心霊夜話
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#101 [怪男]
朝の日差しが照らされた先に安坂家はある―
「ほら起きて!勇紀!」
来年大学受験を控えている長男・勇紀が母・渓子の大声によって起こされた。
勇紀はいつも起こされない限り永遠に眠っているので、そんな勇紀に渓子はいつも手をやいている。
「おはよ、もうみんな起きてるよ。早くご飯食べちゃって!」
無理矢理起こされた勇紀は寝ぼけ眼で寝癖の髪を掻きながら階段を下り洗面所へ向かう。
:11/12/01 12:49
:W62P
:☆☆☆
#102 [怪男]
長男・勇紀編
:11/12/01 12:51
:W62P
:☆☆☆
#103 [怪男]
眠たい目を水で荒い流しスッキリした勇紀はすぐご飯へ。
食卓にはいつもと同じような平凡なおかずが並ぶ。
白いご飯、わかめと豆腐の味噌汁、目玉焼き。
「お、勇紀、今日もおそようだな」
勇紀が椅子に座るなり馬鹿にしたように味噌汁の碗を片手に言う、向かい側に座る父・幸宏。
:11/12/01 13:04
:W62P
:☆☆☆
#104 [怪男]
「相変わらずだよね〜」
その父の隣でオレンジジュースが入ったグラスを片手にクスクスと笑うのは、勇紀の姉である長女・美緒。
「ほっといてよ」
と、こんな平和な日常生活を送っている安坂家。
そんな平和な日常という塊に、少しずつヒビが入っていく事になるなど誰が予想しているだろう―
:11/12/01 13:13
:W62P
:☆☆☆
#105 [怪男]
午前7時45分…
「じゃあ行ってきます」
まず一番に家を出ていくのはサラリーマンをしている父・幸宏。
午前8時10分…
「行ってきます」
次に勇紀。
勇紀の通っている高校は歩いて数分の所にあるので、遅めに出る。
:11/12/01 13:22
:W62P
:☆☆☆
#106 [怪男]
午前8時20分…
「夏美…今日もなの?」
ため息混じりでそう言う妻・渓子の視線の先にはソファーでテレビを見ている高校1年生の次女・夏美の姿。
「っせえな…人の勝手だろ」
まるで男のような言葉遣いで反発する次女にも妻・渓子は手をやく。
「もう学校5日も休んでるんだよ? このままだと留年するよ!」
「あーうぜ、余計なお世話。それよりそのダミ声なんとかなんないの?朝っぱらから耳障りなんだけど」
「…………」
ああ言えばこう言う口減らずな所は一体誰に似たんだか、といつも思う妻・渓子である。
:11/12/01 13:34
:W62P
:☆☆☆
#107 [怪男]
「じゃあ今日の夜はすき焼きにしようと思うんだけど、暇なら材料買いについてきてくれる?」
「…は、めんどくせえし。てかなんもない日になんですき焼きなの?」
「夏美すき焼き大好物でしょ?」
「答えになってねーし。もういいや、学校遅刻していく」
次女・夏美はソファーから立ち上がって自分の部屋へと向かった。
「まったく…」
そんな次女の後ろ姿を見ながら再び大きなため息をつく母・渓子。
:11/12/01 15:43
:W62P
:☆☆☆
#108 [みゆ]
あげます(^O^)
:11/12/09 12:56
:841SH
:☆☆☆
#109 [我輩は匿名である]
:11/12/11 13:49
:U1
:☆☆☆
#110 [匿名]
:11/12/11 15:18
:SH003
:☆☆☆
#111 [マヨ]
同じ名前だからなんか楽しいです♪
気になる( ̄∀ ̄)イ
頑張って下さい(^^)
:11/12/17 00:51
:W61T
:☆☆☆
#112 [怪男]
皆さんありがとうございます。更新します。
:11/12/17 12:27
:W62P
:☆☆☆
#113 [怪男]
長男・勇紀の学校―
朝のホームルームが終わり
一限目の授業が始まるまでの数分間
教室内は雑談タイムである。
勇紀は前の席の男友達と受験についての話をしていた。
「お前大学行くんだろ?」
羨ましそうな顔で勇紀に尋ねる男友達。
「まあね。たっちゃんは家の仕事手伝うんでしょ?」
「そうなんだよ。親父に、高い金払ってまで大学通う必要なんかないとか言われちゃってさぁ」
「それは…むちゃくちゃだね」
苦笑いで言う勇紀。
:11/12/17 12:40
:W62P
:☆☆☆
#114 [怪男]
「親父の奴、自分も大学行ってなかったからあんな事言えるんだよな」
「頑固親父って感じだね」
「そう、それよ!」
あはは、と笑い合う二人。
『キーンコーンカーンコーン…』
そんな一時の雑談タイムは一限目が始まるチャイムによって終了する。
「一時間目からいきなり数学とか鬱だわな」
男友達はめんどくさそうな顔で言って前に向き直した。
:11/12/17 12:49
:W62P
:☆☆☆
#115 [怪男]
『数学』
男友達は数学が鬱だと軽く言ったが
勇紀にとっては重くのしかかるほどに苦手で嫌いな教科である。
数字の集まりを見るだけでも頭が混乱し滅茶苦茶になる。
吐き気にも襲われる事があり、数学の時間が終わると一人こっそりトイレに行き嘔吐する事も多くあった。
数字アレルギーとでも言うべきなのだろうか。
おかげで数学が終わった後はしばらくの間極度のストレスにさらされる。
:11/12/17 13:12
:W62P
:☆☆☆
#116 [怪男]
そんな勇紀のストレス発散法は
人や物に当たる事でも、カラオケで熱唱する事でもない…
知り合いから勧められた薬…いわゆる麻薬だった。
あれは一カ月前の事。
数学の授業が終わるといつものように素早くトイレに駆け込み、個室で嘔吐した。
はあはあ、と息をしているとトイレに誰かが入ってくる足音。
口を押さえて黙っていると再び吐き気が襲い
『ガハッ!』
と、なんとも言えない声と共に便器の中に汚物を出してしまった。
:11/12/17 13:25
:W62P
:☆☆☆
#117 [怪男]
「(マズい…聞かれた!)」
そう思っていると突如、勇紀が入っている個室がノックされ…
「あのぉ〜大丈夫っすか?」
と、チャラ男っぽい声の男がドア越しに聞いてきた。
勇紀が黙っていると、やがて男はとんでもない行動に出る。
ジャンプをしドアの上に両手をかけると、その間から個室の中を覗いてきたのだ。
:11/12/17 13:38
:W62P
:☆☆☆
#118 [怪男]
勇紀がその行動に気がついて反射的に上を見上げると
そこに髪を金色に近い感じの色に染めた、まさにチャラ男というべき人物が勇紀を凝視していた。
バッチリ目が合ってしまい、数秒間見つめ合った後…チャラ男が最初に口を開いた。
「具合悪いの?」
一見、心配そうな言葉に聞こえるが彼の目は笑っていた。
心配してるように見せて、どこか面白がっているような…。
:11/12/17 13:50
:W62P
:☆☆☆
#119 [怪男]
しばらく気まずい雰囲気が続いた後
勇紀は苦笑いして言った。
「あ…うん、大丈夫」
するとチャラ男は少しニヤニヤさせた顔を引っ込めて床に下りる。
水を流してドアを開け、男が見ている中…蛇口で手を洗い、さっさとトイレから出ようとしたその時…
「ちょっと待って!」
後ろでチャラ男が勇紀の腕を掴んで言った。
:11/12/18 15:27
:W62P
:☆☆☆
#120 [怪男]
勇紀は驚いたように男の方を振り返る。
すると彼は歯を出してニカっと笑うと、いきなり勇紀の肩に手をやってきた。
「な、なに…?」
どのクラスの男だろうか、やけに馴れ馴れしい。
チャラ男の行動にただオドオドしていると、今度は勇紀の耳元でこう囁いてきた。
「よく吐くの?」
小さく笑いながらそう言ってくる男に頭にきた勇紀は、肩に置かれた手を払いのける。
:11/12/18 15:40
:W62P
:☆☆☆
#121 [怪男]
「なんだよ!ただ聞いただけじゃねーかよ!オイ!」
なぜかチャラ男は逆ギレしてきた。
気があまり強くない勇紀は、チャラ男の突然の大声に、思わず腰が抜けたように床にへたり込む。
すると彼は怒り顔からすぐ普通の表情に戻り、へたり込む勇紀の前にしゃがんで、さっきと同じく歯を出してニカっと笑いながら言った。
「悪い、驚いちゃった?」
勇紀は、怒った所ではなく表情や態度がすぐに変わる彼に少し恐怖を覚えた。
:11/12/18 15:56
:W62P
:☆☆☆
#122 [怪男]
「立てる?」
「だ、大丈夫」
勇紀がゆっくり立ち上がると、チャラ男は制服のポケットに手を入れ、その中から取り出した何かをグーで握りしめたまま勇紀の方に突き出して言った。
「お詫びにこれやるよ。手ぇ出して」
言われた通り手を差し出す勇紀。
チャラ男のグーの手から勇紀の手の平へ何かが落とされる。
恐る恐る手の平に目をやると、そこには小さなカプセルが三つあり、その中には白い粉が詰まっていた。
:11/12/19 11:35
:W62P
:☆☆☆
#123 [怪男]
「これなに? 風邪薬?」
「そ…そうだよ。さっき吐いてたじゃん?だからやっぱ具合悪いのかなぁと思ってさ」
一瞬だけ口ごもったのが引っかかった 勇紀だが、その時はまだこのカプセルに入った白い粉の正体が覚醒剤だとは知らず…
「ありがとう」
と、そのカプセルをありがたく貰ってしまった。
:11/12/19 11:53
:W62P
:☆☆☆
#124 [怪男]
その日はこのカプセルを飲む事はなく、ずっと制服のポケットに入れたまま、翌々日を迎える。
一時限目、二時限目と授業が続き昼食の時、手を洗ってからハンカチを取り出すのにポケットに手を突っ込むと、一昨日チャラ男から貰ったカプセルが入っているのに気がついた。
「(五時限目は数学だし…飲んでおくか)」
そう思い、ズボンのポケットから財布を出して一階にある自動販売機へと向かった。
:11/12/19 12:24
:W62P
:☆☆☆
#125 [怪男]
自動販売機でペットボトルの水を買うと、その場でカプセル三つを口に入れ、最後に水を含む。
一瞬だけ苦い味がしたのが気になったものの、薬の味はだいたいこんなもんだろうと思い教室に戻った。
身体に異変が起きたのは、次の授業から20分ほど経過した時だった。
さっきまで何度も欠伸をするくらい眠かったはずが突然目が冴えてきて、身体が熱くなってきたのだ。
それも制服の上着を脱ぎ捨てたくなるくらいに。
「(なんだろ…熱い…)」
身体が熱くなるにつれて頭がボーっとし、顔も真っ赤になり、鼻息も荒くなる。
勇紀は、まるで赤いものを見て興奮している牛のような表情になっていた。
:11/12/23 00:47
:W62P
:☆☆☆
#126 [怪男]
そんな勇紀の異変に最初に気づいたのは、授業の担当教師である。
「おい安坂。どした?」
教師が大きめの声で言うと、生徒らの視線が一斉に勇紀に向けられた。
「え〜」
勇紀はボーっとした顔で力ない返事をすると、教師は首をかしげながら勇紀の元に近づく。
「安坂?具合でも悪いのか?」
「え〜っと…」
勇紀は再び力ない返事をし、教師の方を見上げる。
すると教師は勇紀から視線を外し、一人の生徒の方に向けて
「岩井!すまないが安坂を保健室へ頼む」
と、焦りの表情を見せながら言った。
:11/12/23 01:04
:W62P
:☆☆☆
#127 [怪男]
教師から指名を受けた岩井という男子生徒は、すぐに立ち上がって勇紀の元へ。
そして勇紀の真っ赤になった顔を見るなり、彼も焦りと驚きの表情を見せる。
「安坂…顔赤いよ。大丈夫?」
そう言いながら岩井は座る勇紀の肩に手をやってゆっくりと立たせた。
「歩ける?」
勇紀は歩く度にふらふらしていたが、そこは岩井がしっかり勇紀の身体を両手で支える。
保健室に着いて背を向けていた女の先生が振り返り勇紀を見ると、彼女もその真っ赤な顔に相当驚いていた。
:11/12/23 01:24
:W62P
:☆☆☆
#128 [怪男]
「熱は…あるわね」
勇紀の真っ赤なおでこを触り当然のごとく言うと、勇紀は…
「え〜。熱はないですよ〜」
と、楽しげな表情で答えた。
「こんな時にふざけないの!
とにかく…しばらくベッドで休んでなさい。岩井くんも授業に戻っていいわよ、ありがとう」
そう言われた岩井は軽く礼をすると、保健室を後にした。
:11/12/23 01:39
:W62P
:☆☆☆
#129 [零]
凄く気になります!
更新まってます!
:11/12/31 12:33
:P06C
:☆☆☆
#130 [怪男]
:12/01/02 12:01
:W62P
:☆☆☆
#131 [怪男]
「じゃあ安坂君、ベッドに横になってしばらく寝てなさい」
「はぁい」
身体をふらふらとさせながらベッドに向かい、靴を脱いでゴロンとベッドの上に仰向けになる。
目をつむるが興奮して目が冴えて、全く眠れず欠伸すらも出ない。
「先生〜眠れません〜」
まるでお酒でも飲んで酔っているかのような口調で、椅子に座る先生の方に顔だけを向けて言う。
先生は勇紀に顔を向けず机の上で紙にペンを走らせながら
「寝てなさいとは言ったけど、無理して寝る事はないわ。まずは熱を下げないとね」
と、勇紀とは逆に冷静な口調で返す。
:12/01/02 12:04
:W62P
:☆☆☆
#132 [怪男]
「だから、別に熱はないって言ってるのになぁ」
独り言のようにブツブツ言いながら顔を天井に向ける。
10分ほどが経過した時、保健室のドアが開いて男子生徒の声がした。
「先生、頭痛い」
「またなの?」
会話する先生と生徒の方に勇紀が何気なく顔を向けた時、その男子生徒と勇紀の目がバッチリと合った。
:12/01/02 12:06
:W62P
:☆☆☆
#133 [怪男]
その男子生徒は勇紀見るなり「おっ!」と声をあげて指をさした。
「あら、安坂くんのお友達?」
先生が二人の顔を交互に見ながら尋ねる。
「安坂っつーのか。まぁ友達っつーか…知り合い?みたいな」
「……?」
勇紀はしばらく顔に“?”マークを浮かべながら男子生徒の顔をじっと見つめる。
「つか、お前顔赤くね?風邪でもひいたの?」
彼のやけに馴れ馴れしい態度…勇紀は段々と彼が誰なのかを思い出していった。
「あ〜!!」
思い出したその時、ベッドに横になったまま大声をあげて彼に指をさし返す。
:12/01/02 12:08
:W62P
:☆☆☆
#134 [怪男]
「いきなりどうしたの安坂くん!」
勇紀の大声に思わず耳を塞ぐ先生。
彼の金色に近い髪…まさにあの時トイレで会ったチャラ男だった。
チャラ男は勇紀のそばまで来ると、耳元で小声で言った。
「お前もしかして…アレ飲んだ?」
「へ…?アレって?」
何の事だからわからず難しい顔をして黙っていると、チャラ男は更に小声で続ける。
「前にトイレであげたやつだよ。カプセルカプセル」
「……………………あ!」
思い出した。
:12/01/02 12:18
:W62P
:☆☆☆
#135 [怪男]
「二人共何コソコソやってるの?
赤木くん…安坂くんは熱があるんだからそっとしておきなさい」
赤木というそのチャラ男の後ろに先生が立って言う。
「あ、うぃっす」
「安坂くん、カーテン閉めるわよ。何かあったら呼んでちょうだいね」
最後に勇紀の目を見て言い、カーテンをシャッと閉める。
:12/01/02 12:45
:W62P
:☆☆☆
#136 [怪男]
すると赤木はカーテンを少し捲って勇紀の方に顔だけを覗かせて言った。
「安坂、今日学校終わったら校門の前に来て」
そう早口で言うと顔を引っ込めて先生の方に戻っていった。
それからしばらくして授業の終わるチャイムが鳴り、廊下が慌ただしくなる。
「具合はどう?安坂くん」
そう言いながら先生がカーテンをシャッと開ける。
すぐに勇紀の顔を見て
「まだちょっと顔赤いわね。一応熱計ってみようか」
と言うと白衣の胸ポケットから体温計を取り出して勇紀に渡す。
:12/01/02 12:57
:W62P
:☆☆☆
#137 [怪男]
「じゃあ私ちょっと職員室に行ってくるから…熱計り終えたら体温をここに記入してね。まだ身体が重いようならまだここで休んでてもいいし」
そう言って先生は紙とボールペンも勇紀に手渡す。
「ありがとうございます…」
身体はまだ熱く頭はボーっとするものの、興奮は収まりかけていた。
先生が保健室を出て室内がシーンと静まり返る中、勇紀は体温計を脇に挟んで電子音が鳴るのを天井を見つめながら黙って待つ。
:12/01/02 13:23
:W62P
:☆☆☆
#138 [怪男]
ピピピピピ―
三分ほどして電子音が鳴り体温計を脇から外して見る。
「37.6度…」
ポツリと呟きベッドから起き上がると、紙に体温を記入した。
―その時である。
ガチャッと扉が開く音がした。
先生かな?と思いカーテンを開けて見ると、そこにいたのは先生ではなく、あのチャラ男こと赤木だった。
:12/01/04 12:13
:W62P
:☆☆☆
#139 [怪男]
「よっ!安坂!」
相変わらず馴れ馴れしい態度でニコニコしながら勇紀に近づいてくる。
勇紀はすぐに尋ねた。
「あの薬何だったの?」
赤木は勇紀にそう聞かれるとしばらく黙ったが、やがて口を開いたと思うと…
「ところで…アレ飲んでどうだった?」
と、逆に質問してきたのだ。
:12/01/04 12:15
:W62P
:☆☆☆
#140 [怪男]
「ど、どうって……」
「なんつーかさ、雲の上にいるような感じで気持ちよくなかった?」
「え…なんかよく覚えてないけど、確かに…」
勇紀がそう言うと赤木は小声で答えた。
「あれ、覚醒剤だよ」
「……!!」
勇紀はその衝撃的な事実を聞いて、一瞬耳を疑い言葉も失う。
:12/01/04 12:16
:W62P
:☆☆☆
#141 [怪男]
「ま、まさかぁ」
こんなチャラチャラした男のいう事だ、どうせ冗談だろうと苦笑いしながら軽くあしらう勇紀。
すると赤木はニコニコ顔から真顔に変え一言…
「マジだよ」
そんな彼の表情を見た勇紀の苦笑いがピタリ止んだ。
「…本当…に?」
「マジ。知り合いに売買屋を紹介してもらってさ」
「…………」
勇紀の顔が次第に青ざめていく。
:12/01/04 12:18
:W62P
:☆☆☆
#142 [怪男]
「よかったらお前も買ってみなよ。売買屋紹介してやるから」
「い、いや俺はそんなの…」
「気持ちよかったんだろ?飲んだら嫌な事も忘れられるんだぜ?」
「嫌な事…?」
「そっ。勉強とかでストレス溜まる時あんじゃん?そういう時に便利なんだよ」
「…………」
勇紀は少し考え込んでから、赤木の顔を見て言った。
「く、詳しく教えて!」
―これがきっかけだった。
覚醒剤が勉強のストレスに効くと赤木に言われ心が揺らぎ結局、麻薬の道へと入り込む事になった勇紀。
:12/01/04 12:20
:W62P
:☆☆☆
#143 [怪男]
―その数日後の朝
勇紀は学校へ向かう前に、赤木に紹介された麻薬の売買屋と会うことになった。
もちろん家族には秘密にしたまま…。
その日、勇紀は『コンビニで文房具を買っていく』という口実を作りいつもより早く家を出た。
家から少し離れた人通りの少ない路地裏で売買屋が現れるのを緊張しながら待つ。
しばらくして、背後から突然声をかけられた。
「おい」
低い声がして後ろを振り向くと、そこには年齢が40歳くらいの顔は髭面、小太り体型で帽子を目深に被ったスーツ姿の男性が立っていた。
:12/01/04 12:23
:W62P
:☆☆☆
#144 [怪男]
「あ…」
そんな男性を前にして表情が強ばる。
「赤木の?」
少しの沈黙の後、男性がポツリと尋ねると勇紀は小さく首を縦に振って頷いた。
「買うの初めて?」
「え……あ、はい」
「だったらタダでやるよ」
男性は無表情でそう言い終えると、サラリーマン誰もが持つ黒い鞄を開けてゴソゴソと中に手をやる。
「じゃあこれ」
中から取り出して手渡されたのは、白い粉が入った小さな透明の袋だった。
:12/01/04 12:26
:W62P
:☆☆☆
#145 [怪男]
手の中の袋を珍しそうに見つめていると
「さっさと鞄にしまえ」
と威圧的な声で男性に言われ、慌ててすぐ鞄にしまう。
「俺から買ったって事は秘密だからな。覚えとけよ」
「は…はい」
こうして売買は五分足らずで終わり、男性の去っていく姿を最後まで見送った後、勇紀も歩き出した。
:12/01/04 12:29
:W62P
:☆☆☆
#146 [怪男]
あの時赤木から貰ったカプセルの中身が覚醒剤だとわかった今、薬は学校内では飲まなくなり、ほとんどは数学の授業がある日の放課後、公園の公衆トイレなどでペットボトルの水に混ぜて飲むようになった。
飲んだ後の、何もかも忘れられるこの時間が勇紀には病みつきになり、やがて中毒になっていく…。
そして約一カ月後の今に至る―
:12/01/04 12:44
:W62P
:☆☆☆
#147 [怪男]
数学の授業が終わり、その日の放課後―
勇紀はそそくさと学校を出てある場所へと向かった。
一カ月前、麻薬の売買屋と初めて会ったあの路地裏である。
薬が無くなったので、再び買う為だ。
「あ、こっちです!」
向こうからやって来る背の高い30代前半くらいの男性に向かって手を振る勇紀。
あの小太りの男性は仕事中との事だったので、彼の知り合いだという別の人が来た。
あれから、この知り合いの人とは何度か会っているので勇紀はもう慣れていた。
:12/01/04 12:59
:W62P
:☆☆☆
#148 [怪男]
「四つで5000円でどう?」
「えぇ?もうちょっとまけてくださいよ」
「仕方ねぇな…じゃあ半額の2500円でいいよ」
「ありがとうございます!」
そんな手慣れたやりとりを続け、お互い貰うものを貰い、彼が去るのを見送くってから勇紀も帰ろうと後ろを振り向いた時…
そこには、買い物袋を両手に持った母・渓子が唖然とした表情で立っていた。
「母さん…」
母の顔を見た勇紀の手から、白い粉が入った四つの透明の袋がするりと抜けて…地面に落ちた―
:12/01/04 13:13
:W62P
:☆☆☆
#149 [怪男]
母・渓子は勇紀の足元に落ちた袋を見てから、再び顔に視線を戻す。
そして呆然と立ち尽くしている勇紀に近づき眉をしかめて
「勇紀…どういう事なの?」
と、買い物袋を持った両手を小さく震わせながら尋ねた。
「……ご、ごめん…なさい…」
勇紀には、ただ謝る事しかできなかった。
当然言い訳はできず、その場にへたり込んで何度も何度も…。
何十回目くらい『ごめんなさい』と言った所で母・渓子は片手の買い物袋を下ろして勇紀の頭にそっと手をやった。
:12/01/05 12:52
:W62P
:☆☆☆
#150 [怪男]
そして一言…
「帰ろう。今日はすき焼きだよ」
そんな母の言葉に、勇紀は俯いていた顔を上げ、その涙目で母を見て
「帰ったら…全部…話すから…」
と鼻水をズズっとすすりながら言い、立ち上がる。
「それ…お母さんが預かっとく」
そう言って母・渓子は地面に落ちている四つの袋をかき集めてポケットにそっとしまうと、勇紀の方を見て笑顔で言った。
「お父さん達には言わないからね。
…それよりこの袋一つ持ってくれる?もう重くて重くて!」
「う、うん…」
二人はそれぞれ買い物袋を一つずつ持ち、その場を後にした。
:12/01/05 12:56
:W62P
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#151 [怪男]
帰り道、母・渓子は勇紀の一歩前を歩く。
会話もなく気まずい雰囲気の中、五分もしない内に自宅へと到着。
家のドアを開け玄関で母・渓子が大きな声で『ただいま』と言うと、廊下の奥からお洒落な服装の長女・美緒がやってくる。
「お母さん、勇紀、おかえり」
「あら、これからアルバイト?」
「うん。だから夜ご飯作る手伝いできないの。ごめんね」
「それはいいのよ、夏美がいるし。それより久しぶりのすき焼きを一緒に食べれないのが残念だわ」
「ほんとごめん。じゃあ私行くね」
長女・美緒は明るくそう言うと、靴を履いて勇紀達とすれ違うように外へと出ていった。
:12/01/05 12:58
:W62P
:☆☆☆
#152 [怪男]
リビングへ行くと、制服姿の次女・夏美がソファに座り携帯電話をいじっていた。
母・渓子はそんな夏美を見るなり
「夏美、すき焼きの準備するから野菜切るの手伝って」
と、少し疲れた声で言う。
「…………」
だが夏美は聞こえていないフリをしているのか、携帯電話の画面をじっとにらみつけている。
すると母・渓子は勇紀の方を見て「あとはよろしく」と言わんばかりの表情をした。
:12/01/05 13:01
:W62P
:☆☆☆
#153 [怪男]
勇紀は一瞬困惑しながらも、小さく頷いてから夏美の元へと向かい声をかける。
「えっと、夏美…母さんの手伝いしてやりなよ」
「…………」
だが夏美はまだ聞こえないフリを続ける。
「夏美…!母さんの手伝い……」
勇紀が少し強めにここまで言うと、夏美はソファからいきなり立ち上がり、舌打ちをして携帯電話を閉じて
「るっせーな。やりゃいんだろ」
と勇紀をにらみつけながら言うと、大きく足音をたてながら母・渓子のいるキッチンへと歩いていった。
:12/01/05 13:03
:W62P
:☆☆☆
#154 [怪男]
勇紀は一息ついてから夏美の座っていたソファに座り、テレビの電源をつける為に机の上にあるリモコンに手を伸ばした時、ふとリモコンのそばに置かれた携帯電話が目に入った。
キラキラしたストラップがついた白い携帯電話。
「あれ、これって…」
その携帯電話を持って立ち上がり、キッチンにいる母・渓子の所へいく。
「母さん…これって姉ちゃんの携帯…だよね?」
そう言いながら携帯電話を見せると母・渓子は、それをまじまじと見つめて
「ああ、美緒のだね。忘れていったのかねぇ」
と、微笑みながら言った。
:12/01/05 13:05
:W62P
:☆☆☆
#155 [怪男]
「じゃあ俺ちょっと届けてくるね。まだ近くにいると思うし」
「うん。気をつけなさいよ」
長女・美緒の携帯電話を制服のポケットにそっとしまい、勇紀は家を出た。
美緒のアルバイト先は勇紀も知っているので、通勤中に見つからなかった場合には職場に直接届けようと思い、勇紀は走る。
しばらくして、駅前の交差点に出た。
「(いない…バイト先に届けよう…)」
結構走った為、勇紀は息切れ寸前。
―そんな時だった
信号待ちをしている人達の中に長女・美緒と思われる人物の後ろ姿が目に入った。
:12/01/05 13:08
:W62P
:☆☆☆
#156 [怪男]
「姉ちゃん…」
その美緒と思われる人物の方にゆっくり歩いていく勇紀。
やがて信号が青になり人が一斉に渡り始めたので、一瞬姿を見失いそうになったものの、なんとか再び姿を捉える事ができ、その後を追った。
そして美緒がアルバイトをしているコンビニが目の前にきたとき美緒は、なんとそのコンビニの前を素通りしていったのだ。
「(あれ…?姉ちゃんどこ行くの?)」
美緒の後ろを歩く勇紀が、その後ろ姿とコンビニを交互に見ながら首をかしげる。
あの姿は姉に間違いないはないはずだと確信しながらも勇紀は、その姉の美緒がどこへ向かうのか気になり後をつけた。
:12/01/06 02:15
:W62P
:☆☆☆
#157 [怪男]
10分ほど歩いた所で、美緒はなにやら怪しげな路地へと入っていったので勇紀もこっそり後を追う。
路地に入って周りを見てみると「HOTEL」と書かれた建物がいくつかあり、勇紀はそんな何とも言えない雰囲気に思わず息をのむ。
そして美緒はある建物の前で足を止めると、持っていたバッグを開けて何かを探し始める。
勇紀は気づかれないように建物の影から美緒の様子を伺う。
すると、探しているものがなかったのか美緒は
「え…なんで?」
と独り言のように何度も繰り返し言いながらバッグの中を漁り続ける。
だがやはりなかったらしく、美緒はひどく慌てふためいていた。
そんな姉の動揺した表情を、勇紀は初めて見る事になる。
:12/01/06 02:18
:W62P
:☆☆☆
#158 [怪男]
それと同時に美緒が何を探しているのかがわかった。
それは「携帯電話」だろうと思い、勇紀はポケットに入れていた美緒の携帯電話を取り出したのはいいものの、なぜか今は近づいて声をかけてはいけない気がして、しばらく遠くから様子を見る。
建物の前でしばらくの間立ち尽くしていた美緒は、やがて諦めたようにその建物の中へと入っていった。
勇紀は遠くから目を細めて、美緒を入ったのを確認すると、その建物の前に駆け寄る。
そして建物の入口のすぐそばに設置されている看板の文字を見て、勇紀の身体が固まった。
そのピンク色の看板には「桃尻倶楽部 50分10000円」と書かれていて、勇紀にはそれが風俗店であるとわかったからだ。
「うそ……え…?」
入口を見つめながら唖然としていると、力が抜けた手から美緒の携帯電話が落ちた。
:12/01/06 02:20
:W62P
:☆☆☆
#159 [怪男]
地面に落ちた音で我に戻り、慌てて拾い上げようと手を伸ばした時…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
突然、美緒の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
手に取ってディスプレイを見てみると「店長」なる人物からの電話だった。
勇紀はパニックになり、すぐに電源ボタンを押して電話を切る。
すると少ししてまた…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
ディスプレイには再び「店長」の文字。
もうどうしていいかわからなくなった勇紀は、また電源ボタンを押して電話を切り、今度は携帯電話自体の電源を切った。
:12/01/06 02:22
:W62P
:☆☆☆
#160 [怪男]
明るく家族思いの姉がまさかこんな所に出入りしているとは夢にも思っていなかった勇紀はショックで、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていると…
―プルルルルル!
今度は勇紀の携帯電話の着信音が鳴った。
その着信音に再び我に戻りポケットから携帯電話を取り出しディスプレイを見ると、それは母からの着信だった。
「…もしもし?」
「ああ、勇紀?今どこにいるの?」
「え…えっと……」
さすがに「姉を追って風俗店の前にいる」とは言えない勇紀は
「今は…コンビニ」
と、答えた。
:12/01/06 02:24
:W62P
:☆☆☆
#161 [怪男]
「美緒は?今ね、あの子の働いてるコンビニの店長さんから電話あったの。
もう美緒のシフト始まってる時間なのに出勤してないって」
それを聞いて、ドキッとする勇紀。
母・渓子は更に続ける。
「携帯にかけても、すぐ切られるっていうし…。勇紀何か知らない?」
「えっと……」
当然、言葉が詰まる。
「勇紀?どうしたの?」
と訪ねる母・渓子。
:12/01/06 11:59
:W62P
:☆☆☆
#162 [怪男]
勇紀は母が、姉が風俗店で働いているかもしれないという事を知っているのか確かめる為に質問した。
「えっと母さん…姉ちゃんって仕事何か掛け持ちしてる」
すると母は
「…え?掛け持ち?いや、何も聞いてないよ」
と答える。
これで、母は姉の風俗店出入りの事を知らないと確信した。
息子の自分が麻薬に関わっていたという事が母にわかった上、姉まで風俗店で働いているかもしれないなんて言うと母は腰を抜かして倒れてしまうかもしれない、と思った勇紀は姉の風俗店の事は言わず
「実は、姉ちゃんに携帯渡そうとして追いかけてたら途中で見失なっちゃって…」
と笑いながら言った。
:12/01/06 12:31
:W62P
:☆☆☆
#163 [怪男]
だが母・渓子は「笑っている場合じゃない」と言わんばかりに電話の向こうで大きなため息をついた。
「とりあえず帰ってきなさい。
あと、美緒の携帯にまた店長から電話あったら出て事情を話すんだよ」
「うん、わかった」
そう言って電話を切り、勇紀は逃げるようにその場を後にした。
考えてみると、姉の美緒は友達らと遊ぶという時はお洒落な格好をしていたが、アルバイトの時はどちらかというと地味系な服を着ていく事が多かった。
母もその事は知っているはずなのに、あの時玄関で何も聞かずスルーしていた。
:12/01/07 11:45
:W62P
:☆☆☆
#164 [怪男]
―母は姉の風俗店の事を本当に知らないのだろうか?
―もしかすると、知っていてあえて触れずに目をつむっている?
帰り道でそんな事を考えながら歩いていると、また勇紀の携帯電話が鳴った。
…母からである。
「もしもし?」
「勇紀?何度もごめんね。
今ね、店長から電話あって…今日美緒のシフト入ってなかったんだって。
明日の間違いだったんだって」
「え…そうなの?」
「うん、だから無断欠勤って訳じゃなかったの。でも…それなら美緒はどこに行ったんだろうねぇ」
困惑しながら母・渓子がつぶやく。
:12/01/07 12:03
:W62P
:☆☆☆
#165 [怪男]
勇紀はさりげなく服の事を持ち出す。
「姉ちゃん派手な格好してたし友達と遊びに行ったんじゃない?」
「でもアルバイト行くの?って聞いたら、うんって言ってたじゃない。あの子は家族に嘘付くような子じゃないしねぇ」
服の事を言っても、やはり母は風俗店の事を何も知らないようだった。
「帰ってきたら聞いてみたら?」
「そうだね。でもその前に勇紀…アンタからだね」
「…………今から帰るね」
電話を切ると、家へと小走りで急いだ。
:12/01/07 12:32
:W62P
:☆☆☆
#166 [怪男]
家に着いてリビング行くと、母・渓子がソファーに座り煙草を吸い一服していた。
次女・夏美は自分の部屋にいるのかリビングは静まり返り、時計の針の音だけが休む事なくコチコチ鳴っている。
「ただいま」
背後の勇紀の声に母は煙草を加えたまま振り返る。
「おかえり。まず着替えてきなさい」
母は煙草を口から外して灰皿にこすりつけながら言う。
勇紀は言われた通り、着替える為に無言で階段を上がり自分の部屋へ向かった。
:12/01/09 23:49
:W62P
:☆☆☆
#167 [怪男]
いつもの私服に着替え部屋から出てドアを閉めると、同時に後ろからドアの開く音がした。
振り返ると、そこに次女・夏美が立っていて勇紀を凝視している。
「…なに?」
すき焼きの準備の手伝いの件でまだ怒っているのかと思わず身構えたが、夏美は視線を勇紀から外して下の方を見ながら
「なんかあったの?」
と尋ねてきた。
「え…」
予想外の言葉に拍子抜けする勇紀。
:12/01/09 23:51
:W62P
:☆☆☆
#168 [怪男]
「え…なにかって?」
「ババアが電話で言ってたじゃん。
“まずはアンタから”って」
鋭い夏美の一言に一瞬ドキっとする。
夏美は自分の麻薬の事を知らない。
当然言えるはずもなく、勇紀は瞬時に言い訳を考えた。
「ああ…テストの点が悪かったから、俺が一番に説教されるって事だよ…」
この苦し紛れの言い訳が果たして勘が鋭い夏美に通用するだろうかとドキドキしていると、夏美は勇紀に視線を戻し眉をしかめて
「は?美緒の話してたのに、なんでいきなりテストの話とかになんの?嘘付いてんのバレバレなんだけど」
…案の定、通用しなかった。
:12/01/10 00:04
:W62P
:☆☆☆
#169 [怪男]
夏美は更に続ける。
「それにババアのやつ、電話終わったらウチに“部屋に行ってなさい”ってキレたし」
「え…そうなの?」
「うん。だからとんでもない事でもやったんじゃないのかって思った。勇紀、なにしたの?」
「…………」
勇紀は下を向いたまま黙りする。
兄が麻薬に手をつけたなんて知ったら夏美にも夏美の学校にも迷惑がかかるかもしれないと思い、言えなかった。
「チッ!男の癖にウジウジうぜーやつだな。もういいわ」
ついにキレた夏美は俯く勇紀にそう言い放つと、自分の部屋に戻りドアを大きくバタンと閉めた。
「(ごめん…夏美…)」
勇紀はゆっくりと顔を上げ夏美の部屋のドアを見つめながら心の中で謝る。
:12/01/10 00:10
:W62P
:☆☆☆
#170 [怪男]
そして重い足取りで階段を下り、母が待つリビングへ向かった。
「…そこ座って」
そう言う母の顔はいつもと違い、険しい。
勇紀は緊張な面持ちで向かい側のソファーに座る。
座るなり母はポケットから、勇紀があの時落とした覚醒剤の袋を取り出してテーブルの上に置いた。
勇紀は母の顔を見れず、テーブルの上の覚醒剤をじっと見つめる。
「これ…いつからなの?」
「……い、一ヶ月前くらい…から」
「…………」
覚醒剤を見つめたまま答える勇紀には、母が今軽蔑しきった目で自分を見ているのだろうと思えた。
:12/01/10 20:37
:W62P
:☆☆☆
#171 [怪男]
少しの沈黙の後、母は小さなため息をついてから言った。
「手をつけちゃったものはしょうがない。勇紀にも悪い所があるよ。
でもね、アンタにそんなものを売りつけた人はもっと悪い」
「…………」
「さっき一緒にいた男の人は誰なの?初めて会ったようには思えなかったけど」
男性には「言うな」と言われていたが、勇紀はもう全部話して楽になりたかった。
だが、もし言ってしまったら…と先を考えると、恐ろしい事になるかもしれないという不安な気持ちも少しある。
「…………」
勇紀は黙りを続けた。
:12/01/10 20:39
:W62P
:☆☆☆
#172 [怪男]
すると母は…
「勇紀!誰なの!答えなさい!!」
と、突然怒鳴り声をあげて立ち上がった。
さすがの勇紀もその声に驚いて、立ち上がった母の方に視線を向ける。
母はものすごい剣幕で勇紀の顔を凝視しながら
「このまま言わなかったらお母さん…警察に全部言うよ!それでもいいのか!!」
と怒鳴り声で続ける。
「ご……ごめんなさい…」
「ごめんで済むなら警察はいらない!それくらい聞いた事あるだろ!!」
勇紀には謝る事しかできなかったが、今の母には通用しなかった。
:12/01/10 20:42
:W62P
:☆☆☆
#173 [怪男]
互いに顔を見つめ合ったまま黙っていると、この騒ぎを聞きつけたのか二階にいた次女・夏美が階段をかけ降りてきた。
「な…なんなの?」
気の強い夏美もこの時だけは動揺しているのか、焦りの表情をしている。
母・渓子は背後の夏美に顔を向ける事なく前の勇紀を見つめたまま
「アンタは部屋行ってなさい!!」
と大声を張り上げた。
夏美は一瞬身体をビクつかせたが、すぐに小さく舌打ちをして階段を上がっていった。
:12/01/10 20:48
:W62P
:☆☆☆
#174 [怪男]
「さあ!勇紀!誰なの!」
勇紀の目の前まで迫る母・渓子
今にもその場から逃げ出したい気分だったが、腰が抜けたようにソファーから立ち上がる事ができない。
こんな母を見たのは17年間生きてきた中で初めてであった。
そんな迫力に負けた勇紀は、ついにポツリと白状する。
「が…学校の知り合いの人の…知り合い…」
「学校の?それは誰なの!言いなさい!」
「……ク、クラスはわからないけど…赤木って人…」
震えた声で勇紀が次々に答える。
目からは涙がポロポロとこぼれ落ちていた。
:12/01/11 15:04
:W62P
:☆☆☆
#175 [怪男]
そんな勇紀を見て母は、怒りの表情から普段の表情に戻り、再びソファーに腰掛ける。
そして怒鳴る前と同じく優しい声で聞く。
「その子の連絡先は知ってるの?」
母の質問に勇紀は涙をこらえるのに必死で喋れず、無言で首を横に振った。
「じゃあお母さん…明日学校に行って、その赤木くんって子に会って聞いてみるけど…それでいい?」
「…………うん」
涙声混じりで勇紀が答えると、母は笑顔で最後に言った。
「じゃあ…夏美呼んできてくれる?もうすぐでお父さん帰ってくると思うから…すき焼きしようって」
「……うん」
―その後、家の電話に父・幸宏から電話があった。
「残業する事になったから今日は遅くなる」
…と。
:12/01/11 15:06
:W62P
:☆☆☆
#176 [怪男]
その夜は母、勇紀、夏美の三人だけで気まずい中、すき焼きをしたのだった。
同日・午後9時30分…
「美緒ちゃん、今日もお疲れ!明日は来れないんだよね?」
「ごめんなさぁい。明日はコンビニのバイトがあるんですよぉ」
「そっか。じゃあまたね」
「お疲れ様でしたぁ!」
秘密で働いている風俗店の男社員に最後まで愛想を振りまいた後、店を出る長女・美緒。
店を出た瞬間、さっきまで愛想笑いをしていた美緒の表情が一変して険しくなった。
家に忘れてきたと思われる携帯電話を家族に見られていないか、気が気でなはなかったのだ。
早々と路地を抜けようと歩き出した時、ふと数メートル先にあるホテルの入り口からスーツ姿の男性が二人出てくるのが見えた。
「(え…男同士…?)」
今までそういった人を見た事なかった美緒は、突如なんともいえない好奇心に襲われる。
:12/01/11 15:08
:W62P
:☆☆☆
#177 [怪男]
好奇心はやがてスリルに変わってますます目を離せなくなり、美緒はその二人の男性の後をこっそりつける事にした。
10分くらい歩いた所の駅前で男性二人は足を止めた。
そしてお互い向かい合って何か話をしている時、少し離れた所で見ていた美緒は自分の目を疑う。
「(え……お父さん?)」
駅構内から差し込む光で両方の男性の顔がハッキリ見えている。
一人は背が低く太目体型で顔は髭で覆われている。
そしてもう一人は、間違いなく美緒の父親である幸宏だった。
「嘘……」
美緒はそう小さくつぶやき、手に持っていたバッグをポトリと地面に落とした―
:12/01/11 15:11
:W62P
:☆☆☆
#178 [怪男]
長女・美緒編
:12/01/11 15:13
:W62P
:☆☆☆
#179 [怪男]
家族や友達に秘密で働いている風俗店を後にしようとした時、男性二人がラブホテルから出てくる所を目撃した長女・美緒。
好奇心から、美緒はその二人を尾行する。
しばらく歩いて、駅前で足を止め話し出す男性二人。
その二人の内の一人の男性の顔が見えた時、美緒は衝撃を受けた。
それは、自分の父親だったのだ。
父親がラブホテルから…しかも“男性”と二人で出てきたという事実。
それは娘の美緒にとっては衝撃的以外の何物でもなく、受けたショックは絶大なるものであった。
:12/01/16 16:35
:W62P
:☆☆☆
#180 [怪男]
駅前で男性と恋人同士のように話す父・幸宏を見て、美緒は持っていたバッグを地面に落とす。
呆然と見つめた後、二人はお互い手を振って別れた。
男性は駅の中へ入って行き、父はその場を後にして暗い夜道へと消えていく。
美緒はハッと我に帰ると、地面に落としたバッグを拾い上げて父とは逆方向の道を通り小走りで家に向かった。
その頃、安坂家のキッチンでは母・渓子と次女・夏美が、すき焼きの余った材料で父と美緒の夜食を作り、長男・勇紀が晩御飯の後片付けをしている。
:12/01/16 16:38
:W62P
:☆☆☆
#181 [怪男]
「二人共…遅いねぇ」
キッチン越しからリビングの壁にかかっている時計を見ながら母・渓子がつぶやく。
「父さんの残業ってなんか久しぶりだね」
隣で食器洗いをする長男・勇紀も、母を横目で見ながら言う。
次女・夏美は黙って面倒くさそうな表情をしながら火の点いたフライパンの前に立っている。
「そうだねぇ。ま、残業手当てが出るからいいよね」
包丁片手に笑顔でそう言う母。
:12/01/16 16:40
:W62P
:☆☆☆
#182 [怪男]
だが、夏美がボソッとつぶやいた一言で和やかな場が一瞬にして凍りつく―
「浮気してたりして」
母・渓子の笑顔がピタリと止む。
「ちょっと夏美…父さんはそんな事しないよ…」
母の目が笑っていない表情を見た勇紀は慌ててフォロー発言するが、夏美はフライパンの上の肉を箸でつつきながら更に続ける。
「そう?前テレビで見たけどね。男が浮気する際に使う口実の第一位が“残業で遅くなる”だって」
口元をニヤリとさせながら夏美がそう言うと、母は包丁を持ったまま止めていた手を再び動かし、野菜切りを再開する。
特に何事もなかったかのように会話は終わったが、それからはキッチンでは誰も口を一切開かなくなった。
:12/01/16 16:42
:W62P
:☆☆☆
#183 [怪男]
「ただいま」
数十分後…父・幸宏が帰宅した。
ソファーで二人の帰りを待っていた妻・渓子は玄関からする夫の声を聞くと、重い腰をあげて玄関へと向かう。
「おかえり。残業お疲れ様ー」
「うん」
「一応夜食作っといてあるけど、食べる?」
「いや、いいわ。今日は疲れたし寝るよ」
「…そう」
玄関でそんな会話を交わした後、夫・幸宏はまっすぐ階段へ上がっていった。
妻・渓子も数秒間、夫の背中を見つめてからリビングへと戻る。
:12/01/19 05:11
:W62P
:☆☆☆
#184 [怪男]
一方、長女・美緒は重い足取りで夜道を歩いていた。
父親の同性愛者疑惑の事もあるが、それ以上に自分の忘れた携帯電話の事が気になっている。
携帯電話には風俗店や風俗店の社員の電話番号や、何度か来店する内に気が合い、交換した客の電話番号も入っている。
客からは頻繁に「今日店行くよ」などといった電話がかかって来るので、もし電話が来ていて、家族の誰かがその電話に出ていたら…などと考えると足取りも一層重くなる。
「はあ…」
しばらく歩いて家の前に到着し、ドアの前で足を止めた。
:12/01/19 05:13
:W62P
:☆☆☆
#185 [怪男]
ドアノブに手をかけるも、開けるのを躊躇う。
―娘が風俗店で働いているなんて知ったら両親は何て思うだろう?
―“なぜそんな所で働いているのか”と質問されたらどう答えればいいのだろう?
“稼げるから”なんていう理由は両親…特に母には通用しそうにはない。
家族皆からは、まるで別のものでも見るような目で見られるかもしれない。
大げさに言ってしまえば“家族崩壊の危機”である。
:12/01/19 05:14
:W62P
:☆☆☆
#186 [怪男]
次第にドアノブを握る手が汗ばむ。
“バレてしまったらその時はその時”
そう思うと同時に携帯電話の電源が入っていない事に期待して、ドアノブをゆっくり回してドアを開けた。
照明で照らされた明るい廊下が目に入る。
恐る恐る玄関に足を一歩踏み出してドアを閉める。
「た、ただいま」
力のない声で言い、靴を脱いでいると母・渓子がリビングから出てきた。
“もうバレているかもしれない”
そう考えると母の顔を見る事ができなかったが、母は美緒の姿を見るなり心配そうな声で
「おかえり、どこ行ってたのぉー」
と聞いてきた。
:12/01/19 05:16
:W62P
:☆☆☆
#187 [怪男]
その言葉から察するに、少なくとも母は何も知らないんだとわかった。
心なしか安心した美緒は胸をホッと撫で下ろして
「ごめんね。バイトの子が風邪で早退しちゃって…シフト延長になっちゃった」
と母の顔を見て苦笑いしながら言うと、途端に母の顔が強ばった。
「…お母さん?」
美緒がそんな母の表情に首を傾げていると、母は一言…
「アンタ…今日シフトなかったんじゃないの?店長から電話あったよ」
美緒の心臓がドクンと高鳴った―
:12/01/19 05:17
:W62P
:☆☆☆
#188 [怪男]
廊下がシーンと静まり返り、なんとも言えない緊張感が漂う。
美緒は目の前に立つ母の足元に視線をやっている。
今、母がどんな顔をしているのか知りたくないからだ。
きっと疑いの眼で自分を見ているんだと思っていた。
だが、しばらくして母は優しい声で
「とにかく中に入りなさい。お腹空いてるでしょ?」
と言いながら美緒の肩にそっと手をやった。
:12/01/19 16:38
:W62P
:☆☆☆
#189 [怪男]
置かれた手の方に視線をやってから、母の方に目を向ける。
母は優しく微笑んでいた。
だが美緒にとっては、怒る事なく笑みを浮かべているそんな母が少し不気味に思えた。
「すき焼きの余った材料で夜食作っといてあるから、食べなさい」
「う、うん…ありがと」
途中まで脱いでいた靴から足を抜いて、背を向けて歩き出した母の後を追うようにリビングへと向かった。
:12/01/19 16:39
:W62P
:☆☆☆
#190 [怪男]
「今、ご飯チンするからね。座ってなさい」
母の言葉に「うん」と小さく頷いてから美緒はリビングを見回した。
さりげなく携帯電話を探すも、リビングには見当たらない。
美緒は少しホッとした。
もしかしたら自分の部屋にあるかもしれないと思ったからである。
部屋には鍵がついている。
家を出る前に自分の部屋の鍵を閉めた事は確認しているので、もし携帯電話が部屋にあるのなら、今日一日は誰も自分の携帯電話に触れる事はもちろん、合い鍵もないので誰も部屋に入る事ができない。
:12/01/19 16:40
:W62P
:☆☆☆
#191 [怪男]
そう思えたと同時に段々と肩の力が抜けていき、どっと疲れが出てきたのでテーブルの上にバッグをポンと置いてソファーに座った。
やがて温かい白いご飯と、牛肉と野菜の合わせものが母によって運ばれてくる。
「はい」
「わっ、美味しそう!」
今まで胸の中に溜まっていたモヤモヤが晴れたせいか、その夜食はとても美味しそうで「幸せ」だと感じた。
:12/01/19 16:42
:W62P
:☆☆☆
#192 [怪男]
母は皿をテーブルに置くと、美緒の向かい側に座った。
夜食を食べている間、母はずっと美緒の顔を見つめる。
「…なに?」
さすがに美緒もそれが気になり、箸と茶碗を持ったまま尋ねるが
「いや…食べてからでいいよ」
と苦笑いで答える母・渓子。
母が何を言おうとしているのかは大体予想はできた。
:12/01/19 16:43
:W62P
:☆☆☆
#193 [怪男]
おそらく“どこに行っていたのか”という事だろうと。
美緒は夜食をゆっくりと食べつつ、なんと答えるかを考えた。
母がじっと自分を見つめている事と、言い訳を考えている為にご飯の味がさっぱりわからなくなっていたが、なんとか十分ほどして食べ終える。
「美味しかった?」
「う、うん」
実は途中から味がわからなくなったとは言えなかった。
:12/01/19 16:44
:W62P
:☆☆☆
#194 [怪男]
言い訳も思いついて、母の質問を今か今かと待っていると、母は服のポケットから白い粉が入った透明の四つの袋を取り出してテーブルの上に置いた。
美緒はポカーンとしながら、その袋に目をやる。
「え…なにこれ…?」
袋と母を交互に見ながら聞く。
母は小さなため息をついてから重い口を開いた。
「これ…勇紀が買ったんだって。わかるでしょ?覚醒剤」
「かく…せい…ざい?」
美緒は唖然とした。
:12/01/19 16:45
:W62P
:☆☆☆
#195 [怪男]
「学校の知り合いから勧められたんだって」
母はテーブルの上の袋を一直線に見つめて言う。
「勇紀が……本当に?」
「…お母さんも信じたくはなかったよ。息子がこんなものを…って」
そう言う母の表情が徐々に哀しみに変わっていく瞬間を美緒は見た。
自分の息子が覚醒剤に手を出した―
そんな事実を知って、堂々としていられる親はそうはいない。
:12/01/21 16:23
:W62P
:☆☆☆
#196 [怪男]
もちろん、娘が風俗店で働いていると知った時も同じだろう。
弟・勇紀のほとぼりが冷めるまではなんとしても知られる訳にはいかない。
「勇紀から事情は聞いたの?」
美緒は冷静に口を開いた。
「ううん…まだ。明日学校に行って、これを勧めた知り合いの子に会って勇紀と三人で話をしてくる」
「私も行こうか?大学は休めるし、コンビニのバイトも夕方からだから」
「いや、お母さん一人で大丈夫だよ」
「……そう」
勇紀に薬を勧めた人物がどんな人なのか気になり会ってみたいと思ったが、同行をあっさり断られて少しショックを受ける美緒。
:12/01/21 16:24
:W62P
:☆☆☆
#197 [怪男]
母はテーブルの上の袋を手に取り服のポケットにしまうと、真顔で美緒を見て単刀直入に聞いた。
「それより美緒…アンタ今日どこ行ってたの?」
「……え」
美緒は、勇紀の話題からいきなり自分の話題に切り替わった事に一瞬焦る。
「今日シフトなかったんでしょ?」
そう聞く母の顔にゆっくり視線を向けると、母は何かを疑うような目つきでじっと美緒を見つめていた。
:12/01/21 16:25
:W62P
:☆☆☆
#198 [怪男]
そんな母の表情を見て、さっきまで考えて頭の片隅に用意していた言い訳は一瞬にしてどこかへ消え去っていった。
「……えっと」
しどろもどろになる美緒。
母は表情を崩す事なく美緒の顔を一直線に見つめる。
今まで風俗店で働いているという、これ以上ない隠し事と動揺を母に見せた事がない為、今の自分の焦る表情から母には間違いなく、自分が何かを隠しているかもしれないという事を悟らせてしまった。
:12/01/21 16:26
:W62P
:☆☆☆
#199 [怪男]
「……なさい」
少し間が空いてから母が小さくつぶやいた。
「…え?」
あまりに小さい声だったので聞き取れず、聞き返す。
すると母はソファーからバッと立ち上がって、美緒を見下す形をとった。
美緒も、突然立ち上がった母に驚いて反射的にソファーから立ち上がる。
「何かお母さんに隠してる事あるでしょ!言いなさい!」
リビング…いや、家の中全体に母の怒鳴り声が響いた。
:12/01/21 16:28
:W62P
:☆☆☆
#200 [怪男]
その怒鳴り声は、19年間一緒に暮らしてきた中で母が初めて見せた剣幕と大声だった。
危うく腰を抜かしそうになるも、ソファーの端に手をついてなんとか体勢を整える。
やがて階段からバタバタと駆け下りてくる足音が聞こえ、寝間着姿の父・幸宏と長男・勇紀が何事かと言わんばかりの表情をしながら二人のいるリビングへとやってきた。
「渓子…な、何やってるんだよ」
さっきの母の大声とは対照的に小さく細い声で父が言う。
:12/01/21 16:30
:W62P
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#201 [怪男]
渓子は鼻息を荒くしなから幸宏の方を見ると、すぐに美緒の方に視線を戻し
「美緒!言いなさい!」
と、今にも飛びかかっていきそうな勢いで言った。
夫・幸宏はそれを察知したのか、すぐに二人の間に割って入った。
「一体何があったの、渓子!」
幸宏が困惑した表情で目の前に立つ渓子に尋ねる。
勇紀は何もできずに幸宏と美緒の背後で、黙って立ち尽くしている。
:12/01/24 20:42
:W62P
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