浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#101 [笹]
襖の向こうから聞こえる声
耳を塞いでも聞こえてくる
「声で・か・す・ぎ!!」
小声なりに強めに
襖に向かって叫んでみた
「えーっと‥
まずは、お客さんにお酒注いで
それからー‥笑顔を忘れない
初めてのお客さんには
積極的に詰め寄る‥
って、
あたしも初めてなんだけど」
:10/01/28 15:24 :D905i :Ad90U/U2
#102 [笹]
初めてって痛いって聞くけど‥
まぁ‥そうは言ってもねぇ?
そーんなに、
泣くほど痛いはず‥ない
「‥よね、」
ごくりと唾を飲み込み
手汗を着物で拭う
:10/01/28 15:26 :D905i :Ad90U/U2
#103 [笹]
鏡に映る自分の姿
いつもとは違う
あたしじゃないみたい‥
真っ赤な着物に山吹色の帯
真っ赤な紅に綺麗なかんざし
「初めて抱かれるって‥
どんな感じ、なのかなぁ」
鏡の向こうの自分に投げかける
初めてくらい愛する人に‥
捧げたかったなぁ
:10/01/28 15:29 :D905i :Ad90U/U2
#104 [笹]
「香夜、お客様がいらしたよ」
さっきとは打って変わって
商売様の笑顔の京さん
声は一段、いや二段くらい
高くなっている
"香夜は、今日からなんですよ
手加減してやってくださいな"
にやりと笑って襖を閉めた
ついに‥来てしまった
:10/01/28 15:33 :D905i :Ad90U/U2
#105 [笹]
「い‥いらっしゃいまし」
思わず声が上擦った
正座をして深く頭を下げる
このまま‥頭を上げたくない
そんな気持ちに駆られる
「可愛らしい方です、ね
頭をお上げくださいな」
あぁ何か落ち着く声‥
この人なら何とか‥
:10/01/28 15:37 :D905i :Ad90U/U2
#106 [笹]
「ひぃぃぃいいぃぃ!!!!」
頭を上げて驚いて腰を抜かした
なんで‥なんで‥
「い‥壱助さん?!」
紛れもなく
あたしの目の前にいる男は
今朝喧嘩した壱助さんである
「どうして‥こんな所に?!」
:10/01/28 15:39 :D905i :Ad90U/U2
#107 [笹]
紛れもなく、紛れもなく
この美しさは壱助さん
「おや、おや
どうして‥名前をご存知で?」
この調子も壱助さん
「どうしてって‥香夜ですよ」
「あぁ‥香夜さん
お綺麗になられました、ね」
分かってたくせに‥わざとらしい
:10/01/28 15:43 :D905i :Ad90U/U2
#108 [笹]
「‥あたしの事
様子、見にきたんですか?」
ふてくされ気味に一応酒を注ぐ
「様子‥
さぁ何の事、でしょうね」
あの怪しい笑みを浮かべて
酒を手に取る
お隣は‥
どうやら"行為"に至ったらしい
色がましい声が耳にへばりつく
:10/01/28 15:47 :D905i :Ad90U/U2
#109 [笹]
沈黙‥と行きたいとこだけど
お隣の声の"おかげ"‥
"せい"で沈黙が破られる
―‥気まずい。
「香夜さん‥」
やっぱり素直に‥
「本当に‥」
謝ろうかな‥ぁ
:10/01/28 15:50 :D905i :Ad90U/U2
#110 [笹]
「お綺麗です、ね」
頬に冷たい感覚
あの綺麗な手で頬を包み込まれた
壱助さんの目が
いつもとどこか違う‥
「い‥壱助さん?」
「お美しい‥」
「壱助さん‥?ちょっと‥」
:10/01/28 15:52 :D905i :Ad90U/U2
#111 [笹]
あっという間に
壱助さんの顔がこちらに迫る
その向こうには天井が見える
壱助さん‥ちょっと待ってよ
たった一杯で酔ってるの?
「壱助さん‥
からかうのは止めてください」
引きつる笑顔を向けても
無駄だった
:10/01/28 15:55 :D905i :Ad90U/U2
#112 [笹]
やだ‥
「こんなに‥胸元を開けて」
「や‥」
細くて白い指が胸元を這う
「積極的です、ね」
「壱助さん‥」
華奢な手でも力は強かった
上で捕らえられた両腕が
びくともしなかった
:10/01/28 15:59 :D905i :Ad90U/U2
#113 [笹]
「まだ生娘となれば‥」
「いやぁ‥」
「こちらも力が入ります、ね」
「止めて‥壱助さん」
「そんな顔も、惹かれますねぇ」
首筋にねっとりと這う舌
思わず体が飛び跳ねる
:10/01/28 16:02 :D905i :Ad90U/U2
#114 [笹]
最初から‥
このつもりだったの?
最初から‥
喰らうつもりだったの?
ねぇ壱助さん‥
あたし、わかんないよ
せっかく‥せっかく
心が開ける人ができたのに
壱助さん‥
そんな簡単に信じたあたしが
馬鹿だったのかな‥、
:10/01/28 16:04 :D905i :Ad90U/U2
#115 [笹]
もう‥いいや、
もう‥
「今朝の威勢はどこ、に?」
首筋から感覚が消えた
「男とは‥こういう者、ですよ」
溢れ出した涙を
壱助さんの手が拭う
:10/01/28 16:09 :D905i :Ad90U/U2
#116 [笹]
「言わんこっちゃ、ない」
そして‥笑った。
:10/01/28 16:10 :D905i :Ad90U/U2
#117 [笹]
:10/01/28 16:13 :D905i :Ad90U/U2
#118 [笹]
嗚呼‥
何て馬鹿なことを‥
本当にあたしは愚かだ。
今更、後悔しても及ばない
この前は優しく抱き締めてくれた
だけど、今は違う
壱助さん‥怖いだけです。
"呉牛、月に喘ぐ"
:10/01/28 19:08 :D905i :Ad90U/U2
#119 [笹]
:
:
:
「どんな、お気持ちで?」
もう‥諦めました、か
「‥悔しい、だけです」
帯を緩めてみても無関心
触れてみれば、
怯えるようにぴくりと跳ねる
どうしたもんか‥。
:10/01/28 19:09 :D905i :Ad90U/U2
#120 [笹]
「壱助さん‥」
あまりに情けない声で
「何か、ご要望がお有りで?」
蚊の泣くような声で
「こうして‥いつも?」
尋ねるものですから
「手加減、している方ですぜ」
悪者になったような気分ですよ
:10/01/28 19:09 :D905i :Ad90U/U2
#121 [笹]
「‥悔しい」
やはり香夜さんは子供で
「何故、」
泣きじゃくって
「たった一週間で‥
貴方を知った気になってた」
焼き餅を焼いて
:10/01/28 19:10 :D905i :Ad90U/U2
#122 [笹]
「それは、それは」
しかし、少しだけ‥
「壱助さん‥」
色めいて、‥全く
「‥」
香夜さん、貴女は私を‥
:10/01/28 19:11 :D905i :Ad90U/U2
#123 [笹]
「抱いて‥下さい」
―‥どうしたいの、か
_
:10/01/28 19:13 :D905i :Ad90U/U2
#124 [笹]
含み笑い、体を離せば
"どうして"と言うような顔をする
どうかしている、貴女は
「いたッ‥」
目を覚ませと額を叩いても
張り合いがありゃしない
:10/01/28 19:14 :D905i :Ad90U/U2
#125 [笹]
「‥さぁ、帰りますよ」
「‥はい」
そんな顔されちゃぁ、
着物を直す手も躊躇います、ぜ
:10/01/28 19:15 :D905i :Ad90U/U2
#126 [笹]
本当に‥貴女という人は
「壱助‥さん」
―‥本当に
:10/01/28 19:16 :D905i :Ad90U/U2
#127 [笹]
「‥ごめんなさい。」
世話が焼ける"子猫"です、ね
:10/01/28 19:16 :D905i :Ad90U/U2
#128 [笹]
:10/01/28 19:23 :D905i :Ad90U/U2
#129 [笹]
"矯めるなら若木のうち"
悪い癖や欠点などは
柔軟な"幼少"のうちに直さねば
成長してからでは直しにくい。
―‥そういう事、ですよ
:10/01/28 20:25 :D905i :Ad90U/U2
#130 [笹]
:
:
:
穏やかな朝に
不釣り合いな‥
「いッ‥たぁああぁあいぃい!!」
激痛の目覚まし。
:10/01/28 20:25 :D905i :Ad90U/U2
#131 [笹]
「朝から‥騒がしいです、ね」
人の顔面ひっぱたいといて‥
憎い‥憎すぎる
「朝くらい穏やかに‥」
起き上がり目線を上げると
「起きさせて‥」
:10/01/28 20:26 :D905i :Ad90U/U2
#132 [笹]
異様な重い空気と
壱助さんの鋭い視線
「ください‥」
迫力に
「‥な、何でも‥ないです」
負けました。
:10/01/28 20:27 :D905i :Ad90U/U2
#133 [笹]
:
:
「お金は‥稼げたんですかい?」
明らかにいつもより声質が鋭い
そして、正座‥辛い
「いえ‥全く」
ちゅんちゅん、と鳴く雀
こけこけ、と鳴く鶏
ぼろぼろ、と泣く私
‥惨めです本当に
:10/01/28 20:28 :D905i :Ad90U/U2
#134 [笹]
「情けない」
「ご、ごもっとも‥です」
後悔先に立たずとは
このこと‥ですね
じりじり迫る壱助さんの視線
じりじり痺れる足
呆れたように深く息を吐き
いらいらしているのか
組んだ腕を片指で叩く壱助さん
:10/01/28 20:28 :D905i :Ad90U/U2
#135 [笹]
「出来ないことは言わない事、
意地を張っても構いはしないが
分かりやすい嘘は無用。」
まるで子を叱る父である。
いつもより少し声を張って
語尾が乱暴だ。
:10/01/28 20:29 :D905i :Ad90U/U2
#136 [笹]
「"私は愚かな雌猫です。
自らの体を安売りした上に、
情けないことに結果は皆無でした
このような事を以後繰り返さぬ様
壱助様には逆らわず
忠実である事をここに誓います"
はい、復唱」
「え‥?
そんないきなり言われても‥」
:10/01/28 20:30 :D905i :Ad90U/U2
#137 [笹]
壱助さん=優しい
「人の話は、よく聞く事」
取り消したいと思います
「わ、私は‥愚かな雌猫です。
えーっと‥何だっけ‥?」
やっぱり鬼だと思います
:10/01/28 20:31 :D905i :Ad90U/U2
#138 [笹]
「"自分の体を安売りした上に"」
だってこんな威圧感のある目
‥初めてですよ
「あぅ‥
自分の体を安売りした上に‥」
「‥」
「愚かな事‥」
:10/01/28 20:32 :D905i :Ad90U/U2
#139 [笹]
「最初から、はいもう一度」
鬼‥鬼‥鬼!!!!
:10/01/28 20:32 :D905i :Ad90U/U2
#140 [笹]
「壱助様は
鬼ではなく神様です、よ」
うわ‥読まれてる‥
貴方の笑顔は最恐です、よと
:10/01/28 20:33 :D905i :Ad90U/U2
#141 [笹]
だけど‥、何でだろう
そんな思いとは裏腹に
壱助さんの傍はどこか落ち着く
居場所‥見つけました。
:10/01/28 20:34 :D905i :Ad90U/U2
#142 [笹]
許される限り
あなたの傍に置いて頂きたい
_
:10/01/28 20:35 :D905i :Ad90U/U2
#143 [笹]
「自分の事は、大切にして下さい
‥世話をかけますから、ね」
「‥は、はいっ!!」
思わず顔が緩みます
:10/01/28 20:37 :D905i :Ad90U/U2
#144 [笹]
「では‥最初から、はいもう一度」
「えぇ‥まだやるんですかぁ?」
「"壱助様には逆らわず"です、よ」
「‥はぁーい」
やっぱり、
よく考えておきます‥
:10/01/28 20:39 :D905i :Ad90U/U2
#145 [笹]
:10/01/28 20:44 :D905i :Ad90U/U2
#146 [我輩は匿名である]
:10/01/28 21:30 :W53H :4WiSLrw2
#147 [笹]
まだ幼い雌猫が、
体を売ろうなんざぁ‥
馬鹿げた話です。
本当に危なっかしいもんです、よ
あれこれ口で言うよりも
心の中で考えてる事のほうが
ずっと痛切じゃありやせんか
私は、そういう気質なもんで‥
"鳴かぬ蛍が身を焦がす"って、か
:10/01/29 00:39 :D905i :XWctwuXA
#148 [笹]
:
:
:
「またですかぁ?」
まただ。
"ちょいと野暮用に"って
壱助さんは決まって夕方に
下駄を履いて出て行く
「すぐに‥戻ります、よ」
なんだかあれから
更に子供扱いされてる気がする
:10/01/29 00:43 :D905i :XWctwuXA
#149 [笹]
あたしの思い違いかもしれない
だけど‥、何となくあの日から
距離が‥遠くなった気がするの
距離って言うのは、
座った時とかの間隔のことだけど
「考えすぎかなぁー‥」
壱助さんの背中をぼうっと見つめ
あたしはただ
力なく手を振るだけだった
:10/01/29 00:46 :D905i :XWctwuXA
#150 [笹]
"野暮用"って何だろう‥
拗ねた子供のように
口をつんと尖らせて畳に寝転ぶ
『手加減、してる方ですぜ』
「‥まさかっ、」
:10/01/29 00:50 :D905i :XWctwuXA
#151 [笹]
:
:
:
「壱助さんじゃないかぁ!!」
「あぁ‥伊代さん」
にこりと微笑む壱助の腕を
伊代がしっかりと捕まえた
「"あぁ‥"じゃないよぉ!!
どうなったんだい?!」
手に汗握るように
またそわそわしている
:10/01/29 15:19 :D905i :XWctwuXA
#152 [笹]
「どうなった、と言いますと?」
"惚けるんじゃないよ"と
伊代がせかす
:10/01/29 15:20 :D905i :XWctwuXA
#153 [笹]
:
:
「そうかそうかぁー
無事だったのかい」
見たこともない人間を
全く子供かのように心配するほど
伊代は人情味に溢れてる
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#154 [笹]
「そんなに心配しなくても、
大丈夫でしたが、ね」
いつものように茶を啜り
団子を手に取り眺める
「壱助さん!あんたねぇ
女の子にとっちゃあ
事によっては死のうと思うくらい
大事になるんだからさぁ‥
ちゃんと面倒見てやんなよぅ?」
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#155 [笹]
女は女の味方である。
そうは言っても
壱助の無関心さには
女じゃなくてもこう言うだろうと
伊代は思うのだ
「それでぇ‥"猫ちゃん"は
何ともなかったのかい?」
腕を組んで
まるでお説教をしてるようだ
:10/01/29 15:22 :D905i :XWctwuXA
#156 [笹]
「何とも、無かったんじゃあ‥」
『たった一週間で
貴方を知った気になってた‥』
‥どうした、もんかねぇ
:10/01/29 15:23 :D905i :XWctwuXA
#157 [笹]
「‥ないですか、ねぇ」
壱助は団子に口を付けず
そのまま皿に置いた
「連れて歩くなら、
もっとしっかりしなよぉ!!」
べしんっと一発
壱助の肩にお見舞い
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#158 [笹]
「しかし‥少々」
『‥抱いて、ください』
―‥酒でも飲んだ、か
―‥空気に飲まれた、か
それとも‥
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#159 [笹]
「飲まれちまったようで、」
―‥正気、か
あの時の目は虚ろではなかった
だとしたら、 やはり
:10/01/29 15:25 :D905i :XWctwuXA
#160 [笹]
「"酒でも飲ませて襲った"
なんて言わないだろうねぇ?」
‥否定はできません、ぜ
「まさか‥そうなのかい?」
驚くように伊代は口をはっと塞ぐ
:10/01/29 15:26 :D905i :XWctwuXA
#161 [笹]
「いえ、いえ
せめて‥人並みでないと、ね」
その言葉に
ぽかんとだらしなく口を開けた
"人並み?"と目で訴えられて
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#162 [笹]
「中の‥下では、何とも」
壱助はそう言い残し
団子をそのままにして
去っていった
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#163 [笹]
:
:
:
さて、どうしたもんか
「‥ニャァ」
珍しく思い耽って宿に戻る
入り口手前で
何故か躊躇していると
一匹の猫が足元にすり寄ってきた
:10/01/29 15:28 :D905i :XWctwuXA
#164 [笹]
"獣はあまり好かないんで、ね"と
少し冷たい視線を向けると
寂しそうにニャァと鳴いた
「‥"猫"はどうして、こうも」
その場にしゃがみこみ
喉元を撫でてやる
:10/01/29 15:29 :D905i :XWctwuXA
#165 [笹]
「‥気まぐれなのか、ねぇ」
普段は猫なんて
寄って来やしないんですが
「ミャァ‥ウ」
‥撫でてやると
可愛い声を出すもんで
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#166 [笹]
「情けない‥奴です、よ」
目を細めて微笑した
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#167 [笹]
すりすりと身を寄せて
何を、考えているんで?
人と猫は
分かり合えませんか、ね
「発情期です‥か」
猫の丸い目がパチクリする
惚けるんですかい?
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#168 [笹]
"さて‥"と腰を上げようとすると
"嫌だ"と言うように身を乗り出す
「"飼い猫"が‥妬くんでね」
大きく一撫でして立ち上がる
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#169 [笹]
「‥隠れても無駄、ですよ」
「ひぁぁああっ!!」
びくりと肩を持ち上げて
‥苦笑いする猫が一匹。
:10/01/29 15:32 :D905i :XWctwuXA
#170 [笹]
「いいいっ壱助さんっ
おかっ‥お帰りなさぁい」
「何してお出でで?」
‥どうしたもんか、ね
:10/01/29 15:33 :D905i :XWctwuXA
#171 [笹]
「‥心配で、‥壱助さんの事が」
馴れては、いるんですぜ?
しかし情けない‥男です、よ
:10/01/29 15:34 :D905i :XWctwuXA
#172 [笹]
:10/01/29 15:38 :D905i :XWctwuXA
#173 [笹]
"腹立てるより義理立てろ"
腹を立てて何になるんで?
どうにもなりや、しやせんよ
本当に、訳の分からない厄介者を
拾ってしまったもんです、ね
:10/01/29 16:48 :D905i :XWctwuXA
#174 [笹]
:
:
壱助さんが‥猫としゃべってた
有り得ない‥
あんなに動物嫌いなのに!!
熱でもあるのかなぁ
「何、か」
「い‥いえ、何も」
‥気のせいか。
:10/01/29 16:48 :D905i :XWctwuXA
#175 [笹]
「さっきから‥何か、」
ついついじっと見てしまう
意識はしてないんだけど‥
まぁ、壱助さん綺麗だし
普通は見とれるものよね
‥自問自答である。
:10/01/29 16:49 :D905i :XWctwuXA
#176 [笹]
「壱助さん‥もしかして‥」
無意識のうちに
あたしは口が開いてしまう
壱助さんにこんな事聞くなんて
虎の穴に手突っ込むようなもの
「もしかして、花街に‥」
・・・って、
:10/01/29 16:50 :D905i :XWctwuXA
#177 [笹]
「何で脱いでるんですかぁああ?!」
_
:10/01/29 16:51 :D905i :XWctwuXA
#178 [笹]
真珠みたいに白い肌
まるで歌舞伎の女形みたいに
綺麗な顔わしてるもんだから
体も華奢なのかと思ったら
案外‥と言うか
かなりしっかりしてて
搾られてるってかんじ‥。
腰の当たりがすごく色っぽくて
何て綺麗なんだろうこの人は‥
:10/01/29 16:51 :D905i :XWctwuXA
#179 [笹]
って‥
いちいち描写したくなるほど
美しかった
「ちょっ‥と
いきなり何してるんですか!!」
腰のあたりまで着物を下ろし
ぎろりと此方を睨み付けられる
:10/01/29 16:52 :D905i :XWctwuXA
#180 [笹]
「何とは‥
着替えの意味もご存知でない?」
またそうやって‥
「ご存知ですぅ!!
着替えるなら一言かけてから‥」
からかうんだから
:10/01/29 16:53 :D905i :XWctwuXA
#181 [笹]
"着替えます、よ"って
‥今更遅いですよぉ
熱くなる顔を抑えて
黙って背を向けた
するすると帯が解ける音
そんな音でさえ
壱助さんは色っぽくしてしまう
:10/01/29 16:54 :D905i :XWctwuXA
#182 [笹]
「終わりました、よ」
一呼吸置いて体の向きを返る
いちいちドキドキして
あたし馬鹿みたいだなぁ‥
おいおい壱助さん
時が止まってるじゃあ
ありませんか。
「ちゃんと腕通してくださいぃ!!」
:10/01/29 16:54 :D905i :XWctwuXA
#183 [笹]
また半裸状態
露出狂ですかあなた‥もう
「はい、はい」
くつくつと笑いながら袖を通す
着物が畳を擦る音に
壱助さんの呼吸が答える
「花街が‥どうかしやした、か」
:10/01/29 16:55 :D905i :XWctwuXA
#184 [笹]
目の前に正座して
長い睫を柔らかく揺らす
調子狂いますよ‥本当に
「壱助さん‥
いつもいつも野暮用って、
本当は、花街に
行ってるんじゃないですか?」
軽く唇を噛んで頬を膨らます
:10/01/29 16:55 :D905i :XWctwuXA
#185 [笹]
「そうだったら‥何、か」
動揺する様子もない
掴み所がない人ね
「やっぱり‥そうなんですか?」
語尾が弱くなる
聞かなきゃよかったって
これまた後悔先に立たず。
:10/01/29 16:56 :D905i :XWctwuXA
#186 [笹]
「さぁ‥ね」
妖しい笑みを浮かべた時は
あたしをからかってるのだ
「行くな、と?」
「当たり前です‥!
何か‥嫌なんですよぉ」
「ほぉう」
:10/01/29 16:57 :D905i :XWctwuXA
#187 [笹]
すると
壱助さんがぬっと身を乗り出し
じっと見つめてきたもんで
不意を付かれて倒れ込んだ
「それなら‥香夜さんが
お相手を、していただけるんで?」
:10/01/29 16:57 :D905i :XWctwuXA
#188 [笹]
急に体が重くなる
あたしを見下ろすその目が憎い
壱助さんは、ずるいよ
「‥嫌です」
「おや、この前は‥
色めいて抱けと言ったのに」
「‥あ、あれは」
自分でもよくわかりません
何て言えるはずもなく
:10/01/29 16:58 :D905i :XWctwuXA
#189 [笹]
「色んな遊女を抱いてる人に
‥抱かれたくはありません」
目を伏せて
のしかかる体を押し上げる
「こいつぁ‥手厳しい」
雪みたいな手が頬を撫でた
‥また喰らおうとするの?
:10/01/29 16:59 :D905i :XWctwuXA
#190 [笹]
「中の下では‥」
雪がするする首筋を流れ
胸元をするりと抜けた
「"目覚めない"もんで、ね」
胸にひんやりとした感覚
睨みつけるように
鋭い目であたしを突き刺す
:10/01/29 16:59 :D905i :XWctwuXA
#191 [笹]
「きゃああぁああぁあっ」
いざと言うときに
力は発揮されるようで
どんと壱助さんの体を突き飛ばし
目をむき出しにした
:10/01/29 17:00 :D905i :XWctwuXA
#192 [笹]
有り得ないっ有り得ない!!!
「壱助さんの‥
すけべぇええぇえぇ!!!!」
もう、お嫁にいけません。うぅ
:10/01/29 17:00 :D905i :XWctwuXA
#193 [笹]
「そんなに怒っていては‥
嫁に行けません、よ」
「壱助さんのせいですぅう!!!」
目一杯叫んでやった。
―‥壱助さんの馬鹿やろうっ!!
:10/01/29 17:02 :D905i :XWctwuXA
#194 [笹]
:10/01/29 17:06 :D905i :XWctwuXA
#195 [我輩は匿名である]
:10/01/29 21:42 :W53H :CL/ESoxg
#196 [我輩は匿名である]
:10/01/29 21:42 :W53H :CL/ESoxg
#197 [笹]
死にそうな所を
拾ってやったと言うのに‥
疑い深い猫、ですよ
少しは恩でも返そうと
‥思わないんですかい?
"猫は三年の恩を三日で忘れる"
‥って、ね
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#198 [笹]
:
:
:
何をするでもない
壱助さんはいつもこう。
正座してお茶を入れて啜って
少し間を置いてまた啜って‥
飲み終えたら
‥―立ち膝で窓際に座る
ぼうっと空ばかり眺めて
何が面白いのだろう。
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#199 [笹]
立ち膝で座ってる時の
少しはだけた着物から見える
白い肌が何とも‥。
あー‥羨ましさを越えて憎らしい
‥ねぇ壱助さん
あたしが居ること忘れてる?
存在消されてる?
:10/01/30 19:51 :D905i :weUwJGLs
#200 [笹]
そういえば、壱助さんは何で‥
あたしを助けてくれたの?
:10/01/30 19:52 :D905i :weUwJGLs
#201 [笹]
しかも、それから
ずっと面倒見てくれてる。
扱いは‥まぁ考えないとして
お金だってないのに‥。
―‥ただの人助け?
あたしに対する同情かしら
:10/01/30 19:52 :D905i :weUwJGLs
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