〜運命のヒト(2)〜
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#263 [りく☆]
祥子から逸れないように、オレと滝沢は必死についていった。
ちょうど休み時間だったため、他の生徒にぶつかりなら慌てて階段を降った。
祥子は誰にぶつかろうとも、謝りもせずにただ前だけを見ていた。
そんな祥子の背中から、ただ事ではないということが伝わってきた。
:08/08/22 02:40 :SH903i :XTS191aU
#264 [りく☆]
学校を出ると、門の前には1台の車が止めてあった。それは、卓也がたまに送り迎えしてもらっていた車だった。
何も躊躇いもなく祥子は車に乗り込む。それにつられてオレ達も車に乗った。
『あっ……美里も連れてくるんだったんだ…』
息を切らしながら祥子が言う。
:08/08/22 02:44 :SH903i :XTS191aU
#265 [りく☆]
『美里はいいよ。』
状況をのみこめずにいたオレだったが、美里がくることだけは拒んだ。
そんなオレの心境を悟ったのか、祥子は渋々車のドアを閉めた。
『あんた達と美里に何があったのよ…』
窓越しに学校を見ながら祥子がぼやいている。
:08/08/22 02:48 :SH903i :XTS191aU
#266 [りく☆]
『その話は後でするとして……祥子、卓也はどこで何をしてるんだ?』
車の中で冷静になった滝沢が、祥子に尋ねた。あの祥子の慌て様からただ事ではないことは承知している。だから、オレと滝沢はじっと祥子を見つめ答えを待った。
『卓也坊ちゃんは、只今病院にいらっしゃいます。』
:08/08/22 02:52 :SH903i :XTS191aU
#267 [りく☆]
答えにくそうな祥子の代わりに、運転手が答えた。
彼はよく知っている。昔から卓也の世話をしていた人だ。みんなからはジィと呼ばれていた。
『ジィ……病院ってどういう事だ?』
ハンドルを握るジィに滝沢が尋ねた。ジィは信号で停車し、一息ついて答えた。
:08/08/22 02:56 :SH903i :XTS191aU
#268 [りく☆]
『卓也坊ちゃんが病気をおもちなのは、みなさんご存知ですか?』
ジィの質問にみんな黙って頷くと、彼は再び言葉を続けた。
『ここ数日前から急激に病状が悪くなり、入院しているのです。』
ジィの声が少し震えているのがわかった。その声がオレ達を不安にする。
『卓也は大丈夫なのか?』
恐る恐るオレはジィに尋ねた。
:08/08/22 03:02 :SH903i :XTS191aU
#269 [りく☆]
車を降りたオレ達は慌てて病院へと乗り込んだ。
「私の口からは何とも……ただ坊ちゃんの意識があるのは確かです。ただ、原因のわからない病気ですので、何とも言えないのが現状なのです」
病院の廊下を走りながらジィの言葉を思い出していた。
卓也が何らかの病気を抱えていることは知っていたが、これほど重大とは。オレの心には不安が広がっていた。
:08/08/22 03:08 :SH903i :XTS191aU
#270 [りく☆]
『あった……卓也の部屋だ。』
滝沢の声にオレとしょうこが彼に駆け寄る。走りまわった末にようやく卓也の病室をみつけた。
病室の中からは物音さえ聞こえてこない…。ただ病院の廊下につけられたクーラーの音だけが、微かに聞こえてくる。
:08/08/22 15:56 :SH903i :XTS191aU
#271 [りく☆]
『開けるぞ…』
ドアノブにそっと手を置いたオレが、2人の目を見て言った。滝沢だけが頷き、祥子はただ黙ってドアを見ていた。もしかしたら部屋の中から卓也の声が聞こえるかもしれない……そんな希望を抱きながら。
:08/08/22 15:57 :SH903i :XTS191aU
#272 [りく☆]
ゆっくりとドアを開けた。少しずつ広がるドアと壁の隙間からは、廊下よりもやや暖かい風が通ってきた。どぉやら病室の窓が開いているらしい。
隙間が段々と大きくなり、病室の姿がわかってきた。病室はホテルのシングルルームみたいになっており、ドアの前には部屋まで続く短い廊下があった。
:08/08/22 15:58 :SH903i :XTS191aU
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