― 短編箱 ―
最新 最初 🆕
#1 [栢]
 
 
  ようこそ 、 栢の部屋へ


>>2

_

⏰:09/10/01 17:19 📱:D905i 🆔:N3I8OBHs


#2 [栢]
 
 
   君の、 匂い。

_

⏰:09/10/01 17:23 📱:D905i 🆔:N3I8OBHs


#3 [栢]
 


「太一の匂いだぁ‥」

にこにこしながら
俺を見上げたのは

あと少しで
付き合って2年になる彼女。

俺の胸元に鼻を押し当てて
犬みたいに
くんくんと匂いをかぐ

改めて
小さいんだなぁと思う。

⏰:09/10/01 17:31 📱:D905i 🆔:N3I8OBHs


#4 [栢]

彼女は匂いフェチなのか
なんなのか‥

よくわかんないけど
こうするのが好きだった。


俺もなんとなく、
こうされるのが好きだった。


だだ、それだけ

⏰:09/10/02 15:47 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#5 [栢]

「太一もドキドキするんだね」

そのたびに言われたもんだ。

そりゃぁ、するよ と言う答えに
満足そうに笑う彼女。


そして今日も
「太一もドキドキするんだね」

お決まりのセリフを言われた。

⏰:09/10/02 15:50 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#6 [栢]

だけど、なんとなく今日は
お決まりの答えを
返す気分じゃなかったから

「なんでいつも聞くの?」

自分の中の
ちょっとした疑問をぶつけてみる


その答えが
不安げな顔と共に返ってきたもんだから
俺は少し戸惑ってしまうのだ。

⏰:09/10/02 15:53 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#7 [栢]

「あたしのこと好きなのかなぁって思って」

女の子ってわからない。
好きだから付き合ってるのに
なんでそんなことを思うんだろう

いつだって俺は
彼女中心なフリをして‥
何ひとつわかっちゃいなかった。

ここで一言言ってあげるべきなのに‥

⏰:09/10/02 15:57 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#8 [栢]

彼女の腕に
力が入るのがわかる。

その言葉を待っていたんだろう
ただ"好きだよ"と
言われたかったんだろう。



期待に応えられなかった俺。
情けない男だ

⏰:09/10/02 15:59 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#9 [栢]

「太一、
好きって言ってくれたことない」

ふてくされたような
今にも泣き出しそうな
そんな声で言われちゃあ‥


グサッと棘がささる。


女の子ってわからない

⏰:09/10/02 16:02 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#10 [栢]

なんで?
あたしのこと好きじゃない?

俺に問い詰める声が
だんだんと小さく
だんだんと安定感をなくしていく


2年間も不安にさせていたんだと
ここでやっと気づいたのだ。


だけど
女の子ってわからない

言わなきゃだめ?

⏰:09/10/02 16:05 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#11 [栢]

そして遂に
彼女は泣き出してしまった。

いつだって笑ってた彼女
時々落ち込んだり、怒ったりはしたけど
俺の前で泣いたことはなかったのに


今目の前で泣いている彼女を
どうするべきなのか
わからなかった

本当に情けない男

⏰:09/10/02 16:15 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#12 [栢]

どうしても
言ってやれなかった。

気持ちは確かなのに
言葉にすることを拒む口


この気持ちを
たった二文字で表すことを
惜しく思ってて、
今まで言葉にできなかったんだけど‥

⏰:09/10/02 16:21 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#13 [栢]

黙り込む俺を見かねてか

「わかった」
と小さく呟いて
俺を抱きしめる手を話した。


そのまま言ってやればよかったのに
好きじゃ伝わりきらないって
言ってやればよかったのに、



‥情けない男は彼女を失った

⏰:09/10/02 16:24 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#14 [栢]

あれから5年が経つ


「女の子ってわからんないよ」

「好きって言って欲しいのよ。
ただ言葉にしてもらえるだけで
安心するものなの」

「好きなんかじゃ足りない場合だって
あるんだからな?」

そんな口論は日常になった。

⏰:09/10/02 16:28 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#15 [栢]

未だに好きだと言わない俺に
彼女はすでに呆れ
情けなく頑固な俺を受け入れてくれた


「太一の匂いだぁ
太一もドキドキするんだね」

相変わらずそんなことを言われる


そんな「‥好きだよ」と
俺は初めて言って見せた

⏰:09/10/02 16:36 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#16 [栢]

彼女は驚いたようにぽかんとした

そりゃあそうだ。
7年経ってやっとだもんな


しかし彼女は
くすりと笑ってこう言うのだ。

「‥好きって言われるより、
あなたの匂いを感じてたほうが
よっぽど安心するみたい」


つられて俺も笑ってしまった。

そして、いつものように
抱き合って眠りについた。

⏰:09/10/02 16:40 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#17 [栢]
>>2-16

「君の、匂い。」


なんかよくわかんない第一作目

男の子と女の子の
典型的な考えの違いを
書いてみました(´・ω・`)

中途半端な終わりかたですね×

⏰:09/10/02 16:59 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#18 [栢]
 
 
  一番じゃなくても

_

⏰:09/10/02 17:00 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#19 [栢]

好きな人に振られました。

もう一年も前の話だけど
忘れられずにいるのです。

⏰:09/10/02 17:03 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#20 [栢]

高校も別々になってしまって
もう1年と半年が経ちました。

好きになって2年が経ちました。


あなたは変わらず
私の好きなあなたでいますか?

それとも、
変わってしまいましたか?


そんなことすらわからずに、
一度も会えずにいたのです。

⏰:09/10/02 17:06 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#21 [栢]

会えないのに
どうしてこんなに好きなのでしょう。

会えないから、
どんどん好きになっていくのです。

会いたい気持ちが日に日に増して
時々寂しくなることでさえも
愛おしく感じています。

⏰:09/10/02 17:08 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#22 [栢]


ただただ
なんの刺激もなく過ぎて行く日々に
飽き飽きしてしまいそうでした。


あの日あなたが言った
"一度の友達"と言う言葉に
私は涙を流しましたが、

今はもう一度
そんなことを言われてもいいから
会いたいと思ってしまうのです。

⏰:09/10/02 17:13 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#23 [栢]


そして2年前に
大好きなあなたが祝ってくれた、
私の誕生日が
秋の澄んだ冷たい空気と共に
やってきました。


誕生日だから何があるとか
そんな期待はもうしなくなり、
いつもと変わらない帰り道を
ひとりとぼとぼと歩くのでした。

⏰:09/10/02 17:19 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#24 [栢]


ついに、想いすぎて
幻聴が聞こえるようになってしまいました。

私のことを呼ぶ
あなたの声が聞こえてしまいました。


末期症状のようですね。


気のせいだと確信していましたが
振り向いてしまいたくなりました。

⏰:09/10/02 17:25 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#25 [栢]

だけど、ここで振り向いて
あなたがいないことを目にしたら

あなたのことを
忘れなければならないような


そんな気がしたのです。

⏰:09/10/02 17:26 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#26 [栢]

好きでいることが
苦ではなかったので、
振り向きはしませんでした。

付き合いたいわけじゃなくて
ただあなたを見ていたいのです。
ただあなたを想っていたいのです。


おかしいことでしょうか?

⏰:09/10/02 17:29 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#27 [栢]

トントンと
右の肩を叩かれた気がして
無意識に振り向いてしまいました。


幻覚が見えてしまったのです。
あの時から
何ひとつ変わらない
あなたが見えてしまったのです。


もう私はどうかしていますね

⏰:09/10/02 17:32 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#28 [栢]

「久しぶり」

現実なのだと気付きましたが
久しぶりに会ったものだから
実際に目の前にすると
心臓が破裂してしまいそうで、

「もしかして、忘れちゃった?」

不安そうに
私の顔を覗き込むあなたに
大きく頭を横に振って見せました。


夢のようです。

⏰:09/10/02 17:36 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#29 [栢]

「同じ駅で同じ町なのに
全く会わないとか
ある意味すごいよね」

あの時と変わらない
無邪気な笑顔を見せて
私の横を歩くあなた。


涙が出そうなくらいうれしくて
言葉がぎこちなくなりました。

⏰:09/10/02 17:40 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#30 [栢]

「あ、
誕生日おめでとうね」

覚えててくれたんだ‥
私のことなんて
忘れちゃったと思ってた。


ばいばいと手を振るあなたを
見えなくなるまで見届けて

嬉しくさが込み上げてきて
口元が緩んでしまうのです。

⏰:09/10/02 17:45 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#31 [栢]

それから時間が合えば
一緒に帰るようになりました。

幸せすぎて
どうしよもありませんでした。

相変わらず
たわいもない話をして
私を笑顔にしてくれる
"友達"として接してくれるあなたは
やっぱり素敵な人なのです。

⏰:09/10/02 17:48 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#32 [栢]

誕生日から
1ヶ月が経って
空気はさらに冷たくなり
吐息を白く染めるようになりました。


「今日公園寄っていかない?」

いつもより
たくさん話せると思うと
にやけてしまいそうで
あなたの顔をちゃんと見れませんでした

⏰:09/10/02 17:53 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#33 [栢]

ベンチに座って
ふぅと真っ白な息を吐くあなたの隣に
少し距離を置いて座りました。


きっとあなたは
何かいつもとは違うことを話すために
ここに誘ったのでしょう。

だけど、
私は気持ちを押さえられませんでした。

⏰:09/10/02 17:58 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#34 [栢]

「今、彼氏いるの?」

「いるわけないよ。
高校入ってから一人も‥」

そう言うと
あなたは驚きましたね。

「私ね、
別に付き合えなくてもいいやって思う。
付き合いたいから
好きでいるんじゃないし、」

私の今までの想いが
一気に溢れてきたのです。

⏰:09/10/02 18:02 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#35 [栢]

「一番になりたくたって
なれない時だってあるでしょ?
無理に手に入れようとしたって
ただ辛いだけ。

一番になれないなら二番でいいの。
二番にもなれないなら
三番でもいい。」

あなたが私を
じっと見つめてるのがわかりました。

今にも涙がこぼれそうだったので
私は下を向きました。

⏰:09/10/02 18:05 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#36 [栢]

もう一度告白するつもりなんて
なかったのですが‥

「だから今すごく幸せ。
友達だってかまわない。
彼女がいるなら見守るし
好きな人がいるなら応援するし
少しでもあたしのこと考えてくれてたら
それだけで幸せだし
今こうして話してくれるだけで
好きでいてよかったなって思う」

⏰:09/10/02 18:10 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#37 [栢]

ぽたりと
涙が右の手の甲に落ちた瞬間に

一気に冬を通り越して
春がきてしまったかのような
優しいぬくもりを感じました。

「俺、お前じゃなきゃだめだ‥
振ってからずっと後悔してた。
ずっとお前のことしか、頭になくて
待たせてごめん。

二番でいいなんて言うなよ。」

あなたのぬくもりが
私を包み込みました。

⏰:09/10/02 18:16 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#38 [栢]

「‥一番がいいよ。
ほんとは一番がいい‥」

「もう強がんなくていいよ。」

今まで自分が傷つかないために
自分を守るために
一番じゃなくていいと強がっていました。

そんな自分の隠れた思いに
私はやっと気づかされ、

あなたに強く優しく包まれて
今までで一番弱くなったのでした。

⏰:09/10/02 18:22 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#39 [栢]

大切なあなたへ。

これからも、
あたしがずっと一番でいられるかは
わからないことですが

もしも一番でなくなってしまった時は
本当に本当に
二番になってもいいと思えます。

あなたは本当に素敵な人だから
それだけの価値がある人だから‥

だけど、
やっぱり一緒にいたいです。
毎日が幸せなのです。

ありがとう。大好きです。

⏰:09/10/02 18:27 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#40 [栢]
 
>>2-16
君の、匂い。

>>18-39
一番じゃなくても


プチノンフィクションです ^^*
今の彼とのお話を元に
あの時のことを思い出しながら
書きました。


文章力に欠けててだめだめですね×

⏰:09/10/02 18:30 📱:D905i 🆔:xQZDlkoQ


#41 [栢]
 
 
  約束はしないよ。

_

⏰:09/10/05 15:43 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#42 [栢]

「どうして、男って約束破るの?」

泣きながら
そんなことを言う女がひとり。

「うーん‥」

複雑な気持ちに
答えを出せない男がひとり。

⏰:09/10/05 15:47 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#43 [栢]

「"ずっと一緒だよ"って言うくせに
すぐに他の子に行っちゃうじゃない。」

女は振られたのだ。


「うーん‥」

複雑な気持ちの男は
格好付けたかった。

⏰:09/10/05 15:50 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#44 [栢]

「最初から言わなきゃいいのに‥
なんのために約束してるの?」

振られたことが悔しかったのだ。
女は約束を果たすつもりだったから


「それはぁ‥」

下手に言葉にしてしまったら
反感を買ってしまうだろう。

⏰:09/10/05 15:52 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#45 [栢]

「結局その場しのぎなんでしょ?
誰にでもそんなこと言うのよ
もう男なんて信じない」

うつ伏して断言した女に

やっと口を開く。

⏰:09/10/05 15:54 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#46 [栢]

「その時は、
本当にそう思ってるんだよ
嘘ついてまで約束してるわけじゃないさ。

約束したときは
ずっと一緒にいたいって思ったんだよ。

破ったらそんなこと嘘になっちゃうけど
確かにその時は本気だったんだ。」

納得いかなそうに女は見つめる。

⏰:09/10/05 15:57 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#47 [栢]

「気持ちが変わってしまうなんて
誰にもわからないよ。

だから、仕方ないことなのさ。

約束した彼は素敵な人だ
ただ時間が邪魔をしただけ。」

男が優しく言葉をかけると
女はぶわっと泣き出した。

⏰:09/10/05 16:00 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#48 [栢]

「約束なんて、
ただの口約束なんだからさ
深く考えちゃいけないのさ。

安心するために縛りたいがために
みんなするんだから。

美しいものではないんだよ
夢をみちゃいけないよ。

夢を見ていたいなら
傷つくことを覚悟しなくちゃね」

⏰:09/10/05 16:02 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#49 [栢]

約束をして得るものは
身勝手な安心と束縛。

何もいい物なんて手に入らないから

約束なんて
しないほうが幸せでしょう。


だけど約束したくなるのは
絶え間ない不安が襲うから。


不安になんか勝てないでしょう

だから僕らは永遠を信じたくなる

⏰:09/10/05 16:09 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#50 [栢]

「永遠って信じる?」

「僕は信じるよ。
‥いや、信じたいな」


弱すぎて毎日が不安だからさ、
君との関係に高望みすらできない

だから僕はね、
今の君との永遠を信じたいんだよ。

⏰:09/10/05 16:12 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#51 [栢]
>>2-16
君の、匂い。

>>18-39
一番じゃなくても

>>41-50
約束はしない。

好きな人が彼氏に振られて
チャンスなんだけど
いい奴ぶるのも気が引けて
だけどかっこつけたくて‥

結局このままが一番だと思っちゃう
弱虫な男の子がモデルです(・∀・)

相変わらずです (´・ω・`)

⏰:09/10/05 16:48 📱:D905i 🆔:C.j898XI


#52 [栢]
 
 
   あおぞら

_

⏰:09/10/09 00:37 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#53 [栢]

突然
目の奥がじんじんして
涙がぶわっと溢れ出した

それは、
彼と裸で抱き合っていた時のこと


温もりは感じるのに
こんなにそばにいるのに

この虚無感‥

⏰:09/10/09 00:40 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#54 [栢]

涙を止めようとする
あたしの手の動きでわかったのかな

彼は体を離して
あたしの顔を覗き込んだ

「どうした?」

いつもみたいに優しくて甘い声
やっぱり彼が大好きで、

だけど涙が止まらないの
ぽっかりと口を開けた心

⏰:09/10/09 00:44 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#55 [栢]
付き合って一年。

喧嘩もそんなにしたことないし
いつも安定期で
気持ちが薄れた事なんて一度もない

4ヶ月前、 付き合って半年で
あたしたちは繋がるようになった

こんなに
愛を感じたのは今までになくて
幸せを感じていたの

⏰:09/10/09 00:46 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#56 [栢]

「大丈夫?
言ってごらん?」

小さな子供をあやすように
あたしを落ち着かせる彼

こんなこと言ったら嫌われちゃう‥

だけど言わなきゃ
この穴は埋まらない。

彼を信じることにした

⏰:09/10/09 00:49 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#57 [栢]

「ここ最近‥さ、
会うたびエッチしてるでしょ?
それでなんかね‥
寂しくなっちゃって。

こんなにくっついてるのに
虚しくて‥うん、(笑)」

真剣に話したら
絶対に大泣きしちゃうから
あえて軽く冗談のように言った

すると彼は
何ともいえないような顔をしていた

⏰:09/10/09 00:53 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#58 [栢]

そしてベッドに倒れ込み
腕で目を覆って
深くため息をついた。

あぁ‥嫌われた
あぁ‥傷つけた

そう思ったから、
ごめんねごめんねと
涙をこぼしながら謝ったの

横に首を小さく振り
ぎゅっと手に力を入れたのがわかる

今、何を思っているの?

⏰:09/10/09 00:56 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#59 [栢]
あたしは諦めて
服を着て帰る支度をした。

はぁ、とため息をついた彼が
ゆっくりと体を起こし
Yシャツに手を通す

もしかしたら‥
体だけの関係だったのかな?

そんなことさえ考えてしまうくらい
緊迫した空間‥。

息をするのをためらう

⏰:09/10/09 00:59 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#60 [栢]

一番下のボタンを止めると
沈黙を破るようにして
やっと彼が口を開いた。


「公園 、行くか」

人が変わったかのような
くしゃっとした笑顔で
そんなことを言われたものだから
少し戸惑った

⏰:09/10/09 01:02 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#61 [栢]

2人で外に出るのは
久しぶりな気がした。

空がこんなに青いことさえ
忘れていたと思う
ー‥ 新鮮だ

まだぐずぐずしているあたしの手を
ぎゅっと優しく導いて

何ヶ月ぶりだろうか、
緑がきれいな夏の公園に着いた

⏰:09/10/09 01:06 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#62 [栢]

芝生のど真ん中に腰を下ろして
大きく息を吐いた

「ごめんな
気付いてやれなくて‥」

頭を優しく引き寄せられ
暖かい胸元に顔をうずめた。

「わがままでごめんね、
傷つけちゃったよね」

小さく小さく呟く

⏰:09/10/09 01:10 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#63 [栢]

「傷つけたのは俺のほうだから、

これからは
こうやって公園デートするか(笑)」

にっと笑った顔は
本当にまぶしかったけれど
少し切なそうで
胸が締め付けられた。

⏰:09/10/09 01:12 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#64 [栢]

「なんかあったら言えよ?
俺、バカだから
なかなかくみ取ってやれないからさ」

そう言ってわさっと寝転んだ
真似してあたしも寝転ぶ

空がきれいだった
なんて広いんだろう‥

真っ青な空を眺めて
彼は何を感じだのかな。

⏰:09/10/09 01:16 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#65 [栢]

「悪くないな、
こっちのが何倍も気持ちいい」

くるっとこっちを向いて
包み込むように
あたしを抱きしめてくれた、

「あったかい‥」

ふとこぼれた言葉に
彼は柔らかく微笑むの

⏰:09/10/09 01:18 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#66 [栢]

「もう、寂しくなんてさせないよ」

そう言って、額にキスをして‥


青空の下
ずっと2人で、笑っていたいね

⏰:09/10/09 01:22 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#67 [栢]
>>52-66

実話を参考に ^^*

途中途中
タグなかったりで読みにくくて
ごめんなさい ××

ほんとのお付き合いは
やっぱり体より心だなあと
当たり前になりつつあった時に
改めて実感したって言うお話◎

⏰:09/10/09 01:25 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#68 [栢]
>>2-16
君の、匂い。

>>18-39
一番じゃなくても

>>41-50
約束はしない。

>>52-66
あおぞら

⏰:09/10/09 01:26 📱:D905i 🆔:3zmy2yhY


#69 [栢]
 
 
   ぶ キ よ ウ

_

⏰:09/10/11 23:28 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#70 [栢]

じいちゃんは穏やかな人だった。

やっぱり昔の人だけあってか
頑固で無口なとこもあったけど

お酒とタバコが大好きで
酔っぱらうといつも
同じ昔の思い出を楽しそうに話してた


だけど
だんだんとじいちゃんは
表情をなくし言葉をなくした

⏰:09/10/11 23:32 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#71 [栢]

ある時からじいちゃんは
ご飯を食べると
口の周りを汚していた

ご飯粒が口元についているのにも
全く気づかない。

口の場所がわからないのか
箸をうまく口に運べない。

何より
目が虚ろになっていて
私はそれに恐怖さえ覚えたものだ

⏰:09/10/11 23:35 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#72 [栢]

じいちゃんのことは
単純に優しいから好きだった。

だけど
それを見たときから
なんだか嫌になってしまって
"汚い"と思うようになった


病気だとかそんなことも思わなくて
くちゃくちゃぼろぼろと
食べてる姿が不快だったから

⏰:09/10/11 23:39 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#73 [栢]

「じいちゃん、これ食べる?」

お姉ちゃんが
修学旅行で買ってきたお菓子を
じいちゃんにあげた。

すると横からばあちゃんが
「いいんだよじいちゃんは!
どうせ食べらんないんだから」

と少し強めに言った。

じいちゃんは
食べたそうな顔をしていた
だけど言い出せないのか
黙ってタバコを吸い始めた

その姿を見るのがなぜか辛かった
見ていられなかった

⏰:09/10/11 23:44 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#74 [栢]

それから
じいちゃんに決定権はなくなり
どんどん無口になっていった

それに比例するかのように
じいちゃんの行動が
おかしくなっていくのを


あたしは薄々感じていた。

⏰:09/10/11 23:47 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#75 [栢]

相変わらず
ご飯粒を口元にくっつけてみたり

名前を呼ばれても
反応しなくなったり‥

終いには
ポットをやかんと間違えて
火にかけてしまったのだ。

底が真っ黒に焦げて溶けたポットを見て
ばあちゃんはじいちゃんに
怒鳴り散らした。

じいちゃんは
何も言わなかった

⏰:09/10/11 23:51 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#76 [栢]
じいちゃんが
"ボケ"ていることがわかった私は
だんだんと切なくなり

かわいそうだと思うようになった。

あの時じいちゃんは
悲しいと思ってたかはわからないけど‥
かわいそうに感じて

厳しく言うばあちゃんを
嫌うようになった。

ばあちゃんはじいちゃんのこと
嫌いなんだ 、と‥

⏰:09/10/11 23:53 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#77 [栢]

ある日

学校から帰ってくると
じいちゃんが家にいなくて
ばあちゃんに聞くと

「入院したんだよ」
とあっさり言われた。

じいちゃんがいなくなって
清々してるのか‥

更にばあちゃんへの憎悪は
大きなものになり
家が居心地悪かった。

⏰:09/10/11 23:56 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#78 [栢]

"肺に水がたまってしまう病気"

詳しい病名は
まだ私も小さかったから
教えてもらえなかった。

⏰:09/10/11 23:59 📱:D905i 🆔:yXrxNsNQ


#79 [栢]

お見舞いに行って
私は病室に入るのをためらった

じいちゃんは助からないと
どこかでわかっていたから‥

年も年だし
仕方ないとは思っていたけど
弱った姿を見たら
泣き出してしまいそうだった。

⏰:09/10/12 00:00 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#80 [栢]
お姉ちゃんに背中を押され
病室に入ると

ぐったりとした
たくさんの機械や管に繋がれた
じいちゃんがいた。


「ほらじいちゃん!
お見舞いに来てくれたんだよ!」
ばあちゃんが言うと


酸素マスクの下で小さな声で聞こえた

「ありがとう‥」

⏰:09/10/12 00:04 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#81 [栢]

久しぶりに聞いた声は
安定感を失っていた。
細く弱々しくなり
呂律がよく回っていなかった。

酔っぱらうたびに
げらげらと楽しそうに笑って
テンポよく話していたのに‥

そんな姿は
どこにももう見当たらない

⏰:09/10/12 00:06 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#82 [栢]

泣きたくなった
いや、少し泣いてしまっていた

笑うでもなく
辛そうにするでもなく
無表情なじいちゃん


何を思っているんだろう。

⏰:09/10/12 00:15 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#83 [栢]
水が飲みたくても
許されなかったじいちゃんは
白いコットンのようなものに
水を染み込ませて
それを吸っていた。

一生懸命、


「もっと飲みたいなぁ」と
わがままを言った。
もちろん
飲ませてはもらえなかったけど‥


人間らしいじいちゃんを見て
私はほっとした

⏰:09/10/12 00:21 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#84 [栢]

じいちゃんが
ばあちゃんの手を握り
途切れ途切れに話し始めた。

退院したらばあちゃんと
山に登って紅葉を見て
それから魚釣りをして‥


じいちゃんは
柔らかく笑っていた。

⏰:09/10/12 00:24 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#85 [栢]

「じいちゃん頑張ってね」

お姉ちゃんが
じいちゃんの手を握って
別れを告げている時

私はひとり
黙って病室を出た。


なんだか恥ずかしかった。
ただそれだけの理由で
じいちゃんにさよならを言えなかった
</Font>

⏰:09/10/12 00:27 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#86 [栢]

じいちゃんはなんで
あんなにキツいことを言うばあちゃんを
好きでいられるんだろう‥

不思議でならなかった。


何日かして
学校で授業を受けていたら
先生に呼び出された。



じいちゃんが亡くなった

⏰:09/10/12 00:55 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#87 [栢]

わかってはいたけど
驚いて言葉がでなかった。

目の奥が熱くなる。

すぐに帰る支度をして
お母さんの迎えを待っている時
ついに泣き出してしまった


信じたくなくて
夢だ夢だと言い聞かせてみたが
止まらない涙

⏰:09/10/12 00:58 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#88 [栢]

病室に駆け込むと

真っ白なベッドに
白いきれいな顔をした
じいちゃんが眠ってた。



私はその場に泣き崩れた。
声をあげて泣いた。

苦しかったはずなのに
じいちゃんは
あの柔らかい笑顔のままだったから

⏰:09/10/12 01:01 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#89 [栢]
治すために入院したのに
水だって我慢したのに

どうして死んじゃったの?


ばあちゃんと
紅葉見て魚釣りするんでしょ?

じいちゃん‥、
なんとか言ってよ

⏰:09/10/12 01:03 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#90 [栢]

その場に
ばあちゃんの姿はなかった


私はそれからずっと
自分の部屋に引きこもって
泣き続けた。


大好きだったじいちゃんが
もういないのだ

⏰:09/10/12 01:05 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#91 [栢]

それから
お葬式がやってきた


じいちゃんの写真が
きれいなお花に囲まれていた

無口な人だったけど
いろんな人に慕われていたんだろう
たくさんの人が参列していた

その間も
ばあちゃんは泣いていなかった
やっぱり‥、

⏰:09/10/12 01:08 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#92 [栢]

静かに眠ったじいちゃんの周りに
たくさんのお花と
大好きだったタバコを入れた


しっかりと蓋を閉めて
釘が打たれた。

そして運ばれていく‥

⏰:09/10/12 01:11 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#93 [栢]

あのばあちゃんが泣いていた

小さな体を
さらに小さくして

顔が崩れてしまいそうなくらい
くしゃっとシワを寄せて
ぼろぼろと涙を流していた


じいさん、じいさん‥

ただただ繰り返すだけだった

⏰:09/10/12 01:13 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#94 [栢]

じいちゃんは
白い煙になって天国に行った

これから長い旅に出るのだと
お坊さんが言っていた。



そして
紅葉の季節になる

⏰:09/10/12 01:14 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#95 [栢]

ばあちゃんが
近所の友達と家の居間で話しているのが
たまたま耳に入った。


「最初は信じられなかったよ
ほんとだってわかると
追いかけて逝きたくなっちゃうね
寂しいもんだ‥
癖でじいさんの湯飲みにも
お茶を入れちゃうんだから」


ばあちゃんは
確かにじいちゃんを愛していた

⏰:09/10/12 01:18 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#96 [栢]


「ひどいことを言ってばかりで
後悔してるよ‥
じいさんに嫌われてしまったね」


ばあちゃん、私知ってるよ
じいちゃんは確かに
ばあちゃんのこと愛していた

⏰:09/10/12 01:21 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#97 [栢]

じいちゃんが亡くなってから
私はお母さんから
手紙を受け取った

じいちゃんからの手紙。


"じいちゃんはとても不器用です
ばあさんはもっと不器用です。
あなたも不器用です。

だけどそこがまたいいのです

ばあさんは寂しがり屋だから
ん話し相手になってあげてください
きっと喜びます

じいちゃんはばあさんを
愛しています。

恥ずかしいので
秘密にしておいてください。"

⏰:09/10/12 01:25 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#98 [栢]

じいちゃんは不器用だった

誰よりも不器用だった


だけど一途な人だった
とても素敵な人だった


じいちゃんが亡くなってから
もう3年。


今でもばあちゃんは
じいちゃんのことを楽しそうに
幸せそうに話してくれます。

⏰:09/10/12 01:28 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#99 [栢]
>>69-98

実話です
フィクションじゃなくて
ごめんなさい(´・ω・`)


夫婦ってすごいなーって
感じました ^^*
じいちゃんのこと尊敬してます

⏰:09/10/12 01:30 📱:D905i 🆔:8HWp1nKk


#100 [あ]
一気に読みました
最後の話で
涙がでました

⏰:09/10/12 20:09 📱:SH906i 🆔:OvK85Guw


#101 []
どれもなんとなくジーンとくるものがありました(・ω・`)最後のは自分も経験したこともあって泣いちゃいました(;д;`)


もっと読みたいです
がんばってください

⏰:09/10/12 21:14 📱:SH903i 🆔:I0f8fTd2


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