.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#101 [桔妁]
 
「わしの行きつけの遊郭の子じゃ-。今日は仕事が休みなようでね、連れてきた。」

「こんにちは、繭様。」

小さくお辞儀をするその子は、確かに、営業スマイルかもしれない。

「やだなぁ、繭でいいよ!…私、女の子の友達できるの初めてだから嬉しいなっ♪」

するとその子はにこりと笑ってくれた。次は自然な笑顔で。

⏰:07/12/17 20:40 📱:SH903i 🆔:VoPBYhWg


#102 [桔妁]
 
「私、雪と申します。このような職についている故に、友が居なくて…私も、嬉しいです。」

「お雪、よかったなァ!繭はすごくやさしいぞ!!……と、今日は帰らねば…。」

さっき会ったばかりなのに、いきなり別れを言われた。
まだ天弥も居ないのに、この人は何をしに此処へ来たんだろうか…。

「ん?わしは今日、届けものをしただけじゃ。…じゃ、今から仕事だし、行く。」

⏰:07/12/19 16:34 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#103 [桔妁]
 
「お届けもの?」

すると、なにやら頼仲はドキッとしている。私にばれてはいけなかったかのように。

「ま、まァそれは天弥に聞けばいい。わしらは行く!じゃあな!」

「あっ、では、また…」

私が首を傾けて考える間に、二人は出ていってしまった。

「何だ、あの人……まぁ、お雪と友達になれたし…ま、いっか-♪」

⏰:07/12/19 16:39 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#104 [桔妁]
 

 時計もない部屋の中、風もない村は、静かだった。

自分の心臓の音が聞こえる位…。

「天弥は何やってんだろ……遅いな-っ……」

退屈と空腹に痺れを切らした私は、外に出た。近くまで天弥をお迎えしようと思って。

――ガサガサッ

「はひ!?」

暗い道を歩いていると、いかにも…のような音がした。

⏰:07/12/19 16:43 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#105 [桔妁]
 
「…だ、だれですかァ!!」

裏返った声で聞くと、帰って来た声の主は、意外な人だった。

「怪しいモンじゃね-よ。」


「…天、弥?」

「その声、繭!?ちょ、ま、お前、こっちにくるなよ!!」

「…?うん?」

立ちションでもしてるのかな…。そりゃあ見られたくもないでしょうが……

⏰:07/12/19 16:46 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#106 [桔妁]
 
「なんで繭が此処に居るんだ?」

草村から出てきたのは、泥だらけの天弥。

「や、暇だったから天弥のお迎えを…ていうかなんで天弥は泥だら

馬鹿!

「は!?」

⏰:07/12/19 16:48 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#107 [桔妁]
 
助けに来てやったのに馬鹿呼ばわりですか、私…

「夜道に女一人は危険だろ!?」

何を言い出すかこの男。…そりゃあ街灯もない暗い道だけど……そんな、馬鹿って…

「背ぇ低いから、説得力ない…。むしろ、天弥のほうが危ないよ?(笑」

思わず、(笑)を使ってしまうほど、にやけずにはいられなかった。

⏰:07/12/19 16:52 📱:SH903i 🆔:Anl.jzJU


#108 [桔妁]
 
「そ-じゃね-よ……。ま、いいけどさ…んじゃ帰っか。」

何か、隠しているような気がした。女の勘ってやつでそれは不確かだけれども、そんな感じがした。


「…あ-あ……帰る帰るって…私達の帰るところって、どこなんだろう…」

不意に口をついて出た言葉は、夜の闇に溶けた。

冷たい木枯らしが吹いていた。

⏰:07/12/22 23:01 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#109 [桔妁]
 
「…あ、そ-いえば…頼仲くんがお届け物を天弥に渡したらしいよね?あれ、何?」

夜道歩いている時に、先程のことを思い出した。

「ん?………あ、あれ…?あれ…まァ何でもいいじゃね-か!」

こいつ、また隠しているな……と、これも女の勘ですが…。



 ――繭が届け物の中身を知るのはこれから少し、先のこと…。

⏰:07/12/22 23:08 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#110 [桔妁]
 


――約2週間後―

秋の紅葉は、本当にあっという間だった。

今は、どの葉も散ろうとしている。


そして繭のバイトの腕もあがって、さらに茶屋小町と呼ばれて、それはそれはモテていた。


「お繭、今晩一緒に町で呑まねェかい?」

⏰:07/12/22 23:13 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#111 [桔妁]
 
「や、や…私のような身分では-…」

言い寄るのは親父ばかり…。かわすのにも一苦労と言ったところだ。

(どこの時代もおじさんってエロいなぁ…)

うまくかわしたつもりでも、ボディタッチしてくる客もいる。

お店間違えてるのではないでしょうか……

「ちょ、やめ

「オイコラそこのおじさん!!」

⏰:07/12/22 23:16 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#112 [桔妁]
 
「なんだ餓鬼?」

「天弥…」

こんなとき、たまに天弥が来て救われる。

縋る目で天弥をみると、いつもなんだかんだ助けてくれる。

こういう優しさは好ポイントなのだけど。微妙に性悪なところは苛々する。


「助けてくれてありがとね!!んじゃ!あっちの旅人さん待たせてるから!」

「………。あぁ、うん。」

⏰:07/12/22 23:20 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#113 [桔妁]
 
「…何、その微妙な反応は。」

「…いや、御礼に茶をいれたりとかねェのかなって。」

こういう、ちゃっかりした部分で、ポイントは下がる…。

やっぱり早川先輩以上はいないなぁ…。

「あとでいれてあげるよ…。…んじゃ、待ってて!」

呆れた笑顔を天弥に向けた後に、旅人の顔を見た。

「………!」

⏰:07/12/22 23:23 📱:SH903i 🆔:o7i/uv3A


#114 [桔妁]
 
(早川先輩そっくり…!!)

居た、今ここで…早川先輩に並ぶ者が!!

「おおお待たせしました!…ええええと、お疲れでしょうから最中を添えさせてもらいました!よよ、よかったらどうぞ!!」

「?あ、あぁ有り難う。」

純粋に笑って下さるのも、早川先輩そっくりっ!!!

⏰:07/12/24 11:14 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#115 [桔妁]
 
「旅をしてるんですか?」

早速隣をキープ!!幸い、他のお客は居ない!(天弥は論外)

「あぁ。…江戸から少し、用があってな。…しかし、このような村にこんなに美しい娘が居るとは…中々だな。」

ちょ、早川先輩!(違う)今私を美人と言いましたァ!?

「けっ!どの辺が美人なんだかね-??」

こうなれば、そんな天弥の厭味も聞こえない。

⏰:07/12/24 11:22 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#116 [桔妁]
 
「しかし、本当に村娘も捨てたものではないよ…。今日の夜、どうだい?村のことを教えて欲しいんだ。」

「……………。」

天弥が二人の方を睨む中、繭はすごい笑顔で

「えぇ!!ははははい!是非!」


顔を赤らめ笑顔で言った。

「じゃあ、仕事が終わったら迎えにいくよ………」

天弥は、さらに睨んだ。…早川先輩似の男を。

⏰:07/12/24 19:31 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#117 [桔妁]

  X'mas 番外編


―第3.5章―

 ―チョコレートは
   バレンタインだろ――


.

⏰:07/12/24 19:36 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#118 [桔妁]
 
「たるたるーるーるるー…♪」

訳の分からない歌を歌いながら、仕事が休みの天弥は家の掃除をしていた。

ちなみに、天弥の職が何かとはまだ明らかではない。決して作者がまだ考えていないからとか、そういうのでもない。←


「たるたるーん、るーん…ん?」

天弥の目に偶然繭の鞄が入りこんだ。そして、彼も悪気は無かったのだが…

⏰:07/12/24 19:44 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#119 [桔妁]
 
「…これ、あれか?けいたいでんわ……。」

中身を見てしまいました。しかも、携帯電話ときてしまえば、中々珍しいのであって…。

「おぉ-!!お父さんが持ってたなァ…。電源……ここか…あれ、付かない……あ、ついた!!!!!」

繭がやったときはつかなかったのに、ついたのだ。

「すげ……TV画面なんて何年振りだ…」

と、カレンダーをみると。

⏰:07/12/24 19:52 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#120 [桔妁]
 
「十一月三十日……」

もう、十二月になるのか、と思った。正確な日にちが分かるだけで、涙が出そうだ。

それと同時に十二月といえば。

「クリスマス…懐かしいな。」

という考えが浮かぶ訳で。

「繭にプレゼントでもあげようかな……」

なんて考えたのであった。

⏰:07/12/24 19:57 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#121 [桔妁]
 
と、そこに。

「そらやー!ばっちゃんから饅頭くすねてきたから食おう!!」

「…おぉ頼仲!いいところにやってきたじゃんか!!」

「は?」

――――

――


「わかった。つまり、おまいは繭に簪をあげたいというわけ。」

「そう!よろしくな!」

⏰:07/12/24 20:01 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#122 [桔妁]
 
仕事の都合上、さらに繭を何日も家に一人にするのは危険と考えたので、頼仲にお使いを頼むことにした。

「三日で帰るけ!」

「まじかよ。」

余りに早いなと思いながら、天弥は頼仲に手を振った。


「さァ、今日から日にちをきちんと数えなくちゃな…。」

――――

⏰:07/12/24 20:04 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#123 [桔妁]
 
三日後…。今日は十二月二日だ。

「……」

盛り上がった土の上で手を合わせる。

これは、仕事の"後片付け"だ。

と、草の外から人の影があった。

「誰ですかァ!!!」

裏返った声で、明らかにビビっていた。女か?

「怪しいモンじゃね-よ。」

そう言うと、返ってきたのは繭の声。

⏰:07/12/24 20:10 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#124 [桔妁]
 
「天、弥?」

まさか、こんな夜に迎えに来るなんて思わないから、動揺して、

さっき頼仲からもらった簪を胸元から落とすところだった。

しかも、この仕事が繭にばれるのは嫌だ。

さらに慌てた俺だった。


そんな俺の事を知りもしない繭だから。

「迎えにきたんだ」

なんて言われたら恥ずかしい。

⏰:07/12/24 20:14 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#125 [桔妁]
 
しかし、最近よくない噂の侍が居るようで、繭がよく無事だったと安心した。

だから叱ってやったのに。

天弥のほうが小さいから説得力が無いといわれた。


と、頼仲が女と家に来ていたようで。

あれほど言うなと言ったのに、繭に"お届け物"のことを喋ったようだ。

⏰:07/12/24 20:17 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#126 [桔妁]
 
しつこく聞いてくる繭。

まぁ、あとで分かるんだから…って言ったらお見通しか。


冷たい木枯らしが、吹いていた。


.

⏰:07/12/24 20:19 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#127 [桔妁]
 
その日の、夜の事だった。

「…何コレ?」

繭は俺に茶色い球体を渡してきた。

…イヤ、多分"アレ"ではないと思うが……

「コレなに?…やだなぁ!過去きて三年しか経ってないのに忘れちゃったの!?チョコボールだよ!!」

「は?……あ、あぁ!!」

⏰:07/12/24 23:00 📱:SH903i 🆔:8vB3PghU


#128 [桔妁]
 
ようやく、わかった。

チョコボールといえば…あのキョロちゃんの、あれか。

銀のエンジェル、三つ集めたのに…過去来てパァだったんだ、そういえば。

「で、これがなんだっていうんだ?」

⏰:07/12/25 00:00 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#129 [桔妁]
 
「ん-…。勿体ないから、一人で食べようかと思ったんだけどね……。あげる、よ。」

繭がチョコボールを差し出す。

「?」

タダでくれるなんて、なんか繭には有り得ないと思い、不思議に思っていた。

「ほ、ほら、クリスマスだと思って!!今、もう少しで雪降りそうじゃん!ね?」

けど、何故か今日の繭は素直に受け取れたから、俺も素直に受け取った。

⏰:07/12/25 00:06 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#130 [桔妁]
 
「…あ、ありがと……」

チョコボールって、食べるのにこんなに緊張しただろうか…。

俺はゆっくり口に運んだ。

「……あ!!」

「!!?ななな何だよ!!」

食べようと思ったら、繭が大声あげるもんだから口ん中に落っことしてしまった!!

⏰:07/12/25 00:08 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#131 [桔妁]
 
「し、賞味期限…平気かナ?」

「え、」

冷や汗かいたふうに笑う繭は、なんか憎めないが…

腐ったチョコだったら…どーするんだよ俺!!


「あ、来年の一月まで平気だ!あははっ!!」

口の中のチョコボールのことを気にしていたら繭がいった。

「な、なんだよ……。…ていうか…なんで本当に俺にチョコボールなんか?」

⏰:07/12/25 00:12 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#132 [桔妁]
 
そこがやはり疑問だ。

誰より食い意地のはった女だから、絶対に有り得ないのに……

「ん?…本当にクリスマスプレゼントだよ!」

そういう繭を、今日は信じようと思う。

「でもさ、普通…チョコはバレンタインじゃねーの?」

そこで、俺がチョコボールを食べながら、そうやっていえば。

⏰:07/12/25 00:16 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#133 [桔妁]
 
「いいじゃん!…ほんと、有り難うのひとつくらい言ってくれればいいのにっ!!」

がみがみ言う繭が楽しくて仕方ない。


こいつにとって、家族や友達に会えないのは不幸なのだろうけど、俺は繭に会えて、今までの三年間の不幸な日々が変われたから幸せだ。


本当のクリスマスの日には、きちんとプレゼントをあげよう。少なくとも、俺と過去に居て、楽しいと思える日が、ひとつでも増えるように。


.

⏰:07/12/25 00:21 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#134 [桔妁]
 
―Side繭――


夕刻―――…。

「静かでつまらない……。」

床に座っている繭だが、自分の心臓の音が聞こえるくらい静かで、つまらない。

と、収納スペースに一際古い箱があるのに気がついた。

「…金めのものかな……。小判とかならもらっちゃおー…」

興味本位で、箱に手をかけて、中を見た。

⏰:07/12/25 00:25 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#135 [桔妁]
 
「?服??」

それは、小さめのTシャツと短パンだった。

恐らく、というか確信を持ち天弥のだろう。

そして箱の底に、紙が入っていた。

手紙のようだ。

「…旅行楽しんでいらっしゃい……、おばあちゃんの言う事を聞くのよ。寂しくなったら、電話するのよ。」

お母さんの字だろうか。愛情が滲み出ているようだ。

⏰:07/12/25 00:29 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#136 [桔妁]
 
慣れた慣れたと、天弥は言っているだろうけど。

「天弥だって…帰りたい、よね…」

三年間、どんな思いだったんだろう。知らない土地で一人きりで…。

「よしっ!!元気つけてやらなくっちゃね!!」

私は、隠し持っていたチョコボールを鞄から取り出した。

「現代の味を食べさせてやろうかな!!」

⏰:07/12/25 00:31 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#137 [桔妁]
 
そう、私だって寂しいけど。

天弥が居たからだいぶ違う。

そのへんは、私だって分かってるんだから。

少しでも、繭が来てくれてよかったよ俺。とか思ってくれたらいいなって。


だから、まぁ…

早川先輩よりは下だけどね、天弥だって幸せでいて欲しいなって思うわけです。

―――

.

⏰:07/12/25 00:36 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#138 [桔妁]
 



通じていないようで

通じている


そんなふたりの

冬の始まりは

なんとなく

暖かかった。

⏰:07/12/25 00:39 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#139 [桔妁]
 
―第4章―

 ―新しい心の名前
   さようなら古い心――


.

⏰:07/12/25 00:41 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#140 [桔妁]
 
「お疲れ様、今日はあがりでいいよ。」

この店の主人の言葉は決まって定刻に。

「有り難うございます!」

私は、いつもとはきっと違う明るい声で言う。


だって今日はデートなんだから!

「…て、あれれ…天弥?」

⏰:07/12/25 01:40 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#141 [桔妁]
 
岩影に、天弥が居た。

「趣味悪いなぁ-。デートののぞき見?」

「………行くのか、本当に?」

私の厭味を無視し、天弥は聞いてきた。なんか、この顔は母性本能をくすぐるというか…。

でも今日は外せない!!早川先輩似の人とのデートは!

⏰:07/12/25 01:43 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#142 [桔妁]
 
「行くよ?…ていうか…天弥は、ど-したのよ?こんな時間に…」

「…仕事。」

そっけなく答える天弥に多少の苛々を覚える。

「ああ、ふ-ん。……あ、あの人だ!…じゃあ行く…」

足を一歩進めようとすると、不意に天弥が着物の裾を掴んだ。

「…やめとけ。」

そう私には聞こえた。…だが振り払って歩いていった。

⏰:07/12/25 01:48 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#143 [桔妁]
 
「本当にいらしたのですね!」

「俺が契りを破るとでも思ったか。…では、行くか。乗れ。」

前方に、馬――…。

しかも白馬!!!

王子様ァ!!!!


「チッ………」

二人が乗り、そして走りだす馬を追う少年が居た事は、誰も知らない。

⏰:07/12/25 01:54 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#144 [桔妁]
 


「そらや-……あれ、居ないんか?」

同時刻。頼仲とお雪が家にやってきたが、二人は居ない。

「折角一緒に呑もうとしたのにのう…。」

「何処へ行かれたのでしょう?」

頼仲は、持ってきていた酒を少し呑み、言った。


「まぁ…仕事でもやっとるんだろうねぇ……」

⏰:07/12/25 08:38 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#145 [桔妁]
 

「…ここ、ですか?」

繭がついたのは、町はずれの小屋の中だ。

中には高級そうな着物や、金銀財宝が置いてある。

「あぁ、今の宿泊場所だ。さぁ、座れ。」

「あ、有り難うございます…」

微笑んでくれると、やはりカッコイイ。

⏰:07/12/25 08:42 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#146 [桔妁]
 

「茶屋の娘…名は何と?」

出された飲み物は、お酒のようだった。まだ未成年だけど…早川先輩が出してくれたのだから…と、ちびちび飲む。

「私は繭と申します……あの…貴方は…」

「俺か?ナギだ。…まぁ、流れ者だから……………て…………るん……」


あ、れ……?

繭の意識は遠退いていった。いつの間にか、ナギさんの声も聞こえない。お酒の飲み過ぎ、にしては少な過ぎる量だし……

そんなことを考えている間に、完全に意識がなくなった。

⏰:07/12/25 12:55 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#147 [桔妁]

     お知らせ

・桔妁日常・
bbs2.ryne.jp/r.php/mynews/5249/

これからの情報や桔妁について...

⏰:07/12/25 21:01 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#148 [桔妁]
 
その頃…息を切らした天弥は町中に居た。

天弥の脚力は、並外れていた。だが、さすがに馬に追い付く事は不可能で…

「くそ…見失った……」

町に入った所で、馬を見失った。

「なんで繭を……………ん?」


急に、後ろから気配を感じた。

「天弥殿!!!!」

それはひとりの侍格好をした男だった。そして、天弥のよく知る人物…

「頼仲の兄上…?」

⏰:07/12/25 21:18 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#149 [桔妁]
 
頼仲とは打って変わった真面目な人柄の彼は、いつも何かと力になってくれる。

「弟から聞いたよ。今日"奴ら"が動いたんだって…。」

「…頼仲が?」

呼吸を直しながら俺は天弥は聞く。

「まぁ、正確には遊郭のお雪の客が漏らした話だが……今晩、娘を売って一儲けするらしい。」

娘…いわずと知れた、繭だろう。

「有り難うな…」

⏰:07/12/25 21:31 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#150 [桔妁]
 
場所の目星はついていた。

繭に出会ってしばらくのとき、村に現れた不貞な奴らの処理任務についた。

そのときに突き止めた場所は、町の端にある賭博場の地下だ。

取引はそこで行われるに違いない。待ち伏せればいいだろう。

「…じゃあ、俺は行く。」

そう頼仲の兄に別れを告げようとすると、彼は言った。

⏰:07/12/25 21:37 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#151 [桔妁]
 
「天弥殿は…変わったな。あの、繭殿のお陰だろうが……。余り、見失うなよ。」

それを聞いた天弥が、頼仲の兄の方を振り向いた時の眼は、冷えていた。とてもとても暗く…………。

年上の彼から見ても身震いをするような。

"これ"が天弥の職業なのだと、余計に実感させられる。


「……息を切らしていくな。負けるぞ。」

それだけを言うと、頼仲の兄は戻っていった。

⏰:07/12/25 21:46 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#152 [桔妁]
 

「………………。」

町の端の賭博場に急いだ。

まだ、間に合うか。奴らより先に繭を救わなくては。

過去世界での自分の苦しみを変えたのは繭だ。

いつの間にか、俺にとってかけがえのない人になった。

そう。とにかく、繭を…………


そんな気持ちとは裏腹に、冷酷な眼が言う。

⏰:07/12/25 21:50 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#153 [桔妁]
 
お前に幸せなどはない。

ささやかな自分の幸せさえも犠牲にしなくては、この職業はままならない。

でなければ、迷い死ぬ。

ただ頼まれた通りに、どんな奴らだろうと殺す…

それが"天弥"の新しい生き方であり、きれいごとに染まる事はもうできない、と。

過酷な生活の中で生き残るためには、リスクを背負わなくてはならないのだ、と。

⏰:07/12/25 21:55 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#154 [桔妁]
 
生活のために、ささいな幸せを、明け渡したのだ。

父も母も兄弟も友達も諦めた。

もう、自分が生きる事に全てを捧げようとした。

"神隠し"。

神がそう自分を定めたのは何故だろう。なぜ自分が。

通常の居るべき次元から離されて、そこに生きていたという跡を消された。

なら、ここで作ろう。自分は此処に居たのだと。

⏰:07/12/25 22:03 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#155 [桔妁]
 
たしかに自分は存在していたと、たくさんの魂にしらしめる。


間違いだ、分かっているのに。

過去に来た自分、此処に居る自分を認められない。

もはや自分が何なのかと、わからない。


だから、そうするしかない。

例え、嫌われても、かけがえのない者の前で血が舞おうとも。

⏰:07/12/25 22:09 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#156 [桔妁]
 

―――――
――




「……?」

ざわざわと、周りがうるさい。これが目が覚めた時の印象だ。

そして、暗い部屋のひんやりとした土の上に座っているような感覚で、なおかつ腕は縛られていた。

「なんでこんな…確か…」


そう、この場は間違いなく、天弥が読んだ場所である。

⏰:07/12/25 22:40 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#157 [桔妁]
 
「ナギさん……」

そうだ。ナギさんの小屋に入ったら…

意識がなくなったんだ…。


(腕が拘束されてるのは気分悪いなぁ…。

ていうかまさか……ナギさんが私を…?)


過去に来たんだから、ある程度の変な出来事は想定していたが…

⏰:07/12/25 22:47 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#158 [桔妁]
 
まさか、絶対いい人だと思ってた人がこんなことを……

っていうか結んで何しようとしてるの!?


繭が余裕をこいてめくるめく妄想をしていると、左側が明るくなった。

扉が開いたようだ。

⏰:07/12/25 22:51 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#159 [桔妁]
 
「目が、覚めたようだね?」

一瞬眩しくて分からなかったが、確かに早…じゃなくて、ナギさんだった。

「ナギさん、あのこれ…」

聞こうとした瞬間だった。


ナギさんの両脇から二人の男が現れた。

「出せ。」

二人の男に命じたナギさんは、一足先に部屋を出た。

⏰:07/12/25 22:55 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#160 [桔妁]
 
一抹の不安を感じずには……?


いいえ一抹なんて、そんな小さくない。


本能が、第六感が…?

分からないけれど。

私からは、汗が一滴垂れた。…じめじめした涼しい空間なのに……。

⏰:07/12/25 22:58 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#161 [桔妁]
 
部屋の外も、薄暗い部屋だった。…言うなれば地下室。

「今日、皆に集まっていただいたのは他でもない。」

二人の男に取り押さえられていた私には、いつの間にか猿轡がされていた。

つまり何も喋れず、何事かと聞く事もできない。

そのうちに、上擦った声のナギさんが話し始める。

「今日は、私自らが出向いて会得した代物だ。」

(何……?)

二人の男たちを見ると、ニヤッと笑っている。

⏰:07/12/26 22:44 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#162 [桔妁]
 
「さぁ、大判三枚との交換だ!」

(…大判三枚……?)


皆、一様に息を呑むのが聞こえた。

今まで意識に止めなかったが、部屋には所狭しと目つきの悪そうな男が居る。

(どういう、こと……)

拘束されて、訳のわからない所に連れられて、あやしいおじさん達が居るのだ。

いいところではないだろう。

⏰:07/12/26 23:02 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#163 [桔妁]
 
「せめて大判一枚にしておくれよ。高すぎだろうね。」

「いくらなんでも三枚は無理じゃろうね、遊女よりもお高いだろう。」


しばらく静かだった空間がざわめきだした。

と、同時に繭は状況も掴めてきた。

(売られようとしてる?)

そ、そんなの!冗談じゃないっ!!

繭は急にテンパり始めた。ものすごく、あがいた。

⏰:07/12/26 23:07 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#164 [桔妁]
 
「……ほう…あの女、まだ動く元気があると…。不良品だな…?」

ひとりの男が呟いた気がする。

と、同時に周りが値下げコールをしてきているではないか。

「ええい!仕方のない!!…大判一枚、小番三枚で手を打とう!!」

(は!!??ななナギさん!?)

⏰:07/12/26 23:10 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#165 [桔妁]
 
私が驚く間に、三人の男が前に出た。

…私を買おうとする奴か……。

「ほほう…久しい顔ぶれだな。」

ナギさんは三人を目下に見ながら言っていた。



ああ、こんな訳のわからない連中に売られてしまうんだ…。

さっき、天弥は行くなって言ってたっけ…。言う事を聞けばよかった……。

⏰:07/12/26 23:15 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#166 [桔妁]
 
今更になり、後悔が頭中を駆け巡った。

涙も出た。


甘く見た自分が馬鹿だったなと…。今更では遅いとも。

(天弥、呆れてるだろうな。…俺が折角忠告したのによー、とか言って……)



と、悟り始めた時であった。

⏰:07/12/26 23:20 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#167 [桔妁]
 
部屋の奥…(否、恐らく入口部分だろう)から、火の手が上がった。

「な、なんだ……!!」

ナギさんも想定外らしく、慌てふためいている。

そして入口の男達から、じわじわと焼かれていく。

逃げる者も居ない。

入口も出口も、あそこのみなのだということだろうか…。

「だ、誰だ!?役人か!?」

ナギさんがそう言う頃には、異臭が漂って、周りは火の海だった。

⏰:07/12/26 23:24 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#168 [桔妁]
 
煙が、苦しい…。

というより、意識がまた薄れていくような気持ちだ。

目がチカチカして、なおかつ室内温度が高くて、釜戸の中ってこんな感じなのか。


と、次の瞬間。

(………っ!?)

目の前に居たナギさんから、赤い液体――もとい、血が飛び散り、首が消えた…。

時代劇もびっくりである。そして後ろには人影。

こいつが切った事は明白だろう…。誰かは、判らないが。

⏰:07/12/26 23:28 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#169 [桔妁]
 
そして、びっしょびしょの布が被せられる。


………と、いう所から、繭の意識は途絶えた。





気付いた時には、見たことのない部屋に居た。

⏰:07/12/26 23:31 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#170 [桔妁]
 
「…頼仲ー。こい。」

ぼんやりした意識の中、知らない男の人が頼仲を呼んでいることだけが分かった。

しばらくすると、頼仲が私の顔を覗きこんでいる。

「繭!よかった!!生きとってくれた!!」

そんなことを、いいながら。


ああ、そっか…私――。

あの時の状況が私の中にあらわれた。

⏰:07/12/26 23:35 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#171 [桔妁]
 
「――…天弥は、?」

頼仲くんの前で、失礼だったろう。いきなり天弥とは。

ただ、謝りたかったからなんだけれども。

言う事きかなくて、ごめんて。


「そらやか?……あいつなら…ちょっと怪我をして休んじょるよ。」

「え?け、怪我??…それに私はどうやって頼仲くんの所に…」

⏰:07/12/26 23:39 📱:SH903i 🆔:TpUAuREM


#172 [桔妁]
 
なんでも天弥は山菜採りの最中に、山から転がり落ちたらしい。

なので自宅療養中とのこと。

「…繭は……うちの前に倒れていたんよ。で、意識ないから預かったという訳じゃ。」

つまり、ここは頼仲くんの家ということか。


"誰か"が運んだのだろう。ナギさんの首を斬った"誰か"が。

⏰:07/12/27 14:20 📱:SH903i 🆔:troNYYyc


#173 [桔妁]
 
「と、面倒見てくれてありがとう!!…じゃあ、天弥が心配だから行くね!」

こうしちゃあいられない。私は元気な訳だし、天弥の看病でもしなくては。


「平気なんか!?」

頼仲が繭の身体を支えようとする。だが、繭の足はしっかり地についている。

「うん!じゃあね-!」

外を見ると、町の中のようだ。これなら一人でも帰れる…………。

⏰:07/12/27 14:24 📱:SH903i 🆔:troNYYyc


#174 [桔妁]
 
―――――


帰れる…………?

そんな訳ないだろ-っ!!!

町から村まで8キロあるのに、そんなにパパッと帰れる筈がないのだ。


「有り得ない-……。でももう5キロは歩いたよね…。」

そう、繭はがんばったつもりだった。だいぶ歩いたつもりだった……。

だが、実際は3キロしか進んでいなかった。

そろそろ途方に暮れる繭。

⏰:07/12/27 14:29 📱:SH903i 🆔:troNYYyc


#175 [桔妁]
 

と、向かいから人が歩いて来るではないか。

「……お…天弥ぁ?」

しかも自宅療養中の天弥だ!

腕に箱を抱えながら歩いて……いや、走っている。

向こうも繭に気が付いたようで、さらに速く走ってきた。

⏰:07/12/27 14:33 📱:SH903i 🆔:troNYYyc


#176 [桔妁]
 

「ま、繭かよ!!」

目を丸くして繭を見る天弥。

「や、ていうか…天弥、怪我は…?しかも服違うし、その箱は何…etc」

つっこみ満載の繭も、目を丸くしている。

⏰:07/12/27 14:35 📱:SH903i 🆔:troNYYyc


#177 [カナ]
面白いです☆★
頑張って下さい

⏰:07/12/30 22:40 📱:F703i 🆔:4Y81UAeU


#178 [桔妁]

カナさんありがとう!!

年末年始は忙しくて、あまり更新できないかもしれませんが、頑張ります

⏰:07/12/31 14:04 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#179 [桔妁]
 
「え、いや……これは…」

しどろまどろしているために、怪しい感じが滲み出ている。

「…まぁ、何があってもいいけど……凄い怪我じゃん!!なんで、休んでないのよ!!

感情に任せて怒鳴る繭に、背中の筋が伸びる天弥。

だが、その後は微笑みが止まらない。

⏰:07/12/31 14:12 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#180 [桔妁]
 
「な、何!?笑わなくたって…」

「いや、はは…なんでもね-よ…あはは!」

折角怒ってやったのに笑われるなんて…。

なんかいつでも上に見られているようで腹が立つ…。

「じゃあ、俺これ届けるから行くな!」

⏰:07/12/31 14:18 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#181 [桔妁]
 
「ど、どさくさに紛れて逃げるつもり!?」

まだ喚く繭の横を風のように走って通り抜ける天弥。


「ちょ…待って、よっ!」

間一髪、横を過ぎ去る前に繭は天弥の腕を掴んだ。

「……いぃッ!!!!」

ゴトン、と天弥の腕から木箱が落ちた。

⏰:07/12/31 14:27 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#182 [桔妁]
 
「あ、ごめ…」

掴まれているのとは逆の手で、地面に爪を立てる天弥。

その痛さを物語るには十分だった。

そこから繭が視線を掴まれた腕に移すと、そこに巻いてあった包帯(真っ白でなくて黄ばんでいる)が、ひらひらと外れていった。

「あ……」

天弥がそう一声、発したときにはもう、繭は見てしまっていた。

⏰:07/12/31 14:35 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#183 [桔妁]
 
痛々しい、火傷を負った腕を。


(火傷…?嘘、だって天弥は山菜を………)

はっと、繭は思い出した。

いつだったか。頼仲と遊んだ日の帰り道に、盗賊が死んでいて、その先に刀を持った天弥がいて。

そのときも、天弥は"山菜採り"と言っていた、と。

⏰:07/12/31 14:40 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#184 [桔妁]
 
(じゃあ、まさか…天弥は嘘をつくときに"山菜採り"って言うんだとしたら……)

では、この火傷はつまり…

「いや、や…違くて…な…」

苦笑いで弁解する天弥の事を、繭の目にはどう映っただろうか。

「ナギさんを斬ったのも、何人の人も焼いたのも、私を助けたのも……天弥、?」


否、多分、何も見えてはいないだろう。だって繭の目は、水で滲んでいたのだから。

⏰:07/12/31 14:46 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#185 [桔妁]
 
それを、後から見る影があった。

頼仲の兄だ。

繭が家に辿り着けるか心配で、こっそり後をつけていたのだ。



「……繭殿に、気付かれてしまいましたか…。繭殿がどう心変わりしてしまうか…。天弥殿、残念だったな…」

ぽつりとつぶやいた頼仲の兄は、町の方に向くと歩きだした。

後ろに感じる空気は、耐えられるようなものではなかった。

⏰:07/12/31 15:04 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#186 [桔妁]
 
―第5章―

 ――見えなくて、大きくて
 抱えきれない大切なもの。―


.

⏰:07/12/31 15:09 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#187 [桔妁]
 

「…繭が、おかしいんだ!」

ここは頼仲の家である。

そこに押しかけたのは、天弥だ。

雪降る中を走って来た天弥はあまりに寒々しく見えて、
普段は家に上がっても挨拶ひとつしない頼仲の兄が、今回ばかりは手ぬぐいを差し出してくれた。

「…で、繭がどうしたのじゃ。」

⏰:07/12/31 15:18 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#188 [桔妁]
 
「繭、なんか…寝てないみたいで……。体調が悪そうで…」

本気で心配しているようであったが、頼仲の兄がぽそりと言った。

「それは、天弥殿が殺し屋だってばれたから、だろう。」

「え、なんで頼弦(ヨシツル)がそんなこと言えるんだ?」


天弥は膝を抱えて、そこに頭を入れた。「兄上と呼びなさい」という頼仲の兄の声は、天弥に遠く聞こえた。

(…やっぱり、ばれたらやべーよな……。)

頭の中は数日前から、繭の潤んだ目の像を鮮明に映し出す。

⏰:07/12/31 15:34 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#189 [桔妁]
 
「………」

「……………すまん…」

頼弦が謝るが、空気はよどんだままだ。


「…や、でも!あれじゃ、そらやが言っていた"くらすめす"?のときに簪渡したら、機嫌もよくなるじゃろ?」

「…クリスマス、な。…でも、頼仲の言うことも一理あるかもしれねーな…」

天弥の目に、生気が戻りつつあった。

⏰:07/12/31 15:47 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#190 [桔妁]

来年もよろしくお願いします!!

紅白は見てませんでしたが
白組が勝ちましたね!!

私はよゐこの無人島SPを
見ていました!笑

本当、来年はさらに成長を
遂げて、皆様に小説を
お送りしたいと思います!

では、残り少し!!よいお年を!!

⏰:07/12/31 23:46 📱:SH903i 🆔:ioR6Y8w2


#191 [桔妁]
 
――――


「あ、あの…ま繭―…繭…」

夕刻。数日前までは華のある話が舞っていたはずの夕食時だ。

近寄るだけでピリピリしそうな空気の中心に居る主に、天弥は話し掛ける。

だが、主である繭は目も合わせてくれようとしない。

「…ま、繭………」


と、急に繭が立ち上がった。
繭は、家を飛び出して、走っていった。

⏰:08/01/01 02:07 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#192 [桔妁]
 


ただ一直線に、目指すのは崖の下へ――…。


降りしきる雪の寒さは、現代の北風よりも冷たく、身体に染みていった。

ひとつひとつの雪が、涙を流す言い訳となった。



だが、どの雪も繭の心にはかなわなかった。

⏰:08/01/01 02:18 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#193 [桔妁]
 

気が付けば、正面が壁…。

そう、崖の下だ。

繭は、崖を素手の拳でなんども殴るようにしていた。

ここ数日、繭はあることを思っていた。


(天弥は、ここで私を救ってくれて…ご飯もくれたし、現代同士で仲良くしてくれた……。

野蛮な連中とかエロ親父からもかばってくれてた…

⏰:08/01/01 02:24 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#194 [桔妁]
 
ただ、まさか人を殺すような人だとは思わなかった。

性悪なんだろうけど優しくて、どっか幼稚だけど暖かくて大きくて、そんな天弥が…。)

「……っ。…――帰してよぉ―。…いやだよいやだよ…私は、私は…」

そこへ、走って追い掛けた天弥の姿が崖の前に現れたが、繭の目に映る事はなく。

「いやだよ…。時代に流されて、人殺しになりさがるのは、嫌だよ……っ…。私も、変わる前に、帰してよ………!!」

天弥は、その場から動けなかった。

⏰:08/01/01 02:30 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#195 [桔妁]
 
気が付いたときに繭は、頼仲の家に居た。

意識を失った訳ではなく、うっすらしか記憶にないだけで、声をあげて泣いていたようだ。

しかも家に頼仲は居なく、その兄だったのだから迷惑極まりないだろう。


「……あ、あの…なんかすみませんでした…頼弦さん…」

落ち着いた時の繭は、隣に居た頼弦に深く謝った。

⏰:08/01/01 19:43 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#196 [桔妁]
 
「いや、いい…。だが、一言言わせてもらう…いいか?」

しゃくりがおさまり、自分の息遣いしか聞こえないことが少し恥ずかしいと思いながら、繭は頼弦の方を向き、頷いた。

「奴の…天弥殿の気持ちを、分かってやってはくれぬか…?

天弥殿は、生活のため、仕方なく…人斬りをしていたんだ。身寄りもなく、だからどうしようもなく…

幸せと引き換えにな…。」

⏰:08/01/02 00:04 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#197 [桔妁]
 
隙間風が余計に寂しさを煽った。

繭には、その意味がよくわからなかった。


「仕方ない……。…天弥殿―。」

頼弦は扉に向けて天弥を呼んだ。

すると、外から雪を被った天弥が現れた。

それと同時に少し吹雪が入って来て、その寒さが伝わった。

⏰:08/01/02 17:02 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#198 [桔妁]
 
「繭、っ…」

天弥は、繭の方に駆け寄った。


「俺、もう帰れないと思ったから……だからヤケになってた。

でも、もう…繭が来てからは…やめようと思って、上の方に言いにいったんだ…。

だけど、最後に極悪事件を任されて…。」

⏰:08/01/02 17:08 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#199 [桔妁]
 
「言い訳は、いらない!!」

繭は、一生懸命に話す天弥を蹴飛ばした。

と、天弥の胸元から布の包みが落ちた。――簪だ。

繭は静かに、胸元から落ちた物を拾った。

「あ、ごめ……これ、何―…?」


いつの間にか、頼弦は部屋から居なくなっていた。

⏰:08/01/02 22:08 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#200 [桔妁]
 
「…や、これは、その……」

今出すべきではないことは承知であるそれは、繭の手へと渡り、布を開けられて、中身が見えてしまった。

「簪、何するつもりで…」

「いや、今日、現代でいうとクリスマスで…で…」

天弥は下を向いたまま答えた。

「つまり、クリプレ?……天弥が買ったの?」

⏰:08/01/02 22:13 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


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