もう少し練習が必要だな。こりゃ。』

『うっせ!』

なおちゃんは、ギターを横に置くと、煙草に一本火をつけた。
私は、その煙に誘われるように、起き上がり、煙草に火を点ける。
憎まれ口を叩きながら、二本の煙が、空間に立っていた。

『…で?どうすんの?』

『なにがぁ?〃』

『行くのか?その彼ん所。』

突然の質問に固まる私。そんな私をじっと見つめるなおちゃん。
ジリリと火が燃えて、灰がポトリと落ちた。

⏰:09/10/28 04:57 📱:W64S 🆔:RO.QxrWQ


#694 [あき]
―――――――

BGMを失った部屋は、とても静かだった。
先ほどの質問に、答えを求める彼と、答えに詰まる私。
二本の煙だけがふわりと登った。

『…さぁ。』

やっと言葉を発したのは私。
曖昧な返事を残して、私は煙草の火を揉み消した。
なおちゃんの先端、ぼぉっと火が灯り、細く白い煙がまた天に上り空気に消える。

『いいんじゃないの?』

少し目を細めて、くしゃりと火を揉み消した。なおちゃんのその指を、私は静かに見つめた。

⏰:09/10/31 00:31 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#695 [あき]
『…そう?』

なんとも適当にその答えをサラリと聞き流した。そのまま、買ってきた最近お気に入りの少し苦めのカフェオレを吸い込む。

『知らんが。』

また、なおちゃんも、なんとも適当な返事で、差し入れに買ってきたいつものブラック缶珈琲を喉に流す。

『……』

私達が出会って。
再会して。
互いに言葉を選び、言葉を探すこんな時間が流れるなんて、思いもしなかった。

⏰:09/10/31 00:54 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#696 [あき]
幼い頃は、無邪気に手を繋ぎ笑い会った。
《あきちゃん!》
《なぁに?なおちゃん!》《あのね、僕ねっ!》《あのね、あたしね!》
そんな淡い記憶。

時が過ぎて、様々な傷をおって、様々な問題を抱え再会した私達。

《あのさ》《なに?》《てかさ?》《いや、それはさ!》

その苦しみや傷を吐き出すように、二人で語り明かした。
くだらない事に何時間も笑い合った。

私達の間には、いつも互いを思う言葉が溢れていて。互いを必死とする時間が流れていた。

なのに、なんだこれ。
この微妙な空気。
何がいけなかったんだろう…

⏰:09/10/31 01:07 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#697 [あき]
『何度も無理だって断ってるのにさ〃えらく私がいいみたいよ?』

行きたくないけど。
行くかもしれない。

私は卑怯だ。
微妙なニュアンスを残しながら、クッションを抱え、またボスリとソファーに横たえた。
古びた天井を見つめ、はははと笑って見せた。

『ふーん。』

また、なおちゃんはギターを手に取り、ポロリンと奏でる。

『なおちゃんは?最近どうなのよ!』

何気無い質問。
その何気無い質問に、彼もまた何気無く答える。

⏰:09/10/31 01:17 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#698 [あき]
『ああ。そろそろ俺も考え時かなって思うよ。』

『ん?』

なおちゃんの話を、きちんと、聞き入れられているんだろうか。

わかってた。
ずっと知ってた。

なおちゃんは、女性を惹き付ける魅力のある人だって事は。

トラレタらどうしよう。

新しくライバルが出現する度に怯えたし、だけど、彼自身が興味を示さない事に、安心し、トラレない事を確信した(※勝手に)。
敗北を味わったのは、今も昔も、別れた彼女(実質は元奥さん)だけ。たった一度だけ。

⏰:09/10/31 01:40 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#699 [あき]
昔に一度だけ、突然に現れた真っ青携帯の女。後に事情を知り、飛び蹴りしてやりたくなったけれど。あの状況でもまだ、私は、彼を信じていたし、彼を想っていた。だからこそ、強くいられた。

『で、どうすんの?〃』

『いや、どうすっかなと思ってる。』

『…そんなの知らないし〃』

今聞かされている新しい存在。
なおちゃんの言葉に
彼自身の心が、揺れている事がわかる。
そしてまた、それを強く否定できないのは。
自分自身が、西条さんの存在に、負い目を感じている。
私達の間でそんな二つの感情がぶつかり合っていた。

⏰:09/10/31 02:06 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


#700 [あき]
強く否定が出来ないまま、彼の話を聞き入れる。

男と女の出会いがあって。心の弱った女が、強さ、優しさ溢れる言葉に恋に堕ちる。
そして立ち直っていく。
本来ならば、見てて欠伸が出そうな定番ストーリー。
なのに、今こうして、話に吸い込まれてしまっているのかというと。
定番ストーリーだからこそ、痛い程わかるのだ。
私は彼女の想いが手にとるようにわかった。
そう。
もう何年も前。
私こそが、彼に繰り広げた定番ストーリーが、またその彼女の中でも、繰り広げられていたのだから。

⏰:09/10/31 02:52 📱:W64S 🆔:.0W.fEWM


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194