記憶を売る本屋 2
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#551 [我輩は匿名である]
「そんなに気になってたのか?ほんと小心者だな、お前」
「ほ…ほっといてよ」
飛鳥はむすっとして目を逸らす。
「……今の話…」
良介と奏子は、それぞれ複雑な気持ちで、しばらくそこに留まっていた。
:10/11/25 20:37
:N08A3
:7I8QaZgA
#552 [あんちむ]
:10/11/29 12:09
:SH05A3
:5j8KcYUA
#553 [あんちむ]
:10/11/29 12:10
:SH05A3
:5j8KcYUA
#554 [我輩は匿名である]
3学期。
「あーあ、テスト全然わかんね」
「どうせ冬休みの課題、答え丸写しして終わらせたんだろ」
この日は、冬休みの課題を踏まえた実力テストだった。
「あんな量1個1個やってられるかよ」
「まぁ、俺も半分ぐらい写したけどな」
空になった弁当箱を片付けながら、薫は笑う。
「お前もかよ。…で?今回はちゃんと1位取れそうなのか?」
直人は良介の事を思い出し、薫に聞いてみる。
すると、薫の動きが止まった。
:10/12/15 17:40
:N08A3
:e1TLLFT2
#555 [我輩は匿名である]
「……嫌な事思い出させるなよ…」
「何だ、忘れてたのか」
「…でも今回何も言ってこなかったな。あいつも忘れてるんじゃないか?
っていうか、いい加減忘れてほしい」
「無理だろ」
「月城ー!」
クラスメイトが、教室に入ってくるなり駆け寄ってきた。
「何」
「今廊下で聞いたんだけどさ、スキー実習のグループ、4組と一緒らしいぞ!」
「へぇ、良かったじゃん。嫁と一緒で」
:10/12/15 17:40
:N08A3
:e1TLLFT2
#556 [我輩は匿名である]
「嫁のストーカーも一緒だぞ」
わざわざ急いで言いに来た意味をわかっていない直人に、クラスメイトが補足する。
「うわ、めんどくせぇ」
「…終わった…俺のスキー実習…」
薫は早くもげっそりしてうなだれている。
直人とクラスメイトは、哀れみを込めた目で薫を見る。
「水無月くん!」
いつ来たのか、響子がバン!と机をたたく。
「うわ、びっくりした。いつからいたの」
「今!それよりね!」
:10/12/15 17:41
:N08A3
:e1TLLFT2
#557 [我輩は匿名である]
「聞いたよ…スキー実習が地獄になる事だろ…」
薫は壁にもたれながら響子に言う。
「違う!飛鳥ちゃんと奏子ちゃんが、とうとう1対1で話し合うって」
「え、マジで?」
「うん。さっき奏子ちゃんが来て、2人で行っちゃったのよ」
「やっとかよ。つーか、あの2人何で喧嘩してたの?」
直人は響子に聞き返す。
ここまで来て理由をわかっていない直人に、響子と薫は呆れてため息を吐いた。
:10/12/15 17:41
:N08A3
:e1TLLFT2
#558 [我輩は匿名である]
飛鳥と奏子は、階段の踊り場にいた。
「ごめん、呼び出したりして」
「…ううん、あたしも話したい事あったから」
緊張しつつ、飛鳥ははっきりと受け答えする。
「……1つ、謝らなきゃいけないんだ」
奏子は視線を落として白状する。
「この間、神社のベンチで月城と喋ってるの、……聞いちゃったんだ」
「……“私”が、自殺したって話?」
飛鳥に聞かれ、奏子は申し訳なさそうに頷く。
あれだけ知られたくないと思っていたが、なぜか怒る気にならない。
:10/12/15 22:00
:N08A3
:e1TLLFT2
#559 [我輩は匿名である]
「……いいよ、いつか話さないといけないのかなって思ってたし…」
「…そっか。…………じゃあ、1つ聞いていい?」
「…うん。何?」
「…水無月の前世の事」
覚悟はしていたが、ドキッとした。
飛鳥はしばらく黙り込む。
「…知り合いだったんだよね?」
「………うん」
飛鳥は自分を落ち着かせようと、息を吐く。
「……前世の私が、唯一好きになった人だった」
:10/12/15 22:00
:N08A3
:e1TLLFT2
#560 [我輩は匿名である]
飛鳥はそう白状した。奏子は心の中で、やっぱりな、と呟く。
「…私のせいで死んだんだ」
「どういう意味?」
「……私が、あいつが止めるのも聞かないで道路に飛び出したから…」
そういえば、水無月はトラックにはねられたって言ってたな。
奏子は話を聞きながら思い出した。
「それがショックで、耐えきれなくて、ビルの上から飛び降りたんだ。
ちょうどその下を歩いてた、響子を巻き添えにして」
奏子はそれを聞いて、少しの間黙っていた。
「全部、私の思い違いだったんだ。あいつの話を聞いていれば、あんな事にはならなかった」
:10/12/15 22:01
:N08A3
:e1TLLFT2
#561 [我輩は匿名である]
飛鳥は視線を落とす。
「……それでも、飛鳥はやっぱり水無月が好きなの?」
「……うん。隠しててごめん」
「ううん、私こそごめん。あんな言い方して。
…あと、ありがとう、話してくれて。ずっと気になってたんだ」
奏子はそう言ってにっこり笑う。
「これからは、いいライバルって事で」
「うん」
飛鳥も頷いて笑い返した。
:10/12/16 22:53
:N08A3
:Sg0X.jqw
#562 [我輩は匿名である]
HRの時間、直人は配られたスキー実習のしおりを見て顔を引きつらせる。
男女合わせて6人グループ。女子枠には飛鳥の名前がある。問題は男子枠が薫と良介。
「めんどくさい組み合わせになっちゃったねー」
他人事なのをいい事に、要が呆れたように言う。
「(なんでこうなるわけ…?)」
そう思いながら、薫に目をやると、案の定死んだように壁にもたれ掛かっている。
「でもまぁ、香月響子がいないだけマシじゃない?いたら絶対もめるよ」
「(まぁな…)」
「(………何も起きなきゃいいけど…でもまぁ……そろそろかな…)」
要は直人の中で、声を出さずに考えていた。
:10/12/16 22:54
:N08A3
:Sg0X.jqw
#563 [我輩は匿名である]
楽しみのようなそうでもないような気がしていると、あっという間に日が過ぎていった。
そして、待ちに待ったスキー実習初日。
「すげーっ!!俺飛行機乗るの初めてだ!!」
「俺もー!!」
リムジンバスに乗り、最寄りの空港に到着した直人たち。
今までに飛行機に乗ったことが無い直人と要は、そろって目を輝かせる。
「おい、何で1位なんだよ」
「お前こそ。いい加減諦めろ」
直人が空港の窓ガラスに張りついているのを尻目に、薫と良介は睨み合う。
:10/12/17 23:43
:N08A3
:RRRJrnkw
#564 [我輩は匿名である]
「飽きないねぇ、あの2人」
「うん…」
飛鳥を含めた女子3人が、呆れた目で良介達を見ている。
「次、4組8組ー!静かに搭乗しなさーい!」
引率の教師の支持に従って、直人達は搭乗を始める。
「響子、酔ったの治った?」
クラスメイト達が搭乗を始めたのを見て、グループの友人が響子に声をかける。
「うん、だいぶマシになった。行こ」
空港までのバスで車酔いをした響子は、まだ顔色が悪いまま飛行機に乗った。
:10/12/17 23:44
:N08A3
:RRRJrnkw
#565 [葵]
早く続き読みたい(`・ω・')
:10/12/21 06:36
:SH06A3
:☆☆☆
#566 [我輩は匿名である]
「あー飛行機楽しかった♪」
札幌空港に到着し、直人はすでに満足気な顔で外の雪景色を見つめる。
その隣では、薫はエチケット袋を片手にぐったりしている。
「弱っちいなぁ、やっぱり響子ちゃんには僕がふさわし」
「黙れ」
「酔ってる時ぐらい静かにしてろよ……ん?」
早く降りたそうに立ち上がった直人は、ある席に教師が何人か集まっているのを見つけた。
「何かあったのかな?」
「(みたいだな…)」
:10/12/25 10:00
:N08A3
:xWmSr4uA
#567 [我輩は匿名である]
要と言いながら見ていると、降りる番がきたらしく、薫達が立ち上がった。
少し気になったが、直人は何も言わずにそれに続いて飛行機を降りた。
空港を出ると、そこは本当に、見たこともないような雪景色。
同時に顔に寒さが突き刺さってくるが、興奮しているからか、あまり気にならない。
「おー、マジで北海道だな!早くスキーしてー」
そんな直人の隣では、酔っている薫に加えて、運動音痴の良介も暗い顔をしている。
「ずっと観光でいいのに…」
良介と同じ理由でため息を吐く飛鳥に、クラスメイトが「それスキー実習じゃないじゃん」と笑っている。
それぞれいろんな思いを抱きながら、観光地までのリムジンバスに乗り込んだ。
:10/12/25 10:01
:N08A3
:xWmSr4uA
#568 [我輩は匿名である]
観光地は小樽市周辺。
バスから降りて記念写真を撮った後は、集合時間まで自由行動だ。
「どこ行くのー?」
「とりあえず飯食おうぜ」
「月城くん食べれる?」
「酔い止め飲んだから大丈夫」
6人は地図を見ながら、どこで昼食を食べるか話し合う。
「北海道っつったらラーメンじゃね?」
「えー僕ラーメン昨日食べちゃったよ」
:10/12/25 10:01
:N08A3
:xWmSr4uA
#569 [我輩は匿名である]
「バッカじゃないの!?」
「嫌ならあんただけ違うの食べな」
「……わかったよー、ラーメンでいいよー…」
「んじゃ決定ー」
そう言って、直人達はラーメン屋に向かって歩きだした。
その後、みんなでワイワイしながらラーメンを食べた後、
小樽運河やオルゴール館等を見て回った。
集合時間が迫ってきていたため、直人達は駐車場へと引き替えしはじめる。
:10/12/25 10:01
:N08A3
:xWmSr4uA
#570 [我輩は匿名である]
「えー!」
急に、後ろを歩いていた4組の女子が声を上げた。
「What's!?びっくりするじゃないか!」
「インフルエンザ疑いが出たって!」
女子は携帯電話を見ながら言う。
時期は1月。インフルエンザ感染者が出てきてもおかしくはない。
「あーぁ。まぁ出るだろうとは思ってたけどな」
もしかして、飛行機で教師が集まっていたのは、その話だったのかもしれない。
「しかも響子だって!」
その一言に、薫と良介が驚いたように振り向く。
:10/12/25 10:02
:N08A3
:xWmSr4uA
#571 [我輩は匿名である]
「えっ!?響子ちゃんが!?オーマイガー」
「うるさいんだよ、いちいち…」
良介が女子から非難を浴びている中、薫は暗い顔で黙り込む。
いつだったか、旅行雑誌を見ながら笑っていた響子。
あそこに行きたい、ここにも行きたいと、楽しみにしていたのに…。
薫は無言のまま腕時計に目をやる。集合時間まであと5分。
「……直人」
「ん?」
:10/12/25 10:02
:N08A3
:xWmSr4uA
#572 [我輩は匿名である]
「…俺、後で追い付くから先戻ってて」
「は?えっ、ちょ…」
呼び止める間もなく、薫は駐車場とは反対方向へ走りだした。
「ちょっと、どうすんの!?もう時間ないよ!」
「でもいいじゃーん♪あれ絶対響子に何か買いに行ったよ」
「何!?」
「…まぁ、いいんじゃないの?彼らしくて」
「(いいんだけどさ…時間に間に合わないぞ?)」
「帰って来るよ、そのうち」
:10/12/25 10:03
:N08A3
:xWmSr4uA
#573 [我輩は匿名である]
「(適当だなぁ…)」
直人は思いながら、困ったように頭を掻く。
「ここにいても仕方ないし、駐車場行こうよ。怒られない言い訳考えつつさ」
「え、僕は怒られるのはごめんだぞ!勝手にどっか行った奴の事なんか知るか!」
「さっきからうるせぇなぁ!」
やたらと横槍を入れてくる良介に、直人が声を上げる。
「薫と張り合う割に、ちぃせぇ奴だな!あいつは怒られるの承知で行ったんだろうが!
成績成績って威張りやがって!本当に香月の事好きなのかよお前!」
直人が怒鳴っているのを見て、飛鳥たちもきょとんとしている。
:10/12/25 10:07
:N08A3
:xWmSr4uA
#574 [我輩は匿名である]
「…まぁ今の見たら、月城くんの方が上だよねぇー」
4組の女子たちも、首を縦に振る。
「別に怒られるのぐらい、どうって事ないし」
飛鳥も腕を組んで言う。
「仕方ねぇだろ、もう薫行っちまったし。行くぞ」
不機嫌そうに鼻息を荒くして、直人はドカドカ歩きだす。
「やるじゃん」
飛鳥が直人の隣を歩きながら笑う。
:10/12/25 10:07
:N08A3
:xWmSr4uA
#575 [我輩は匿名である]
「あたしもスッキリした」
「ったりめぇだろ!どっちにしろ怒られんだから、
さっさと行ってバス乗ってた方が温かいしよ」
「そっち…?」
直人達はぶつぶつ言いながら、駐車場へと戻った。
:10/12/25 10:07
:N08A3
:xWmSr4uA
#576 [我輩は匿名である]
「ん?1人足りなくないか?」
バスの前で点呼をとられ、直人達は目を見合う。
「あの…ちょっと月城が…」
「月城がどうした?」
「…ちょっと…」
「ちょっと?」
「…………お、お腹痛いって」
直人が誤魔化せないと思った飛鳥が、適当に嘘を吐いた。
「そ、そう!で、トイレにこもっちゃって!」
:10/12/28 22:48
:N08A3
:CS9vaOp2
#577 [我輩は匿名である]
「先に行っててって言われたんですぅー」
飛鳥に続いて、女子たちが口々に言い訳する。
「えー!?昼飯か何かあたったんじゃないのか!?」
「さ、さぁ…。まぁ、もうくると思いますよ」
「困ったなぁ…。まぁお前達は先にバス乗ってろ」
「はーい」
何とか誤魔化した直人達は、そそくさとバスに乗り込む。
「あんまり怒られなかったねー」
5人はホッと胸を撫で下ろしながら、それぞれ席に座る。
:10/12/28 22:48
:N08A3
:CS9vaOp2
#578 [りか]
いつも読んでます
思ったのですがもしかしたら
魔法のIランドなんかで書かれたら
いいとこまでいくかもしれないですよメ
:10/12/29 12:59
:SH003
:BqXyKb.Y
#579 [我輩は匿名である]
>>りかサン
コメントありがとうございます。
申し訳ありませんが、感想等は感想板の方にお願い致しますm(_ _)m
:10/12/29 13:28
:N08A3
:M/DS/ErQ
#580 [我輩は匿名である]
集合時間を3分遅れて、薫が走って帰ってきた。
担任に頭を下げる薫を、直人は窓越しに見る。
少しやりとりが合った後、薫がバスに乗ってきた。
「おかえりー」
「あぁ…ごめん、怒られなかった…?」
「大丈夫だったよ」
「そう…。なんか…いい感じに嘘ついてありがと…助かった…」
薫は言いながら、直人の隣に座る。
相当ダッシュしてきたらしく、息を吐くたびにゼイゼイいっている。
:10/12/30 17:28
:N08A3
:FW8KT5jQ
#581 [我輩は匿名である]
「大丈夫かよ?」
「あんまり…」
薫は短く答えながら、吸入式の気管支拡張剤を吸い込む。
「…で、どこに何しに行ったんだ?」
「……ガラス館?…に…」
「プレゼントでも買いに?」
:10/12/30 17:28
:N08A3
:FW8KT5jQ
#582 [我輩は匿名である]
「………まぁな……。ガラス館で…買い物したいって言ってたから……」
呼吸を整えながら、薫はちょっと恥ずかしそうに答える。
「香月、大丈夫かなぁ?」
「…響子は割と丈夫なほうだし…大丈夫だろ…」
「そうだな」
全員揃ったのを再確認して、バスはやっと発車した。
:10/12/30 17:29
:N08A3
:FW8KT5jQ
#583 [我輩は匿名である]
ホテルに着いたのは、それから約1時間後の事だった。
部屋に入るなり、直人はベッドにダイブする。
「はぁ〜フカフカ〜♪」
「やめろよ、埃立つだろ」
うっとうしそうに咳払いをしながら、薫もベッドに腰を下ろす。
3人部屋なので少し狭いが、泊まるにはなかなかいいホテルだ。
「今日の晩飯何かなぁー」
直人は寝転がってしおりを広げる。
その横で、薫はふと、さっきから良介が大人しい事に気付いた。
:10/12/30 22:19
:N08A3
:FW8KT5jQ
#584 [我輩は匿名である]
「どうしたんだ?気持ち悪いぐらい大人しいな」
不審そうに尋ねるが、良介はベッドに寝転んで、何も言わない。
「(………変な奴。まぁ元々だけど)」
「飯まで暇だな。テレビでも見るか♪」
直人は2人の空気の悪さに気付く事なく、独り言を言いながら勝手にテレビをつける。
「この時間は何もいい番組ないじゃないか」
「わかんねぇだろ?そんな事。つーか、チャンネルおかしくね?」
:10/12/30 22:20
:N08A3
:FW8KT5jQ
#585 [我輩は匿名である]
「やっぱり君バカだよね。地方が違うんだからチャンネルが変わるのは当たり前じゃないか」
「あぁ!そうか!」
良介に言われて、直人は納得して頷く。
その横で、薫は鞄からルーズリーフを取り出し、テーブルで何か書き始めた。
:10/12/30 22:20
:N08A3
:FW8KT5jQ
#586 [我輩は匿名である]
「…おっ、そろそろ飯の時間じゃね?」
1時間ほどして、直人がふと時計に目をやって言った。
「本当だな。そろそろレストランの前に集まらないとな」
ずっとルーズリーフと睨めっこしていた薫も、それを裏返して立ち上がる。
「さーて、行くか」
テレビを消して、直人もひょいっとベッドから降りる。
「……あ、僕ちょっとトイレ行ってから行くから、先に行ってて」
良介は少し苦笑いして2人に言う。
:10/12/31 10:47
:N08A3
:4teKfjfM
#587 [我輩は匿名である]
「は?待ってるからさっさと行けよ」
「待たれると焦るんだよ。すぐ行くから」
「ふぅん。じゃあ先行くぞ」
直人は何も疑わず、薫を連れて部屋を出た。
部屋に残った良介は、ちょっと間考え込む。
そして、静かにテーブルに近づき、薫のルーズリーフを拾い上げた。
1番上に『響子へ』と書かれたのを見ると、手紙のようだ。
体調を心配している事や、初めての手紙で緊張している事が書かれている。
途中、良介にはすぐに理解できない内容が出てきた。。
:10/12/31 10:47
:N08A3
:4teKfjfM
#588 [我輩は匿名である]
『そういえば、まだカレー作ってませんね。
俺が「飯作る」って言った時の今日子の嬉しそうな顔は、今でもはっきり覚えてます。
思えば、結婚してからあんなに喜ばせた事無かったかも知れませんね。
俺は仕事ばっかりで、家に帰っても今日子に何もしてあげられなかったし…。
だから(って事もないけど)、せめて霜月優也よりはいい男になろうと思います。
……なんか、何を書いてるのかわからなくなってきた。
とりあえず、ゆっくり休んで早く元気になって下さい。 月城薫』
:10/12/31 10:48
:N08A3
:4teKfjfM
#589 [我輩は匿名である]
「(これ…前に言ってた都市伝説の話か…?)」
良介は最後まで目を通し、少しの間立ちすくむ。
そして、またルーズリーフをテーブルに置いて、さっさと部屋を出た。
:10/12/31 10:48
:N08A3
:4teKfjfM
#590 [我輩は匿名である]
夕飯を終えて、薫はある部屋の前に立っていた。
インフルエンザにかかった生徒が隔離されている部屋だ。
ノックをすると、マスクをした養護教諭が出て来た。
「はーい。あら?どうしたの?体調不良?」
「いえ。…4組の香月響子って、いますか?」
「香月さん?いるわよ。今寝てるけど」
「…そうですか。…しんどそうですか?」
:10/12/31 10:50
:N08A3
:4teKfjfM
#591 [我輩は匿名である]
「ううん。予防接種してたらしいから、熱が出てるだけでピンピンしてるわよ。
暇だ暇だってずーっと嘆いてるわ」
養護教諭は笑って話す。
響子らしいな、と思いつつ、薫もホッとしたように笑い返す。
「香月さんに何か用?」
「あぁ、はい。これ…渡してもらえますか?」
薫は今日1人で買いに行ったプレゼントを養護教諭に見せる。
中にはあの手紙も一緒に入っている。
「あら、プレゼント?あら〜♪いいよ、渡しといてあげる。名前は?」
:10/12/31 10:50
:N08A3
:4teKfjfM
#592 [我輩は匿名である]
「8組の月城です」
「月城くん、ね。わかりました。じゃあ起きたら渡しとくわね」
「お願いします」
そう言って、ぺこっと頭を下げる。
「(…何で女って人の恋愛事情で嬉しそうにするんだ…?)」
女が考えることはよくわからないな、と首を傾げながら、薫はその場を後にした。
:10/12/31 10:50
:N08A3
:4teKfjfM
#593 [我輩は匿名である]
その夜。
「……月城、寝た?」
「寝た」
良介に聞かれ、薫は布団の中で寝返りをうちながら答える。
直人はすでに、1人で寝息をたてている。
「……そろそろ教えてくれないか?前言ってた都市伝説の事」
薫は背中を向けたまま、しばらく黙り込む。
「………お前、俺が書いてた手紙読んだだろ」
「えっ!?」
良介は動揺し、声を裏返して聞き返す。
:10/12/31 16:14
:N08A3
:4teKfjfM
#594 [我輩は匿名である]
「な、何の事だ!?」
「あの紙、部屋を出る時に裏返して置いてたのに、帰ってきたら表向いてたし。
あのトイレに行くタイミングも変だったしな」
なんという勘の良さ。良介は白状するしかなかった。
「……悪かったよ」
「悪いにも程があるだろ。これ響子に言ったら確実に嫌われるぞ、お前」
「…………その方がいいかもな」
やけに諦めが良い良介に、薫はちらっと良介に目をやる。
:10/12/31 16:15
:N08A3
:4teKfjfM
#595 [我輩は匿名である]
「……やっぱり無理だと思ったんだ、今日のお前見てて。
僕にはあそこまで出来なかったし、そんな勇気すら無かった。
あんな恥ずかしい手紙も書けないし」
「負け惜しみか?カッコ悪い」
褒めてられているのか貶されているのかわからず、薫は良介に言い返す。
「……あーぁ、負けたよ、僕の負けだ」
良介は吹っ切れたように、仰向けになってため息を吐く。
「あんな手紙読まされたら、割って入る間なんか無いって誰でも思うよな!」
「お前が勝手に読んだだけだろ。俺のせいみたいに言うなよ」
:10/12/31 16:15
:N08A3
:4teKfjfM
#596 [我輩は匿名である]
薫は呆れたように顔を引きつらせる。
「どうせなら今から教えてやろうか?俺と今日子の出会いから新婚生活まで全部」
「聞きたくないね!そんなノロケ話なんか!」
「知りたかったんだろ?俺たちの前世の事」
「いいって言ってるだろ!今さらそんな話聞いてどうしろって言うんだよ!だから嫌いなんだよお前!」
「俺だって嫌いだよ、お前みたいにめんどくさい奴」
2人はいつものように言い合って、しばらく黙る。
:10/12/31 16:16
:N08A3
:4teKfjfM
#597 [我輩は匿名である]
「………おい月城」
「…まだ何かあんのかよ」
いい加減眠そうな顔で、薫は良介に背中を向けたまま聞き返す。
「響子ちゃん泣かせたら、許さないからな」
良介は真面目に薫に言った。
「………お前なんかに言われなくてもわかってるよ」
2人はそれっきり口を開く事はなく、静かに眠りについた。
:10/12/31 16:17
:N08A3
:4teKfjfM
#598 [我輩は匿名である]
2日目。
この日はスキーの予定だが、あいにく外は吹雪。午前中は各自部屋で過ごす事になった。
「暇だなー」
「だったら僕とBattleでもしようじゃないか!」
退屈そうに寝転んでいた直人と薫に、良介が威勢よく声を上げる。
「またかよ…。今度は何だ」
薫が良介に目をやると、彼の手には携帯ゲーム機。
「これぐらい持ってるだろ?」
「上等だ!かかってきやがれ!」
あくまでも上から目線の良介に、直人も薫も言い返す。
:10/12/31 22:26
:N08A3
:4teKfjfM
#599 [我輩は匿名である]
が。
「………無い…」
キャリーバッグの中に手を突っ込んだまま、直人は茫然とする。
「そういえば家のベッドの上にあったよ、あれ」
要がのんきに直人に言う。
「何で家出る前に教えてくんねーんだよ!」
「だって、持ってきていいなんて思わないじゃないか」
「見つからなかったらいいんだよ!」
:10/12/31 22:27
:N08A3
:4teKfjfM
#600 [我輩は匿名である]
「……誰と喋ってるんだ?あいつ」
「…ほっといてやって」
気味が悪そうに直人を見ている良介に、薫はため息を吐く。
「薫…」
直人は泣きそうな顔で振り向く。
「何だよ」
「DS忘れた…」
「知るかよ…」
そんな顔をされても、どうしようもない。薫は苦笑いして答える。
:10/12/31 22:27
:N08A3
:4teKfjfM
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