黒猫の棲むところ
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#241 [イリア]





 第二話:日と陰と




⏰:09/03/25 04:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#242 [イリア]



ザ―――………


つい先程まで小雨だった雨は
私たち3人が
テントに向かう途中で

本格的な雨となり、降り出した。

⏰:09/03/25 04:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#243 [イリア]



狐「あーあーあー!!
だから僕は言ったんだよ、
場所を変えようって。」


猫「今更言うなよ、
お前の本気モードが
いつまで続くか不安だったんだ。
俺が説明するのは
かったるいからな。

あの場所でさっさと、
お前に説明して欲しかった。」


⏰:09/03/25 04:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#244 [イリア]



狐「よく言うよ、本当。
大体、僕はいつでも本気モード!
いい加減なことは
するな、言うな、見せるな……
……母上様の、遺言さ♪」


猫「立派な母親だ。
まぁそんな遺言も虚(ムナ)しく、
息子はこんな奴に
育っちまった訳だけど。」


⏰:09/03/25 05:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#245 [イリア]



狐「ねぇ、最近冷たくない?
ネコくん僕に対して冷たくない?

――…時に七衣ちゃん、
さっきから一言も
喋らないけど、大丈夫?」


七「―…ハァッハァッ…ハァッ…
―――ッッ!!大丈夫な訳…ッッ!!」





ないでしょ――――ッッ!!!!!


⏰:09/03/25 05:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#246 [イリア]



雨が降り出すのに比例して
黒猫さんと狐さん、
二人の歩くスピードは速くなり
いつしか(私にとっての)
全力疾走にまで
走るスピードは上がっていた。


⏰:09/03/25 05:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#247 [イリア]



狐「あれ?
どうしたのそんなに息切れして?」


雨にできるだけ当たらないよう
木の葉っぱの下に入り、
私たちは一旦走るのを止めた。

⏰:09/03/25 05:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#248 [イリア]



七「――…ハァッ…ハァッ…
…走るの…速い、です……」


猫「フフン、これだから人間は。」


七「わ、悪かったですね!
人間で!//」


⏰:09/03/25 05:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#249 [イリア]



狐「まぁまぁお二人とも。
ごめんね七衣ちゃん、僕ら
雨が降ると周りが
少し見えなくて…」


七「ハァッ…ハァッ…はぁ…。」


⏰:09/03/25 05:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#250 [イリア]



狐「基本的に
妖はみんなそうだから気をつけて。
普段は優しくても、
雨に触れると
性格が変わる妖もいるから。」


狐さんが言った、

そんなに雨が苦手なんだ。

人間の私には、
まだまだ理解しにくいことだけど…


⏰:09/03/25 05:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#251 [イリア]



狐「まぁ何かあっても
七衣ちゃんは僕が守るから
ノープログレムだけどねっ★」


七「……はぁ」


⏰:09/03/25 05:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#252 [イリア]



猫「狐、こいつは、俺が拾った。
必要以上に近づくな。」


七「私、拾われたんですか。」


猫「失礼、スカウトした。大道具に。
――……着いた、あそこだ。」


⏰:09/03/25 05:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#253 [イリア]




七「―…うわぁ」



⏰:09/03/25 05:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#254 [イリア]



そこは森を少し
抜けたところにある荒地。

綺麗な布で大きなテントが
張られている。
すぐそばには

物を運ぶ用だろうか、
馬が数匹繋がれていた。


⏰:09/03/25 05:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#255 [イリア]



七「―…十分、大きいですよ」


猫「そう?普通だと思うけど。
それより一つ、
あんたに言っておきたいことが―…」

⏰:09/03/25 05:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#256 [イリア]





ザッ――……





土を蹴る音がした。

⏰:09/03/25 05:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#257 [イリア]



気づくと誰もいなかったはずの
テントの前に、

少女が1人立っている。


⏰:09/03/25 05:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#258 [イリア]



狐「…あらぁ、
麗(レイ)ちゃんただいま★
お迎えなんて、珍しいねー♪
だから今日は雨なのかな?
なんちゃってー」




麗「――…さっきから
ずっと、思ってた」


⏰:09/03/25 05:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#259 [イリア]



麗、と呼ばれた人が声を出す。

黒猫さんほどではなくても
よく響く、透き通った声だった。


⏰:09/03/25 05:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#260 [イリア]



七「……?」


麗「何か…雨の匂いに混じって、
…嫌な感じがすると…」


七「…あの…どういう…?」






麗「ッッ!!!!黙れ!!!雨原!!!」

⏰:09/03/25 05:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#261 [イリア]




ザッ!!


土を蹴る音。
さっきより、ずっと速く。

刃の先を向けられる。



って、はッ――……ッッ??!!


⏰:09/03/25 05:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#262 [イリア]









キ―――ン


刃と刃がぶつかった。
私の目の前にいる人はもちろん…


⏰:09/03/25 05:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#263 [イリア]



猫「―――……いきなり
切りかかってくるとは、予想外。
そんなに熱くなるなよ
たかが、雨原だろ?
今の俺たちにとっちゃ、
大した敵でもない」


麗「黙れ!地に墜ちたか、猫!
今でこそ憎む理由はなくとも
過去の傷…
…そう簡単には、消えない!
そこをどけ!!」


⏰:09/03/25 05:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#264 [イリア]




猫「…女を相手にするのは、
嫌いなんだ、悪いけど。

特に、明日の舞台で
姫君を演じてなさる
その美麗なお顔に、
傷などつけれますまい」



⏰:09/03/25 05:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#265 [イリア]



黒猫さんが舞台がかった口調で
麗と呼ばれた人に言った…




―…その時

⏰:09/03/25 05:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#266 [イリア]




?「待て待て待て待て待てい!!」



テントのほうから
大きな声が聞こえた。


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#267 [イリア]



七「?」

猫「…」

麗「…」

狐「おや、まぁ」



テントの中からは
金色の髪の少年が出てきた。


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#268 [イリア]



狐「狼(ロウ)くん、ただいま♪
ってゆーか、声がでかくて
近所めいわ…「猫!貴様!
何様のつもりだ!
今すぐ麗のそばから離れろ!
半径15メートル以上だ!」


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#269 [イリア]



猫「もう、煩(ウルサ)いよお前」

狼「何?!もう一回言ってみろ!!」

猫「もう、煩いよお前。」

狼「そのまま言うな!!!
相変わらず腹の立つ奴だ!!!!

麗!!怪我はないか??!!!」


⏰:09/03/25 05:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#270 [イリア]



そう言うと狼という人は、
私たちのほうに走ってきた。


⏰:09/03/25 05:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#271 [イリア]



狼「麗、雨が降ってるから
外には出るな、と
言っただろう?」

麗「うるさい触るなどっか行け」




狐「嫌われた〜♪」

猫「嫌われたー」


⏰:09/03/25 05:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#272 [イリア]



狼「黙れ貴様ら!!!
…それにしてもなんか、
変な匂いが……ん?
何だお前、見ない顔だな。
新入りか?」


七「は、はいっ?!」


私はいきなり声をかけられ
若干声が裏がえりながら答える。

⏰:09/03/25 05:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#273 [イリア]



狼「何、そう堅くなることはない。
お前もあれだろう?
麗に憧れて入団した口だろう?
いや、分かる。とても分かるぞ。
こんな美人、世界中探しても
二人とはいないだろう。うん。

…それにしても匂うな。
お前ら匂わないのか?
これは確か…雨原の…」


ビクッとする。
しかし―……


⏰:09/03/25 05:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#274 [イリア]



「あ?そんなことより新入、
お前ところどころ怪我してるな。

小さな怪我でもばい菌が入ると
どえらいことに…ん?血?
……………
……………



――ッッ!!!!お前、雨原????!!!!!」


⏰:09/03/25 05:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#275 [イリア]



猫「長げぇよ」

麗「遅せぇよ」

狐「…君の将来が
本気で心配だよ、狼くん…」


⏰:09/03/25 05:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#276 [イリア]


第一話:opening
>>1-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-275

感想板:
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/


絵は書けませんでしたが、
簡単なプロフィールを
のせさせてもらいました(^ω^)
感想・アドバイス
お待ちしてます(´;ω;`)★

⏰:09/03/25 05:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#277 [イリア]


>>274

 ×〜…新入、
 ○〜…新入り

 すいません(゚д゚)

⏰:09/03/25 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#278 [イリア]


>>275から

⏰:09/03/25 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#279 [イリア]



狼「やかましい!麗以外!!

―…大体、
どうしてこんなところに
雨原が…」





キッ!

麗さんが狐さんを睨む。

⏰:09/03/25 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#280 [イリア]



麗「狐ッッ!!!!」

狐「え?僕?」


麗「当たり前だ!
何のつもりか知らないが、
こんな奴拾ってくるなんて
お前以外に――…「俺だよ」」


黒猫さんの声が
麗さんの言葉を遮る。

⏰:09/03/25 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#281 [イリア]



麗「―…猫が?」

猫「俺が、拾った。
正確にはスカウトした、だけど。
狐は関係ない」



麗「――……スカウト…?」



麗さんの声が
さっきより2オクターブは
低くなる。

⏰:09/03/25 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#282 [イリア]




……うん、なんか。

なんかもの凄い
勘違いをされてる気がする。



⏰:09/03/25 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#283 [イリア]



七「で、でも私…」


狼「貴様ぁ!
何故今更女をスカウト?!
確かにうちの劇団に女は少ないが、
麗さえいれば特に不都合はな…」


麗「…ご不満、ってわけだ」


⏰:09/03/25 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#284 [イリア]



雨はさっきよりも緩くなり
雨音に邪魔をされることのない
麗さんの声は、
全てが耳に響いてくる。


⏰:09/03/25 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#285 [イリア]



麗「…そういうことでしょ、猫。
私が最近 本番での失敗が多いから
新しい子を連れてきた…

いいわよ別に、仕方ないわ。
情だけで役が貰えるほど、
甘い劇団は嫌い。」


狼「何を言う!
失敗なんてまったく…」

麗「黙ってよ、狼。」


⏰:09/03/25 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#286 [イリア]



狼「いや黙らん!!
猫!!お前が連れてきた女と、麗。
どちらの演技が
この劇団に相応しいか、
今から勝負をしよう!!!!」


⏰:09/03/25 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#287 [イリア]



――……ちょっと、ちょっと、
ちょっと、ちょっと、ちょっと。

何か話がおかしな方向に…


私は誤解を解いて欲しくて、
黒猫さんのほうを見る。


⏰:09/03/25 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#288 [イリア]




クスッ…


私と目が合うと黒猫さんは
それこそ女性と見間違うほど妖艶に、
私に微笑んだ。


⏰:09/03/25 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#289 [イリア]



何この笑い…

もしかして……




すると黒猫さんは少しかがみこみ、
私の耳元で小さな声を出す。


⏰:09/03/25 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#290 [イリア]











猫「――…ご自分の紹介は

ご自分でどうぞ、姫」


⏰:09/03/25 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#291 [イリア]



その甘く優しげな
舞台用であろう声に
思わず顔が赤らむ。



って違うでしょ!//
誰が姫だよ!///

しかもスカウトなんて言うから
二人とも変に誤解して―……


⏰:09/03/25 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#292 [イリア]



狼「……ィ…おい!聞いてるか女!
勝負の内容は――ッッ!!」


言えってか。
私に言えってか!///

相変わらず黒猫さんは
心底おかしそうにしながら
私を見つめている。


⏰:09/03/25 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#293 [イリア]



狼「―じゃあさっそく、
今から「違います!!////」」



今度は私の声が響いた。

響いたっていうか、
轟(トドロ)いたっていうか。


⏰:09/03/25 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#294 [イリア]



狼「……何が違う!!」

七「こ、こ、これ以上話が
大きくなる前に、
言っときたいんですけど!!//」


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#295 [イリア]



狼.麗「?」


七「私…私、女優としてスカウト
されたんじゃないんです!!//」


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#296 [イリア]





―――…………言ってしまった//


黒猫さんと狐さんは
口に手をあて、
声を出さずに笑っている。


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#297 [イリア]



麗「―…何のつもりだ?
苦し紛れの言い訳か?

なら、何なんだ。猫はお前を
なんのつもりで…「お、お、大道具!」」


⏰:09/03/25 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#298 [イリア]



今度こそ本当に
私の声があたり一面に轟く。

麗さん、狼さんが
呆然と私を見ているのが分かる。


⏰:09/03/25 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#299 [イリア]



七「も、もしくはお茶くみ!
あ!あと、
狐さんのアシスタントってのも
アリみたいです!!//

何のアシスタントかは
知らないんですけど!!//」


⏰:09/03/25 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#300 [イリア]



カァ…―


言ってすぐ、恥ずかしくなる。

別に恥ずかしくなる必要は
ないのかもだけど、
大道具にスカウトされた私って…涙


⏰:09/03/25 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#301 [イリア]



猫「アハハハハハハ!!」


狐「ぎゃーはっはっはっ!!!
いいねーいいねー七衣ちゃん★
あ、ちなみに僕は
監督 兼 脚本家だから♪」


⏰:09/03/25 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#302 [イリア]



伏せていた目線を上げる。

黒猫さんはいつの間にか
私の前から横に移動してて、
麗さんともろに目があった。


⏰:09/03/25 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#303 [イリア]



麗「―…大道具……?」


七「…あ…はい、私演技とか…
やったことないし…」


猫「そう、大道具…クスッ
いいだろ?ちょうど
人出も足りてないし。」


⏰:09/03/25 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#304 [イリア]



麗「――……」


狼「何だ、大道具か。
どうりでオーラがないと思った。」



あ、何かこの人 素で失礼。

⏰:09/03/25 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#305 [イリア]



狼「しかし!猫!お前はいつから
大道具のスカウトマンになった??!!」


猫「フフン、こいつ記憶がないんだ
自分のこと、名前しか覚えてない」



七「あ、七衣です。」

⏰:09/03/25 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#306 [イリア]



狼「え、そんなわざわざ…
俺は狼だ。好きに呼んでくれ!!

―……じゃ、なく!!!!!!!!」



キ――ン…


この人、声大きいよ…


⏰:09/03/25 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#307 [イリア]



狼「だ、そうだ!麗!!
やはりこの劇団の
トップ女優はお前しかいない!!
当たり前だがなッ!!!!」


猫「どう?麗。
雨原だけど、よく
働いてくれるみたいだよ」



そんなこと一言も
言った覚えありませんけど。


⏰:09/03/25 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#308 [イリア]



麗「…でも…雨原…」


猫「俺たちもこいつも、
妖に嫌われてる点では同じだ。
面倒は俺が見る。」


⏰:09/03/25 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#309 [イリア]



狐「ほらほら!ネコくんが
ここまで言ってるんだし、
いいじゃない別に。

それに雨原一人抱えたところで
潰れるほど、
うちの劇団は弱くないよ♪」


⏰:09/03/25 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#310 [イリア]



みんなの視線が麗さんに
向けられる。


…色々あって、今初めて
ちゃんと顔見るけど…

綺麗な人だなぁ。


⏰:09/03/25 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#311 [イリア]



狼さんだって
黒猫さんとは違うタイプの
美男子だし。

この劇団には
美男美女しかいないのかな。


⏰:09/03/25 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#312 [イリア]



猫「――…麗?」


黒猫さんがまた
綺麗な声を響かせる。



―…みんなが演技してるとこ、
見てみたいな。


⏰:09/03/25 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#313 [イリア]



麗「――……ッッ!!

…好きにしろ………」




ザッ

そのまま私たちを追い越し、
麗さんは
林のほうに歩いて行く。


⏰:09/03/25 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#314 [イリア]



狼「おい!麗!待て!!

…それじゃあな、新入り!
そこの悪魔に喰われない用、
注意しろよ!!」


⏰:09/03/25 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#315 [イリア]



猫「何それ?俺のこと?」


狼「お前以外に誰がいる、この性悪。

ふっ、まぁいいさ。お前はせいぜい
この女のお守りでもしてるんだな。

次の舞台の主役は、
必ずや俺と麗が頂く!!!!!!」


⏰:09/03/25 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#316 [イリア]



そう言うと狼さんは
麗さんの後を追い
林の中に走って消えた。


⏰:09/03/25 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#317 [イリア]



猫「ほざいてろ、カス。」

黒猫さんがその言葉を
いい終わると同時に、
テントの中から
大きな拍手が聞こえた。



中から続々と人が出てくる。


⏰:09/03/25 13:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#318 [イリア]



「いやぁ凄かったね!」

「今日の麗ちゃん機嫌悪いから
 気にしないほうがいいよっ」

「狼は相変わらず、
 馬鹿だよな〜」

「ね〜本当に雨原一族なの〜?」

「大道具!おもしろ〜い///」



一斉にみんなが私に話しかけてきた。


⏰:09/03/25 13:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#319 [イリア]



七「え?え?…え?」


猫「…そんな一斉に
喋るなよ、話は聞いてたな?」


⏰:09/03/25 13:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#320 [イリア]



「聞いてた聞いてたっ★
僕らは別に、雨原一族
敵だとは思ってないしねー」

「裏切り上等☆
一緒に悪い妖を
退治しましょ♪」


予想外の反応に
思わず笑みがこぼれる。


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#321 [イリア]



狐「ね♪とりあえず、
雨原ってだけで
君を嫌いになるような人は、
ここにはいないよ☆」


七「…み、みなさん
半妖なんですか?」


「そーだよ〜ん♪」


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#322 [イリア]



狐「あ、そうそう」

狐さんが言う。


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#323 [イリア]



狐「僕やネコくんみたいに、
動物の名前で呼ばれてる子もいるし

麗ちゃんみたいに
普通の名前で呼ばれる子もいる。

まぁそこら辺は適当だけど、
とりあえずみんな半妖なんだ」


⏰:09/03/25 13:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#324 [イリア]



難しい…

みんな動物名で呼ばれてるかと
思ってた。
あぁでも狐さんにしても
狐の半妖なんて
たくさんいるだろうし、
名前がなくて不便じゃないのかな?


…でも今は、そんなことより…


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#325 [イリア]



…そっか、みんな半妖か…



―…ちょっと不安。


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#326 [イリア]



猫「…フン、まぁ人間は
あんただけだけど、
雨原一族なんて妖に近いもんだし
気にしなくていいんじゃない?」


慰めてるつもりなのか、
黒猫さんが私に言う。


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#327 [イリア]



狐「そうそう!
ぶっちゃけ能力一族なんか
見た目以外は妖だよね〜」

七「能力一族?」


⏰:09/03/25 13:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#328 [イリア]



狐「うん。あ、知らないか。

雨原一族みたいな
特殊な力を持つ一族のこと。

雨を呼べたりするなんて
もう普通の人間じゃないもんね〜」


⏰:09/03/25 13:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#329 [イリア]



「他にも炎を操れる火日谷一族や
風を操れる風宮一族なんかがあるよ」


―…なんか、改めて

凄い世界に
来ちゃったな。


⏰:09/03/25 13:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#330 [イリア]



狐「はいはいはい!」


パンパンパン


声に合わせて狐さんが
手を叩く。


⏰:09/03/25 13:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#331 [イリア]



狐「お喋りはそこまで!
みなさん明日が何の日かお忘れ?

…明日から一週間、この街で
講演するんでしょ!
練習しなくていいのかな?

それとも台詞(セリフ)全部
覚えたのかなあ…?」


⏰:09/03/25 13:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#332 [イリア]



全員「―…ッッ!!ま、まだ……汗」



狐「じゃあ、早く練習!
雨も上がった!!
10分後に裏テント前集合!」


全員「は、はい!団長!!」


⏰:09/03/25 13:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#333 [イリア]



その声と同時に
みんなバタバタと
テントの中に入っていく。


⏰:09/03/25 13:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#334 [イリア]



猫「フフン、あいつらに
覚えるような台詞、あったっけ?」


狐「君は本当に毒舌だねぇ。」


⏰:09/03/25 13:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#335 [イリア]



七「…狐さんて、
本当に団長だったんですねぇ…」


何気なく言った私の一言に
狐さんが泣きそうな声をあげる。


⏰:09/03/25 13:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#336 [イリア]



狐「七衣ちゃん?!
それ、どういう意味??!
僕、団長に見えない??!涙」


七「あ、ごめんなさいごめんなさい!
見えました!今、見えました!

―…ところで」


⏰:09/03/25 13:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#337 [イリア]



林を見つめてみる。

帰ってくる気配はない。


⏰:09/03/25 13:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#338 [イリア]



七「―…麗さん、戻ってきませんね。

狼さんも追いかけてったままだし…」


⏰:09/03/25 13:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#339 [イリア]



猫「フン、まぁあんたが
気にすることないよ、
麗は人間が嫌いなだけ。」


狐「そしてロウくんは、
麗ちゃんが好きなだけ。

大丈夫あの二人なら
明日の台詞も完璧だろうし、
もしさっきみたいな鬼が出ても
ロウくんがいれば何とでもなる」


⏰:09/03/25 13:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#340 [イリア]



七「…はぁ」


猫「ほら、それより狐。10分だ。
さっさと行け、来い七衣。
一通りテントの中説明しとく」


⏰:09/03/25 13:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#341 [イリア]



狐「あーはいはい。
そんなに僕が邪魔ですか。
いいもん、いいもん。

じゃあ後でね七衣ちゃん♪
気楽にね…これからは」




⏰:09/03/25 13:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#342 [イリア]






狐「…ここが君の、家なんだから。」



家…
狐さんのその一言に、
自然と顔がほころぶ。

⏰:09/03/25 13:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#343 [イリア]



狐「僕のことは兄だと思って
何でも相談してくれたまえ、妹よ!!」


猫「父の間違いじゃないの?
行くぞ、七衣」


⏰:09/03/25 13:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#344 [イリア]



私は狐さんに軽く会釈し、
黒猫さんの後を追った。


⏰:09/03/25 13:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#345 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-275
>>279-344

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


⏰:09/03/25 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#346 [イリア]


>>344から

⏰:09/03/25 22:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#347 [イリア]



赤く滑らかな布をめくり
黒猫さんがテントの中に入る。

私も後を追い、入ってみる。

七「―…うわぁ…」


⏰:09/03/25 22:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#348 [イリア]



見えたのは、本当にテントの中かと
疑いたくなるほど、広い空間。

ちゃんとたくさんの区切りもある。


⏰:09/03/25 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#349 [イリア]



七「――…広いんですね…」


猫「普通の家みたいだろ?
うちの劇団の大道具、
腕が良くてさ。
何でもできるんだよな。
ほら、この仕切り。
1人1人個室が与えられるんだ。」


⏰:09/03/25 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#350 [イリア]



コンコン…

黒猫さんが、仕切りを軽く叩く。
廊下のようなものがあり
左右に扉が見える。


七「―…移動劇団、でしたよね…?」


⏰:09/03/25 22:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#351 [イリア]



猫「そう、滞在期間は
短くて一週間。
長くて一月くらいかな。
同じとこにずっといるのは」
危険だし。」

七「…毎回こんな
ばかでっかい
テント建てるんですか?」


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#352 [イリア]



猫「建てなきゃ、寝るとこないけど?」

黒猫さんがクスッと笑う。


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#353 [イリア]



猫「…って、言っても
俺たち役者はノータッチだけどな。
大体は稽古してる間に、
大道具の奴らが建てる。」


七「―…大道具…」


猫「あんたも次から、頑張って?」


黒猫さんがまた笑う。


⏰:09/03/25 22:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#354 [イリア]



…てか、無理でしょ!
だってもうテントじゃないもん!
家だよ、家!!

こんなの移動するたびに
建ててる大道具の人って一体……


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#355 [イリア]



猫「そうそう、
アスタリスク劇団はあんた入れて56人。
そのうち15人が役者で
12人が役者のマネージャー。

んで、狐が監督 兼 脚本家。
後はみんな大道具だけど、
男ばっかだから気をつけろよ」


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#356 [イリア]



―…いや、男ばっかって!

力仕事だからな〜と言う
黒猫さんの声が聞こえる。


何で私スカウトされたんだろ?
力とかないんですけど…
しかも、男の人ばっかって…


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#357 [イリア]



無意識に半泣きになった私を見て
黒猫さんが目を細める。





猫「―…ねぇ、七衣?」

七「え?あ、はい?」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#358 [イリア]



少し上を見上げ、
黒猫さんと目を合わせる。



猫「…大道具って、大変だと思わない?
女の子がする仕事じゃないよ」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#359 [イリア]



そう言うと黒猫さんは
私の横の壁に手をつけ、
私は黒猫さんと壁に
挟まれた感じになった。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#360 [イリア]







―……って、近い近い近い!!!!///


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#361 [イリア]



すぐ目の前にある綺麗な顔に

鼓動が速まり、
頬が熱くなるのが分かる。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#362 [イリア]



赤くなっているだろう顔を
見られたくなくて、

私は自分の顔を慌てて下に向けた。


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#363 [イリア]



猫「…クスッ…何で下見るの…?」

七「―…ッッ////べ、別に?
そ、それより近いんですけど。」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#364 [イリア]



猫「――……2回」

七「え?な、何がですか?」

猫「……3回」

七「だ、だから何の回数ですか?!//
全然意味が…」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#365 [イリア]



猫「…4回。

あんたがどもった回数。
あんた、よくどもるよね、
役者には向いてないかな」


そう言って黒猫さんはまた笑う。


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#366 [イリア]



カァ―


今度こそ本当に顔が赤くなった。

七「べ、別に私だって
いっつもどもってる訳じゃないし!
てゆーか、誰がどもらせてると…」

猫「―…誰?」

七「……//」


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#367 [イリア]



綺麗な顔が覗き込んでくる。

上を見れば、唇が
触れてしまいそうな距離。


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#368 [イリア]



七「だ、誰でもありませんよ!//

それより近いです!!近い!!!//」






猫「――……失礼、姫」


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#369 [イリア]



黒猫さんが私から少し離れる。

…少しだけ、寂しく感じた。


⏰:09/03/25 22:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#370 [イリア]



猫「――…何?」


私の顔を見て、黒猫さんが言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#371 [イリア]



七「あ……その!!
姫っていうのやめてくれません?!

私に姫に似合いませんし…///」


少しでも寂しくなったなんて
知られたくなく、
私は慌てて
今思っただけのことを言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#372 [イリア]



>>371

×私に姫に〜…
○私に姫は〜…

 すいません(´;ω;`)


⏰:09/03/25 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#373 [イリア]



猫「―…なら、あんたも
俺のこと黒猫さん、っての
辞めるくれる?」


七「…え?」


予想外の返答に、思わず聞き返す。


⏰:09/03/25 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#374 [イリア]



猫「―…なんていうか、
他人行儀だよね。
そりゃ確かに
好きに呼べとは言ったけど。

猫、でいいよ」


七「…え…いや、
呼び捨てはちょっと…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#375 [イリア]



猫「何で?」


七「だって私のほうが年下っぽいし…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#376 [イリア]



猫「あんた、何歳だっけ?」


七「…よく覚えてないけど…
16くらい……?」


猫「本当だ、俺は18だから。
まぁ、別にいいよ?」


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#377 [イリア]



七「私がよくないです!!//
………じゃあ」


また、目をそらしてしまう。

私が麗さんみたいに綺麗だったら
ちゃんと目を見て話せるのかな?


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#378 [イリア]



七「―…猫さん、って呼びます。」


黒猫さんは少し不満そうに
鼻を鳴らしたが、
まぁ今はいっか、と言うと
私を置いて歩き出した。


⏰:09/03/25 23:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#379 [イリア]



七「あ、待って下さい!!」


猫「これが言いたかっただけなんだ。
黒猫さんて、呼びづらそうで。

あんた、風呂入ってきなよ。
そこを左にずっと行くと
大浴場があるから。
着替えは劇団の服が
置いてあると思うし。」


⏰:09/03/25 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#380 [イリア]



何で移動テントの中に
風呂があるんだよというつっこみは
とりあえず置いておいて…

歩き出す黒猫さんに質問をする。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#381 [イリア]



七「…あの!!
ずっと気になってたんですけど!!」


猫「?」


七「―…何で初めて会ったとき、
あんなに傷だらけだったんですか??」


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#382 [イリア]



黒猫さんが足を止める。

ゆっくりと私のほうに振り向いた。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#383 [イリア]



七「…あ…言いたくなかったら、
いいんですけど……」


風が吹く。

あ、やっぱりここは
テントの中なんだ。
自然なままの、風を感じる。


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#384 [イリア]



七「…………?」




猫「―…何でだったかな。

まぁ、あんたには関係ないよ」


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#385 [イリア]



関係ない



その言葉を聞いたとき、
何故か懐かしい感じがした。

その後すぐ、さっきよりも
ずっと大きい寂しさを感じ、
思わず下を向く。


⏰:09/03/25 23:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#386 [イリア]



分かってる。私と猫さんは
さっき会ったばっかりで。

まだお互いのこと
ほとんど知らなくて。


私は猫さんのこと

もっともっと知りたいけど、

猫さんはそんなこと、望んでなくて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#387 [イリア]



私と猫さんは

関係あることより

関係ないことのほうが



ずっと、ずっと多くて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#388 [イリア]



ポン


私の頭の上に、手が置かれる。


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#389 [イリア]



猫「―…悪い、言い方きつかった?
そんな顔すんなよ…」


どんな顔をしてるんだろう。

そういえば私の顔って、
どんなんだったっけ?


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#390 [イリア]



猫「…あの怪我は、
もう大丈夫なんだ。
あんたが川で癒やしてくれたから。
気にしなくていい…


…そういう意味だよ」


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#391 [イリア]



もう、大丈夫。

今はそれだけ知ってれば
十分なのかも知れない。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#392 [イリア]



七「…うん…」


そう考えると、少し寂しさが消える。

口元を緩めた私を見て、
黒猫さんもクスッと笑う。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#393 [イリア]



猫「ほら、さっさと風呂行け。
結構広い大浴場だけど
誰か入ってないか
一応確認しろよ?」


七「…はいっ!」


⏰:09/03/25 23:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#394 [イリア]



猫「じゃ、俺も稽古見てくるわ。
いま大道具の奴らが飯作ってるから
今から風呂入れば丁度いいよ。」


七「大道具って…
…ご飯もつくるんですか?汗」


猫「クスッ 別名、何でも屋」


大変そうだ…


⏰:09/03/25 23:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#395 [イリア]






猫「まぁ、まだ何も
分かんねーだろうし、

姫君が湯浴みを終えられた頃に
お迎えに上がりますよ」



七「また、姫って言った。」


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#396 [イリア]



猫「今度は、姫君だよ」


猫さんが笑う。


じゃ、後で
そう言って猫さんがまた歩き出す。
私も言われたとおり
左ひ向かって歩く。


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#397 [イリア]



>>396

×左ひ向かって歩く。
○左に向かって歩く。

 すいません(・ω・`)


⏰:09/03/25 23:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#398 [イリア]







猫「――……七衣!」


七「?」


猫さんは入り口の布をめくりながら
私の名前を呼んだ。


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#399 [イリア]






猫「―……やっぱあんた、
俺のマネージャーにするわ。」


七「……ふぇっ?」


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#400 [イリア]



猫「さっき役者が15人、
マネージャーが12人って
言っただろ。あれ、
俺と狼と麗は
マネージャーなんかいらねって言って
つけてなかったんだ。

…でもやっぱ、いたほうが便利かな。
色んな劇を、同時に
練習することもあるし
スケジュールとか覚えんのたるくて。
遅刻したら狐がうるさいし。

――……だから」


⏰:09/03/25 23:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#401 [イリア]



そこまで言って猫さんは
一度呼吸をする。



猫「…あんたに任せるわ」



七「…はぁ………えッッ?!!」


⏰:09/03/25 23:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#402 [イリア]



猫「フフン、よく考えたらさ。
あんたみたいなひょろっちぃ奴、

大道具になんか回したら
俺が怒られるし。」


⏰:09/03/25 23:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#403 [イリア]



喜んでいいのか。
慌てればいいのか。


私が猫さんのマネージャー…?

でも猫さんて確か
この劇団で一番人気じゃ……?


⏰:09/03/25 23:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#404 [イリア]



猫さんがまた、クスッと笑う。


猫「じゃ、よろしく、マネージャー♪」



七「え―――ッッ??!!」


⏰:09/03/25 23:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#405 [イリア]



私の驚きの声も虚しく、
猫さんはヒラリと手をふると

今度こそ本当に
テントから出て行った。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#406 [イリア]




猫さんのマネージャー…
猫さんのマネージャー…??//


できるのかな、私に。

まぁ大道具よりは
向いてるかなあ。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#407 [イリア]



そんなことを考えながら足を進める。

すると 大浴場、と書かれた看板が
前のほうに見えた。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#408 [イリア]



…さっきの川の水を
持ってきてるのかな。

ってゆうか、大浴場て
本当にホテルみたいだなー


⏰:09/03/25 23:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#409 [イリア]



赤いシルクののれんを
くぐり、中に入る。

服を脱ぐと、狼さんの言うとおり
いたるところから
少量の血が出ていた。


⏰:09/03/25 23:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#410 [イリア]



いつの傷だろう。
まったく覚えてない。


初め目覚めたときの
他人の血を体につけていた
自分を思い出し、
今更ながら怖くなる。


⏰:09/03/25 23:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#411 [イリア]



全部、全部思い出す日がきたとき、

私は今と変わらず
猫さんや狐さんと
いられるのだろうか。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#412 [イリア]



服を全部脱ぎ終わると、
タオルだけ持って
浴槽に繋がる扉を開ける。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#413 [イリア]



湯気であまり見えなかったが
広いことは分かる。

私が扉を開けたことにより
中の温度が下がり、
少しずつ中の様子が
露(アラワ)わになった。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#414 [イリア]



七「―…うわー広いっ
やっぱ絶対
この劇団お金持ち……」


ガタンッ!!!




浴槽の近くで音がする。
不思議に思いその方向を見ると―…


⏰:09/03/25 23:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#415 [イリア]







七「――……あ……」


知ってる人の顔。

だけど、体には無数の痣(アザ)。


⏰:09/03/25 23:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#416 [イリア]








七「――…麗さん……?」


麗「――…???!!!」


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#417 [イリア]



向こうも突然のことに
相当驚いているようだ。

数秒目を合わせたあと、
私は麗さんの体の痣を見る。


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#418 [イリア]



七「―…それ…痣ですよね…?
…大丈夫ですか……?」


麗「―…ッッ!!……黙れ…!!」



やはり怒ってる。


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#419 [イリア]



ど、ど、どうしよう。

出たほうがいいかな、でも…!!


⏰:09/03/25 23:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#420 [イリア]



七「本当に大丈夫ですか…?
誰か…呼んできましょうか?」



麗「…うるさいッッ!!
私に話しかけるな!!人間!!!!」


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#421 [イリア]




タッ



麗さんが走って私の横を通り、

浴室から出ていく。


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#422 [イリア]



――……誰か入ってないか
一応確認しろよ―……



今更、さっきの猫さんの言葉が
頭に響く。


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#423 [イリア]



あの痣、いつのだろう。

誰かに言ったほうがいいのかな。






…また、麗さんに嫌われちゃった。


⏰:09/03/25 23:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#424 [イリア]



同い年くらいの女の子。

仲良くなりたいけど、
いまいちどうすればいいのか
分からない。


⏰:09/03/25 23:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#425 [イリア]





七「―…波乱万丈な、1日だ。」


私はそう言って、湯船にはつからず

シャワーだけ浴びると浴室を出た。


⏰:09/03/25 23:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#426 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-344
>>345-425

安価
>>2

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/


感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


⏰:09/03/25 23:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#427 [める◆z..07vKEZg]
あっがれ〜\(^O^)/

あげときまっす☆゙

⏰:09/03/26 21:32 📱:N906imyu 🆔:☆☆☆


#428 [むー]
あげー

⏰:09/03/27 12:07 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#429 [イリア]


>>427メル様★
>>428むー様★

(´;ω;`)
(´;ω;`)
(´;ω;`)←

あげ有難うございます!
密かにむちゃくちゃ憧れてたので、
もう嬉しすぎて半泣きです!←

携帯のメモ帳に
先に打ち込んでるんですが、
書き出したら
止まんなくなっちゃって(゚∀゚)笑

今から大量(?)に更新します!
あげ有難うございました★★

⏰:09/03/27 12:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#430 [イリア]


>>425から

⏰:09/03/27 12:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#431 [イリア]



浴室から出ると、
まだ猫さんの姿はなかった。

傷にしみそうで、
お湯には浸かってない。

猫さんと別れてから
まだ15分くらいなので
迎えはまだだろう。


⏰:09/03/27 12:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#432 [イリア]



七「勝手に外 出てていいかなー
でも猫さん迎えにきてくれるって
言ってたし……

……それにしても」


⏰:09/03/27 12:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#433 [イリア]



自分の着ている服を見る。
着てた服はボロボロだったので、
言われたとおり
置いてある服を借りた。

そこには、アスタリスク劇団☆!!と
大きな文字で書かれてある。


⏰:09/03/27 12:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#434 [イリア]



七「…恥ずかしいTシャツだな…
まぁ借りてるし文句は言えないけど」


壁に背をつけ、座りこむ。

ふと、さっきの麗さんを思い出した。


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#435 [イリア]



あの痣…舞台の練習でついたのかな?
だとしたら、あんまり
人に言わないほうがいいのかな…

余計なことして…


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#436 [イリア]



七「…これ以上、
嫌われたくないしなぁ…」


狼「誰にだ?」


七「誰って、麗さん―…」




――……ん?


⏰:09/03/27 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#437 [イリア]



上を見上げる。
金髪赤目の、知ってる顔。


七「―…ッッ?!!狼さん??!!」


慌てて立ち上がる。


⏰:09/03/27 12:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#438 [イリア]



狼「―…おい!新入り!!
お前声が大きいぞ!!

俺が何かしたと思われるではないか!」



――いや、狼さんのほうが、大きいし。


⏰:09/03/27 12:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#439 [イリア]



七「…あ、すいません…って、
何してるんですか?
ここ女湯の前ですよ?」


私が問う。

すると狼さんは
腕を組みかえながらこう言った。


⏰:09/03/27 12:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#440 [イリア]



狼「いや、何。
あのあと雨が降りそうだったから
すぐ麗をつれて帰ってきたんだ。
まだお前らが入り口で喋くってたから
裏口から入ったがな。

それで、麗はすぐ風呂に行ったんで
もうすぐ飯だし、迎えにきた。」


⏰:09/03/27 12:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#441 [イリア]



そう言うと狼さんは
ニカッと笑って、白い歯を覗かせる。


七「……本当に狼さんは、
麗さんが好きなんですねぇ」


狼「ふん!当たり前だ!!
あいつは俺にとっての
運命の人だからな!!」


⏰:09/03/27 12:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#442 [イリア]





―…いいなぁ。

こんなかっこ良くて、
一途な人に想われてる麗さんは
幸せものだと思う。


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#443 [イリア]



七「麗さん、綺麗ですもんね」


狼「そうだろうそうだろう??!!
まぁ俺は顔に惚れてるわけじゃ
ないけどな!!
あいつの人間性に惚れてる!!」


口もとがほころぶ。
狼さんて本当、真っ直ぐだ。


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#444 [イリア]



狼「―…ところで、さっきの。
まぁあんまり気にするなよ。
最近麗は…元気ないから」


そう言うと狼さんは
悲しそうな顔をした。


七「…元気がない?」


⏰:09/03/27 12:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#445 [イリア]



狼「あぁ、あいつ本当は
もっと笑う奴なんだ。
でも最近はまったく笑わないし、
食欲も少ない。…心配でな。

過保護かもしれんが、
そういうときは、
出来るだけ離れたくない。」


狼さんが意志ある強い瞳で私を見た。


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#446 [イリア]



狼「新入りも、
最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる。

まぁ積極的に話しかけることだな!!」


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#447 [イリア]



狼さんが笑う。


……この人だったら、
麗さんの痣のこと知ってるかな?

もし知らないなら、
教えといたほうがいいよね。


⏰:09/03/27 12:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#448 [イリア]



七「――……あの、狼さん……」



麗「狼ッッ!!!!!!」


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#449 [イリア]



遠くのほうで声がした。

その声の持ち主は、ゆっくりと
私たちのほうに歩いてくる。


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#450 [イリア]



七「―…麗さん。」


狼「おぉ!何だ麗!!
もう風呂から出てたのか!!
迎えにきてたんだ、飯にしよう!!」


狼さんが満面の笑みで、
麗さんに話しかける。


⏰:09/03/27 12:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#451 [イリア]



麗「―…狐があんたを呼んでる。
明日からの舞台の台詞(セリフ)で
少し変更があったの。

すぐに裏テント前に来てって。」


⏰:09/03/27 12:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#452 [イリア]



狼「何?!またか!!!
舞台は明日だぞ!!
今更 台詞の変更とは、狐め…

では、先に行っとく!!
ちょうどいい、麗!!
新入りを飯場まで
案内してやってくれ!!

今日もいつも通り
川の近くの広場だ!!」


⏰:09/03/27 12:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#453 [イリア]



そう言って狼さんは
私をチラッと見て微笑むと
走ってテントの外に向かった。


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#454 [イリア]



私と麗さんを、仲良くさせようと
してくれてるのかな?

でも、猫さんが迎えにきてくれるし、
どうしよう…っていうか


⏰:09/03/27 12:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#455 [イリア]










―――……き、気まずい……汗


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#456 [イリア]



麗さんは一言も喋らない。

どうしようどうしよう。
私から喋っていいかな?
でも今さっき
私に話しかけるな!!って
怒鳴られたばっかだし……


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#457 [イリア]



試しに私は恐る恐る、
麗さんに話しかけてみた。


⏰:09/03/27 12:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#458 [イリア]



七「……あの…麗さん?

私は、猫さんが
迎えにきてくれるって言ってて…
入れ違いになったら困るし、
ここで待ちます…だから先に、
どうぞご飯に「喋ったか?」」


麗さんと私の声が重なる。


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#459 [イリア]



七「…は、はい?…何を…?」


麗「私の体の痣のこと、
狼に喋ったのか?」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#460 [イリア]



いやそれは、喋ろうとしたら
麗さんがきたので…


七「…話してませんけど…」


麗「――…」


⏰:09/03/27 12:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#461 [イリア]



麗さんは不思議な顔をしている。


悲しいような、安堵(アンド)したような。


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#462 [イリア]



七「麗さん…?」


麗「…何でもない。
話すなよ、ただの怪我だから。
絶対に、誰にも言うな。」


⏰:09/03/27 12:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#463 [イリア]



そう言うと
さっきの表情とは別人のような顔で
私を睨み、歩き出す。


⏰:09/03/27 12:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#464 [イリア]



七「…あ、待って!!」

麗「……?何だ……」

七「な、七衣です!!」


麗「……は?」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#465 [イリア]



七「な、名前!!
七衣って言います!!!!
今日からこの劇団で
お世話になります!!

あ、それから
大道具のはずだったんですけど
今さっき、猫さんの
マネージャーになりました!!」


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#466 [イリア]



一気に喋る私を
麗さんが不思議そうに見つめる。


⏰:09/03/27 12:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#467 [イリア]



麗「―…だから、何なんだ。

お前が大道具だろうと、
猫のマネージャーだろうと…
私には関係ない」


七「そうなんですけど…」


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#468 [イリア]



麗「狐がお前を、この劇団に
入れることを認めた。
反対はしない。だけど
私には関わるな」


冷たい麗さんの声が響く。

その目に、顔に、
思わず怯(ヒル)んでしまいそうになる。


⏰:09/03/27 12:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#469 [イリア]



最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる――………


さっきの狼さんの声が頭に響く。


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#470 [イリア]



―…ここで諦めたら、
せっかく優しい言葉をくれた

狼さんに申し訳ない!!!!


⏰:09/03/27 12:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#471 [イリア]



七「―…!!…麗さんッッ!!!!」


麗「…何だ…まだ何か「私!!」」


麗さんの声に、私の声を被せる。

失礼かもしれないが、今は
この気持ちだけ、早く伝えたい。


⏰:09/03/27 12:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#472 [イリア]



七「―…麗さんに認めて貰えるよう、
頑張りますね!!それでもし麗さんが
私のこと認めてくれたら……」


一度、言葉を切る。
前にいる綺麗な人は、
私を不思議そうに見つめている。


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#473 [イリア]



麗「認めて、くれたら?」


七「……認めてくれたら……

…私と、友達になって下さい!!!!」


⏰:09/03/27 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#474 [イリア]



私の声がテント内に響く。

稽古やら食事作りやらで
みんな出払っているらしいので、
気にしない。


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#475 [イリア]



麗「……………は?」


七「えっとえっと!!!
私、本当に何も覚えてなくて!!!!
友達もいなくて!!寂しいんです!!!!

今の私の友達って、
猫さんと狐さんと…狼さんは
まだ分かんないけど…
このくらいで!!!!/////」


⏰:09/03/27 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#476 [イリア]



言ってしまったあとに
恥ずかしさが込み上げてくる。


そもそも友達って、
こんな風になるもんだっけ?///


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#477 [イリア]



麗「――…」


七「――…」


⏰:09/03/27 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#478 [イリア]



―…沈黙。


呆れられてる気がする。
そりゃそうかぁ。


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#479 [イリア]



七「―…あの、麗さん…?」


麗「―…何故」


七「え?」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#480 [イリア]



麗「何故私に、そこまで拘(コダワ)る?
狼に何か言われたか?それとも狐?

―…私と関わっても
何も得るものはない。」


⏰:09/03/27 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#481 [イリア]



麗さんが、冷たく言い放つ。
でも、どうしてだろう。

何で、何で。


⏰:09/03/27 12:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#482 [イリア]



―…麗さんが寂しそうに見えるのは、

何で?


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#483 [イリア]



七「―…麗さん綺麗だから」


思わず私は、声を出す。


麗「………え?」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#484 [イリア]



七「…同い年くらいの女の子。
友達になりたいと思うの
そんなにおかしいですか?

それに……麗さん、綺麗だから。」


⏰:09/03/27 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#485 [イリア]



笑ってみる。

麗さんが演技してるところ

本当の笑顔でいるところ

見てみたいんです。


言葉には出さない。
だけど心で思う。


⏰:09/03/27 12:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#486 [イリア]



七「…って、駄目ですよね…
とにかく、認めてもらえるよう、
がんばり「綺麗なんかじゃない」」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#487 [イリア]



七「……え…?」


麗「…綺麗じゃない、私。

―……話はそれだけか?くだらない」


七「……あ……」


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#488 [イリア]



麗「私はお前を認めない。
何かあったら、
すぐにここから追い出す。

覚悟しておけ、雨原。」


そう言って麗さんは、また歩き出す。


⏰:09/03/27 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#489 [イリア]



まだ言いたいことはたくさんあるけど…

少しだけ、喋ってもらえた。
今は、それだけで。


麗さんの姿がテントの外に消える。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#490 [イリア]



――……綺麗じゃない。


確かにそう聞こえた。

綺麗じゃない?
麗さんが綺麗じゃなかったら
この世界に綺麗な人なんて
いないんじゃないかな。


⏰:09/03/27 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#491 [イリア]



口は悪いが、根はいい子。

森の中での狐さんの言葉を思い出す。


⏰:09/03/27 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#492 [イリア]



確かに口は悪いかも。

でもどこか優しそうで、
立ち居振る舞い、全てが綺麗な人。



……仲良くなれたらいいなぁ。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#493 [イリア]



っていうか、私も麗さんみたく
綺麗になりたいなー




―…そうしたら猫さんとも…

目を見て、話せるのに。


⏰:09/03/27 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#494 [イリア]



フゥ………


ため息をつく。



少しだけ眠い。

壁に背をつけ、ズルッと座り込んで

瞳を閉じる。


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#495 [イリア]



―――…………

――――……………


暗い、暗い、
ここはどこだろう?

あたり一面に広がる、
闇と、血の匂い。


体がいやに軽い。
これは、夢?


⏰:09/03/27 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#496 [イリア]



その揺りかごが風に揺れて

私は大きくなった――……


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#497 [イリア]



七「?」


歌声…



後ろを振り返る。
するとそこには闇の中に
黒く大きい、檻(オリ)が見えた。


⏰:09/03/27 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#498 [イリア]



中には誰か、

5歳くらいの男の子と、女の子。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#499 [イリア]



歌っている。


二人は手を繋ぎ、
暗い暗い檻の中で
あの唄を、歌っている。


⏰:09/03/27 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#500 [イリア]



雨の音 風の声 聴いて
揺りかごを揺らして

早く私を迎えにきて――……


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#501 [イリア]



キャハハハハ……


時折もれる、楽しそうな笑い声。


⏰:09/03/27 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#502 [イリア]



苦しくなる。


何故、こんな気持ちになるの。

どうしてこんな暗い場所で、
あなたたちは、笑っているの。


この闇は何。

この甘い甘い、血の香りは何?


⏰:09/03/27 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#503 [イリア]



誰だろう?


もう少しだけ近づいてみようか。

そうしたら、
もっとはっきり見えるかも。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#504 [イリア]



唄が聞こえる方向に
足を一歩踏み出す。


女の子が、私を見つめた。


七「……え?」


思わず声を出す。


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#505 [イリア]



こっちを見て、
楽しそうに笑う少女は…





七「―――………私……?」


⏰:09/03/27 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#506 [イリア]



男の子の顔は、ぼやけていて見えない。


何、何なの?
ここは、どこ?



幼い私に向かって、手を伸ばす。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#507 [イリア]



グィッ


するとすぐに
誰かに意識を掴まれ
引き戻される。


意識が遠のく。


⏰:09/03/27 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#508 [イリア]









「――……僕は君を、守りたい」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#509 [イリア]



引き戻される直前に
顔の見えない、男の子の声が響いた。



ズキッ


七「痛ッッ!!」


⏰:09/03/27 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#510 [イリア]



頭が痛い。
割れそうだ。




痛い…痛い―………


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#511 [イリア]



七「―――……痛………」

猫「――……??!!……オイ!!!!」



七「?」


⏰:09/03/27 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#512 [イリア]



目の前で、
夢の中の男の子とは違う少年が
私を心配そうに覗き込んでいた。


⏰:09/03/27 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#513 [イリア]



七「―…?猫さん…」


猫「オイ…あんた、大丈夫か?」


風が吹き抜けるテントの中。
見覚えのある景色。
ついさっきまで麗さんと
話をしていた場所。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#514 [イリア]



七「……………」



あれは、どこだったんだろう。

あの檻も、あの暗さも。
何故か私を、懐かしくさせる。


⏰:09/03/27 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#515 [イリア]



猫「…オイ、聞いてる?」


七「…私…どうしたんですか?」


猫「それは俺が聞いてるの。

迎えにきたらさ、あんた
座り込んで、うなされてるし。」


⏰:09/03/27 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#516 [イリア]



うなされてた…

そうか私、寝ちゃったんだ。


猫「―…嫌な夢でも、見てたわけ?」


七「……嫌な夢……?」


⏰:09/03/27 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#517 [イリア]



分からない。

分からない。



――……僕は君を、守りたい



あの男の子の声だけが、
鮮明に頭に響き続ける。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#518 [イリア]



深い闇と、甘い血の香り。


そんな場所で
屈託(クッタク)なく笑っている
幼い私の顔。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#519 [イリア]



猫「―…気分悪い?
医者呼ぼうか?」


猫さんの綺麗な声が聞こえる。

心配してくれてるのかな。


⏰:09/03/27 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#520 [イリア]



七「―…変な夢…見て…」


猫「…変?」


七「はい…でも、もう大丈夫です。
ただの夢ですよね。ごめんなさい。」


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#521 [イリア]



アハハ、と笑ってみせる。


そう、夢なんだ。

今の私には、関係ない。


⏰:09/03/27 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#522 [イリア]



猫「―…夢と現実は、必ず繋がってる」


七「………え?」


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#523 [イリア]



猫「繋がってるんだ。

――……俺は、そう思う。」


猫さんの顔がかすむ。
少し悲しそうな顔に胸が痛む。


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#524 [イリア]






―…繋がってる。

私とあの夢は…繋がっている?


⏰:09/03/27 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#525 [イリア]



七「―…猫さん…」


猫「……?何?」



七「―…私がちゃんと、
全部思い出したとき…

それでも私は、私だから…」


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#526 [イリア]



風が吹いている。

記憶をなくす前も私は
この風を感じれていたのかな。


⏰:09/03/27 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#527 [イリア]








七「―……今と変わらず、

傍(ソバ)で笑ってくれますか?」


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#528 [イリア]



猫さんが驚いた顔をした。

瞬間、いま自分が聞いたことに
焦りと恥ずかしさを感じる。


⏰:09/03/27 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#529 [イリア]



七「……ッッ!!///いえ、別に!!
なに聞いてんだろ私、寝ぼけてる!!//
忘れて下さい//忘れ―…「あんたが」」


猫さんの声。

変わらない、甘い、甘い声。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#530 [イリア]





猫「―…あんたが変わらないなら、
俺も変わらない」



その声に、表情(カオ)に

今日一日だけで
どれだけ鼓動を速めさせられただろう。


⏰:09/03/27 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#531 [イリア]



猫「―…行こう、もう飯の時間だ」


猫さんは私の腕を引っ張り立たせると

そのまま外に歩き出す。


⏰:09/03/27 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#532 [イリア]



猫さんの手のひらに、
確かな熱を感じる。



私たちは生きていること。

ここは夢じゃないということ。



目の前の人の優しさに、
溺れてしまってるということ。


⏰:09/03/27 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#533 [イリア]



確かなことは少ないけれど、
少しずつ、増えてきた。





私たちは布をめくり、外に出る。

さっきまでの雨はどこかに消え、
紅い夕日が顔を見せていた。


⏰:09/03/27 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#534 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-425
>>431-533

安価
>>2

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★

⏰:09/03/27 13:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#535 [イリア]


>>533から

⏰:09/03/28 12:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#536 [イリア]



猫さんに手を引かれ、
大きなテントの裏口に回る。

するとさっきの川が見え、
その近くに人溜まりができていた。


⏰:09/03/28 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#537 [イリア]



猫「――……チ、また来てやがる」


七「?…誰がですか?」


猫「この劇団のファンだよ、
移動劇団ッつっても噂は流れる。

人気があるって、大変だね本当。」


そう言うと猫さんは
私と繋がれていた手を離した。


⏰:09/03/28 12:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#538 [イリア]



「――……ッッ??!//黒猫さん??!!//」


人溜まりの中から声がした。



猫さんは見たことのない笑顔で
ヒラヒラと手をふる。


⏰:09/03/28 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#539 [イリア]







七「――……何ですか、その笑顔。」


猫「クス、役者ってね、

イメージが大切なんだよ」


⏰:09/03/28 12:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#540 [イリア]



何十人もの人だかりが
一気に私たちのほうに流れてくる。


「キャァッ!!//やっぱり
本物のほうが綺麗だわ!!///」


「噂通りのお方!!///」


「お綺麗ですねぇ//
何か贈り物をしたいのだけど、
お好きなものは何かしら?///」


⏰:09/03/28 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#541 [イリア]



次々とファンの人の声がする。

よく見ると向こうのほうで
狼さんもファンの人に囲まれている。



――……麗さんの姿はない。

麗さんどうしたんだろ…
もう先に来てると思ったのに…


⏰:09/03/28 12:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#542 [イリア]



私がそんなことを考えてる間にも
ファンの人たちの質問は続く。


「私、前に一度違う街で
この劇団の講演を見たことあって//
そのときから黒猫さんの大ファンで!!//

覚えています?あれは去年の今頃、
セパナ会館での講演で…//」


⏰:09/03/28 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#543 [イリア]







猫「―…『夢の街、スレライナ』」


猫さんはそう言うと

妖艶に微笑んだ。


⏰:09/03/28 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#544 [イリア]



「そうです!!//流石だわ!!//
私あのときの黒猫さんの最後の台詞、


あれを聞いたとき本当に鳥肌が…//」


⏰:09/03/28 12:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#545 [イリア]






「―…嗚呼、コレを見よ。」


猫さんの声が響く。


⏰:09/03/28 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#546 [イリア]



猫『コレが本物の、我らの故郷。
スレライナのあるべき姿だ。

王、兵、そして群集。
殺戮(サツリク)と哀話(アイワ)。

壁を創(ツク)ったのは誰だ??』


⏰:09/03/28 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#547 [イリア]



いつもよりずっと澄んだ声。
思わず聞き惚れる。

しばらくすると
またファンの人たちが叫び始める。


⏰:09/03/28 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#548 [イリア]



「キャァッ!!//それです!!//
あぁもうどうしましょう!!//
明日の講演が待ちきれないわ//」


猫「―…クスッ、有難う。
僕も今から、待ち切れません。」



誰だよ僕って。

ちょっと性格違い過ぎません?


⏰:09/03/28 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#549 [イリア]



猫さんの声に、また人だかりが増える。


っていうか、あきらか私邪魔だよね。
そう思い、一歩後ろに下がる。

少しの間、離れていよう。

そう思った、そのとき。


⏰:09/03/28 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#550 [イリア]



狐「はいはいはい!!」


狼さんの周りの人だかりで、
狐さんの声がした。



狐「お客様、これから僕らは
最後の練習に入ります。
一度、ご退席願えますか?」


ニコッと笑い、狐さんが言う。


⏰:09/03/28 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#551 [イリア]



「狐さんだわ//」

「どうしてあれほどのお顔なのに、
監督をしていらっしゃるのかしら??//」

「是非一度、演技している姿
拝見してみたいものですわ////」



遠くから声が聞こえる。

あぁやっぱ狐さんもモテるんだな。
かっこいいもんなー


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#552 [イリア]



猫「―…ッて、いうことだから…」


「あの!!//練習風景
少しだけ見せて頂けません??///

そうしたら私たち、
すぐに帰…「それは嫌だな…」


⏰:09/03/28 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#553 [イリア]



ん?猫さんのファンに対する
初めての否定的な言葉。

ついに本性だすのかな?


⏰:09/03/28 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#554 [イリア]



「―…あら、ごめんなさい……

私たち少し調子に―…「だって」」


また猫さんがファンの人の声に
声を被せる。


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#555 [イリア]



猫「―…明日の楽しみが、
なくなるでしょ?


それに僕、まだ台詞
全部覚えられてなくて…

…恥ずかしいから、嫌だな。」


⏰:09/03/28 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#556 [イリア]



その甘い声に、私もファンの人たちも
顔を赤くする。




僕って誰!!!

僕って誰???!!!////

っていうか台詞なら
もう覚えてるでしょ??!!///


⏰:09/03/28 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#557 [イリア]



「あらまぁ////そうでしたの////」


ファンの人たちが、
また甘ったるい声を出す。


「劇団トップ人気の黒猫さんでも
そんなこともあるのねぇ///」

「それはやっぱり、まだ18歳だもの//」

「ほら!私たち、お邪魔にならないよう
早く帰らなくちゃ!!//」


⏰:09/03/28 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#558 [イリア]



改めてさっきの、狼さんが
言っていた言葉の意味が分かる。






七「――……悪魔だ…///」


「…ところで貴女、
―…一体、どなた?」


⏰:09/03/28 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#559 [イリア]



私に声が向けられる。
突然のことに驚いた。


七「……ふぇっ??!!あ、私ですか?
えーと私は………」


猫さんのマネージャー?

いやぁ、そんなこと言ったら
何か色々ややこしいよな。


⏰:09/03/28 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#560 [イリア]



猫「新しいスタッフなんだ。

大道具の白(ハク)って奴に惚れて
この劇団に入ったみたい。

動機不十分だよねー」


猫さんがアハハと、幼い顔で笑う。


⏰:09/03/28 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#561 [イリア]



すいません、ハクって誰ですか。


「あらぁ、そうなの//」

「いやね、黒猫さんと一緒に
歩いてきたもんだから、
私ったら、てっきり…//」


またガヤガヤと騒ぎだす。
猫さんは私の耳元で囁(ササヤ)いた。


⏰:09/03/28 13:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#562 [イリア]



猫「あんた、ちょっと離れてて。
こいつら、俺とあんたのこと
疑ってるみたいだから。」


七「……はぁ」


猫「狼のほうが片づいたら
狐が来て追っ払ってくれるから」


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#563 [イリア]



そう言われて私は猫さんと離れ
人だかりの少ないほうに歩き始めた。








――…それにしても。


⏰:09/03/28 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#564 [イリア]



何だよさっきの猫さんの態度。

いくら何でも、サービス精神
旺盛(オウセイ)すぎでしょ!!


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#565 [イリア]



訳もなくイライラする。


あの声で舞台の上に立ってるのかな。

そんなのファンができて当然じゃん。


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#566 [イリア]






七「……猫さんにとっては私も

うるさいファンの一人なのかな…」


⏰:09/03/28 13:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#567 [イリア]



そう考えると、
どうしようもなく切なくなる。
無意識に頬に冷たい涙が伝う。



七「……?…涙?
どんだけ女々しいんだよ私…」


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#568 [イリア]



ファンの人たちの声、聞きたくない。



私はそう思い、森の中に足を進める。

危険かもとは思ったが、
まぁ奥まで入らなかったら
大丈夫だろう。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#569 [イリア]




ザワザワザワ…



森が風で揺れてる。

少し肌寒い。


⏰:09/03/28 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#570 [イリア]



「――……ッめ…たら」





誰かの声が聞こえる。
こんなところで…誰…?

そう思い、声のするほうに歩く。
すぐに知ってる顔が見えた。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#571 [イリア]



七「――…麗さん…」


そこには麗さんと、
麗さんを囲う男性4人。
ファンの人かな?
でも何か様子が――……


私は木の影に隠れ、様子を窺(ウカガ)う。


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#572 [イリア]



男「だからぁ、いいじゃん
俺たちだってさー
もうアスタリスク劇団の一員だよー?」


男「今日の晩飯んとき
正式に発表されるみたいだけどー
アスタリスク劇団とオリオン劇団、
次の舞台から合併なるんだってぇ」


⏰:09/03/28 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#573 [イリア]





麗「――……だから、何よ」


麗さんの声がする。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#574 [イリア]



男「だからぁ?
だからどうってことないけどー
まぁ仲良くしようってことぉ〜

…こないだみたいにさー」


こないだ?
こないだって何?


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#575 [イリア]



麗「――……ッッ!!
意味の分からないことを言うな!!
私は別に何も――……ッッ!!」





男「キスしたじゃぁ〜ん」

男が笑いながら言った。


⏰:09/03/28 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#576 [イリア]



え、キス?

麗さんが?




麗「―――………ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#577 [イリア]



男「あんときはさぁ
途中で邪魔入ったし
あんだけで終わったけど〜…

あんただってさ、他の奴らに
知られたくないだろ?

…仲良くしよって、そういうこと。」


⏰:09/03/28 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#578 [イリア]



ギャハハハハハ……
男たちの下品な笑い声が響く。



麗さんの体の痣(アザ)。

最近元気がないって言った
狼さんの言葉。



――…………まさか。


⏰:09/03/28 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#579 [イリア]



思わず飛び出そうになる。

でも向こうは体の大きい男性4人。
私が出ていっても、何もならない。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#580 [イリア]



誰か。

誰か呼んでこよう。



誰か。



私は走ってさっきの場所に戻る。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#581 [イリア]



狐さんは猫さんのファンの
説得をしていた。



狼さんはファンの人たちを
狐さんに帰されたのか、

食事の準備を手伝っている。


⏰:09/03/28 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#582 [イリア]



七「――ハァ…ッッ!!狼さん!!!!!」


狼「ん?何だ新入り、
そんなに慌てて。

ところでお前、麗知らないか?
一緒に来てたんじゃ……」


七「いいから!!早く来て!!!!!」


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#583 [イリア]



私は狼さんの腕を引っ張ると
森のほうに走り出す。


遠くで人だかりに囲まれた猫さんが
一瞬こっちを見た気がしたが、
今はそんなこと関係ない。


⏰:09/03/28 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#584 [イリア]



狼「……うぉ!!何だ何だ!!!!
何かあったのか?」


七「――ハァ…麗さんが…ッッ!!」


狼「麗?」



その言葉に狼さんがピクッと反応する。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#585 [イリア]



狼「麗に何かあったのか?

場所は?場所はどこだ?」



七「…ハァ…ハァ…今、向かってます!!
そこ…その大きな木の向こう…ッッ」


私のその言葉を聞くと
狼さんは私を置いて走り出した。


⏰:09/03/28 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#586 [イリア]



間に合ったかな――………ッッ??

狼さんが木の近くで走るのをやめた。



七「??!どうしたんですか??
麗さん、大丈夫――……ッッ」


狼「…新入り…」


狼さんの声が響く。


⏰:09/03/28 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#587 [イリア]



狼「―…誰も、いないぞ?」


え……?


私も狼さんの横に着き、
さっきと同じ場所で前を見る。


七「――……嘘……」


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#588 [イリア]



するとさっきまで
麗さんと男性がいた場所には、

狼さんの言うとおり、
誰もいなかった。


⏰:09/03/28 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#589 [イリア]



七「……さっきまで確かに…」


麗「――……何がよ?」


後ろから、麗さんの声。
驚いて後ろを振り向く。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#590 [イリア]



狼「――…麗」

七「…麗さん……」


麗「狼、あんた馬鹿じゃないの?
いきなり走り出すから、
何かと思ってついてきたら…
…私がなに?私はずっと
テントの傍(ソバ)にいたわ。
…あんた、雨原に騙されて…」


七「……違うッッ!!!!」

私が叫ぶ。


⏰:09/03/28 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#591 [イリア]



七「何で嘘つくんですか??!!
さっき確かにここで、
麗さんと男性4人で…
何か話してたじゃないですか!!

―……麗さん、震えてた!!
何で言えないんですか……ッッ!!」


⏰:09/03/28 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#592 [イリア]



嫌われてもいい。

一生、口をきいて貰えなくてもいい。


だから、本当のこと
狼さんに話してよ。

こんなに麗さんのこと想ってる、
狼さんに全部話してよ。


⏰:09/03/28 13:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#593 [イリア]



麗「――……何この子?きちがい?
…だから嫌なのよ、人間って「麗」」


狼さんの声が、
麗さんの言葉を遮(サエギ)る。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#594 [イリア]



麗「…何?まさかあんたも
こんな子の言うこと信じてるの?」

狼「新入りの言うこと、
あながち嘘には聞こえない。だけど

――……俺は、お前を信じてる」


狼さんの声が響く。

麗さんは狼さんから目を背けた。


⏰:09/03/28 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#595 [イリア]



麗「…なにその台詞?

明日の舞台にそんな台詞
あったかしら?」


狼「―…お前を、信じてる。
だから今ここで、一つ約束して欲しい」


⏰:09/03/28 13:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#596 [イリア]



風が吹いてる。

あぁ、さっきまで雨が降ってたもんな。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#597 [イリア]



狼「――……何かあったら、
絶対俺に言うこと。

どんなことでも、必ず。」



狼さんを見る。
強く意志のある赤い瞳は
猫さんとは違う美しさを持つ。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#598 [イリア]



麗「――……何で私が…」


狼「約束だぞ、麗」



狼さんの気迫に押されたのか、
麗さんがコクリと頷く。


⏰:09/03/28 13:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#599 [イリア]



狼「……よし、それじゃあ
今度こそ本当に飯にしよう!!

猫のファンは帰ったかな?
あいつのファンはしつこくて困る、
まったくあんな悪魔の
どこにそんなに惚れるのか…

行くぞ!麗!!
新入りもご苦労だったな!!!!」


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#600 [イリア]



そう言って狼さんはまた

白い歯を見せてニカッと笑う。


⏰:09/03/28 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#601 [イリア]





――……本当にこれでいいのかな…


私はそう考えながら

歩き始めた二人の後を追った。


⏰:09/03/28 13:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#602 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-533
>>536-601

安価
>>2

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★

⏰:09/03/28 13:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#603 [まな]
最初、狼のこと「うぜー」とか思ったけど←
今はめっちゃ好きです!
すっごい格好いいです^^★

⏰:09/03/29 15:08 📱:PC 🆔:☆☆☆


#604 [乃愛]
あげます更新待ってますっ

⏰:09/03/30 13:43 📱:F01A 🆔:☆☆☆


#605 [イリア]


>>603まな様★

 キャラのこと好きって
 言ってもらえると
 ほんま嬉しいです(;_;)
 狼は第二話ではでばります←
 コメント有難うございました!

>>604乃愛様★
 あげ有難うございます(´;ω;`)
 むっちゃ感動です!!←
 更新トロくてすいません(´`)
 あげ有難うございました!

⏰:09/03/31 00:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#606 [イリア]










⏰:09/03/31 00:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#607 [イリア]



猫「――……どこ、行ってたの」


三人でテントの近くに戻ると、
あきらかに不機嫌そうな猫さんが
私に言った。


⏰:09/03/31 00:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#608 [イリア]



七「?…どこって…」


狼「猫!お前のファンは
もう帰ったのか?」


猫「とっくに帰ったっつーの、
まぢ香水臭い、顔面凶器の糞ばばぁ。
あいつらが舞台見に来るってだけで
逃げ出したい気分だよ」



さっきまでの猫さんはどこへ?

⏰:09/03/31 00:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#609 [イリア]



狐「よく言うよ〜

いま帰ったんだよ?あの人達。
もう僕ヘトヘトで……」


狐さんが死にそうな声で言った。


⏰:09/03/31 00:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#610 [イリア]



狼「どこに行っても
お前のファンはしつこいな!!」


猫「フフン、愛されてんだよ」


二人が口喧嘩を始めると、
麗さんはテントの入り口に
向かって歩き始めた。


⏰:09/03/31 00:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#611 [イリア]



狼「いつかお前を抜いて
俺がNo.1になってやるからな!!
覚悟し――……麗?
どうした、もう飯の時間だぞ」


麗「いらない」


麗さんが冷たく言う。


⏰:09/03/31 00:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#612 [イリア]



狐「…麗ちゃん?体調悪いの?
明日から一週間講演だよー?
大丈夫なの?」


狐さんが心配げに麗さんに問う。


⏰:09/03/31 00:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#613 [イリア]



麗「…大丈夫、さっきの雨で
ちょっとしんどいだけ。
横になれば治るわ」


狼「――…そうか、
ゆっくりな、暖かくして寝ろよ!」


⏰:09/03/31 00:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#614 [イリア]



麗さんは狼さんの言葉に
軽く頷くと、テントの陰に消えた。


七「――……麗さん、大丈夫かな」


狐「―…うん、後で様子見に行くよ、
ほらみんなが待ってる、
ご飯にしよう!」


狐さんが笑う。


⏰:09/03/31 00:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#615 [イリア]



歩き出す狼さんと狐さんの後を追うと、
後ろから髪を引っ張られた。


七「―…痛ッッ!!!」


後ろを振り返ると、また猫さんが
不機嫌な顔で私の髪を掴んでいた。


⏰:09/03/31 00:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#616 [イリア]



七「……痛いなーもう!
何なんですか?どうかしました?」


私の言葉に、
綺麗な顔がよけいに歪(ユガ)む。


⏰:09/03/31 00:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#617 [イリア]



猫「何ですかじゃねぇよ、あんた

俺の質問無視するわけ?」




質問――……?


何かされたっけ?
記憶を辿(タド)る。


⏰:09/03/31 00:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#618 [イリア]








――……どこ、行ってたの



さっきの猫さんの声が頭に響く。


⏰:09/03/31 00:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#619 [イリア]



七「――……あ」


猫「思い出した?」


七「もしかして、
どこに行ってたって奴ですか?

……んー…何て言えばいいんだろ…」


⏰:09/03/31 00:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#620 [イリア]



焦る。

麗さんのこと言っていいのかな。

いや駄目だよね。

知られたくないみたいだったし

何より麗さん、否定してたし…


⏰:09/03/31 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#621 [イリア]



七「――……んー…………汗」


猫「―…麗のこと?」


七「え?あ…はい。」


猫「ふぅん…なら、今はいいや」


⏰:09/03/31 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#622 [イリア]



そう言うと猫さんは
私の髪から手を離し、
狐さんたちのほうに歩き始めた。


⏰:09/03/31 01:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#623 [イリア]





―――秘密なんて、持ちたくないのに。




⏰:09/03/31 01:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#624 [イリア]



猫「……何してんの?早く来いよ

もうみんな食い始めてる。」


いつもの笑顔。


七「……はい。」


⏰:09/03/31 01:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#625 [イリア]



私も猫さんの後を追う。

麗さんにもう一度話してみよう。

ちゃんと悩みを聞いて、

狼さんに伝えて欲しい。




猫さんに、伝えたい。


⏰:09/03/31 01:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#626 [イリア]



七「…秘密なんて、持ちたくないしね」

猫「何が?」

七「えッッ??!!あ、こっちの話です!」



自然に声が出てた。
猫さんが笑う。



そのとき、遠くのほうで
狐さんの声がした。


⏰:09/03/31 01:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#627 [イリア]



狐「――え〜はい!みんな聞いて!
何でも屋の方たちが作ってくれた
美味しい食事の最中です、が!」


周りの人たちが狐さんを見る。

台の上にでも立ってるのだろうか、
狐さんだけ嫌に目立っていた。


⏰:09/03/31 01:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#628 [イリア]



狐「前から言ってましたとおり!
…っていうか、わざわざ
僕が言わなくても、
みんな気づいるよねー

えーご覧のとおり、今日から
アスタリスク劇団は、
もう一つの半妖組織、
オリオン劇団と合併することに
なりました!イェイ☆」


狐さんの軽口が響く。

⏰:09/03/31 01:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#629 [イリア]



狐「理由は、たび重なる妖との戦いで
半妖の数が減っちゃたから。

…ちなみに団長はこれからも
僕がするんでよろしく!

劇団の名前もアスタリスク劇団なんで
よろしく!元オリオン組、ごめんね〜☆」


⏰:09/03/31 01:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#630 [イリア]



狐さんが笑ってそう言うと、
その近くでおゃらけた
ブーイングが起こっていた。


オリオン劇団だった人たちかな。


⏰:09/03/31 01:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#631 [イリア]



猫「――……大分増えたな。
ざっと見て150はいるだろ」


さっき麗さんたちが話してたとおりだ。

あの男性たちも、狐さんの近くにいる。




七「……」


⏰:09/03/31 01:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#632 [イリア]



狐「ちなみにぃ〜もう一つ!!
僕は贔屓(ヒイキ)はしないから!

えー今までのアスタリスク劇団では
ここにいる狼くんと、
あっちにいる…」


狐さんが黒猫さんを指差す。
自然とみんなの視線が
私たちに向けられる。


⏰:09/03/31 01:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#633 [イリア]



狐「…黒猫くん、通称ネコくんが
ツートップとして
主役をしてきました!

だぁ〜けぇ〜どッッ!!

元オリオン劇団の子で
この二人より凄い子がいたら
ばんばん主役やってもらうから!
みんな頑張ってね☆」


遠くのほうで歓声が上がった。

⏰:09/03/31 01:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#634 [イリア]



七「――……ライバル
一気に増えちゃいましたね」


猫「フフン、関係ないね」




余裕そうな笑み。

何か怖いです。


⏰:09/03/31 01:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#635 [イリア]



狐「それじゃあ改めて、
オリオン劇団の諸君!!
アスタリスク劇団にようこそ!!

…それから、七衣ちゃん!!」


七「あ、へ?あ、はい!!」


いきなりの声かけに
若干どもりながら答える。


⏰:09/03/31 01:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#636 [イリア]






狐「……君も。アスタリスク劇団にようこそ」



狐さんが大人びた顔で笑う。

猫さんや、狼さんにはない顔。


⏰:09/03/31 01:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#637 [イリア]



狐「……え〜まぁそんな感じ。
一緒に悪い妖を退治しましょ♪

んー劇団のルールとか
決めといたほうがいいのかな?
あ、元オリオン劇団の人たち、
明日からの舞台中は
スタッフとして動いてね?

あとは………
…まぁ真剣なとこ真剣にすれば
あとは適当でいいんでっ
適当最高!そんじゃみんな!!
沢山の新しい仲間に!!
カンパ〜イ!!!!」


⏰:09/03/31 01:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#638 [イリア]



狐さんの声に周りの人だかりが
グラスを上げる。


⏰:09/03/31 01:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#639 [イリア]



猫「何だよ、適当最高って。
つーか俺たちグラス持ってねぇし」


七「あはは!狐さんらしいですね」


⏰:09/03/31 01:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#640 [イリア]



笑う。
今日はたくさん笑った気がする。


ご飯を食べ、色んな人と話をした。
これからもずっと、
こんな日が続けばいいな。


⏰:09/03/31 01:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#641 [イリア]



そして数時間経ったころ、

明日からの朝は早いよ!

という狐の声で
私たちはテントに戻った。


⏰:09/03/31 01:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#642 [イリア]



猫さんたちの演技、見れるかな。

っていうかマネージャーって
何すればいいんだろ。



そんなことを考えてるうちに
私はいつのまにか眠っていた。


⏰:09/03/31 01:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#643 [イリア]











――明日から、舞台が始まる。


⏰:09/03/31 01:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#644 [イリア]




 第二話 日と陰と

 完



⏰:09/03/31 01:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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