Castaway-2nd battle-
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#162 [◆vzApYZDoz6]
<Font Size="-1">それを確認したハルトマンが、満足そうに手を引っ込めた。

「失礼します」
「ほっほ、そう畏まらんでもよい。楽にしなさい。」

顔の前で大げさに横手を振りながら、ハルトマンが再び立ち上がる。
デスクの上に置かれた急須にポットのお湯を注ぎ、3人分の湯飲みと一緒にお盆に乗せて戻ってきた。

「煎茶じゃ。遠慮はせんでよいぞ」

席につきながら、何か言おうとしていたリーザを牽制し、湯飲みにお茶を灌ぎ始める。
コポコポとお茶を淹れる音と共に、煎茶独特の芳ばしい香りが辺りに広がった。

⏰:08/07/22 21:30 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#163 [◆vzApYZDoz6]
それを確認したハルトマンが、満足そうに手を引っ込めた。

「失礼します」
「ほっほ、そう畏まらんでもよい。楽にしなさい。」

顔の前で大げさに横手を振りながら、ハルトマンが再び立ち上がる。
デスクの上に置かれた急須にポットのお湯を注ぎ、3人分の湯飲みと一緒にお盆に乗せて戻ってきた。

「煎茶じゃ。遠慮はせんでよいぞ」

席につきながら、何か言おうとしていたリーザを牽制し、湯飲みにお茶を灌ぎ始める。
コポコポとお茶を淹れる音と共に、煎茶独特の芳ばしい香りが辺りに広がった。
3人分の煎茶を灌ぎ終え、ハルトマンは茶を1口含んでから話を始めた。

⏰:08/07/22 21:31 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#164 [◆vzApYZDoz6]
「そうじゃな…とりあえずわしの紹介から始めようかの」

これから重要な話をするであろうに、場の雰囲気は非常に穏やかなままだった。
常に笑顔を崩さないハルトマンの存在が、そうさせているのだろうか。

「わしは元々地球に住んでおった。リカルド・ハルトマンと言うのはディフェレスに渡ってから使いだした名でな…駆藤 悠登のほうが本名じゃ」

「なぜディフェレスに行かれたのですか?」

「原因は分からん。俗にいう『神隠し』のような現象に見舞われ、気付けば向こうの世界におった。もしかしたら誰かの仕業かもしれんが、わしの身に何も起きておらんから可能性は低い」

⏰:08/07/22 21:32 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#165 [◆vzApYZDoz6]
「どうやらスキルやゲートとは別に、自然現象でディフェレスに飛ばされる事も稀にあるようじゃ。恐らくはそれじゃろうな」

最初は気だるそうにしていたシーナは、いつの間にか話を聞く顔が真剣そのものになっていた。
そう言えば、いつだったか内藤がそんな話を聞かせてくれた気がする。

「とにかく、わしは異世界で迷子になったわけじゃ。アテもなくさ迷い歩いておると、ある1つの集落を見つけた。それがパンデモじゃ」

時々煎茶をすすりながら、ハルトマンは話を進める。
決して楽しい出来事ではないのに、まるで幸せな思い出を反芻するかのように、穏やかな笑顔を絶やさなかった。

⏰:08/07/22 21:32 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#166 [◆vzApYZDoz6]
「そうしてわしはパンデモで保護され、長いことパンデモで暮らしておった。パンデモのスキルも身に付けてな」

「パンデモのスキルって…『ライフアンドデス』だっけ?」

「そうじゃ。あれはパンデモ特有のスキルではあるが、どうやらわしは潜在的にその力を持っておったようでな。…そうじゃな、今にして思えば、あの時パンデモにたどり着いたのは偶然ではなかったのかもしれん」

既に興味津々といった感じにハルトマンの話を聞いているシーナとは対照的に、リーザは俯いて深刻な顔色をしている。

この時リーザはある別の事を考えていたが、すぐに思考を止めた為に気付く者はいなかった。

⏰:08/07/22 21:33 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#167 [◆vzApYZDoz6]
「ディフェレスに飛ばされたのが12歳の頃じゃった。すぐにパンデモで暮らし始め、それからは実に50年以上の時をパンデモで過ごした」

また茶をすすり、今度は机の真ん中に置いてあった菓子折りに手を伸ばす。
煎餅を1枚つまんでシーナに差し出したが、遠慮されてしまったので残念そうに自分の口に運んだ。

「そして、65歳の頃にバニッシ…こっちで言う内藤がバウンサーの一員になった時に一緒にハルキンに誘われ、バウンサーに所属するようになった。族長の座をバニッシの父であるバッシュに譲り渡してな。そうして地球に再びやって来たのは、その直後じゃった」

⏰:08/07/22 21:33 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#168 [◆vzApYZDoz6]
「会長って誰でも誘うのねー、あたしなんて物心ついた時には既にラスカに怒鳴られてたよ」

シーナがハルトマンにつられてか、昔を思い出す。
シーナ、そして双子の姉のリーザは、記憶も無いほど幼い頃にハルキンに引き取られた。
2人が引き取られる前までは、ラスカはバウンサーの紅一点だった。
その当時10歳だったラスカは、同じ女の子であるシーナとリーザを妹のように世話していたものだった。

「そう言えばラスカもあたしと8つしか変わらないし…会長、ロリコンだったりして」

「ほっほ、言うのう。まぁ、あやつが連れてくるのは年端もいかぬ若い奴ばかりじゃったな」

⏰:08/07/22 21:34 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#169 [◆vzApYZDoz6]
「ハルキンが4、5歳のお主らを連れてパンデモにやって来た時は驚いたわい。なぜわしを誘ったのかと訊くと『地球へ行ってくれ』じゃらな」

ほっほ、と笑い飛ばす。
その姿は、とても70歳近くの老人には見えないほどに活気に溢れていた。

「『これから地球で活動する必要がある。お前が向こうでできるだけ地位の高いところに居てくれれば助かる』と言いおったよ。わしの本籍を抹消していなかった両親に感謝せんとな」

その時だけ一瞬ハルトマンの目が淀んだのをリーザは見ていたが、何も言わなかった。

「まぁ、そんなわけでわしは今、ここ歌箱市の市長をやっておる、というわけじゃ」

⏰:08/07/22 21:35 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#170 [◆vzApYZDoz6]
「うん、よーく分かったよ」

シーナが柄にもなく沁々と頷く。
ハルトマンの話は何より、その人柄は信用できるものだった。

ならば、と一言、ハルトマンが煎茶をすする。
湯飲みを置いて、少し真剣な顔つきでシーナとリーザを見据えた。

「思い出話にも花が咲いた事じゃし、そろそろ本題に入るぞ。今、ディフェレスではどうなっておる? ハルキンからは、グラシアを倒した事は聞かされておるが」

「それなんだけど、実は…」

シーナとリーザは、その後の出来事で知っている事を全て話した。
グラシアがまだ生きている事、新たな敵、地球とパンデモが狙われている事。

⏰:08/07/22 21:35 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


#171 [◆vzApYZDoz6]
とにかく知っている事を子細に説明していく。
ハルトマンは、確認するように何度も小さく頷きながら、2人の話を聞いていた。

「……なるほど、そんな事が起きておったのか。しかしまた、随分とダッシュな展開じゃのう…」
「そのくせ更新遅いしね。作者は絶対やる気ないんだって」
「……2人とも、一体何の話をしているの?」
「え、何の話って現状の話じゃん。何言ってんの姉さん?」
「……何でもありません」

ふぅ、とリーザは1つ小さなため息をつき、煎茶を1口すすった。
ハルトマンが昔を語り出してから今まで1度も手をつけていなかったので、少しぬるくなっていた。

⏰:08/07/22 21:36 📱:P903i 🆔:L4Q41k3c


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