消えないレムリア
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#301 [ぎぶそん]
「実はね、今日の夜同じサークルの先輩たちと合コン行くことになって、かなめにも数合わせに来て欲しいんだけど」
「合コン!?鈴木くんはどうしたの?」
「相変わらず進展はなし。佐奈は向こうから告白してくれるの待ってるのに、やきもきしちゃう。それに、他にいい人いたらそっちに乗り換えるし。女はしたたかに生きなきゃ」
そういうと、彼女はまた麦茶をちびちびと飲んだ。
私は彼女の言葉に苦笑いをした。
でも、彼女のこんな正直なところが大好きだったりする。
『他にいい人がいたら乗り換える』という彼女の発言は、これまで何度も聞いた。
でも、結局彼女は鈴木くんという男の子を約1年以上思い続けてる。
その鈴木くんとやら、見たことないけど面食いの佐奈が惚れるくらいだから、そんなにいい男なのかな?
「合コンの相手グループ、医学部の人たちなんだって。しかも、全員かなめの好きな年上」
な、何ですと!?だいぶ興味をひかれた。
私は真織の目を見て言った。
「――というわけで私出かけるから、今日の夜は1人で食べといて。年上の医学生だって。ああ、素敵な人がいるといいな。何着て行こう」
「誰もかなめのことなんか相手にしないと思うよ」
ピッキーン。真織の言葉で、一気に気分を害した。
:12/08/22 22:10
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:bcLC0y5M
#302 [ぎぶそん]
「あんたは私の何を知ってるの?私、普段あんた以外の人の前ではかなり大人しいから。あんたといる時とだいぶ違うの。ね、佐奈?」
私は佐奈に同意を求めると、彼女は「うん」と言って頷いてくれた。
その後彼女は麦茶を飲み干すと、立ち上がった。
「それじゃあ、今日の夜また来るね」
佐奈が帰ると、彼はさっそく彼女からのお土産の箱を開けた。
「これ何?」
四角い箱の中には、12個の丸いピンク色のお菓子が入っている。
「知らない?マカロンだよ」
「マカロン?そりゃまたかわいらしい名前だな。……んっ、うめえ!」
彼はそれをいくつも口に入れ、リスみたいに頬いっぱいにため、もごもごと食べていた。
全く子供ね。私は夜の一大イベントに備え、しばし仮眠を取ることにした。
夕方。水色のワンピースを着て、化粧を入念にした。
洗面台の前で髪型を整えていると、彼が私の真後ろに立った。
「本当に行くの?こんなところ触っていいの俺だけじゃなかったの?」
彼が後ろから私の左胸を鷲掴みにした。
私はその手を払い、振り返った。
そして、彼に向かって人指し指を突き立てた。
:12/08/22 23:31
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:bcLC0y5M
#303 [ぎぶそん]
「それはそれ、これはこれよ。言っとくけど私、あんたじゃなくてあんたのカラダに興味があるだけだから。そこんとこ誤解しないで。あんたと求めてるのも、カラダの関係だけ」
どう、ひどい女でしょ?ほら、もうさっさと私のこと軽蔑しなさいよ。
「このひょろひょろの体がいいの?」
私の予想とは裏腹に、彼は自分の両腕を交互に見た。
そのマイペースな態度に、ますます頭がのぼせた。
「もうあんたのそういうところが疲れる。どうしてそう調子を狂わせるの?年下のくせに、私より優位に立とうとしないで!いい?私が上で、あんたが下。私は女王アリ、あんたは働きアリよ」
「働きアリはメスだよ?」
「うるさい!揚げ足を取るな!」
私は足の甲で彼の脚を蹴った。
えーいうるさいうるさい。私が他に恋人を作れば、あんたは見事私から解放されるんだよ。
こんな横暴で狂気じみた女と、もう一緒にいなくていいんだよ。
これは、あんたのためでもあるんだから――
彼はあくびをしながら、脱衣室を出た。
「まあ行ってらっしゃい。行ってもたぶん恥をかくだけだと思うけど」
「それ、どういう意味よ?」
「別に」
:12/08/23 00:50
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:woe9kXy6
#304 [ぎぶそん]
その10分後、佐奈が訪れた。
「佐奈についてきて」と言われ、ママチャリを漕ぐ彼女の後にぴったりとついて自転車を漕いだ。
大通りに出て、駅とは反対の道をひたすら進み、青信号で反対の道へ渡ると、彼女は古い神社の前で足を止めた。
神社の前では男女数人が立ち話をしていた。佐奈が「さくら先輩」と声をかけると、背の高い女の人が手を上げた。
そしてグループが動きを見せ、ぞろぞろと歩いてどこかに向かう。私と佐奈も1番後ろでそれについていく。
気がつけば洒落た居酒屋の個室に座っていて、男女5対5での合コンの席が開かれた。
まず、男性からの自己紹介となった。
彼らは全員サッカー部所属で、そこは佐奈や彼女の先輩らと同じだった。ただ、同じサッカー部でも医学部とはキャンパスが違うので、佐奈たちの部とは全くの別物になっている。
ぽっちゃりした人、茶髪でホストみたいな身なりの人、出っ歯で、げっ歯類みたいな顔の人。
どこにでもいるような人たちだけど、医者の卵と思えば無条件で光輝いて見えた。
:12/08/23 22:21
:Android
:woe9kXy6
#305 [ぎぶそん]
「1番左にいる人、かなめ好みじゃない?」
私の隣にいる佐奈が、私の耳元でささやいてきた。
私は彼女の言うその男性に目をやった。
黒髪で短髪、フレームなしの眼鏡をかけている。凛とした態度で、身動きをとることなく座っていた。
その男性が自己紹介をはじめた。
「桜庭夏樹です。医学部医学科所属で、現在4回生になります」
彼の発する重低音の声が耳に心地よく響いた。佐奈のいうように、桜庭さんは私にとって好印象だった。
次に女性陣の自己紹介となった。
1番最後となった私は、名前と学年、学部学科、サッカー部ではなく隣にいる佐奈の友人だということをつぶやくように言った。
その後、未成年の私と佐奈以外は酒を飲みながら、近くにいる人同士でお互いの質問疑問を混ぜた談話がはじまった。
私は佐奈と男性たちの会話を聞いたり、訊かれたことを答えたりしながら、何度も自分の腕時計に目をやった。
:12/08/23 22:41
:Android
:woe9kXy6
#306 [ぎぶそん]
あいつ、今頃何してるかな。晩ご飯、何を食べたんだろう。
真織の顔がちらつく。すぐに邪念を捨て、その場を楽しむことにした。
ホストみたいな人のおどけた話にあははと笑うけど、ほとんど頭に入らなかった。
料理に手をつけても、1人でこんなご馳走を食べていることに罪悪感を感じ、味覚がにぶる。
自分でも気づかないうちに、かなりあいつに毒されていると思い知った。
2時間ほどで店を出て、もっと親睦を深めようと、近くにあるアミューズメント施設でボーリングを行うことになった。
私の足取りは憂鬱だった。
ボーリングを最後にやったのは去年の夏、佐奈を含む同じ学科の子たちと遊んだ時。
スコアはいつもよくて70がいいところ。めちゃめちゃ格好悪い。
施設に入ると、周りと同じようにシューズを履き、ボールを投げた。
私はガターを連発し、その度にホストみたいな人が「ドンマイ、ドンマイ」と笑って励ましてくれた。
その何気ない笑顔が、自分をより情けなく感じさせた。
真織が言っていた「恥をかくだけ」とは、このことだったんだなと気づいた。
でもボーリングに来たのはただの偶然。それに彼は私の下手さも知らない。
それじゃあ何、私は何をしても恥をかくって言いたかったの!?
くそっ、真織め。自分の番になり、怒りに身を任せ、8号のボールを投げた。
そのボールはまっすぐ突き進むと、ピンを9本倒した。
:12/08/23 22:58
:Android
:woe9kXy6
#307 [ぎぶそん]
自分の番が終わった後自販機で缶コーヒーを買い、テーブルに肘をついて飲んだ。
「足立かなめちゃん、だっけ?」
片手に缶ジュースを持った桜庭さんが隣にやって来た。
「かなめ、ってかわいい名前だね」
男みたいで嫌だな、とずっと思っていた自分の名前を、彼が褒めてくれた。
「ありがとうございます。桜庭さんの名前こそ素敵ですよ、『夏樹』って」
そう、真織と同じ中性的な名前だ。――って、いかんいかん。また私、あいつのこと考えてる。
「ありがとう。あ、敬語遣わなくていいよ。俺のことも、『桜庭くん』って呼んで」
「分かりました、あっ、分かった。桜庭くん」
「そのワンピースもかわいいね。似合ってるよ」
桜庭くんは私の着ていたワンピースを指差し、にこにこと笑う。
彼に2度も褒められた私は、気分が高揚した。
どうだ真織。私だってね、桜庭くんのような素敵な人に出会うことだって出来るんだよ。
そして居酒屋では2人で話ができなかったので、とそのまま立ち話をした。
桜庭くんは精神科医になりたいらしく、ゆくゆくは地元の厚木市で開業できたらな、と言う。
この夏休み、バイトで貯めたお金でイタリアまでサッカーの試合を観に行ったらしい。
その話のすべてが別世界に感じた。
:12/08/23 23:25
:Android
:woe9kXy6
#308 [ぎぶそん]
「――かなめちゃんは、彼氏がいるの?」
突然桜庭くんに訊かれた。
「え?いないよ。どうしてそんなこと聞くの?」
彼の質問に私が否定するように手を振ると、彼が私の着ていたワンピースの襟をつまんだ。
「だってこれ、キスマークだよね?」
彼の指先に目をやると、私の右鎖骨から約2センチ下の部分がほんのりと赤くなっていた。
「虫刺されじゃない?」
私はそこを痒くもないのに掻いた。
「ううん、これは間違いなくキスマークだよ」
医学部で人体の構造におそらく詳しい彼が言うのだから、間違いないのだろう。
でもなぜ?――真織!?あいつの仕業か!きっと私が昼間寝てる時にやったんだな!
「実は私、今年下の男の子と一緒に住んでるんだ。彼氏じゃないよ、ただの同居人。そいついたずら好きで、今日私がここに来るの知ってて、こんなことしでかしたんだと思う」
私は泣きそうになりながら言った。
桜庭くんは私の話にうん、うんと首を縦に振りながら聞いてくれた。本当に恥ずかしい。
それからあいつのことを思うと、今まで抑えていた怒りがめらめらと湧き起こった。
「そいつ、生意気だし、甘えたがりだし、すぐ人のことからかうし、未成年なのに煙草は吸うし、そのくせドーテイのくせに妙に色っぽいカラダして、もう、だーいきらい!私がどんなに怒鳴っても暴力を振るっても怒らないし。同じサークルのかわいい子に好かれても、見向きもしない。きもいきもいきもいきもい!」
まくし立てて言ったので、ぜえぜえと息を切らした。
:12/08/24 00:23
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:FsaPFYBI
#309 [ぎぶそん]
桜庭くんがふっと笑った。
「好きなんだ」
「え?」
「その男の子のことが好きなんだ」
「違うよ!大嫌いって言ったじゃん!」
「嫌よ嫌よも好きのうち、って言うじゃない?それに本当に嫌いだったら一緒には住めないんじゃないかなあ」
彼がくすくすと笑うので、かぁーと全身が熱くなった。
私は完全に墓穴を掘ったようだった。もう、その穴に入りたいと思うほど恥ずかしかった。
誰にだって理想があると思う。それは私も同じ。
包容力のある年上の男性と結ばれ、素直に気持ちを表現し、甘え、とびきりの笑顔を見せる。
今、がんばればその願いが届く範囲にいるのに。
それなのに、あいつが気になって気になってしょうがない。
年下で、生意気で、冗談ばかり言って、甘えたがりのあのクソガキが。
私の理想の男性像とはほど遠い、むしろ真逆のあの男が。
彼が気になる。その気持ちを封じ込めなければ、押し殺さなければと思うのに、時々ついうっかりと垣間見せてしまう。
いけない、と思って、またそっけなくする。
それでもあいつは子犬みたいな目をしてやってくる。
いくら冷たくしても、私のことを一向に嫌いになろうとはしない。
そればかりか、近頃はこんな私のことを、「大切な人」や「優しい」などと言うようになった。
あいつ一体何なの!?怖いよ、気持ち悪いよ。
もう、どっか行ってよ。ううん、行かないで。
あいつが私を壊した。私の理想を、プライドを崩壊させた。何で私をこんな気持ちにさせるの?
私も私よ。どうしてあいつのことばかり考える?
私はあいつがたまらなく憎い。そして、たまらなく――
:12/08/24 00:47
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:FsaPFYBI
#310 [ぎぶそん]
その後何事にも集中できず、魂が抜けたような気持ちで帰路を辿った。
佐奈が帰り際「やっぱ佐奈、鈴木くんにしよーっと」と、あっけらかんと言っていたのが唯一の救いだった。
アパートに戻ると、真織はベッドの上で文庫本を読んでいた。
「どうしてこんなことしてくれたのよ!」
私はワンピースの襟を広げて鎖骨の下を彼に見せた。
「変な虫がつかないように」
「せっかく桜庭くんっていう素敵な人と仲良くなれたのに、あんたのせいで恥かいちゃったじゃない!」
「だから行っても恥かくだけだって言ったじゃん」
彼があざ笑う。
「もう何てことしてくれたのよ!おまけにあんたのことす……す、好きって勘違いされたじゃん!」
「俺のこと好きじゃないの?」
「当たり前でしょ!」
「あっそ。俺も俺もかなめのことが好きじゃないよ。だーいきらい」
彼が本に目を向けたまま、まるで先生に当てられて教科書を読む生徒みたいな調子で言った。
さんざん気のある素振りを見せて、その態度は何なの?
彼が本を閉じ、立ち上がった。
「――出て行く」
「えっ?」
「お互い嫌ってる同士でぎすぎすするのも嫌でしょ。俺も1人暮らしはじめるよ。今までありがとう」
彼はショルダーバッグを持ち、そのまま玄関へと向かった。
私は目が右に左に何度も動いた。心臓も鎌かつるはしかが突き刺さったように痛む。全身からわずかに冷や汗が出た。
:12/08/25 23:08
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:IveFXFwc
#311 [ぎぶそん]
【※310 “俺もかなめのことが”です】
「お願い!行かないで!」
私は走って彼を追いかけ、後ろから思いきり抱きついた。
リビングの明かりが後ろから差すダイニングの中央で、2人が立ち止まる。
「ごめん嘘ついた!あんたのこと嫌いじゃないよ、嫌いじゃない、嫌いじゃないから……」
本当はもっと言いたいことがたくさんあった。
でもこう言うのが今の自分にとって精一杯だった。
「――――――本当、かわいいんだから」
彼が蚊の鳴くような声で言った。
“かわいい”。何故だろう。桜庭くんに言われた時より数段嬉しさがあった。
彼が自分の腰まわりに絡んでいる私の両手をそっと握る。
「ちょっとプライドが高くて、ちょっと偏屈で、ちょっと不器用なところが、たまらなくかわいい」
私は彼の言葉をしっかりと聞いた。
ねえ私。私のことここまで思ってくれる人、この人以外に現れると思う?――
彼は私の手を離し振り返ると、私の頭を撫でた。
「嘘だよ。出て行かないから」
彼のいつもの屈託のない顔に、涙が出た。
「あっ、でも1つ謝らなくちゃいけないことがある」
「何?」
「マカロン、毛利さんからのお土産、1人で全部食べた」
彼の指差す方を見ると、テーブルの上に空の箱が置いてあった。
私は涙を拭いながら笑った。
私はこいつがたまらなく憎い。そして、たまらなくああああ愛し――。
今はまだ自分の心の中でさえも言えないのであった。
:12/08/25 23:32
:Android
:IveFXFwc
#312 [ぎぶそん]
次の日の朝。ベッドの上で、私は彼に執拗に迫られていた。
「今度合コンに行ったら、もっと目立つところにつけるよ?こことか」
彼が私の首筋をしゃぶる。
「あんた、本当は経験豊富でしょ?」
「ないよ。どうして?」
「なんか、慣れてる気がする……」
本当、悔しいよ。
その時、隣の部屋からドンッと大きな物音がした。
私と彼は思わず壁を一瞥して、お互いの顔を見合わせた。
――ドンッドンッドンッ。
音は鳴り止まない。
隣には渡瀬明穂さんという社会人の若い女性が住んでいる。
様子が気になったので彼と一緒に部屋を出て、彼女の部屋の呼び鈴を押した。
「あの、隣の足立ですけど、何かありました?」
インターホン越しに彼女と会話をする。
「うるさくてすみません。棚を作ってて」
棚!?
「よかったら手伝いましょうか?ちょうど男手もいるんで」
私は真織の顔を見た。
「いいんですかぁ?困ってたところなんです 」
すぐに彼女がドアを開けた。
:12/08/27 22:24
:Android
:RHxcUp2M
#313 [ぎぶそん]
渡瀬さんは身長が170センチ近くあり、手足が長くすらっとしている。
ドアを開けた彼女はすっぴんに眼鏡で、白いキャミソールを着て黒いウォームアップズボンを穿いていた。
貧相な格好だけど、持ち前のスタイルのよさで様になっていた。
「こちら、伊藤真織くんです。今、訳あって一緒に住んでるんです」
私は早速彼女に彼を紹介した。
「そうなんだぁ。初めまして」
彼女が彼に礼をすると、彼女のウェーブのかかった長い髪が小さく揺れた。
その後すぐ、私たちは彼女の部屋に上がった。
彼女の部屋はカーテンや小物が全てピンク色で愛らしく統一されていて、同じ間取りなのに味気ない私の部屋とは全然雰囲気が違っていた。
彼女が作ろうとしている本棚は組み立て式のようで、リビングの床に白く塗装されてある板が何枚も重なっていた。
「日曜だし、日曜大工をしようと思って」
彼女はその板の近くで腰を下ろすと、かなづちを持った。
パイプベッドの上にはマンガがどっさりと置いてある。
本棚の用途がすぐに浮かぶ。
:12/08/28 21:54
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:EnHF6Pok
#314 [ぎぶそん]
「恋人さんに頼まなかったんですか?」
彼女に恋人がいることを知っている私は彼女にたずねた。
「彼とは遠距離なの。彼は島根県の出雲市に住んでるんだ。出雲大社があるところだよ。後半年したらこっちに来る予定なんだけどねぇ」
遠距離か。もし真織とそうなったら、とてもじゃないけど耐えられないな。
私はすっかり彼に依存してしまっていた。
その彼は初対面の女性の本棚づくりに神経を注いでいる。
彼が板の穴に専用の釘をねじ込み、その部分をまた違う板の穴と重ねる。
「あっ、そうやるんだぁ」
渡瀬さんはそれを感心そうに見ていた。
その後も彼女の握りしめるかなづちは全く出番がなく、彼の手で静かに作業は続いた。
そうして1時間もしないうちにスライド式の本棚は完成し、3人で協力して中にマンガの巻数を揃えて収納した。
「本当にありがとう。よかったら、お昼食べていきませんか?少し早いけど」
彼女の部屋のハートの形をした壁掛け時計の針は、まもなく11時を差そうとしていた。私と彼は彼女の言葉に甘えることにした。
「マンガ読んでいいですか?」
彼が台所に立つ彼女にたずねる。
「いいけど、少女マンガしかないよ?あっ、そうだ」
彼女がペンギンみたいなよちよち歩きでリビングにやって来て、本棚をきょろきょろと見た。
「これ面白いよ」
そして彼女は彼に「ラブ・シェアリング」というタイトルのマンガを渡した。
カバーの表紙には、学校の制服を着た男女がフローリングにあぐらをかく姿が描かれていた。
:12/08/28 22:18
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:EnHF6Pok
#315 [ぎぶそん]
すぐに彼はそのマンガをぱらりとめくり、私も隣で覗き込んだ。
ごく普通の女子高生石崎麻奈が、憧れの聖矢先輩とひょんなことから共同生活をし恋を育むという、甘酸っぱいラブストーリーが綴られている。
男女がルームシェアをするという設定は、すぐに私の心を掴んだ。
ページをめくる彼もマンガの内容に集中していた。
「出来たよぉ」
1巻を3分の2ほど読んだところで彼女に呼ばれ、2人でダイニングテーブルのイスに腰かけた。
テーブルの上には湯気の立つカルボナーラと氷水が3つずつ並んである。
私たちはそれを熱いうちに食べながら、お互い同じ大学であること、それぞれのサークルとバイト先の場所などを彼女に話した。
反対に彼女のことも色々と知った。年齢は26歳。丸の内にある会社で事務職をしている。彼氏の名前はケイちゃん。その彼氏とは2年前旅先で知り合った、など。
「かなめちゃん、真織くん、あたしのことは明穂でいいよぉ」
彼女は凛々しい顔立ちとは対照的に、ゆっくりとした喋り方で朗らかに笑う。
彼女との昼食を終えた後、彼がさっき読んでいたマンガを手に取った。
「このマンガ、借りていいですか?読み終わったらすぐ返すんで」
「うん!全部持っていっていいよ」
彼女が棚から「ラブ・シェアリング」と書かれたマンガを全部取り出す。
私と彼はマンガ10冊を1人5冊ずつ持って、彼女の部屋を出た。
:12/08/28 23:10
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:EnHF6Pok
#316 [ぎぶそん]
部屋に戻って、持っていたマンガをテーブルの上に置いた。
「おいしいパスタご馳走になったし、明穂さんにも旅行のお土産買ってこようか」
いよいよ春から計画していた彼との旅行も後1週間と迫っていた。
「このアパートって、他にどんな人が住んでるの?」
彼がベッドに座ってマンガをぱらぱらとめくりながら言った。
私たちの住むアパートは3階建てで各階に7部屋ずつあり、群青色の外壁が特徴的だ。
入居時築5年と聞いたから、今だと6年は経っている。まだ割と新しいので人気の物件らしく、常に入居者でいっぱいである。
1年以上住んでいるけど、ご近所トラブルなどのいざこざは見たことも体験したこともない。
さっきみたいな物音があるのが反対に珍しい、至極平和な場所だ。
「反対隣の204号室には私が来た時は気弱そうな男の人が住んでたけど、すぐに引っ越した。ちょっとしてすごく体格のいい男の人が来たような。香田さんだっけ。1階には10歳くらいの女の子がいる3人家族が住んでると思う。後、にこにこしたおばあちゃんもよく見る」
「そっか。俺もそのおばあちゃんと中学生の男の子くらいしか顔を合わせたことがないな。万が一の時のためにも、さっきみたいにご近所さんと交流はあった方がいいよね」
明穂さんの部屋から物音がした時、もし自分1人だったら黙って見過ごしていたかも知れない。
真織、あんたがいたから、また誰かと親しくなれた。それも1年以上ずっと部屋の壁の向こう側にいる人と。
:12/08/30 00:08
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:EbtstAVU
#317 [ぎぶそん]
私も彼の隣に座り、彼のお腹辺りで開いているマンガを覗いた。
「少女マンガって意外と面白いな。マンガとか中学ぶりに読んだ」
物語はちょうど恋のライバルとなる高嶋先輩の登場で、主人公の麻奈が複雑な心境で彼女と聖矢先輩の仲睦まじいやり取りを見ていた。
聖矢先輩は誰に対しても優しく、麻奈の恋心に全く気づいていない。
2人はワンルームの1室をカーテンで半分ずつに仕切って生活している。
近くて遠い、そんな2人の微妙な距離感が胸をきゅっと締め付ける。
2巻、3巻とところどころにあるギャグシーンに2人で時々笑いながら読んだ。
3巻の途中で、聖矢先輩のモトカノなる田川理佐という大学生が登場した。
モトカノか。真織にはそう呼べる女性はこの世に1人もいない。
彼がもし高校時代共学に通っていたら、最低でも1人か2人くらいは彼女が出来ていたと思う。
もし彼の過去がそういう風だったらどうなっていたかな。
考えるだけでも息が苦しくなり、胸倉を両手でぎゅっと掴んだ。
「どうしたの?」
彼が上半身を縮こまらせている私を見る。
「ううん。何でもない」
もし彼の過去がそういう風だったら、他の誰かとキスをしたり体の関係になったことよりも、他の誰かに少しでも夢中になっていた事実があることに悲しさを覚えていたかも知れない。
それからそのマンガを立て続けに5巻まで読んだ。
最初は麻奈の一方的な片思いだったけど、徐々に聖矢先輩も彼女に心を開くようになった。
この2人はこれから一体どうなるのだろう。
そして、私たちのこれからもどうなっていくのかな。
:12/08/30 00:41
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:EbtstAVU
#318 [ぎぶそん]
9月中旬。真織との関西旅行が幕を開けた。
4日間の間、京都と大阪をそれぞれ2日間に分けて観光する予定だ。
朝早くに私たちが乗った新幹線は、およそ2時間半で京都駅に到着した。
京都駅を出ると視界に広がる空は雲1つない晴天で、まるで私たちを快く出迎えてくれたようだった。
まず八坂神社の本殿でお参りをし、秀吉とねねの寺として知られる高台寺を拝観した。
二年坂、三年坂を登り、清水寺に向かう。朱塗りの仁王門が勇ましく立っていた。
夏休みのシーズンを外して来たのに、さすが京都一の観光スポットということもあって境内は観光客でごった返している。
三重塔をカメラに収め、本堂に上がった。
「大学受験は『清水の舞台から飛び降りる』気持ちだったなあ」
彼が清水の舞台をゆっくりと歩きながら言う。
「私も私も。あの時は死ぬほどがんばったよ。トイレに入ってる時も勉強してたし」
「じゃあどっちかが落ちてたら出会ってなかったんだね」
彼が笑う。
「……落ちればよかった」
私は彼にそっぽを向き、先に進んだ。
「ええー」
後ろから彼の気落ちした声が聞こえる。
嘘嘘。今の大学受かって本当によかったよ。
:12/08/30 22:50
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:EbtstAVU
#319 [ぎぶそん]
本堂を降りて、滝水を飲むと御利益があるという音羽の滝に向かった。3つの筋からは、それぞれ細い水が流れ落ちている。
群がる列に並び、左から順番に流れ落ちる水を専用の長い柄杓で汲み、3つとも1口ずつ飲んだ。冷たい水はちょうど喉の渇きを潤してくれた。
水を飲んだ後、清水寺を後にすることにした。
「どの水飲んだ?」
歩きながら彼がたずねてきた。
「え?全部飲んだけど」
「全部飲んだの?全部飲んだら欲張りと見なされて利き目ないって言うじゃん」
「そうなんだ。水おいしかったし、それだけでいいよ」
「そうだな、御利益を求めて水を飲む俺こそ欲深いのかも知れないな」
彼が私の頭を撫でる。
清水坂周辺で休憩にと、小さな甘味処の店に入った。
4席しかないカウンター席でみたらし団子を食べ、食後にあたたかい宇治茶を飲んだ。
お茶は湯飲みの底が透き通るほどに鮮明な黄緑色で、すっきりとした味わいは私を感慨無量の思いにさせた。
「このおぶう、ほんにおいしおすな」
彼が音を立ててお茶をすする。
「いるよね、よその方言使いたがる人」
「郷に入っては郷に従えだよ。あー、おいしおすおいしおす」
私は裏返った声で京都弁をいう彼がおかしくて、口に手を当てて笑った。
彼は私の太ももに手を置くと、こう言った。
「ほんにかいらしいどすな」
:12/08/30 23:44
:Android
:EbtstAVU
#320 [ぎぶそん]
甘味処を出て、市バスを利用して銀閣寺に向かった。銀閣寺を象徴する観音殿を、錦鏡池を隔てて望む。
東側には青々とした庭園が広がっている。
屋根の上には漆黒の鳳凰が雄々しく羽ばたいている。
この鳳凰には銀閣に祀られている菩薩観音を守る意味があると、旅行雑誌の説明文で知った。
「“侘び寂び”ですなあ」
彼がしみじみと言う。
「意味知ってるの?」
「……説明すんの難しい」
彼は困ったように首を掻いた。
銀閣寺に続いて、金閣寺にもやって来た。金閣寺を代表する舎利殿を、鏡湖池を隔てて望む。
その鏡湖池にはいくつかの大小の島が浮かんでいた。
漆塗りに純金の箔を張った建物は神々しく、鏡湖池に映るその姿も麗しくゆらめく。
こちらの屋根の上には黄金に輝く鳳凰が優雅に羽ばたいていた。
金閣寺が1950年に放火した時、あの鳳凰はたまたま取り外されていて無事だったらしい。
目に見えないものは信じない私だけど、舎利殿の上で舞うあの鳳凰は気高く遠いものに感じる。
:12/08/31 22:20
:Android
:oJzCNo8E
#321 [ぎぶそん]
その後も仁和寺、上賀茂神社、下鴨神社と、世界遺産を堪能した。
夕方になり、三条大橋から四条大橋までの鴨川の河川敷を歩く。
川沿いにはカップルらしき男女のペアが何組も座っていた。
私たちの前を、学生服を着た高校生の男女が、横幅20センチの間隔をあけて歩いていた。
付き合いたてなのかお互い何だかそわそわしていて、照れくさそうにしている。
ふいに、男子高校生の嬉しそうな横顔が見えた。隣の女子高生は、さっきから首をきょろきょろとさせている。
「――あんたって彼女いなかったんだよね。欲しいと思わなかったの?」
私は前にいる2人の微笑ましさに笑みを浮かべながら、隣で一緒に歩いている彼に訊いた。
「うーん、欲しくはないこともなかったけど、他に夢中になってたものがあったから」
「何?」
「読書。音楽も怪獣も好きだけど、読書が1番好き」
確かに彼は部屋でよく本を読んでいる。
だけどそれと同じくらいギターも弾くし特撮番組も観てるので、まさかそんなに読書だけ比重が大きいとは思わなかった。
「俺さ、15歳の時から毎日欠かさずずっと――」
そこで彼の口が止まる。
「何?」
私は彼を見た。
「いや、何でもない」
彼が首を垂れる。表情はどこか暗い。
その言葉の続きが気になったけど、言いたくないのなら無理に言わせたくはないので、私も追及はしなかった。
:12/08/31 23:08
:Android
:oJzCNo8E
#322 [ぎぶそん]
日も落ちそうな頃、彼が事前に予約を取ってくれた温泉旅館にチェックインした。
2階の角部屋に入ると、サスペンスドラマに出てくるような空間が広がった。
8帖の和室の中央に赤黒い座卓と2人分の座椅子があり、床の間には「和」と書かれた掛け軸と、丸い壺が飾られていた。
デッキテラスにある窓から外を眺めると、雑木林が一面にあるだけだった。
私は食卓の上にあった急須に茶葉を入れ、ポットのお湯を注ぎ、少し間を置いて2つの湯飲み茶碗に淹れた。
床脇にあったテレビの電源を点けると、音楽番組をやっていた。
メンバーは全員現役女子高生なのか、4人の女の子たちが同じセーラー服を着てバンド演奏を披露していた。
それを私も彼もお茶を飲みながら観賞する。
遠い地に来て、ここではじめて現実に戻った気がした。
「みんな私より年下そうなのに、楽器が弾けてすごいなあ」
私はお茶に息を吹きかけながら言った。
「こいつら弾いてないよ」
彼もまたお茶に息を吹きかけている。
「どういうこと?」
私は首をかしげた。
:12/09/02 00:53
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#323 [ぎぶそん]
「当て振りって言って、音楽番組なんかは基本楽器を弾かないんだよ。楽器の音は録音。機材トラブルがあったら困るとかで。まあでもプロだし楽器ができることに変わりはないけど」
「そうなんだ。ちょっと残念だけど、事情があるなら仕方ないね」
彼の説明を聞き改めて彼女たちを観ると、その一生懸命さがどこか虚しく思えた。
虚構。夢を売る商売も、そうやって割り切っていかない部分がたくさんあるんだろうね。
彼女たちの演奏が終わり、彼が立ち上がった。
「そうそう、風呂は別々だから。ここら辺で混浴がある宿を探しきれなかった」
「よっしゃあ!」
私は両手の拳を握った。
「ほんと残念。そういうことで、また後でな」
彼はタオルや浴衣を持って、部屋を出た。
私もすぐに入浴の準備をし、1階にある大浴場に向かった。
大浴場は高齢者が多く、温泉に入ったままグループで話し込んでいた。
私も身体を洗った後、ひとり温泉に浸かる。
にごり湯の中には湯の花がちらほら混在していた。
美肌のためにと、何度も顔を浸けた。
温泉から出て脱衣場で浴衣の着方が分からず悪戦苦闘していると、背の低いお婆さんが親切にも代わりに着付けてくれた。
「1人で来たの?」
そのお婆さんが柔和な顔でたずねる。
「えっと、その、男の子と……」
「まあ若いね。じゃあこれもどうせすぐ脱がされちゃうんだね。おほほ」
お婆さんが目尻にいっぱい皺を寄せて笑う。
私は一気に緊張した。
:12/09/02 01:29
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#324 [ぎぶそん]
また部屋に戻ると同じ浴衣を着た彼がいて、私の髪をドライヤーで乾かしてくれた。
乾かし終わると、私の着ている浴衣の襟を左右にかばっとめくった。
「もうさすがに跡はないね」
彼が私の右鎖骨らへんをなぞる。1週間以上前に彼からキスマークをつけられた部分だ。
「あれ、どうやってつけたの?」
私がそうたずねると、彼は今度は自分の着ている浴衣の襟を広げた。
そして私の頭を抱きかかえ、自分の胸元に寄せた。
「ちょっと吸い付いたらすぐつくよ。やってみて」
温かい彼の体温が顔に移る。彼の生命の鼓動もはっきりと聞こえる。
「し、しないよ……」
私は彼の身体を両手で押した。
それから間もないうちに、仲居さんの手で次々と懐石料理が運ばれてきた。
「まじうめえ。やっぱ肉より魚だよな」
ハンバーグが好きなくせに、現金なんだから。
私はおいしそうに焼き魚を食べる彼を白い目で見た。
彼の着ている浴衣はまだはだけていて、胸元が半分覗いていた。
彼の上半身裸姿は見たことがあるけれど、中途半端に見え隠れしていると逆にみだらに感じる。
私は彼の胸元に見惚れてしまった。
「何ぽーっとしてんの?」
彼が眉をひそめる。
「え?料理がすごくおいしいなって感心してた」
私はカワハギの天ぷらをぱくっと口にいれた。
:12/09/02 02:43
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#325 [ぎぶそん]
長い夕食を終えて、2人デッキチェアに座って色んな話をはじめた。
「和室って、オバケ出そうな独特の雰囲気があるよな」
彼が部屋全体に目を通す。
「じゃあさ、ここで俺が餓鬼の頃に考えた世にも怖ろしい怪談話をしてあげるわ。その名も『はなさかじいさん』」
彼が人差し指を立てて言った。
私は両手を膝の上に置いて、黙って彼の話を聞くことにした。
「ある日の夜、去年死んだ爺さんが夢枕に立ったのがきっかけで、ナオトは墓参りに行こうと決意しました。
次の日の夜、ナオトは薄気味悪い墓地に行き、お爺さんの墓を参りました。
その直後、誰かがいる気配を感じました。なんと、死んだ爺さんが幽霊となって現れ、墓の真横に立っていたのです!
ナオトはびっくりしてその場から逃げようとします。すかさずお爺さんも追いかけ、ナオトの手をぐっと掴みます!
ナオトは必死で抵抗します。でもお爺さんの手をなかなか振りほどけません。
そこでナオトは言いました、『離さんか爺さん、離さんか爺さん』と―…」
「………………」
私は彼の話が終わっても無言のままでいた。
「あれ?やっぱつまんなかった?」
彼が拍子抜けしたように頭を掻く。
私は口を真一文字に結んだまま笑いをこらえていた。肩がぷるぷると震える。結構ツボだった。
:12/09/02 23:09
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#326 [ぎぶそん]
やがて瞼もだんだん重くなり、目を何度もこすった。
「そろそろ寝ようか」
私は立ち上がり、隣の部屋へとまっすぐ歩き出した。
襖を開けると、薄暗い6畳の部屋に、敷布団が2つ敷いてあった。
私は脱衣場で出会ったお婆さんの言葉を思い出した。
どうせ今日も彼と何事なく終わると分かりつつも、はげしい動悸に襲われた。
身体を横向きにして布団に入ると、彼も私と同じ布団に入ってきた。
「布団1つでいいのに、な?」
彼が私の胴体を腕1つで抱える。
「暑苦しい。あっち行ってよ」
私は彼の手から離れようと、その場で両足をばたばたとさせた。
「何もしないよ」
後ろからそう小さくつぶやくのが聞こえた。
私は足を動かすのをやめ、身体を後ろに180℃回転させた。
瞬き1つしない彼と目が合った。
こいつはいつもそう。前にいても、後ろにいても、まっすぐな目で私を見ている。
私は少しの沈黙をすぐに遮った。
「あのさあ、さっきの話、『はなさかじいさん』、結構面白かったよ」
「本当に?」
彼の顔に笑みが浮かぶ。
「後……、今、本当はそんな暑苦しくなんかない、かな」
「本当?じゃあもっとくっついてもいい?」
「うん」
彼が私を両手で強く抱きしめる。
旅先であろうと何事なく終わる今日が、お婆さんの予感を見事に壊す彼が、彼のおだやかな胸のリズムに合わせて、心地よく感じた。
:12/09/19 23:38
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:.9O/32XA
#327 [我輩は匿名である]
よんでます!
頑張ってください\(^o^)/
:12/09/22 01:41
:F08A3
:OdsSxEP.
#328 [我輩は匿名である]
かなや
:13/02/23 00:04
:F08A3
:sCbQL2XM
#329 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/04 21:14
:Android
:nH.OoPsQ
#330 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 21:15
:Android
:nH.OoPsQ
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