黒蝶・蜜乙女―第2幕―
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#101 [向日葵]
寂しい気持ちを押し込めて、もうすぐ2年が経とうとしている事実に呆然とした。
最近は不安で仕方ない。
ホントに帰ってくるかとか、何かあったんじゃないかとか。
他に……好きな人が出来たんじゃないのかとか……。
もしそうなら、私は忘れる事出来るかな。
もう一度、普通に戻れるのかな。
ううん違う。
:07/08/19 00:40 :SO903i :NfUWlfOw
#102 [向日葵]
セツナと毎日を過ごしたせいで、いない今の方がいつの間にか非日常になっていたんだ。
:07/08/19 00:41 :SO903i :NfUWlfOw
#103 [向日葵]
私は普通の女子高生。
やる気はそこそこの、容姿十人並のどこにでもいる奴だ。
初めてかもしれない。
何かに、誰かにこんなに
夢中になったのは……。
溢れる様に降ってくる雪を見ながら、そう思った。
そんな気持ちをくれたのなら、私はもう、充分だよ……。
ゴメンネセツナ。
私に待ってる事に、少し疲れたみたい。
私の為、行ってしまった貴方を私は、忘れる事にします…………。
:07/08/19 00:47 :SO903i :NfUWlfOw
#104 [向日葵]
オウマ「蜜……?」
私は庭へ出ていた。
そして灰色の空を見上げていた。
蜜「ゴメン。ちょっと、一人にさせてくれる?」
いぶかしげに顔を歪めるオウマ君に、ラフィーユは家へと促した。
雪独特の静けさと雰囲気の中で、私は一人、目を閉じた。
閉じれば、思い出が、後から後から流れてくる。
初めて会った時はそれは驚いた。
何せ普通の生活にどっぷりハマっていたから。
:07/08/19 00:51 :SO903i :NfUWlfOw
#105 [向日葵]
ファーストキスは奪われるし、いきなり人生初の愛の告白はされるし。
はっきり言ってセツナは嫌いだった。
でも、なんでこんなに好きになったんだろう。
私のせいで傷付いた顔。
優しい微笑み。
滅多に見せない照れた顔。
助けに来てくれた勇敢な姿。
そして初めての日、大切に扱ってくれた温かさ……。
大好きだよ。
ううん。
大好きだった……。
:07/08/19 00:55 :SO903i :NfUWlfOw
#106 [向日葵]
もう二度も約束破ったから、いいよね?
泣いても……
その名を呼んでも……
蜜「……。……ナ…。――セツナァ……っ!!」
鳴咽を漏らして、搾り出す様な声で愛しい人の名を何度も呼ぶ。
蜜「セツナ……セツナァッ!!大好きでしたよっ……。」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
貴方は何度も助けてくれたのに、私は努力もしないで、貴方をただ待っているだけのくせに……。
:07/08/19 00:59 :SO903i :NfUWlfOw
#107 [向日葵]
私はその事すら放棄して、寂しさに負けて、貴方を忘れます。
蜜「……ら…!……さよならっ…。セツナ!」
さようなら。
貴方の事は忘れます。
でも決して、忘れません……。
初めて好きになった人……。
私の運命だった人……。
―――――
―――――――……
また、春がやってくる。
清「すっごいねぇ!もう明後日には卒業だってぇ!」
:07/08/19 01:02 :SO903i :NfUWlfOw
#108 [向日葵]
――――
――――
一旦キリます
:07/08/19 01:03 :SO903i :NfUWlfOw
#109 [向日葵]
久しぶりに清とお出かけ中。今は喫茶店でお茶してます。
蜜「清ってどこ行くんだっけ?」
清「私は看護学校。専門学校だね。そういえば小川君、推薦で難関の大学行けたんだって!凄いよねぇっ!」
何故か嬉しそうに話す清を見て、なんとなく予想がついてしまった。
蜜「小川君が好きなんだ?」
清「え……。」
シュワァァァァ……
清から湯気が立ち上った。
:07/08/19 01:26 :SO903i :NfUWlfOw
#110 [向日葵]
どうやら私は人の事を当てるのが得意らしい。
ラフィーユとオウマ君にしても清達にしても分かりやすすぎだ……。
清「み、蜜!アンタ何言っちゃって……っ。」
蜜「知ってるんだよ?この間のバレンタインにチョコあげてたこと。」
清の顔が更に赤くなる。
可愛らしいなぁ……と和みながら思った。
:07/08/19 01:29 :SO903i :NfUWlfOw
#111 [向日葵]
二人がいい感じになってたのは秋くらいに感じた。
小川君と話す時の雰囲気が少し違ってた気がしたからだ。
清は清でやたらと小川君の話が増えていた。
何かが二人にあったらしい。明らかにおかしいって言ったら失礼だけどおかしかった。
清「まだ返事もらってないし……。なんてったって明後日だからねホワイトデー!」
蜜「きっと大丈夫だよ。小川君も清のこと好きみたいだし。」
そこで私はジュースを飲んだ。
:07/08/19 01:33 :SO903i :NfUWlfOw
#112 [向日葵]
二口ほど飲んだ所で、清の視線に気づき、ストローから口を離した。
蜜「何……?」
清「なぁんかさ……違うんだよねぇ……。」
蜜「?」
清はテーブルに身を乗り出して更に私を観察する。
私はなんだか悪い事をした気分になって少し身を引いた。
蜜「き、清……?」
清「なんか、蜜らしくない。」
私らしく…?
:07/08/19 01:38 :SO903i :NfUWlfOw
#113 [向日葵]
清「蜜って、嘘つけないタイプだからさ、すぐ顔に出るじゃん?でも今はなんだか……仮面被ってるって感じ。」
蜜「仮面?」
清「ホントはどう思ってるか、読くなっちゃった。」
……。
仮面……か……。
そんなつもりはなかった。清とのお喋りがつまんない訳でもないし。
もしかして私、仮面を被って生活することに慣れちゃってるのかな。
だから、人間らしくなくなっちゃった?
:07/08/19 01:42 :SO903i :NfUWlfOw
#114 [向日葵]
蜜「大人に近付いたって感じじゃない?」
清「うーんそうかもねー。」
あっさり肯定しちゃったよ。
でも、掘り出して聞こうとしない所が、清の良いところだよね。
蜜「清。」
清「んー?」
蜜「ありがと…。」
清は照れた様に笑うと、私の頭をくしゃくしゃ撫でた。
清「ぃよし!プリクラ撮りに行こう!今日は沢山撮ろうね!」
蜜「りょーかいっ。」
:07/08/19 01:46 :SO903i :NfUWlfOw
#115 [向日葵]
清が友達で良かった。
これからも友達だよね?
普段照れ臭くて言いづらいことを、落書きのメッセージスタンプで表した。
“いつもありがとう!アンタは心友や!”
そのプリクラは、私の携帯の裏に、密かに貼っておいた。
――――……
蜜「ただいまー。」
家に帰ると、既にいい香りがしていた。
この頃は毎日の様にラフィーユが料理を作ってくれる。
:07/08/19 01:50 :SO903i :NfUWlfOw
#116 [向日葵]
ラフィーユの料理の腕は日に日に上がっていって、冷蔵庫の僅かに残った食材でさえレストランに出てくるメニューの様に作った。
ちなみにラフィーユとオウマ君の進路は私と一緒。
なんかもう三人一緒って感じ。
オウマ「よっす蜜!お帰り!」
蜜「ただいま。二人ともご飯は済んだの?」
ラフィーユ「今日、蜂蜜を料理、作った。」
蜂蜜で?!
もしや密かに匂ってる甘い匂いはそれ?
:07/08/19 02:01 :SO903i :NfUWlfOw
#117 [向日葵]
蜜「ラフィーユすごいねぇ……。」
席に着きながらテーブルに広げられてる私の食事に思わず涎が口から出かけた。
ラフィーユ「意外、楽しい。」
オウマ「ラフィーがここまで楽しんでるの初めてだなぁ。」
へー。
それなら嬉しいな。
いただきますと礼をしてから私はほっぺが落ちそうな料理を堪能した。
・・・・・・・・・・・・・
蜜「んー!食べたぁ!」
:07/08/19 02:07 :SO903i :NfUWlfOw
#118 [向日葵]
料理のお皿を全部空にして私は食事を終えた。
ラフィーユの料理は結構バランスとかを考えている料理で、私の嫌いなコンニャクとか椎茸とか使った料理め出たけど美味しく調理してくれたおかげで私に好き嫌いは無くなった。
ラフィーユすげぇ……。
オウマ「なぁなぁ蜜!」
オウマ君がキラキラ目を光らせてテーブルに身を乗り出しながら私に話かけてくる。
蜜「何?」
オウマ「明後日卒業式+ホワイトデーだっけ…?じゃん?」
:07/08/19 02:12 :SO903i :NfUWlfOw
#119 [向日葵]
蜜「ウン。そうだけど?」
オウマ君はラフィーユと顔を見合わせてからニヒッと笑って私にまた目を向ける。
オウマ「その後ボーリングでも行かね?」
私は目をパチクリした。
一回だけ三年になってからクラスの皆でやったけど……まさかボーリングとは。
オウマ君は運動神経がいいのか、説明を一回受けるとバンバンストライクの嵐。
女子に良いところを見せようとしたクラスの男子は面目丸潰れだった。
:07/08/19 02:16 :SO903i :NfUWlfOw
#120 [向日葵]
そしてその哀れな光景を目にしながら私は隣でガーターの嵐……。
蜜「私…、見とくだけでいいかなぁ……。」
オウマ「だぁいじょうぶ!俺がコツ教えるし!んで、その後は着替えてカラオケオールしようぜぇ!!」
すっかりこっちの生活に馴れ親しんだらしいオウマ君。
これじゃぁ普通の高校生。いやそれでいいんだけど……。
まぁカラオケなら私はまだ人並みにいけるので
蜜「ウン。盛り上がろうかっ!」
:07/08/19 02:20 :SO903i :NfUWlfOw
#121 [向日葵]
オウマ「おっし決まりぃ!んじゃあ俺風呂用意してくるー♪」
ピューっとはしゃぎながらオウマ君は行ってしまった。
私も明日の用意をしてすぐ寝れる様に準備しよっと。
あ、そうだ。
蜜「ラフィーユ!オウマ君もだけど、写真一杯撮ろうねぇっ!」
ラフィーユ「今?」
蜜「うぅん。明後日!制服姿で一緒に撮りたいし♪」
ラフィーユはフッと笑ってコクリと頷いた。
:07/08/19 02:25 :SO903i :NfUWlfOw
#122 [向日葵]
インスタントカメラ買っておかなきゃなぁ……。
そう思いながら私は部屋に行く為、階段をトントン上がっていた。
カチャ バタン
ベッドに座る前に、ハンガーにかかっている制服を見た。
蜜「あと二回…着たら終わりかぁ……。」
なんか、濃ゆい三年間だったなぁ。
色々あったなぁ……。
色々……。
ハッ!
私は頭を振った。いらないとこまで思い出す所だった。
:07/08/19 02:28 :SO903i :NfUWlfOw
#123 [向日葵]
窓を開けて、夜空を見上げる。
空気が澄んでるのか星がよく見えた。
瞬いていてさっきのオウマ君の目みたいにキラキラ光っている。
あの顔を思い出して思わずクスッと笑ってしまった。
とうとう私も卒業か……。
『卒業するんですから!』
窓を閉める時、何時かの私の声が聞こえた気がした。でも聞かないフリをした……。
:07/08/19 02:34 :SO903i :NfUWlfOw
#124 [向日葵]
暖冬で桜が咲いていた。
少し早い、来春の合図。
でもそれが、卒業式をよりドラマ的に変えるのだった。
清「みーぃつ!」
蜜「ん?」
パシャ!
簡単な予行が昨日終わり、今日はついに卒業の日だった。
式は既に終わって、皆先生が来るまで友達との別れを惜しむ様にカメラのボタンを押す。
:07/08/19 02:38 :SO903i :NfUWlfOw
#125 [向日葵]
蜜「ちょっと!何今の不意打ち!」
清「キャハハ!いい思い出♪あ、蜜、アルバムに一言書いてよ!」
蜜「じゃあ清も書いてー。」
アルバムを交換して、周りをヒョイと見ると、ラフィーユやオウマ君はモテモテで、たらい回しの様に写真を撮られ(撮って)いた。
清「蜜。」
蜜「ん?」
清「……ずっと友達でいてね?」
私はニコッと笑って頷いた。
:07/08/19 02:43 :SO903i :NfUWlfOw
#126 [向日葵]
蜜「もちろん。当たり前でしょ?」
そう言うと、清は涙を流し始めた。
清「絶対だよぉ?!メールだってしてよ?!一緒にまた遊んでよぉっ?!」
抱きついて泣き始める清に困りながら頭を撫でてなだめる。
蜜「わ、分かってるから。泣かないで?ね?ホラ、先生来たから、また後でね?」
グスグス鼻を鳴らしながら清は教室に戻って行った。それを苦笑しながら見届けて、私は席につく。
:07/08/19 02:48 :SO903i :NfUWlfOw
#127 [向日葵]
席についてふと思う。
今まで机とか、椅子とか、そんなに気にせずクラスを去って行ったけど、いざもう永遠に近い別れとなるとこんなにも寂しいんだ……。
蜜「ありがとう……。」
そっと使っていた机と椅子にお礼を言った所で、卒業証書が配られた。
しばらくして、私の名前が呼ばれた。
「本山蜜。」
蜜「はい…。」
・・・・・・・・・・・・・・・
誰もいない教室で、私はまだ残っていた。
:07/08/19 02:52 :SO903i :NfUWlfOw
#128 [向日葵]
ラフィーユとオウマ君には、校舎内を回りたいから校門で待つように言った。
いつまでもこうしている訳にもいかない。
席を立って、教室内を見渡した。
目を瞑れば、授業中の雰囲気が安々と蘇る。
もえこんなにも懐かしいものに変わってしまったんだ。
蜜「ありがとう……。そして」
さようなら。
廊下、移動教室の教室、グラウンド……。
:07/08/19 02:55 :SO903i :NfUWlfOw
#129 [向日葵]
廊下から中庭を見れば、まだ沢山人がいた。
皆帰りたくないみたい。
思い出の校舎には、数人の人しかいない。
自分の歩く音が、やけに響いて聞こえる。
私は思い出の場所を回っていった。
1年の教室、2年の教室、保健室、職員室、体育館、食堂、……そして。
タン…タン…………。
久しぶりの、屋上のドア前。忘れたとしとも、ここは思い出の場所だから。
来ておきたかった……。
カチャ……ギギギィィィ……。
:07/08/19 03:00 :SO903i :NfUWlfOw
#130 [向日葵]
未だに油切れのドアの向こうは、青空と温かい太陽の光。
屋上へ足を踏み入れて、そのまま真っ直ぐ進み、柵に手をかける。
上から下を見下げると、ちらほら咲き始めてる桜が綺麗だった。
人が、とても小さい。
蜜「晴れて良かった……。」
これで雨だったらやっぱり嫌だもん。
その時、見慣れた姿が。
蜜「あぁっ!風さん達!」
:07/08/19 03:04 :SO903i :NfUWlfOw
#131 [向日葵]
なんと!久々風さん達。
にこにこ笑いながら私の周りをクルクル回る。
蜜「久しぶりですねぇ!元気でしたかぁ?!」
風さん達は小さな体を一杯使って体を揺らす。
元気だったと言いたいらしい。
そしてその手にはピンク色の欠片が。
私にくれるらしい。
蜜「フフ。ありがとうございます。」
手にこんもりと桜の花びらが積もると、風さん達が風をふわりとおこした。
:07/08/19 03:07 :SO903i :NfUWlfOw
#132 [向日葵]
蜜「わぁっ!ハハ、きれー…。」
私の周りだけ、花吹雪。
沢山のピンク色の欠片が私の周りを舞う。
蜜「風さんったら、やり過ぎですよ!」
笑いながら、風でなびいた長くなった髪を手で抑えた。
さて……ラフィーユ達も待ってるし、ボーリングとかも待ってるし、そろそろ帰ろう!
……その前に……。
最後の最後、これがホントに最後。
:07/08/19 03:11 :SO903i :NfUWlfOw
#133 [向日葵]
思い出が詰まったこの学校に、全てを置いて行こう。
私は深呼吸を何度も繰り返して、胸に手を当てる。
自分の鼓動に耳を傾けながら落ち着いて、また、息を大きく吸った。
蜜「……セ……セ……セツナ……。」
言い終えて、目を瞑った。これで良し。
さぁ、二人の元へ帰ろう。
蜜「ん?あれ?風さん?」
どこ行ったんだろう。
:07/08/19 03:15 :SO903i :NfUWlfOw
#134 [向日葵]
「ただいま。」
:07/08/19 03:16 :SO903i :NfUWlfOw
#135 [向日葵]
目を……見開いた。
記憶にある声は、もう遥か遠くにあって、思い出せるか不安だけど、確かにわかる。
私は、ゆっくりと振り返る。
振り返る時、いくつもの忘れたいと願っていた思い出が逆流してきた。
そして、声の主を、私は捕らえる。
蜜「嘘……。」
青空に似合わない、漆黒の羽、髪。
そして驚く程の美貌。
そこにいたのは……………………
セツナだった
:07/08/19 03:21 :SO903i :NfUWlfOw
#136 [向日葵]
セツナ「ただいま。随分と変わったじゃないか。」
蜜「……ぇ……な……。」
そうだ私、白昼夢見てるんだ……。
これは夢なんだ……。
試しに、お決まりのほっぺを力一杯つねってみた。
蜜「……!いったー!!」
セツナ「お前は何をやってるんだ……。」
痛い…。夢……じゃない。私はまたゆっくりセツナを見た。
大きな羽はもうしまわれていて、黒の服に身を包んで、そこに確かにセツナはいた。
:07/08/19 03:26 :SO903i :NfUWlfOw
#137 [向日葵]
セツナは大きく溜め息をつくと、不満げに私を見つめる。
セツナ「ただいまと言ってるのだからおかえりくらい言ったらどうだ。」
蜜「貴方そんな……近くのコンビニ行ってきたみたいに……。」
って……そうじゃない。
決めてたじゃない。
次会った時には、その美貌が腫れあがるまでぶん殴るって……。
でも手に力が入んなくて……。
蜜「遅い……ですよ。」
声が震える。
:07/08/19 03:29 :SO903i :NfUWlfOw
#138 [向日葵]
怒りたいのに。
涙が出そうで。
言いたい事一杯あるのに、頭ん中ぐちゃぐちゃになって、何から言えばいいか分からない。
セツナ「思ったより時間がかかってなぁ。それはそれは疲れたぞ。」
蜜「私は……っ。例え私の為でも勝手に行って欲しくありませんでしたっ!」
泣くな。
泣いたらきっとその腕にすぐ飛び込みたくなる。
言いたい事、この二年、どれだけ寂しかったかを、伝えなきゃ……。
蜜「寂しくて、頭おかしくなりそうで、私は貴方を忘れる事に結論づけたのに……っ。」
:07/08/19 03:34 :SO903i :NfUWlfOw
#139 [向日葵]
セツナ「なんだって?」
セツナの少し怒った声が耳に届いた。
蜜「絶対、私の事なんかどうでもよくなったんだって思って、帰ってくる気配すらないのに待つのはもう疲れてて……えっと。」
涙が出そう。
瞬きを何回もして抑える。
蜜「とにかくもう疲れたんです!セツナの帰りを待つことに……キャッ!」
体を、力強い腕が抱き締めた。
セツナ「相変わらず馬鹿だな蜜。」
:07/08/19 03:38 :SO903i :NfUWlfOw
#140 [向日葵]
耳元で懐かしい声が怒ってる。
もう無理だ。
涙が溢れる。
セツナ「どうでもいいなんて思う訳がないだろ!」
一旦体を離して、間近くで私を見つめながら、私を叱りつける。
セツナが滲む。
ホントに待った。ホントにいるんだここに……。
蜜「会いたかった……っ!」
鳴咽と共に私は言葉を搾り出した。
会いたかった…。
セツナ。もう、待たなくていい?
側にいてくれる?
:07/08/19 03:42 :SO903i :NfUWlfOw
#141 [向日葵]
セツナの大きな温かい両手が、私の顔を包む。
セツナ「俺だって……死ぬほど会いたかった……蜜……。」
瞼に唇が触れる。
セツナだ。
セツナなんだ……。
蜜「セツナ……。」
確かめる様に名前を呼んだ。
セツナが涙を親指で拭いてくれたお陰で、優しい微笑みが見える……。
セツナ「ん……?」
蜜「大好きです……。」
:07/08/19 03:45 :SO903i :NfUWlfOw
#142 [向日葵]
セツナはより一層優しく微笑む。
セツナ「俺もだ蜜……。」
ゆっくり目を瞑ると共に、セツナの唇がこれ以上ないほど押し付けられた。
私達の周りで、桜が混じった風が吹いた。
私はこれからも、側にいるセツナと運命を共にしていきます……。
:07/08/19 03:48 :SO903i :NfUWlfOw
#143 [向日葵]
――
終わり
――
:07/08/19 03:49 :SO903i :NfUWlfOw
#144 [向日葵]
:07/08/19 03:52 :SO903i :NfUWlfOw
#145 [向日葵]
黒蝶・蜜乙女
*スペシャルチャプター*
春です!
桜です!
お花見です!
という訳でパンパカパーン!今日はお花見大かーい!(って言ってもお弁当は一人分……。)
こんにちは!
私は本山蜜。もうすぐ専門学生。
入学式前の春休み。私達はお花見に向かう事にしました。
:07/08/23 00:58 :SO903i :KKHO/xOI
#146 [向日葵]
庭へ出るともう温かくなった陽射しが心地よくって、春眠暁を覚えずって言葉の意味がよく分かります。
私が背伸びをしていると、後ろに引力が。
蜜「わ!」
セツナ「準備出来たか?」
ご存知此方はセツナ。
私の……こ、恋人で、ついこの間、ようやく帰って参りました。
蜜「私はいいですけどラフィーユ達がお花摘みに行ってまだなんです。」
セツナの他に、この家には二名、一緒に住んでる人達がいます。
:07/08/23 01:03 :SO903i :KKHO/xOI
#147 [向日葵]
その人達は、また来た時に説明を。
私がラフィーユ達の帰ってくる姿があるか空を向いていると、体が180゚回転してセツナの方へ向いた。
大体は、予想がつく……。今から何が起こるかは……。
セツナ「いつまで経っても慣れないんだな。」
ククッと可笑しそうに笑うセツナに対し、私は視線を色々な方向へさ迷わせた。
そんな私を、セツナは顎をクイッと上に上げると、ゆっくりと顔を傾け唇を重ねた……。
:07/08/23 01:07 :SO903i :KKHO/xOI
#148 [向日葵]
まだこの段階はいいんだ……。問題は次。
蜜「――っ。ふぅ……っ!」
セツナの舌が、私の口内を荒らす。
朝から何やってんだとお思いのそこの貴方。
これは実は普通のくちづけではないんです。
セツナを含むその他二名は、人間じゃなく、黒蝶族と言う自然界でも頂点にいるなんだかファンタジーな世界の人間。
その人達には、“蜜乙女”と言う存在が稀にいて、私はその“蜜乙女”なのだ。
:07/08/23 01:11 :SO903i :KKHO/xOI
#149 [向日葵]
それと今のくちづけと何が関係あるかって?
この人達はつまり蝶々な訳で、自分の“蜜乙女”の“蜜”を主食とします。
もし、“蜜乙女”がいない場合には、花の蜜等を吸って生活しています。
最近気付いたのは、蜜じゃなくて、私達が食べる物を食べれると言う事だ。
……ちょっと失礼。大分息が限界です。
蜜「ちょ……っ、長い!!」
私は無理矢理セツナを引き剥がす。
でも足に力が入らず、結局はセツナに抱えてもらう形になった。
:07/08/23 01:15 :SO903i :KKHO/xOI
#150 [向日葵]
セツナに私から“蜜”を取るなと一回言った事があるけど、自分の運命の相手、つまり“蜜乙女”の“蜜”は、そこらの花よりも遥かに勝っていて、味は極上らしい。
蜜「蜜……吸い取る…の、に……どんだけ時間かか、って、んですか……。」
呼吸困難ながら必死に話す私を見ながらセツナは余裕で、愉快とでも言うようにニヤリと笑う。
セツナ「食事より愛のくちづけの方に時間を取ってしまったんだよ。相変わらず可愛らしいなお前は。」
この人はやったらサブい台詞を吐きなさる。
私も最初は呆気に取られっぱなしだった。
:07/08/23 01:21 :SO903i :KKHO/xOI
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