.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#191 [桔妁]
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「あ、あの…ま繭―…繭…」
夕刻。数日前までは華のある話が舞っていたはずの夕食時だ。
近寄るだけでピリピリしそうな空気の中心に居る主に、天弥は話し掛ける。
だが、主である繭は目も合わせてくれようとしない。
「…ま、繭………」
と、急に繭が立ち上がった。
繭は、家を飛び出して、走っていった。
:08/01/01 02:07 :SH903i :a.l0GRvc
#192 [桔妁]
ただ一直線に、目指すのは崖の下へ――…。
降りしきる雪の寒さは、現代の北風よりも冷たく、身体に染みていった。
ひとつひとつの雪が、涙を流す言い訳となった。
だが、どの雪も繭の心にはかなわなかった。
:08/01/01 02:18 :SH903i :a.l0GRvc
#193 [桔妁]
気が付けば、正面が壁…。
そう、崖の下だ。
繭は、崖を素手の拳でなんども殴るようにしていた。
ここ数日、繭はあることを思っていた。
(天弥は、ここで私を救ってくれて…ご飯もくれたし、現代同士で仲良くしてくれた……。
野蛮な連中とかエロ親父からもかばってくれてた…
:08/01/01 02:24 :SH903i :a.l0GRvc
#194 [桔妁]
ただ、まさか人を殺すような人だとは思わなかった。
性悪なんだろうけど優しくて、どっか幼稚だけど暖かくて大きくて、そんな天弥が…。)
「……っ。…――帰してよぉ―。…いやだよいやだよ…私は、私は…」
そこへ、走って追い掛けた天弥の姿が崖の前に現れたが、繭の目に映る事はなく。
「いやだよ…。時代に流されて、人殺しになりさがるのは、嫌だよ……っ…。私も、変わる前に、帰してよ………!!」
天弥は、その場から動けなかった。
:08/01/01 02:30 :SH903i :a.l0GRvc
#195 [桔妁]
気が付いたときに繭は、頼仲の家に居た。
意識を失った訳ではなく、うっすらしか記憶にないだけで、声をあげて泣いていたようだ。
しかも家に頼仲は居なく、その兄だったのだから迷惑極まりないだろう。
「……あ、あの…なんかすみませんでした…頼弦さん…」
落ち着いた時の繭は、隣に居た頼弦に深く謝った。
:08/01/01 19:43 :SH903i :a.l0GRvc
#196 [桔妁]
「いや、いい…。だが、一言言わせてもらう…いいか?」
しゃくりがおさまり、自分の息遣いしか聞こえないことが少し恥ずかしいと思いながら、繭は頼弦の方を向き、頷いた。
「奴の…天弥殿の気持ちを、分かってやってはくれぬか…?
天弥殿は、生活のため、仕方なく…人斬りをしていたんだ。身寄りもなく、だからどうしようもなく…
幸せと引き換えにな…。」
:08/01/02 00:04 :SH903i :V3Yv/f4g
#197 [桔妁]
隙間風が余計に寂しさを煽った。
繭には、その意味がよくわからなかった。
「仕方ない……。…天弥殿―。」
頼弦は扉に向けて天弥を呼んだ。
すると、外から雪を被った天弥が現れた。
それと同時に少し吹雪が入って来て、その寒さが伝わった。
:08/01/02 17:02 :SH903i :V3Yv/f4g
#198 [桔妁]
「繭、っ…」
天弥は、繭の方に駆け寄った。
「俺、もう帰れないと思ったから……だからヤケになってた。
でも、もう…繭が来てからは…やめようと思って、上の方に言いにいったんだ…。
だけど、最後に極悪事件を任されて…。」
:08/01/02 17:08 :SH903i :V3Yv/f4g
#199 [桔妁]
「言い訳は、いらない!!」
繭は、一生懸命に話す天弥を蹴飛ばした。
と、天弥の胸元から布の包みが落ちた。――簪だ。
繭は静かに、胸元から落ちた物を拾った。
「あ、ごめ……これ、何―…?」
いつの間にか、頼弦は部屋から居なくなっていた。
:08/01/02 22:08 :SH903i :☆☆☆
#200 [桔妁]
「…や、これは、その……」
今出すべきではないことは承知であるそれは、繭の手へと渡り、布を開けられて、中身が見えてしまった。
「簪、何するつもりで…」
「いや、今日、現代でいうとクリスマスで…で…」
天弥は下を向いたまま答えた。
「つまり、クリプレ?……天弥が買ったの?」
:08/01/02 22:13 :SH903i :☆☆☆
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