― 短編箱 ―
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#1 [栢]
:09/10/01 17:19 :D905i :N3I8OBHs
#2 [栢]
君の、 匂い。
_
:09/10/01 17:23 :D905i :N3I8OBHs
#3 [栢]
「太一の匂いだぁ‥」
にこにこしながら
俺を見上げたのは
あと少しで
付き合って2年になる彼女。
俺の胸元に鼻を押し当てて
犬みたいに
くんくんと匂いをかぐ
改めて
小さいんだなぁと思う。
:09/10/01 17:31 :D905i :N3I8OBHs
#4 [栢]
彼女は匂いフェチなのか
なんなのか‥
よくわかんないけど
こうするのが好きだった。
俺もなんとなく、
こうされるのが好きだった。
だだ、それだけ
:09/10/02 15:47 :D905i :xQZDlkoQ
#5 [栢]
「太一もドキドキするんだね」
そのたびに言われたもんだ。
そりゃぁ、するよ と言う答えに
満足そうに笑う彼女。
そして今日も
「太一もドキドキするんだね」
お決まりのセリフを言われた。
:09/10/02 15:50 :D905i :xQZDlkoQ
#6 [栢]
だけど、なんとなく今日は
お決まりの答えを
返す気分じゃなかったから
「なんでいつも聞くの?」
自分の中の
ちょっとした疑問をぶつけてみる
その答えが
不安げな顔と共に返ってきたもんだから
俺は少し戸惑ってしまうのだ。
:09/10/02 15:53 :D905i :xQZDlkoQ
#7 [栢]
「あたしのこと好きなのかなぁって思って」
女の子ってわからない。
好きだから付き合ってるのに
なんでそんなことを思うんだろう
いつだって俺は
彼女中心なフリをして‥
何ひとつわかっちゃいなかった。
ここで一言言ってあげるべきなのに‥
:09/10/02 15:57 :D905i :xQZDlkoQ
#8 [栢]
彼女の腕に
力が入るのがわかる。
その言葉を待っていたんだろう
ただ"好きだよ"と
言われたかったんだろう。
期待に応えられなかった俺。
情けない男だ
:09/10/02 15:59 :D905i :xQZDlkoQ
#9 [栢]
「太一、
好きって言ってくれたことない」
ふてくされたような
今にも泣き出しそうな
そんな声で言われちゃあ‥
グサッと棘がささる。
女の子ってわからない
:09/10/02 16:02 :D905i :xQZDlkoQ
#10 [栢]
なんで?
あたしのこと好きじゃない?
俺に問い詰める声が
だんだんと小さく
だんだんと安定感をなくしていく
2年間も不安にさせていたんだと
ここでやっと気づいたのだ。
だけど
女の子ってわからない
言わなきゃだめ?
:09/10/02 16:05 :D905i :xQZDlkoQ
#11 [栢]
そして遂に
彼女は泣き出してしまった。
いつだって笑ってた彼女
時々落ち込んだり、怒ったりはしたけど
俺の前で泣いたことはなかったのに
今目の前で泣いている彼女を
どうするべきなのか
わからなかった
本当に情けない男
:09/10/02 16:15 :D905i :xQZDlkoQ
#12 [栢]
どうしても
言ってやれなかった。
気持ちは確かなのに
言葉にすることを拒む口
この気持ちを
たった二文字で表すことを
惜しく思ってて、
今まで言葉にできなかったんだけど‥
:09/10/02 16:21 :D905i :xQZDlkoQ
#13 [栢]
黙り込む俺を見かねてか
「わかった」
と小さく呟いて
俺を抱きしめる手を話した。
そのまま言ってやればよかったのに
好きじゃ伝わりきらないって
言ってやればよかったのに、
‥情けない男は彼女を失った
:09/10/02 16:24 :D905i :xQZDlkoQ
#14 [栢]
あれから5年が経つ
「女の子ってわからんないよ」
「好きって言って欲しいのよ。
ただ言葉にしてもらえるだけで
安心するものなの」
「好きなんかじゃ足りない場合だって
あるんだからな?」
そんな口論は日常になった。
:09/10/02 16:28 :D905i :xQZDlkoQ
#15 [栢]
未だに好きだと言わない俺に
彼女はすでに呆れ
情けなく頑固な俺を受け入れてくれた
「太一の匂いだぁ
太一もドキドキするんだね」
相変わらずそんなことを言われる
そんな「‥好きだよ」と
俺は初めて言って見せた
:09/10/02 16:36 :D905i :xQZDlkoQ
#16 [栢]
彼女は驚いたようにぽかんとした
そりゃあそうだ。
7年経ってやっとだもんな
しかし彼女は
くすりと笑ってこう言うのだ。
「‥好きって言われるより、
あなたの匂いを感じてたほうが
よっぽど安心するみたい」
つられて俺も笑ってしまった。
そして、いつものように
抱き合って眠りについた。
:09/10/02 16:40 :D905i :xQZDlkoQ
#17 [栢]
>>2-16「君の、匂い。」
なんかよくわかんない第一作目
男の子と女の子の
典型的な考えの違いを
書いてみました(´・ω・`)
中途半端な終わりかたですね×
:09/10/02 16:59 :D905i :xQZDlkoQ
#18 [栢]
一番じゃなくても
_
:09/10/02 17:00 :D905i :xQZDlkoQ
#19 [栢]
好きな人に振られました。
もう一年も前の話だけど
忘れられずにいるのです。
:09/10/02 17:03 :D905i :xQZDlkoQ
#20 [栢]
高校も別々になってしまって
もう1年と半年が経ちました。
好きになって2年が経ちました。
あなたは変わらず
私の好きなあなたでいますか?
それとも、
変わってしまいましたか?
そんなことすらわからずに、
一度も会えずにいたのです。
:09/10/02 17:06 :D905i :xQZDlkoQ
#21 [栢]
会えないのに
どうしてこんなに好きなのでしょう。
会えないから、
どんどん好きになっていくのです。
会いたい気持ちが日に日に増して
時々寂しくなることでさえも
愛おしく感じています。
:09/10/02 17:08 :D905i :xQZDlkoQ
#22 [栢]
ただただ
なんの刺激もなく過ぎて行く日々に
飽き飽きしてしまいそうでした。
あの日あなたが言った
"一度の友達"と言う言葉に
私は涙を流しましたが、
今はもう一度
そんなことを言われてもいいから
会いたいと思ってしまうのです。
:09/10/02 17:13 :D905i :xQZDlkoQ
#23 [栢]
そして2年前に
大好きなあなたが祝ってくれた、
私の誕生日が
秋の澄んだ冷たい空気と共に
やってきました。
誕生日だから何があるとか
そんな期待はもうしなくなり、
いつもと変わらない帰り道を
ひとりとぼとぼと歩くのでした。
:09/10/02 17:19 :D905i :xQZDlkoQ
#24 [栢]
ついに、想いすぎて
幻聴が聞こえるようになってしまいました。
私のことを呼ぶ
あなたの声が聞こえてしまいました。
末期症状のようですね。
気のせいだと確信していましたが
振り向いてしまいたくなりました。
:09/10/02 17:25 :D905i :xQZDlkoQ
#25 [栢]
だけど、ここで振り向いて
あなたがいないことを目にしたら
あなたのことを
忘れなければならないような
そんな気がしたのです。
:09/10/02 17:26 :D905i :xQZDlkoQ
#26 [栢]
好きでいることが
苦ではなかったので、
振り向きはしませんでした。
付き合いたいわけじゃなくて
ただあなたを見ていたいのです。
ただあなたを想っていたいのです。
おかしいことでしょうか?
:09/10/02 17:29 :D905i :xQZDlkoQ
#27 [栢]
トントンと
右の肩を叩かれた気がして
無意識に振り向いてしまいました。
幻覚が見えてしまったのです。
あの時から
何ひとつ変わらない
あなたが見えてしまったのです。
もう私はどうかしていますね
:09/10/02 17:32 :D905i :xQZDlkoQ
#28 [栢]
「久しぶり」
現実なのだと気付きましたが
久しぶりに会ったものだから
実際に目の前にすると
心臓が破裂してしまいそうで、
「もしかして、忘れちゃった?」
不安そうに
私の顔を覗き込むあなたに
大きく頭を横に振って見せました。
夢のようです。
:09/10/02 17:36 :D905i :xQZDlkoQ
#29 [栢]
「同じ駅で同じ町なのに
全く会わないとか
ある意味すごいよね」
あの時と変わらない
無邪気な笑顔を見せて
私の横を歩くあなた。
涙が出そうなくらいうれしくて
言葉がぎこちなくなりました。
:09/10/02 17:40 :D905i :xQZDlkoQ
#30 [栢]
「あ、
誕生日おめでとうね」
覚えててくれたんだ‥
私のことなんて
忘れちゃったと思ってた。
ばいばいと手を振るあなたを
見えなくなるまで見届けて
嬉しくさが込み上げてきて
口元が緩んでしまうのです。
:09/10/02 17:45 :D905i :xQZDlkoQ
#31 [栢]
それから時間が合えば
一緒に帰るようになりました。
幸せすぎて
どうしよもありませんでした。
相変わらず
たわいもない話をして
私を笑顔にしてくれる
"友達"として接してくれるあなたは
やっぱり素敵な人なのです。
:09/10/02 17:48 :D905i :xQZDlkoQ
#32 [栢]
誕生日から
1ヶ月が経って
空気はさらに冷たくなり
吐息を白く染めるようになりました。
「今日公園寄っていかない?」
いつもより
たくさん話せると思うと
にやけてしまいそうで
あなたの顔をちゃんと見れませんでした
:09/10/02 17:53 :D905i :xQZDlkoQ
#33 [栢]
ベンチに座って
ふぅと真っ白な息を吐くあなたの隣に
少し距離を置いて座りました。
きっとあなたは
何かいつもとは違うことを話すために
ここに誘ったのでしょう。
だけど、
私は気持ちを押さえられませんでした。
:09/10/02 17:58 :D905i :xQZDlkoQ
#34 [栢]
「今、彼氏いるの?」
「いるわけないよ。
高校入ってから一人も‥」
そう言うと
あなたは驚きましたね。
「私ね、
別に付き合えなくてもいいやって思う。
付き合いたいから
好きでいるんじゃないし、」
私の今までの想いが
一気に溢れてきたのです。
:09/10/02 18:02 :D905i :xQZDlkoQ
#35 [栢]
「一番になりたくたって
なれない時だってあるでしょ?
無理に手に入れようとしたって
ただ辛いだけ。
一番になれないなら二番でいいの。
二番にもなれないなら
三番でもいい。」
あなたが私を
じっと見つめてるのがわかりました。
今にも涙がこぼれそうだったので
私は下を向きました。
:09/10/02 18:05 :D905i :xQZDlkoQ
#36 [栢]
もう一度告白するつもりなんて
なかったのですが‥
「だから今すごく幸せ。
友達だってかまわない。
彼女がいるなら見守るし
好きな人がいるなら応援するし
少しでもあたしのこと考えてくれてたら
それだけで幸せだし
今こうして話してくれるだけで
好きでいてよかったなって思う」
:09/10/02 18:10 :D905i :xQZDlkoQ
#37 [栢]
ぽたりと
涙が右の手の甲に落ちた瞬間に
一気に冬を通り越して
春がきてしまったかのような
優しいぬくもりを感じました。
「俺、お前じゃなきゃだめだ‥
振ってからずっと後悔してた。
ずっとお前のことしか、頭になくて
待たせてごめん。
二番でいいなんて言うなよ。」
あなたのぬくもりが
私を包み込みました。
:09/10/02 18:16 :D905i :xQZDlkoQ
#38 [栢]
「‥一番がいいよ。
ほんとは一番がいい‥」
「もう強がんなくていいよ。」
今まで自分が傷つかないために
自分を守るために
一番じゃなくていいと強がっていました。
そんな自分の隠れた思いに
私はやっと気づかされ、
あなたに強く優しく包まれて
今までで一番弱くなったのでした。
:09/10/02 18:22 :D905i :xQZDlkoQ
#39 [栢]
大切なあなたへ。
これからも、
あたしがずっと一番でいられるかは
わからないことですが
もしも一番でなくなってしまった時は
本当に本当に
二番になってもいいと思えます。
あなたは本当に素敵な人だから
それだけの価値がある人だから‥
だけど、
やっぱり一緒にいたいです。
毎日が幸せなのです。
ありがとう。大好きです。
:09/10/02 18:27 :D905i :xQZDlkoQ
#40 [栢]
>>2-16君の、匂い。
>>18-39一番じゃなくても
プチノンフィクションです ^^*
今の彼とのお話を元に
あの時のことを思い出しながら
書きました。
が
文章力に欠けててだめだめですね×
:09/10/02 18:30 :D905i :xQZDlkoQ
#41 [栢]
約束はしないよ。
_
:09/10/05 15:43 :D905i :C.j898XI
#42 [栢]
「どうして、男って約束破るの?」
泣きながら
そんなことを言う女がひとり。
「うーん‥」
複雑な気持ちに
答えを出せない男がひとり。
:09/10/05 15:47 :D905i :C.j898XI
#43 [栢]
「"ずっと一緒だよ"って言うくせに
すぐに他の子に行っちゃうじゃない。」
女は振られたのだ。
「うーん‥」
複雑な気持ちの男は
格好付けたかった。
:09/10/05 15:50 :D905i :C.j898XI
#44 [栢]
「最初から言わなきゃいいのに‥
なんのために約束してるの?」
振られたことが悔しかったのだ。
女は約束を果たすつもりだったから
「それはぁ‥」
下手に言葉にしてしまったら
反感を買ってしまうだろう。
:09/10/05 15:52 :D905i :C.j898XI
#45 [栢]
「結局その場しのぎなんでしょ?
誰にでもそんなこと言うのよ
もう男なんて信じない」
うつ伏して断言した女に
やっと口を開く。
:09/10/05 15:54 :D905i :C.j898XI
#46 [栢]
「その時は、
本当にそう思ってるんだよ
嘘ついてまで約束してるわけじゃないさ。
約束したときは
ずっと一緒にいたいって思ったんだよ。
破ったらそんなこと嘘になっちゃうけど
確かにその時は本気だったんだ。」
納得いかなそうに女は見つめる。
:09/10/05 15:57 :D905i :C.j898XI
#47 [栢]
「気持ちが変わってしまうなんて
誰にもわからないよ。
だから、仕方ないことなのさ。
約束した彼は素敵な人だ
ただ時間が邪魔をしただけ。」
男が優しく言葉をかけると
女はぶわっと泣き出した。
:09/10/05 16:00 :D905i :C.j898XI
#48 [栢]
「約束なんて、
ただの口約束なんだからさ
深く考えちゃいけないのさ。
安心するために縛りたいがために
みんなするんだから。
美しいものではないんだよ
夢をみちゃいけないよ。
夢を見ていたいなら
傷つくことを覚悟しなくちゃね」
:09/10/05 16:02 :D905i :C.j898XI
#49 [栢]
約束をして得るものは
身勝手な安心と束縛。
何もいい物なんて手に入らないから
約束なんて
しないほうが幸せでしょう。
だけど約束したくなるのは
絶え間ない不安が襲うから。
不安になんか勝てないでしょう
だから僕らは永遠を信じたくなる
:09/10/05 16:09 :D905i :C.j898XI
#50 [栢]
「永遠って信じる?」
「僕は信じるよ。
‥いや、信じたいな」
弱すぎて毎日が不安だからさ、
君との関係に高望みすらできない
だから僕はね、
今の君との永遠を信じたいんだよ。
:09/10/05 16:12 :D905i :C.j898XI
#51 [栢]
>>2-16君の、匂い。
>>18-39一番じゃなくても
>>41-50約束はしない。
好きな人が彼氏に振られて
チャンスなんだけど
いい奴ぶるのも気が引けて
だけどかっこつけたくて‥
結局このままが一番だと思っちゃう
弱虫な男の子がモデルです(・∀・)
相変わらずです (´・ω・`)
:09/10/05 16:48 :D905i :C.j898XI
#52 [栢]
あおぞら
_
:09/10/09 00:37 :D905i :3zmy2yhY
#53 [栢]
突然
目の奥がじんじんして
涙がぶわっと溢れ出した
それは、
彼と裸で抱き合っていた時のこと
温もりは感じるのに
こんなにそばにいるのに
この虚無感‥
:09/10/09 00:40 :D905i :3zmy2yhY
#54 [栢]
涙を止めようとする
あたしの手の動きでわかったのかな
彼は体を離して
あたしの顔を覗き込んだ
「どうした?」
いつもみたいに優しくて甘い声
やっぱり彼が大好きで、
だけど涙が止まらないの
ぽっかりと口を開けた心
:09/10/09 00:44 :D905i :3zmy2yhY
#55 [栢]
付き合って一年。
喧嘩もそんなにしたことないし
いつも安定期で
気持ちが薄れた事なんて一度もない
4ヶ月前、 付き合って半年で
あたしたちは繋がるようになった
こんなに
愛を感じたのは今までになくて
幸せを感じていたの
:09/10/09 00:46 :D905i :3zmy2yhY
#56 [栢]
「大丈夫?
言ってごらん?」
小さな子供をあやすように
あたしを落ち着かせる彼
こんなこと言ったら嫌われちゃう‥
だけど言わなきゃ
この穴は埋まらない。
彼を信じることにした
:09/10/09 00:49 :D905i :3zmy2yhY
#57 [栢]
「ここ最近‥さ、
会うたびエッチしてるでしょ?
それでなんかね‥
寂しくなっちゃって。
こんなにくっついてるのに
虚しくて‥うん、(笑)」
真剣に話したら
絶対に大泣きしちゃうから
あえて軽く冗談のように言った
すると彼は
何ともいえないような顔をしていた
:09/10/09 00:53 :D905i :3zmy2yhY
#58 [栢]
そしてベッドに倒れ込み
腕で目を覆って
深くため息をついた。
あぁ‥嫌われた
あぁ‥傷つけた
そう思ったから、
ごめんねごめんねと
涙をこぼしながら謝ったの
横に首を小さく振り
ぎゅっと手に力を入れたのがわかる
今、何を思っているの?
:09/10/09 00:56 :D905i :3zmy2yhY
#59 [栢]
あたしは諦めて
服を着て帰る支度をした。
はぁ、とため息をついた彼が
ゆっくりと体を起こし
Yシャツに手を通す
もしかしたら‥
体だけの関係だったのかな?
そんなことさえ考えてしまうくらい
緊迫した空間‥。
息をするのをためらう
:09/10/09 00:59 :D905i :3zmy2yhY
#60 [栢]
一番下のボタンを止めると
沈黙を破るようにして
やっと彼が口を開いた。
「公園 、行くか」
人が変わったかのような
くしゃっとした笑顔で
そんなことを言われたものだから
少し戸惑った
:09/10/09 01:02 :D905i :3zmy2yhY
#61 [栢]
2人で外に出るのは
久しぶりな気がした。
空がこんなに青いことさえ
忘れていたと思う
ー‥ 新鮮だ
まだぐずぐずしているあたしの手を
ぎゅっと優しく導いて
何ヶ月ぶりだろうか、
緑がきれいな夏の公園に着いた
:09/10/09 01:06 :D905i :3zmy2yhY
#62 [栢]
芝生のど真ん中に腰を下ろして
大きく息を吐いた
「ごめんな
気付いてやれなくて‥」
頭を優しく引き寄せられ
暖かい胸元に顔をうずめた。
「わがままでごめんね、
傷つけちゃったよね」
小さく小さく呟く
:09/10/09 01:10 :D905i :3zmy2yhY
#63 [栢]
「傷つけたのは俺のほうだから、
これからは
こうやって公園デートするか(笑)」
にっと笑った顔は
本当にまぶしかったけれど
少し切なそうで
胸が締め付けられた。
:09/10/09 01:12 :D905i :3zmy2yhY
#64 [栢]
「なんかあったら言えよ?
俺、バカだから
なかなかくみ取ってやれないからさ」
そう言ってわさっと寝転んだ
真似してあたしも寝転ぶ
空がきれいだった
なんて広いんだろう‥
真っ青な空を眺めて
彼は何を感じだのかな。
:09/10/09 01:16 :D905i :3zmy2yhY
#65 [栢]
「悪くないな、
こっちのが何倍も気持ちいい」
くるっとこっちを向いて
包み込むように
あたしを抱きしめてくれた、
「あったかい‥」
ふとこぼれた言葉に
彼は柔らかく微笑むの
:09/10/09 01:18 :D905i :3zmy2yhY
#66 [栢]
「もう、寂しくなんてさせないよ」
そう言って、額にキスをして‥
青空の下
ずっと2人で、笑っていたいね
:09/10/09 01:22 :D905i :3zmy2yhY
#67 [栢]
>>52-66実話を参考に ^^*
途中途中
タグなかったりで読みにくくて
ごめんなさい ××
ほんとのお付き合いは
やっぱり体より心だなあと
当たり前になりつつあった時に
改めて実感したって言うお話◎
:09/10/09 01:25 :D905i :3zmy2yhY
#68 [栢]
:09/10/09 01:26 :D905i :3zmy2yhY
#69 [栢]
ぶ キ よ ウ
_
:09/10/11 23:28 :D905i :yXrxNsNQ
#70 [栢]
じいちゃんは穏やかな人だった。
やっぱり昔の人だけあってか
頑固で無口なとこもあったけど
お酒とタバコが大好きで
酔っぱらうといつも
同じ昔の思い出を楽しそうに話してた
だけど
だんだんとじいちゃんは
表情をなくし言葉をなくした
:09/10/11 23:32 :D905i :yXrxNsNQ
#71 [栢]
ある時からじいちゃんは
ご飯を食べると
口の周りを汚していた
ご飯粒が口元についているのにも
全く気づかない。
口の場所がわからないのか
箸をうまく口に運べない。
何より
目が虚ろになっていて
私はそれに恐怖さえ覚えたものだ
:09/10/11 23:35 :D905i :yXrxNsNQ
#72 [栢]
じいちゃんのことは
単純に優しいから好きだった。
だけど
それを見たときから
なんだか嫌になってしまって
"汚い"と思うようになった
病気だとかそんなことも思わなくて
くちゃくちゃぼろぼろと
食べてる姿が不快だったから
:09/10/11 23:39 :D905i :yXrxNsNQ
#73 [栢]
「じいちゃん、これ食べる?」
お姉ちゃんが
修学旅行で買ってきたお菓子を
じいちゃんにあげた。
すると横からばあちゃんが
「いいんだよじいちゃんは!
どうせ食べらんないんだから」
と少し強めに言った。
じいちゃんは
食べたそうな顔をしていた
だけど言い出せないのか
黙ってタバコを吸い始めた
その姿を見るのがなぜか辛かった
見ていられなかった
:09/10/11 23:44 :D905i :yXrxNsNQ
#74 [栢]
それから
じいちゃんに決定権はなくなり
どんどん無口になっていった
それに比例するかのように
じいちゃんの行動が
おかしくなっていくのを
あたしは薄々感じていた。
:09/10/11 23:47 :D905i :yXrxNsNQ
#75 [栢]
相変わらず
ご飯粒を口元にくっつけてみたり
名前を呼ばれても
反応しなくなったり‥
終いには
ポットをやかんと間違えて
火にかけてしまったのだ。
底が真っ黒に焦げて溶けたポットを見て
ばあちゃんはじいちゃんに
怒鳴り散らした。
じいちゃんは
何も言わなかった
:09/10/11 23:51 :D905i :yXrxNsNQ
#76 [栢]
じいちゃんが
"ボケ"ていることがわかった私は
だんだんと切なくなり
かわいそうだと思うようになった。
あの時じいちゃんは
悲しいと思ってたかはわからないけど‥
かわいそうに感じて
厳しく言うばあちゃんを
嫌うようになった。
ばあちゃんはじいちゃんのこと
嫌いなんだ 、と‥
:09/10/11 23:53 :D905i :yXrxNsNQ
#77 [栢]
ある日
学校から帰ってくると
じいちゃんが家にいなくて
ばあちゃんに聞くと
「入院したんだよ」
とあっさり言われた。
じいちゃんがいなくなって
清々してるのか‥
更にばあちゃんへの憎悪は
大きなものになり
家が居心地悪かった。
:09/10/11 23:56 :D905i :yXrxNsNQ
#78 [栢]
"肺に水がたまってしまう病気"
詳しい病名は
まだ私も小さかったから
教えてもらえなかった。
:09/10/11 23:59 :D905i :yXrxNsNQ
#79 [栢]
お見舞いに行って
私は病室に入るのをためらった
じいちゃんは助からないと
どこかでわかっていたから‥
年も年だし
仕方ないとは思っていたけど
弱った姿を見たら
泣き出してしまいそうだった。
:09/10/12 00:00 :D905i :8HWp1nKk
#80 [栢]
お姉ちゃんに背中を押され
病室に入ると
ぐったりとした
たくさんの機械や管に繋がれた
じいちゃんがいた。
「ほらじいちゃん!
お見舞いに来てくれたんだよ!」
ばあちゃんが言うと
酸素マスクの下で小さな声で聞こえた
「ありがとう‥」
:09/10/12 00:04 :D905i :8HWp1nKk
#81 [栢]
久しぶりに聞いた声は
安定感を失っていた。
細く弱々しくなり
呂律がよく回っていなかった。
酔っぱらうたびに
げらげらと楽しそうに笑って
テンポよく話していたのに‥
そんな姿は
どこにももう見当たらない
:09/10/12 00:06 :D905i :8HWp1nKk
#82 [栢]
泣きたくなった
いや、少し泣いてしまっていた
笑うでもなく
辛そうにするでもなく
無表情なじいちゃん
何を思っているんだろう。
:09/10/12 00:15 :D905i :8HWp1nKk
#83 [栢]
水が飲みたくても
許されなかったじいちゃんは
白いコットンのようなものに
水を染み込ませて
それを吸っていた。
一生懸命、
「もっと飲みたいなぁ」と
わがままを言った。
もちろん
飲ませてはもらえなかったけど‥
人間らしいじいちゃんを見て
私はほっとした
:09/10/12 00:21 :D905i :8HWp1nKk
#84 [栢]
じいちゃんが
ばあちゃんの手を握り
途切れ途切れに話し始めた。
退院したらばあちゃんと
山に登って紅葉を見て
それから魚釣りをして‥
じいちゃんは
柔らかく笑っていた。
:09/10/12 00:24 :D905i :8HWp1nKk
#85 [栢]
「じいちゃん頑張ってね」
お姉ちゃんが
じいちゃんの手を握って
別れを告げている時
私はひとり
黙って病室を出た。
なんだか恥ずかしかった。
ただそれだけの理由で
じいちゃんにさよならを言えなかった
</Font>
:09/10/12 00:27 :D905i :8HWp1nKk
#86 [栢]
じいちゃんはなんで
あんなにキツいことを言うばあちゃんを
好きでいられるんだろう‥
不思議でならなかった。
何日かして
学校で授業を受けていたら
先生に呼び出された。
じいちゃんが亡くなった
:09/10/12 00:55 :D905i :8HWp1nKk
#87 [栢]
わかってはいたけど
驚いて言葉がでなかった。
目の奥が熱くなる。
すぐに帰る支度をして
お母さんの迎えを待っている時
ついに泣き出してしまった
信じたくなくて
夢だ夢だと言い聞かせてみたが
止まらない涙
:09/10/12 00:58 :D905i :8HWp1nKk
#88 [栢]
病室に駆け込むと
真っ白なベッドに
白いきれいな顔をした
じいちゃんが眠ってた。
私はその場に泣き崩れた。
声をあげて泣いた。
苦しかったはずなのに
じいちゃんは
あの柔らかい笑顔のままだったから
:09/10/12 01:01 :D905i :8HWp1nKk
#89 [栢]
治すために入院したのに
水だって我慢したのに
どうして死んじゃったの?
ばあちゃんと
紅葉見て魚釣りするんでしょ?
じいちゃん‥、
なんとか言ってよ
:09/10/12 01:03 :D905i :8HWp1nKk
#90 [栢]
その場に
ばあちゃんの姿はなかった
私はそれからずっと
自分の部屋に引きこもって
泣き続けた。
大好きだったじいちゃんが
もういないのだ
:09/10/12 01:05 :D905i :8HWp1nKk
#91 [栢]
それから
お葬式がやってきた
じいちゃんの写真が
きれいなお花に囲まれていた
無口な人だったけど
いろんな人に慕われていたんだろう
たくさんの人が参列していた
その間も
ばあちゃんは泣いていなかった
やっぱり‥、
:09/10/12 01:08 :D905i :8HWp1nKk
#92 [栢]
静かに眠ったじいちゃんの周りに
たくさんのお花と
大好きだったタバコを入れた
しっかりと蓋を閉めて
釘が打たれた。
そして運ばれていく‥
:09/10/12 01:11 :D905i :8HWp1nKk
#93 [栢]
あのばあちゃんが泣いていた
小さな体を
さらに小さくして
顔が崩れてしまいそうなくらい
くしゃっとシワを寄せて
ぼろぼろと涙を流していた
じいさん、じいさん‥
ただただ繰り返すだけだった
:09/10/12 01:13 :D905i :8HWp1nKk
#94 [栢]
じいちゃんは
白い煙になって天国に行った
これから長い旅に出るのだと
お坊さんが言っていた。
そして
紅葉の季節になる
:09/10/12 01:14 :D905i :8HWp1nKk
#95 [栢]
ばあちゃんが
近所の友達と家の居間で話しているのが
たまたま耳に入った。
「最初は信じられなかったよ
ほんとだってわかると
追いかけて逝きたくなっちゃうね
寂しいもんだ‥
癖でじいさんの湯飲みにも
お茶を入れちゃうんだから」
ばあちゃんは
確かにじいちゃんを愛していた
:09/10/12 01:18 :D905i :8HWp1nKk
#96 [栢]
「ひどいことを言ってばかりで
後悔してるよ‥
じいさんに嫌われてしまったね」
ばあちゃん、私知ってるよ
じいちゃんは確かに
ばあちゃんのこと愛していた
:09/10/12 01:21 :D905i :8HWp1nKk
#97 [栢]
じいちゃんが亡くなってから
私はお母さんから
手紙を受け取った
じいちゃんからの手紙。
"じいちゃんはとても不器用です
ばあさんはもっと不器用です。
あなたも不器用です。
だけどそこがまたいいのです
ばあさんは寂しがり屋だから
ん話し相手になってあげてください
きっと喜びます
じいちゃんはばあさんを
愛しています。
恥ずかしいので
秘密にしておいてください。"
:09/10/12 01:25 :D905i :8HWp1nKk
#98 [栢]
じいちゃんは不器用だった
誰よりも不器用だった
だけど一途な人だった
とても素敵な人だった
じいちゃんが亡くなってから
もう3年。
今でもばあちゃんは
じいちゃんのことを楽しそうに
幸せそうに話してくれます。
:09/10/12 01:28 :D905i :8HWp1nKk
#99 [栢]
>>69-98実話です
フィクションじゃなくて
ごめんなさい(´・ω・`)
夫婦ってすごいなーって
感じました ^^*
じいちゃんのこと尊敬してます
:09/10/12 01:30 :D905i :8HWp1nKk
#100 [あ]
一気に読みました
最後の話で
涙がでました
:09/10/12 20:09 :SH906i :OvK85Guw
#101 []
どれもなんとなくジーンとくるものがありました(・ω・`)最後のは自分も経験したこともあって泣いちゃいました(;д;`)
もっと読みたいです
がんばってください
:09/10/12 21:14 :SH903i :I0f8fTd2
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