クソガキジジイと少年」
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#861 [ザセツポンジュ]
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エノモトさんちは少し遠かった。
二人はたわいもない話をしながら
ゆっくり歩いた。
『トミーはいつも音楽何聴いてるの?』
『え〜っとね〜、怪獣のバラード。』
『、、、。それって合唱曲でしょ。CD出てるの?』
『うん、出てる出てる。エノモトさんは?』
『あたし、ジュディマリ。』
『俺もジュディマリ好き〜。ジョウの兄ちゃんにCD借りた事あるんだ。小さな頃からとかね、KISSの温度とかいいよね。』
『ホント!?あたしは、おねーちゃんから教えてもらったの。あ、怪獣のバラードあたしも好きだよ。』
:08/06/18 14:39 :PC :Qvr/oogU
#862 [ザセツポンジュ]
CDはおそらく持っていないだろうが、
木田トミオと言う生意気な少年。
怪獣のバラードと言う歌を
こよなく愛していた。
『でもさ〜怪獣のバラードを歌ったクラスが絶対優勝するじゃん。あれどうにかして欲しいよね〜、、、。あ、自販機。エノモトさん、おいで。』
あったかいカフェオレを飲みながら二人は進んで行った。
吐く息はとても白かった。
『もうすぐウチなの。あの、そこの犬がいるオウチの、、、。隣、、、、。』
エノモトさんの足が止まった。
トミーはエノモトさんの顔を覗き込んで
視線を辿った先、街灯の下に女の人が立っているのが見える。
『おねーちゃん!』
そう叫んでエノモトさんは、走って行く。
振り返ったエノモトさんに、トミーは笑って手を振った。
(会いたい人に会えてよかったね、エノモトさん。)
:08/06/18 14:40 :PC :Qvr/oogU
#863 [ザセツポンジュ]
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ジョウは時計を見てハっとした。
ジジイ二人のドンチャン騒ぎに
付き合っている場合ではないのだ。
こともあろうかエノシタさんは
楽しそうにケタケタ笑っていた。
ジョウはこのままでは
エノシタさんが危ないと思い、
肩を叩いて現実世界へ引き戻した。
『エノシタさん!もう8時が来るよ!』
エノシタさんはやっとこさ
我に返り、帰り支度をした。
『エノシタさん、また目玉焼き選手権しようね〜』
酔っ払ったすーさんはとてもご機嫌。
『また遊びにおいで、エノシタさん。』
きーさんは、ここを自分ちだとでも思っているのだろうか。
ジョウとエノシタさんは、クリスマスと言う冬の道を歩き出した。
:08/06/18 16:48 :PC :1u1mw9wo
#864 [ザセツポンジュ]
:08/06/18 18:21 :PC :1u1mw9wo
#865 [ザセツポンジュ]
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街灯の下で手を振る女の子。
街灯まで走る女の子。
二人は姉妹。
『おねーちゃん。。。』
『お誕生日おめでとう。はい、これプレゼント。私からがこっちで、この料理はバイト先の人から。』
二つのプレゼントを
妹に渡した姉は、
時計を見た。
『ありがとう。。。おねーちゃん。どこでバイトしてるの?』
『ん?料理のおいしいところでバイトしてるのよ。』
姉は、再び時計を見た。
予定は何もないのに。
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#866 [ザセツポンジュ]
『おねーちゃん、おうち入らないの?』
すぐさま帰ろうとしている姉の様子に気付き、
なんとか引きとめようとしている妹。
『今日はもう帰るよ。おめでとうって、言いに来ただけだったから。』
『一緒にケーキ食べようよ。。。帰って来てよおねーちゃん。』
姉は、困ったように笑い、首を横に振る。
ガチャ。
『遅いわねぇあの子。誕生日だって言うのに。』
エプロン姿のまんま、薄着で外に出て来た母親。
隣の家の犬が吠え出した。
『お母さん!おねーちゃん、おねーちゃんとケーキ食べたいんだけど!』
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#867 [ザセツポンジュ]
姉は、母親の姿を見た途端、
背を向けて口を閉ざした。
『あれ?お前いたのか。』
続いて玄関先まで出て来た父親は、
様子に気づき、妻の方へ近づいて行った。
そうして、もう一人の我が娘が
自分達に背を向けている事が分かったのだった。
家族は4人。
食卓を4人で囲むのが当たり前で、
普通の家庭だと、誰もが思っていた。
両親は、7つ、年の離れた妹を
とても可愛がっていた。
天真爛漫で、容姿も端麗だった妹を。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#868 [ザセツポンジュ]
姉は次第に嫉妬して行った。
クリスマスに生まれた妹を
妬んでもいた。
置いてきぼをくらっているような生活が
何年も続いたが、
姉は、疑問をどこに、誰に、
ぶつけたらいいのかさえも分からなかった。
普通の家庭だと誰もが思っていた家庭に
口を閉ざした姉だけが、ポツリと食卓を囲む。
物静かな性格だったためか、
ちょっとした姉の変化に気づく者は、
いなかった。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#869 [ザセツポンジュ]
お姉ちゃんはしっかりしてるから。
お姉ちゃんは心配いらないから。
妹は甘えん坊で可愛いから。
妹は手のかかる子だから。
(私はおねえちゃんだから。私はおねえちゃんだけど。だから何だって言うのよ。。。)
『お姉ちゃん。お母さんね、みんなの好きなケーキ買ってきてるの。』
『おねーちゃん。おうち、入ろうよ。。。』
母の言葉も、妹の言葉も
背中では受け止めているが、
まだ振り返る気には、なれないでいる姉。
何も語らないでいる姿を見かねて、
父親は、ゆっくり姉に近づいて行った。
そして、姉の肩に、手を
置いた。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#870 [ザセツポンジュ]
『さみしい思いをさせていて、ごめんな。。。お姉ちゃん。帰っておいでよ。ね。今日は、クリスマスだから。』
お姉ちゃんは、
ちゃんと分かっていたのだ。
自分が、大きな大きな
意地を張って生きていると言うことを。
抵抗として、
沈黙と言う手段を選んでいたが、
相手に真意を
気づいてもらえにくいと言う事だって
分かっていた。
だけど、それでいて時は経ってしまい、
口に出す事が、日に日に困難になって行った。
溜め込んだものを吐き出すために
手にあざを作り、のどをかき回していた自分。
:08/06/30 01:13 :PC :3PmgDCPQ
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