浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#101 []
 
襖の向こうから聞こえる声
耳を塞いでも聞こえてくる

「声で・か・す・ぎ!!」

小声なりに強めに
襖に向かって叫んでみた

「えーっと‥
まずは、お客さんにお酒注いで
それからー‥笑顔を忘れない
初めてのお客さんには
積極的に詰め寄る‥

って、
あたしも初めてなんだけど」

⏰:10/01/28 15:24 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#102 []
 
初めてって痛いって聞くけど‥
まぁ‥そうは言ってもねぇ?

そーんなに、
泣くほど痛いはず‥ない


「‥よね、」

ごくりと唾を飲み込み
手汗を着物で拭う

⏰:10/01/28 15:26 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#103 []
 
鏡に映る自分の姿

いつもとは違う
あたしじゃないみたい‥

真っ赤な着物に山吹色の帯
真っ赤な紅に綺麗なかんざし


「初めて抱かれるって‥
どんな感じ、なのかなぁ」

鏡の向こうの自分に投げかける

初めてくらい愛する人に‥
捧げたかったなぁ

⏰:10/01/28 15:29 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#104 []
 
「香夜、お客様がいらしたよ」

さっきとは打って変わって
商売様の笑顔の京さん

声は一段、いや二段くらい
高くなっている

"香夜は、今日からなんですよ
手加減してやってくださいな"

にやりと笑って襖を閉めた


ついに‥来てしまった

⏰:10/01/28 15:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#105 []
 
「い‥いらっしゃいまし」

思わず声が上擦った

正座をして深く頭を下げる
このまま‥頭を上げたくない
そんな気持ちに駆られる


「可愛らしい方です、ね
頭をお上げくださいな」


あぁ何か落ち着く声‥
この人なら何とか‥

⏰:10/01/28 15:37 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#106 []
 
「ひぃぃぃいいぃぃ!!!!」


頭を上げて驚いて腰を抜かした

なんで‥なんで‥

「い‥壱助さん?!」


紛れもなく
あたしの目の前にいる男は
今朝喧嘩した壱助さんである

「どうして‥こんな所に?!」

⏰:10/01/28 15:39 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#107 []
 
紛れもなく、紛れもなく
この美しさは壱助さん

「おや、おや
どうして‥名前をご存知で?」

この調子も壱助さん

「どうしてって‥香夜ですよ」

「あぁ‥香夜さん
お綺麗になられました、ね」

分かってたくせに‥わざとらしい

⏰:10/01/28 15:43 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#108 []
 
「‥あたしの事
様子、見にきたんですか?」

ふてくされ気味に一応酒を注ぐ

「様子‥
さぁ何の事、でしょうね」

あの怪しい笑みを浮かべて
酒を手に取る


お隣は‥
どうやら"行為"に至ったらしい
色がましい声が耳にへばりつく

⏰:10/01/28 15:47 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#109 []
 
沈黙‥と行きたいとこだけど
お隣の声の"おかげ"‥
"せい"で沈黙が破られる


―‥気まずい。


「香夜さん‥」

やっぱり素直に‥

「本当に‥」

謝ろうかな‥ぁ

⏰:10/01/28 15:50 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#110 []
 
「お綺麗です、ね」


頬に冷たい感覚
あの綺麗な手で頬を包み込まれた

壱助さんの目が
いつもとどこか違う‥


「い‥壱助さん?」

「お美しい‥」

「壱助さん‥?ちょっと‥」

⏰:10/01/28 15:52 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#111 []
 
あっという間に
壱助さんの顔がこちらに迫る
その向こうには天井が見える

壱助さん‥ちょっと待ってよ
たった一杯で酔ってるの?



「壱助さん‥
からかうのは止めてください」

引きつる笑顔を向けても


無駄だった

⏰:10/01/28 15:55 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#112 []
 
やだ‥

「こんなに‥胸元を開けて」

「や‥」

細くて白い指が胸元を這う

「積極的です、ね」

「壱助さん‥」

華奢な手でも力は強かった
上で捕らえられた両腕が
びくともしなかった

⏰:10/01/28 15:59 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#113 []
 
「まだ生娘となれば‥」

「いやぁ‥」

「こちらも力が入ります、ね」

「止めて‥壱助さん」

「そんな顔も、惹かれますねぇ」

首筋にねっとりと這う舌
思わず体が飛び跳ねる

⏰:10/01/28 16:02 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#114 []
 
最初から‥
このつもりだったの?

最初から‥
喰らうつもりだったの?


ねぇ壱助さん‥
あたし、わかんないよ

せっかく‥せっかく
心が開ける人ができたのに


壱助さん‥
そんな簡単に信じたあたしが
馬鹿だったのかな‥、

⏰:10/01/28 16:04 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#115 []
 
もう‥いいや、

もう‥


「今朝の威勢はどこ、に?」

首筋から感覚が消えた

「男とは‥こういう者、ですよ」

溢れ出した涙を
壱助さんの手が拭う

⏰:10/01/28 16:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#116 []
 
 
「言わんこっちゃ、ない」



そして‥笑った。

⏰:10/01/28 16:10 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#117 [笹]
第三章 【雇われて】

*。*。*。*。*
意地っ張りな香夜ちゃん
黒豆と言われて
さらにムキになる香夜ちゃん

それを楽しそうにからかう
ちょっとSな壱助さん

"産毛の子猫ちゃん"を
壱助さんは喰らってしまうのか?

「さぁ、どうでしょうね」
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 16:13 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#118 []
 
嗚呼‥
何て馬鹿なことを‥

本当にあたしは愚かだ。
今更、後悔しても及ばない

この前は優しく抱き締めてくれた
だけど、今は違う

壱助さん‥怖いだけです。

"呉牛、月に喘ぐ"

⏰:10/01/28 19:08 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#119 []




「どんな、お気持ちで?」

もう‥諦めました、か

「‥悔しい、だけです」

帯を緩めてみても無関心
触れてみれば、
怯えるようにぴくりと跳ねる

どうしたもんか‥。

⏰:10/01/28 19:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#120 []
「壱助さん‥」

あまりに情けない声で

「何か、ご要望がお有りで?」

蚊の泣くような声で

「こうして‥いつも?」

尋ねるものですから

「手加減、している方ですぜ」

悪者になったような気分ですよ

⏰:10/01/28 19:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#121 []
 
「‥悔しい」

やはり香夜さんは子供で

「何故、」

泣きじゃくって

「たった一週間で‥
貴方を知った気になってた」

焼き餅を焼いて

⏰:10/01/28 19:10 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#122 []
「それは、それは」

しかし、少しだけ‥

「壱助さん‥」

色めいて、‥全く

「‥」

香夜さん、貴女は私を‥

⏰:10/01/28 19:11 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#123 []
 
 
 
「抱いて‥下さい」



―‥どうしたいの、か
_

⏰:10/01/28 19:13 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#124 []
 
含み笑い、体を離せば
"どうして"と言うような顔をする

どうかしている、貴女は


「いたッ‥」

目を覚ませと額を叩いても
張り合いがありゃしない

⏰:10/01/28 19:14 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#125 []
 
「‥さぁ、帰りますよ」

「‥はい」


そんな顔されちゃぁ、
着物を直す手も躊躇います、ぜ

⏰:10/01/28 19:15 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#126 []
 
本当に‥貴女という人は


「壱助‥さん」




―‥本当に

⏰:10/01/28 19:16 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#127 []
 

「‥ごめんなさい。」




世話が焼ける"子猫"です、ね

⏰:10/01/28 19:16 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#128 [笹]
第四章 【誘われて】

*。*。*。*。*
初の壱助さん目線
が、しかし言葉数が少なすぎる

どうしたもんか、
いきなり大人びた香夜ちゃんに
流石の壱助さんも戸惑いの様子

そして案外
世話好きだった壱助さん
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 19:23 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#129 []
 
"矯めるなら若木のうち"

悪い癖や欠点などは
柔軟な"幼少"のうちに直さねば
成長してからでは直しにくい。



―‥そういう事、ですよ

⏰:10/01/28 20:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#130 []




穏やかな朝に

不釣り合いな‥


「いッ‥たぁああぁあいぃい!!」


激痛の目覚まし。

⏰:10/01/28 20:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#131 []
 
「朝から‥騒がしいです、ね」

人の顔面ひっぱたいといて‥
憎い‥憎すぎる


「朝くらい穏やかに‥」

起き上がり目線を上げると

「起きさせて‥」

⏰:10/01/28 20:26 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#132 []
 
異様な重い空気と
壱助さんの鋭い視線

「ください‥」

迫力に

「‥な、何でも‥ないです」



負けました。

⏰:10/01/28 20:27 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#133 []


「お金は‥稼げたんですかい?」

明らかにいつもより声質が鋭い
そして、正座‥辛い

「いえ‥全く」

ちゅんちゅん、と鳴く雀
こけこけ、と鳴く鶏
ぼろぼろ、と泣く私

‥惨めです本当に

⏰:10/01/28 20:28 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#134 []
 
「情けない」

「ご、ごもっとも‥です」

後悔先に立たずとは
このこと‥ですね

じりじり迫る壱助さんの視線
じりじり痺れる足

呆れたように深く息を吐き
いらいらしているのか
組んだ腕を片指で叩く壱助さん

⏰:10/01/28 20:28 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#135 []
 
「出来ないことは言わない事、
意地を張っても構いはしないが
分かりやすい嘘は無用。」


まるで子を叱る父である。

いつもより少し声を張って
語尾が乱暴だ。

⏰:10/01/28 20:29 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#136 []
 
「"私は愚かな雌猫です。
自らの体を安売りした上に、
情けないことに結果は皆無でした
このような事を以後繰り返さぬ様
壱助様には逆らわず
忠実である事をここに誓います"

はい、復唱」

「え‥?
そんないきなり言われても‥」

⏰:10/01/28 20:30 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#137 []
 
壱助さん=優しい

「人の話は、よく聞く事」

取り消したいと思います


「わ、私は‥愚かな雌猫です。
えーっと‥何だっけ‥?」

やっぱり鬼だと思います

⏰:10/01/28 20:31 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#138 []
 
「"自分の体を安売りした上に"」

だってこんな威圧感のある目
‥初めてですよ

「あぅ‥
自分の体を安売りした上に‥」

「‥」

「愚かな事‥」

⏰:10/01/28 20:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#139 []
 


「最初から、はいもう一度」




鬼‥鬼‥鬼!!!!

⏰:10/01/28 20:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#140 []
 
「壱助様は
鬼ではなく神様です、よ」



うわ‥読まれてる‥
貴方の笑顔は最恐です、よと

⏰:10/01/28 20:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#141 []
 
だけど‥、何でだろう


そんな思いとは裏腹に
壱助さんの傍はどこか落ち着く



居場所‥見つけました。

⏰:10/01/28 20:34 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#142 []
 
 

許される限り
あなたの傍に置いて頂きたい



_

⏰:10/01/28 20:35 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#143 []
 
 
「自分の事は、大切にして下さい


‥世話をかけますから、ね」

「‥は、はいっ!!」

思わず顔が緩みます

⏰:10/01/28 20:37 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#144 []
「では‥最初から、はいもう一度」

「えぇ‥まだやるんですかぁ?」

「"壱助様には逆らわず"です、よ」

「‥はぁーい」

やっぱり、
よく考えておきます‥

⏰:10/01/28 20:39 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#145 [笹]
第五章 【叱られて】

*。*。*。*。*
朝になればいつもの調子の2人
やっぱりこれがしっくり来る?

何となく、
居心地がよくなった気がする
雌猫、香夜ちゃん

壱助さんまさかのツンデレ

明るくなりましたかね?(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 20:44 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#146 [我輩は匿名である]
>>60-120
>>121-150

⏰:10/01/28 21:30 📱:W53H 🆔:4WiSLrw2


#147 []
 
まだ幼い雌猫が、
体を売ろうなんざぁ‥
馬鹿げた話です。

本当に危なっかしいもんです、よ

あれこれ口で言うよりも
心の中で考えてる事のほうが
ずっと痛切じゃありやせんか

私は、そういう気質なもんで‥

"鳴かぬ蛍が身を焦がす"って、か

⏰:10/01/29 00:39 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#148 []




「またですかぁ?」

まただ。
"ちょいと野暮用に"って
壱助さんは決まって夕方に
下駄を履いて出て行く

「すぐに‥戻ります、よ」

なんだかあれから
更に子供扱いされてる気がする

⏰:10/01/29 00:43 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#149 []
 
あたしの思い違いかもしれない
だけど‥、何となくあの日から
距離が‥遠くなった気がするの

距離って言うのは、
座った時とかの間隔のことだけど


「考えすぎかなぁー‥」

壱助さんの背中をぼうっと見つめ
あたしはただ
力なく手を振るだけだった

⏰:10/01/29 00:46 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#150 []
 
"野暮用"って何だろう‥

拗ねた子供のように
口をつんと尖らせて畳に寝転ぶ



『手加減、してる方ですぜ』



「‥まさかっ、」

⏰:10/01/29 00:50 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#151 [笹]




「壱助さんじゃないかぁ!!」

「あぁ‥伊代さん」

にこりと微笑む壱助の腕を
伊代がしっかりと捕まえた

「"あぁ‥"じゃないよぉ!!
どうなったんだい?!」

手に汗握るように
またそわそわしている

⏰:10/01/29 15:19 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#152 []
 


「どうなった、と言いますと?」



"惚けるんじゃないよ"と
伊代がせかす

⏰:10/01/29 15:20 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#153 []



「そうかそうかぁー
無事だったのかい」


見たこともない人間を
全く子供かのように心配するほど
伊代は人情味に溢れてる

⏰:10/01/29 15:21 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#154 []
 
「そんなに心配しなくても、
大丈夫でしたが、ね」

いつものように茶を啜り
団子を手に取り眺める


「壱助さん!あんたねぇ
女の子にとっちゃあ
事によっては死のうと思うくらい
大事になるんだからさぁ‥
ちゃんと面倒見てやんなよぅ?」

⏰:10/01/29 15:21 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#155 []
 
女は女の味方である。
そうは言っても
壱助の無関心さには
女じゃなくてもこう言うだろうと
伊代は思うのだ


「それでぇ‥"猫ちゃん"は
何ともなかったのかい?」

腕を組んで
まるでお説教をしてるようだ

⏰:10/01/29 15:22 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#156 []
 
「何とも、無かったんじゃあ‥」


『たった一週間で
貴方を知った気になってた‥』


‥どうした、もんかねぇ

⏰:10/01/29 15:23 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#157 []
 
「‥ないですか、ねぇ」

壱助は団子に口を付けず
そのまま皿に置いた


「連れて歩くなら、
もっとしっかりしなよぉ!!」

べしんっと一発
壱助の肩にお見舞い

⏰:10/01/29 15:24 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#158 []
 
「しかし‥少々」


『‥抱いて、ください』


―‥酒でも飲んだ、か
―‥空気に飲まれた、か


それとも‥

⏰:10/01/29 15:24 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#159 []
 
「飲まれちまったようで、」


―‥正気、か


あの時の目は虚ろではなかった

だとしたら、 やはり

⏰:10/01/29 15:25 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#160 []
 
「"酒でも飲ませて襲った"
なんて言わないだろうねぇ?」


‥否定はできません、ぜ


「まさか‥そうなのかい?」

驚くように伊代は口をはっと塞ぐ

⏰:10/01/29 15:26 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#161 []
 
「いえ、いえ

せめて‥人並みでないと、ね」


その言葉に
ぽかんとだらしなく口を開けた

"人並み?"と目で訴えられて

⏰:10/01/29 15:27 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#162 []
 

「中の‥下では、何とも」



壱助はそう言い残し
団子をそのままにして


去っていった

⏰:10/01/29 15:27 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#163 []




さて、どうしたもんか

「‥ニャァ」

珍しく思い耽って宿に戻る
入り口手前で
何故か躊躇していると
一匹の猫が足元にすり寄ってきた

⏰:10/01/29 15:28 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#164 []
 
"獣はあまり好かないんで、ね"と
少し冷たい視線を向けると

寂しそうにニャァと鳴いた


「‥"猫"はどうして、こうも」

その場にしゃがみこみ
喉元を撫でてやる

⏰:10/01/29 15:29 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#165 []
 
「‥気まぐれなのか、ねぇ」


普段は猫なんて
寄って来やしないんですが

「ミャァ‥ウ」



‥撫でてやると
可愛い声を出すもんで

⏰:10/01/29 15:30 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#166 []
 
「情けない‥奴です、よ」





目を細めて微笑した

⏰:10/01/29 15:30 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#167 []
 
すりすりと身を寄せて
何を、考えているんで?

人と猫は
分かり合えませんか、ね


「発情期です‥か」

猫の丸い目がパチクリする
惚けるんですかい?

⏰:10/01/29 15:31 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#168 []
 
"さて‥"と腰を上げようとすると

"嫌だ"と言うように身を乗り出す



「"飼い猫"が‥妬くんでね」

大きく一撫でして立ち上がる

⏰:10/01/29 15:31 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#169 []
 

「‥隠れても無駄、ですよ」



「ひぁぁああっ!!」


びくりと肩を持ち上げて
‥苦笑いする猫が一匹。

⏰:10/01/29 15:32 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#170 []
 
「いいいっ壱助さんっ
おかっ‥お帰りなさぁい」


「何してお出でで?」




‥どうしたもんか、ね

⏰:10/01/29 15:33 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#171 []
 
「‥心配で、‥壱助さんの事が」




馴れては、いるんですぜ?



しかし情けない‥男です、よ

⏰:10/01/29 15:34 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#172 []
第六章 【困らせて】

*。*。*。*。*
サブタイトル:色男の悩み w

またもや壱助さん目線
伊代さんと絡み熱いっす

猫と話しちゃう壱助さん
相当‥やられてるようで

とりあえず、
香夜ちゃん出番少なくて
ごめんなさい(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/29 15:38 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#173 []
 
"腹立てるより義理立てろ"

腹を立てて何になるんで?
どうにもなりや、しやせんよ





本当に、訳の分からない厄介者を
拾ってしまったもんです、ね

⏰:10/01/29 16:48 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#174 []



壱助さんが‥猫としゃべってた

有り得ない‥
あんなに動物嫌いなのに!!
熱でもあるのかなぁ

「何、か」

「い‥いえ、何も」

‥気のせいか。

⏰:10/01/29 16:48 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#175 []
 
「さっきから‥何か、」

ついついじっと見てしまう
意識はしてないんだけど‥


まぁ、壱助さん綺麗だし
普通は見とれるものよね



‥自問自答である。

⏰:10/01/29 16:49 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#176 []
 
「壱助さん‥もしかして‥」

無意識のうちに
あたしは口が開いてしまう

壱助さんにこんな事聞くなんて
虎の穴に手突っ込むようなもの


「もしかして、花街に‥」

・・・って、

⏰:10/01/29 16:50 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#177 []
 



「何で脱いでるんですかぁああ?!」


_

⏰:10/01/29 16:51 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#178 []
 
真珠みたいに白い肌
まるで歌舞伎の女形みたいに
綺麗な顔わしてるもんだから
体も華奢なのかと思ったら

案外‥と言うか
かなりしっかりしてて
搾られてるってかんじ‥。

腰の当たりがすごく色っぽくて
何て綺麗なんだろうこの人は‥

⏰:10/01/29 16:51 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#179 []
 
って‥
いちいち描写したくなるほど
美しかった


「ちょっ‥と
いきなり何してるんですか!!」

腰のあたりまで着物を下ろし
ぎろりと此方を睨み付けられる

⏰:10/01/29 16:52 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#180 []
 
「何とは‥
着替えの意味もご存知でない?」


またそうやって‥

「ご存知ですぅ!!
着替えるなら一言かけてから‥」

からかうんだから

⏰:10/01/29 16:53 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#181 []
 
"着替えます、よ"って
‥今更遅いですよぉ

熱くなる顔を抑えて
黙って背を向けた



するすると帯が解ける音
そんな音でさえ
壱助さんは色っぽくしてしまう

⏰:10/01/29 16:54 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#182 []
 
「終わりました、よ」

一呼吸置いて体の向きを返る
いちいちドキドキして
あたし馬鹿みたいだなぁ‥


おいおい壱助さん
時が止まってるじゃあ
ありませんか。

「ちゃんと腕通してくださいぃ!!」

⏰:10/01/29 16:54 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#183 []
 
また半裸状態
露出狂ですかあなた‥もう

「はい、はい」

くつくつと笑いながら袖を通す


着物が畳を擦る音に
壱助さんの呼吸が答える

「花街が‥どうかしやした、か」

⏰:10/01/29 16:55 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#184 []
 
目の前に正座して
長い睫を柔らかく揺らす

調子狂いますよ‥本当に


「壱助さん‥
いつもいつも野暮用って、
本当は、花街に
行ってるんじゃないですか?」

軽く唇を噛んで頬を膨らます

⏰:10/01/29 16:55 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#185 []
 
「そうだったら‥何、か」

動揺する様子もない
掴み所がない人ね


「やっぱり‥そうなんですか?」

語尾が弱くなる
聞かなきゃよかったって
これまた後悔先に立たず。

⏰:10/01/29 16:56 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#186 []
 
「さぁ‥ね」

妖しい笑みを浮かべた時は
あたしをからかってるのだ


「行くな、と?」

「当たり前です‥!
何か‥嫌なんですよぉ」

「ほぉう」

⏰:10/01/29 16:57 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#187 []
 
すると
壱助さんがぬっと身を乗り出し
じっと見つめてきたもんで
不意を付かれて倒れ込んだ



「それなら‥香夜さんが
お相手を、していただけるんで?」

⏰:10/01/29 16:57 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#188 []
 
急に体が重くなる
あたしを見下ろすその目が憎い
壱助さんは、ずるいよ

「‥嫌です」

「おや、この前は‥
色めいて抱けと言ったのに」

「‥あ、あれは」

自分でもよくわかりません
何て言えるはずもなく

⏰:10/01/29 16:58 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#189 []
 
「色んな遊女を抱いてる人に
‥抱かれたくはありません」

目を伏せて
のしかかる体を押し上げる


「こいつぁ‥手厳しい」

雪みたいな手が頬を撫でた

‥また喰らおうとするの?

⏰:10/01/29 16:59 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#190 []
 
「中の下では‥」

雪がするする首筋を流れ
胸元をするりと抜けた



「"目覚めない"もんで、ね」

胸にひんやりとした感覚
睨みつけるように
鋭い目であたしを突き刺す

⏰:10/01/29 16:59 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#191 []
 

「きゃああぁああぁあっ」



いざと言うときに
力は発揮されるようで

どんと壱助さんの体を突き飛ばし
目をむき出しにした

⏰:10/01/29 17:00 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#192 []
有り得ないっ有り得ない!!!

「壱助さんの‥




すけべぇええぇえぇ!!!!」



もう、お嫁にいけません。うぅ

⏰:10/01/29 17:00 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#193 []
 
「そんなに怒っていては‥
嫁に行けません、よ」



「壱助さんのせいですぅう!!!」


目一杯叫んでやった。

―‥壱助さんの馬鹿やろうっ!!

⏰:10/01/29 17:02 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#194 [笹]
第七章 【触れられて】

*。*。*。*。*。*
すみません
ただの私の息抜きです ←

壱助さんも美しいとはいえ
やはり男、助平なのもまた然り
だけど下品に聞こえないのが
また憎めない‥

さぁ香夜ちゃんは
無事お嫁に行けるのかっw?
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/29 17:06 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#195 [我輩は匿名である]
>>160-200

⏰:10/01/29 21:42 📱:W53H 🆔:CL/ESoxg


#196 [我輩は匿名である]
>>140-159

⏰:10/01/29 21:42 📱:W53H 🆔:CL/ESoxg


#197 []
 
死にそうな所を
拾ってやったと言うのに‥

疑い深い猫、ですよ


少しは恩でも返そうと
‥思わないんですかい?

"猫は三年の恩を三日で忘れる"
‥って、ね

⏰:10/01/30 19:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#198 []




何をするでもない
壱助さんはいつもこう。

正座してお茶を入れて啜って
少し間を置いてまた啜って‥
飲み終えたら
‥―立ち膝で窓際に座る


ぼうっと空ばかり眺めて
何が面白いのだろう。

⏰:10/01/30 19:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#199 []
 
立ち膝で座ってる時の
少しはだけた着物から見える
白い肌が何とも‥。

あー‥羨ましさを越えて憎らしい



‥ねぇ壱助さん
あたしが居ること忘れてる?
存在消されてる?

⏰:10/01/30 19:51 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#200 []
 
そういえば、壱助さんは何で‥





あたしを助けてくれたの?

⏰:10/01/30 19:52 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#201 []
 
しかも、それから
ずっと面倒見てくれてる。
扱いは‥まぁ考えないとして


お金だってないのに‥。



―‥ただの人助け?
あたしに対する同情かしら

⏰:10/01/30 19:52 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


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