*柴日記*
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#500 [向日葵]
原因はこうなるとパニックを起こす私のせいなんだけど……でも……。
いざと言う時どうすればいいのぉ――っ!?
「しばちゃぁんっ!」
後ろから膝カックンを苺にされた柴は立てなくなって私に勢いよく寄りかかる。
そのせいで私は派手な音をたてて頭を打った。
そしてその音で何事か?と、リビングにいたお母さん達が出てきた。
「お姉ちゃんどうしたの!?」
「苺に攻撃された」
どこか不機嫌そうな柴が答える。
:08/08/17 01:33
:SO906i
:☆☆☆
#501 [向日葵]
実はキスをしていない原因は、私にもあるけれど、タイミング良く現れる苺にも原因があったり……。
そのせいで、お預け状態の柴。
密かにホッとする私。
それって変な事なのかなぁ……?
―――――――……
「お姉ちゃんのガードが堅い……ねぇ……」
今日は土曜日。
越は友達と遊びに行くと言って朝早くに家を出た。
空と苺は仲良くビデオに熱中してる。
残された部活がなく休みの桜と、越がいなくてつまらない柴はリビングでテーブルはさんで喋っていた。
:08/08/17 01:47
:SO906i
:☆☆☆
#502 [向日葵]
ついでなので、最近の越について柴は桜に相談している。
「堅いってか……ガチガチに緊張してるんだよね。前よりもすっごく。それも2人っきりになれば」
「柴さ、お姉ちゃんの性格分かってんでしょ?鈍くてうぶ。今まで恋愛経験なんてなかったって言うか、好意さえ悪気なくスルーしてたお姉ちゃんが、いきなり恋愛モードに集中出来るとは思えないね」
柴はテーブルに顎をのせ、頬を膨らます。
「柴も越より年上なんだから、余裕もたなきゃ」
それでも性急な柴だ。
触れていたいし、触れて欲しいと思う事すらいけないのだろうか。
:08/08/17 01:53
:SO906i
:☆☆☆
#503 [向日葵]
「お姉ちゃんはノロノロが1番なの。理性が強いのよ。柴みたいな狼精神がある人は刺激が強いのっ」
人をまるでケダモノみたいに……。
ますます頬を膨らます柴。
それを見て呆れたようにため息をつく桜。
「せめて今はいつもみたいに甘えて抱きつくぐらいにしてあげて。じゃないとお姉ちゃん、いつか知恵熱出ちゃうよ」
困らせるのは好きじゃない。
柴もため息をつく。
ただもう少しリラックスしてくれたらいいのにとだけ思う。
:08/08/17 01:59
:SO906i
:☆☆☆
#504 [向日葵]
「ってか柴……お姉ちゃんに何かしたの……?」
「普通に恋人達がするような事しかしてないよ」
「ちょっと、あんまりお姉ちゃん虐めないでよー?」
虐めてるつもりはないと言おうとしたが、顔を赤らめる越が面白くてからかっている柴は、やっぱり虐めてるのかなと口を閉める。
「ところで桜は好きな人とかいないの?」
「皆ナヨナヨしてるから恋人とか当分はいらないね」
「桜に敵う人はゴリラくらいだもんね」
その後しばらく、神田家には、叫び声が聞こえていたらしい。
:08/08/17 02:11
:SO906i
:☆☆☆
#505 [向日葵]
―――――――…………
美嘉と椿と遊んでいた私は、ふと後ろを振り返る。
「どうかした?」
美嘉の問いに、首を傾げながら答える。
「いや、なんか……桜の雄叫びみたいなのが聞こえた気がして……」
ポリポリと頭をかきながら、また足を進めた。
「さて、映画も見終わったし、次どこ行く!?」
「どっかでお茶でもしよっか」
と言いながらも、今は3時。
お茶する時間帯なので、どこの喫茶店もいっぱいだ。
:08/08/19 00:42
:SO906i
:☆☆☆
#506 [向日葵]
しかも今は寒い。
暖をとる為に居座ってる人も少なくないだろう。
寒い中、暖かい飲み物でも買って公園で喋るのも悪くないと思ったけど、椿がいるので少々心配だった。
「じゃあ、買い物しに行こうか!」
私の提案に、2人ものってくれたので、近くのデパートに行った。
周りを見れば、ふと気づく。
「そういえば……もうでクリスマスシーズン?」
「あ、そうだね。美嘉の祭大好きな血が騒ぎだす!」
:08/08/19 00:51
:SO906i
:☆☆☆
#507 [向日葵]
そうか、もうそんな時期かぁ……。
「あ、ねぇ、椿はどうするの?要さん……だっけ?と過ごすの?」
私の頭の中には、高級な夜景の見えるレストランで、綺麗な恰好した2人がグラスを交わしているなんともベタな姿しか見えない。
セレブって素敵だなぁ……。
柴ところもやっぱり豪華だったのかなぁ……。
でも柴は、あまりその頃あまり楽しくなかったのかもしれないなぁ……。
「アイツなら、年始までフランスだって」
「えぇっ!?」
妄想……いやいや想像していたビジョンが見事に崩れ去る。
:08/08/19 00:57
:SO906i
:☆☆☆
#508 [向日葵]
「なんで?」
椿は苦笑いする。
そんな彼女の代わりに、美嘉が説明してくれた。
「世界のデザイナー達が集まるクリスマスファッションショーとお正月ファッションショーがあるんだってさ。当然ファッション業界に君臨してるアイツは、顔出ししなきゃいけないって訳」
改めて、椿の婚約者さんは凄いんだなぁと感じる。
「会いに行けばいいじゃない。椿は寂しくないの?」
そう言いながら、この前自分が感じた寂しさを思い出して、少し胸が苦しくなった。
「会いにいけば、きっと迷惑がかかりますから」
:08/08/19 01:09
:SO906i
:☆☆☆
#509 [向日葵]
「美嘉はアイツが会いに来る気がするけどね」
どうやら要さんは椿にメロメロなご様子。
椿は要さんの事やっぱり好きだよね?
迷惑だからとか言ってるけど、本当は会いたくて仕方ないんじゃないのかなと思う。
私の場合はそうだった。
そう思えば…………たった今、柴に会いたくなった。
そんな思いをかき消すように、私は言う。
「なら、今からプレゼント探しに行かない?」
「美嘉はあげる人いないよー」
「椿にあげたらいいじゃい」
:08/08/19 01:13
:SO906i
:☆☆☆
#510 [向日葵]
私は家族皆にあげたい。
この何ヶ月かのうちで、私は改めて家族の大切さを学んだ。
愛情の大切さを知った。
それを教えてくれたのは、柴であり、神田家の皆だ。
血が繋がってるとか繋がってないとかなんて、大した事じゃない。
その人達を思い、思われたなら、それはもう家族なんだ。
デパートで、それぞれのプレゼントを選ぶ。
少し浮き足だってるのは気のせいではないだろう。
その時、プレゼントを選んでいた椿の手が止まった。
何を見つめているのかと思えば、携帯を見ていた。
:08/08/19 01:18
:SO906i
:☆☆☆
#511 [向日葵]
「み、美嘉ちゃん、越ちゃん。私、ちょっと帰らせて頂きます……っ!」
深々と頭を下げると、こちらの返事も待たずに椿は走って行ってしまった。
「ね、美嘉の予想通り」
少し拗ね気味の美嘉に、私は笑う。
あの椿が走って行く程の相手。
恋の力は凄いなとつくづく思う。
「美嘉、ちょっと電話してきていい?」
「ハイハイ。そうやって皆友情をほったらかしにするんだねーっと」
:08/08/19 01:22
:SO906i
:☆☆☆
#512 [向日葵]
「電話するだけっ!」
私より背の高い美嘉の頭を一撫でして、お店から少し離れた場所で私は電話をかけた。
「もしもし、柴……?」
――――――――…………
年末は美嘉の為にパーティーしてよね!
とまだ拗ね気味の美嘉と別れた私は家へと帰っていた。
ハァ……と息を吐けば、一瞬白くなって消えていく。
しているマフラーで口元を隠す。
「えーつっ!」
その声に顔を上げれば、まだ少し遠くの家の前で柴が立っていた。
:08/08/19 01:27
:SO906i
:☆☆☆
#513 [向日葵]
「ただいま柴っ!ごめんね、寒い中待たせちゃって」
「大丈夫っ。ところでなんで外に出なきゃいけなかったの?」
私は門から中に入る。
柴は私の冷えた手を取って包みこんでくれた。
「柴、もうすぐ何の日か知ってる?」
「なんかって……まさか越の誕生日とか!?」
「アハハ!違う違う!もっと簡単よ」
柴は眉間にシワを寄せて考える。
そんなに難しい質問をした訳じゃないんだけどなぁ……。
:08/08/21 02:12
:SO906i
:☆☆☆
#514 [向日葵]
「クリスマスだよ。クリスマス」
「あぁ、なぁんだ」
私は柴が包みこんでくれてる手をソッと放して、カバンからラッピングされた袋を出した。
柴はそれを見つめながら目をパチパチ瞬きさせる。
「少し早いんだけど、メリークリスマス!」
「え!?俺に!?」
頷くと、柴は目をキラキラさせた。
急いで、でも丁寧にラッピングを開けていく。
「マフラーだ……」
:08/08/21 02:16
:SO906i
:☆☆☆
#515 [向日葵]
プレゼントに選んだのは、柴の瞳と同じ、灰色のマフラー。
一目でこれだと思い、買ったのだ。
「ありがとう!すっごく嬉しい!」
本当に嬉しいのか柴は満面の笑みを浮かべて、いそいそとマフラーを巻いた。
巻いてまたニヒヒと笑う。
「どう?似合う?」
「うん!もちろん!」
柴は歯を見せて笑うと、私の両手をキュッと握って目を細めて微笑んだ。
「俺は越に色んなもの貰ってるね」
:08/08/21 02:19
:SO906i
:☆☆☆
#516 [向日葵]
「そうかな……?」
「ここで拾ってくれたのが越で本当に良かった。越が俺に色々教えてくれて、与えてくれて、幸せ。俺の幸せは、全て越のおかげだよ」
それは、私が望んでいた事。
柴の幸せを、私が与える事が出来ますようにって。
柴、あのね……。
私は柴が巻いているマフラーの端っこをグイッと引っ張った。
当然柴は前のめりになる。
その唇に、そっと私の唇を押し付けた。
柴が驚いているのが分かる。
:08/08/21 02:24
:SO906i
:☆☆☆
#517 [向日葵]
そして離れる。
「柴、あのね……。私、柴が大好き……っ!」
やっと言えた。
この溢れる想いを。
柴は私から色々貰ったって言うけれど、私だって柴から沢山のものを貰った。
それが嬉しくて、そしていとおしい……。
柴は急な私のキスと告白に呆然としている。
いつも私が戸惑う立場だから、なんかいい気分。
「……初めてのキスは俺からが良かったのに……」
ようやく口を開いたかと思ったら、なんだか拗ねている。
:08/08/21 02:28
:SO906i
:☆☆☆
#518 [向日葵]
「そんな事勝手に決められても困るよ。さぁ、寒いから早く家に……」
と進みかけた私の腕を、柴が掴んで引き止めた。
かと思えば、そのまま柴の腕の中へ。
「俺も好き……。越が大好きっ!」
そう言われれば、素直に嬉しくて、ギュッと抱き返す力が強くなった。
しかし、私は忘れていたのだ。
こんな素直な反応を見せれば、柴が調子にのるという事を……。
「ねぇ越。気持ちを再確認したって事で、もう1回キスしていい?」
:08/08/21 02:33
:SO906i
:☆☆☆
#519 [向日葵]
身の危険を察知した私は、手の力を入れて離れようとしたが、柴の力には敵わず、腕の中におさまったまま硬直する。
「し、し柴……っ、私、早く家に入りたいなぁーって思ってんだけどなぁー……」
「だぁかぁら、キスしたら入ったらいいじゃない!」
あぁ……私なんであんな事しちゃったんだろう……。
軽く後悔し始めている私の事なんて露知らず。
柴は顔の距離を詰める。
「や、あの、えと、柴っ……」
「わぁー!雪降ってんじゃーんっ!」
能天気な声は空のものだった。
私と柴は反射的にサッと離れる。
空は庭に続く戸を開けて外を眺めていた。
そしてこちらに気づいた。
:08/08/21 02:39
:SO906i
:☆☆☆
#520 [向日葵]
「あれ、越姉帰ってきてたんだ。ってか何してんの?こんな寒いとこで」
「や、お姉ちゃん達も雪降ってきたから嬉しくなっちゃって……っ!」
「あ、ちょっとお姉ちゃん聞いてよ!柴があたしに敵うのはゴリラだけとか言ったのよー!!」
桜もヒョイと顔を出す。
そして苺も同じように顔を出す。
まるでトーテンポール。
「だって桜って女の子っぽくないんだもん。俺のタイプじゃないね」
「あたしだってアンタみたいななよっちいのタイプじゃないから安心してっ!」
:08/08/21 02:44
:SO906i
:☆☆☆
#521 [向日葵]
まったくこの2人は……。
ああ言えばこう言う。
まぁケンカする程仲が良いって言うけどさ。
「ホラ、愚痴なら家に入ってから聞くから!さっさと入ろう!」
私は柴の背中を押す。
柴もどこか不服そうな顔をしながら黙って私に従って歩き出す。
その背中を見ながら思う。
これからも、この家で、この家族で、柴と共に時間を過ごせると思うと、胸の中が温かくなる。
柴も、そう思ってくれてるって思っていいんだよね?
大切な家族。
それ以上に大切な存在。
:08/08/21 02:49
:SO906i
:☆☆☆
#522 [向日葵]
この楽しい時間が永久に続きますように……。
柴、これからもずっとずーっと、大好きだよ……。
*柴日記*-fin-
:08/08/21 02:51
:SO906i
:☆☆☆
#523 [向日葵]
*あとがき*
柴日記、これにて終わりでございます

応援して頂いた皆様、アドバイスを下さった皆様、本当にありがとうございましたm(__)m

同時進行でとても遅い進行具合でしたが、なんとか書き上げる事が出来ました


もう1つの物語、柴日記の中にも出てきました、越の友人・椿と、その婚約者・要のストーリー、「ギンリョウソウ」も制作途中ですので、見て頂ければ幸いです(o^-^o)
本当にありがとうございました


向日葵
:08/08/21 02:56
:SO906i
:☆☆☆
#524 [向日葵]
:08/08/21 02:58
:SO906i
:☆☆☆
#525 [向日葵]
番外編*苺日記*
:08/08/28 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#526 [向日葵]
神田家の三女、苺、満4歳。
天真爛漫で神田家の癒し系アイドル。
今回はそんな彼女を少し覗いてみましょう。
「苺、いーちーごっ。起きろよ」
朝はいつも兄である空のモーニングコールで起きる。
まだ眠い目をこすって必死に起きようとする姿は可愛らしい。
「……そらくんおはよー……」
「うんおはよう。早く降りて来いよ」
空はそう言って先に朝食へ向かってしまった。
残された苺は、いつも一緒に寝ているお気に入りのパンダのぬいぐるみに可愛らしくおはようのキスをしてベッドから降りる。
:08/08/28 03:51
:SO906i
:☆☆☆
#527 [向日葵]
階段を降りて、リビングに着けば、美味しそうな匂いが部屋を満たしていた。
「おはよう苺」
苺と入れ替わりで出ていきすれ違いざまに頭をひと撫でし、洗面所に向かう桜。
神田家の次女で、気が強いがしっかりしている。
そして苺は台所から現れた人物を見て目を輝かす。
その人は苺に気づくと、優しげな微笑みを浮かべた。
「えつおねえちゃんっ!おはようっ!」
「ハイおはよう。今日は早く起きれたんだね。偉い偉い」
神田家の長女、越。
:08/08/28 03:56
:SO906i
:☆☆☆
#528 [向日葵]
共働きの両親に変わって家事と兄弟の事を面倒見ている彼女。
優しくて苺が大好きな姉だ。
越は抱きついてきた苺を抱き締めると、椅子に座らせて手際よく朝食の準備をする。
そして越の背後には、いつもべったりとくっついている人物がいた。
「ちょっと柴!準備出来ないから離れて!」
「えーやだー」
越の恋人である柴は、家の前にいたのを越に拾われた。
拾われた当時に、越から色々聞かされたが、幼い苺にはあまり理解は出来ず、とりあえず仲良くしなきゃならないとだけは分かった。
:08/08/28 04:02
:SO906i
:☆☆☆
#529 [向日葵]
「苺と仲良くご飯食べてて!」
渋々といった感じで、彼は苺のすぐ隣の席に座った。
それをじーっと見ていた苺に気づいた彼は、自分達とは違う色の目を細めて柔らかく微笑む。
「おはよう苺。さ、食べよっか」
苺には、何故自分達と色が違うのか分からなかったけれど、その色がとても温かい色に見えたし、何より苺はこの柔和な空気をまとっている柴が大好きだった。
にへーっと笑った苺は、柴と口をそろえて元気に「いただきます」と言った。
―――――――――…………
「じゃ柴、苺の事よろしくね」
:08/08/28 04:07
:SO906i
:☆☆☆
#530 [向日葵]
柴が来るまでは越が苺の保育園の送り迎えをしていたが、今は柴に任せている為越は学校へ向かう。
ちなみに桜と空はもう行ってしまった。
「苺、じゃあまた帰ってきたら遊ぼうね」
「うんっ!」
「じゃ、行ってきます!」
とドアを開けようとした越の腕を、柴が引っ張る。
そして苺がいるのも構わず、越の額にキスをした。
「いってらっしゃい」
満足気に笑って手を振る柴の一方で、越は真っ赤になって「いってきます」と呟いて出ていった。
:08/08/28 04:12
:SO906i
:☆☆☆
#531 [向日葵]
それを苺はにこにこしながら見守る。
苺にはまだ恋愛関係というのは分からないが、越も柴も、お互いがお互い大好きなんだなぁとは思っている。
「さて苺、カバン持って行こうか」
「うん!」
小さな黄色い肩かけのカバンを持って、小さな靴を履く。
柴と手を繋いで、苺は仲良く保育園へ向かった。
柴の存在は女だらけの保育園では注目の的だ。
苺は少し自慢気になる。
「じゃあ、また迎えに来るからね」
:08/08/28 04:17
:SO906i
:☆☆☆
#532 [向日葵]
そのまま去って行こうとする柴を、苺はじーっと見つめる。
柴は瞬きを繰り返して「何?」と訊ねた。
「しばちゃん、いちごにはちゅーうってしてくれないの?」
大好きなものにはキスをする。
ただ彼女にはそれぐらいの認識しかなく、その1つの動作に様々な想いがこめられているかは知らない。
だから柴は少し照れるように口元を片手で軽く隠す。
「あのね苺あれはー……。ま、いっか。いってらっしゃい」
かぶっている黄色い帽子を取って、頭にキスを落とした柴は手を振って苺を見送る。
苺は嬉しそうに笑い、教室へと向かって行った。
:08/08/28 04:21
:SO906i
:☆☆☆
#533 [向日葵]
「いちごちゃん」
「あ、みよちゃんおはよーっ」
苺の1番の友達だ。
可愛らしい星がついたゴムで高く2つにくくられている。
「いちごちゃんまたあのおにいちゃんときたの?」
「うんっ!しばちゃんっていうの!」
2人は教室にある、ままごとセットで遊ぶ為準備する。
プラスチックで作られた包丁やまな板、マジックテープでつけられた野菜は、真っ二つに離れるように出来ている。
フリルがついたエプロンをつけて、本当にお母さんになったような気分になれば、何故か嬉しくなる。
もっとも、苺の場合は越を思い浮かべるが。
:08/08/30 03:09
:SO906i
:☆☆☆
#534 [向日葵]
「そのおにいちゃん、やさしい?」
「すごくやさしいよ!いちごだいすきなんだぁっ!」
満面の笑みで答える苺を、お兄ちゃんがいないみよは羨ましく思った。
だから言ってみる。
「じゃあ、こんど、みよもいっしょにあそんでいい?」
すると苺の笑顔はゆっくり消えていき、逆に眉を寄せ、口を真一文字にキュッと結ぶ。
「だめっ!」
「どうしてー?」
「ぜぇーったいだめなの!しばちゃんとあそんでいいのは、いちごとそらくんだけっ!」
:08/08/30 03:13
:SO906i
:☆☆☆
#535 [向日葵]
何故怒られたのか分からないみよだが、これ以上言ってケンカをするのは嫌だったので、口を尖らせて渋々「わかった」と呟いた。
それを聞いた苺は元の愛らしい笑顔を浮かべてままごとを始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「皆ぁー。今からお絵描きしますが、今日は、皆が大好きな人を描いて下さいねー」
子供たちは元気に返事をし、自分専用の道具箱からクレヨンを取り出した。
配られた大きい画用紙に、それぞれの絵を描き始める。
「いちごちゃんなにかくのー?」
「えへへ、ないしょーっ!」
:08/08/30 03:18
:SO906i
:☆☆☆
#536 [向日葵]
みよは「ふーん」と言って肌色のクレヨンを握る。
隣では楽しそうに、でも真剣に苺が絵を描く。
先生は皆の絵を見回っていた。
そして苺の絵を目に止める。
「苺ちゃんは何描いてるのー?」
先生が近づいていた事を知らなかった苺は気づくとすぐに絵を隠した。
だが小さな手では全ては隠れきれていない。
「せんせいみちゃだめっ!せんせいみちゃったら、しばちゃんたちにきょう、なにかいたか、いっちゃうでしょっ?」
「しばちゃん?……ああ、苺ちゃんとこの頃一緒に来るお兄ちゃん?」
:08/08/30 03:24
:SO906i
:☆☆☆
#537 [向日葵]
「うんっ」
「いいなぁ、あんなカッコイイお兄ちゃんで。先生も欲しいよー」
先生は軽い気持ちで言っただけだった。
しかし苺の表情は曇り、険しくなっていった。
「あげないもんっ!せんせいにしばちゃんぜーったいあげないもんっ!」
クレヨンと画用紙を持つと、苺は教室の隅へと行ってしまった。
先生は呆然としてしまう。
何故なら苺があそこまで怒ったのは初めて見たからだ。
いつもはおっとりとしていて、聞き分けのいい子なのにと、先生は苺を見る。
:08/08/30 03:29
:SO906i
:☆☆☆
#538 [向日葵]
苺はすっかり怒っているのか、こちらに背を向けてまた絵を描いている。
その小さな胸に、どんな思いを秘めているのか、先生は突然の苺の怒りに戸惑っていた。
苺は一生懸命絵を描いていた。
大好きな人を思い、その人の笑顔を思い浮かべ、喜んでくれるかとワクワクしていた。
その人に1番に見て欲しいから、先生にだって見せたくはないのだ。
先生は、1番大好きな人じゃない。
1番大好きなのは……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「苺が?」
:08/08/30 03:35
:SO906i
:☆☆☆
#539 [向日葵]
あっという間に時間は過ぎ、保育園に柴が迎えに来た。
「ええ。ちょっと怒らせてしまいまして……。私が原因だとは思うんですが、もしかしたら何かあったのかなぁって……」
柴は足元にいる苺を見た。
苺は拗ねるみたいに口を尖らせ、柴の足にくっついている。
「苺ちゃん、じゃあまた明日ね。さようなら」
しかし苺は挨拶をしなかった。
柴は少し困った顔をして、苺の頭を軽くポンポンと叩き、挨拶を促す。
少しからかうように、また先生が言った。
「さようなら言ってくれないと、柴お兄ちゃんは先生がもらっちゃうぞーっ」
:08/08/30 03:41
:SO906i
:☆☆☆
#540 [向日葵]
すると苺は先生を睨みつけ、目にうっすら涙を浮かべる。
「せんせいなんて、だいっきらいっ!」
苺は保育園を飛び出して行ってしまった。
「苺っ!すいません、失礼します」
柴は急いで後を追いかけて行った。
小さい子の足は思ったより早い。
なので柴は更に急ぐ。
転びでもしたら大変だと焦りながら。
そしてようやく捕まえる。
「コラ苺っ!先生にあんな事言っちゃだめだろっ!」
:08/08/30 03:45
:SO906i
:☆☆☆
#541 [向日葵]
目の高さまで苺を抱き上げて、叱りつける。
苺は口を波のように歪ませると、大きな目を潤ませる。
泣く。
そう思った瞬間、体を軽く反って大声て苺が泣き出した。
「し、しばちゃんのばかぁーっ!いちご、わ、る、く、ないも、ぉーんっ!!」
うわーん!と甲高い声で泣かれれば、柴は慌てる。
苺をちゃんと抱くと、家まで急いで帰って行った。
その間も苺の機嫌は治る事は無かった。
「珍しい。苺が怒るだなんて」
:08/08/30 03:51
:SO906i
:☆☆☆
#542 [向日葵]
帰ってきた越に、柴はぐったりとしながら訳を話した。
あれから苺は自分の部屋にこもってしまった。
柴がいくら呼んでも返事をしない。
強行突破と思い、ドアを開けようしたらしっかりと鍵がかけられていた。
途方にくれた柴は、大人しく越の帰りを待ち、越になんとかしてもらおうと考えていたのだ。
「ご機嫌ななめでも話を聞く限り今日のは酷いなぁ。ちょっと行って来るよ」
「……ごめん」
「気にしなくていいよ。すぐに「しーばちゃん」って来るから」
:08/08/30 03:55
:SO906i
:☆☆☆
#543 [向日葵]
越は柴を安心させるよう微笑むと、リビングを出て2階へ行き、苺が閉じこもっている部屋まで行く。
立ち止まってしばらく中の様子をドア越しに読み取る。
そして優しくノックをする。
「いーちーご。いーれーて」
柔らかく、ちょっとおどけたように言ってみる。
返事はない。
でも越は辛抱強く待つ。
もう1度、優しく名を呼ぶ。
そして再び待つ。
するとゆっくり鍵が開けられた。
越は鍵が開けられた速度と同じくらいドアを開ける。
苺はベッドを背にしてちょこんと床に座っていた。
:08/08/30 04:00
:SO906i
:☆☆☆
#544 [向日葵]
越はその隣に座る。
苺の目は、泣きすぎか擦りすぎか、赤くなってしまっていた。
「先生に大嫌いって言ったのはどうして?」
叱りつける訳ではなく、頭を撫でながら優しく問う。
すると段々苺の目に涙がたまってきた。
そして子供特有のせわしないしゃっくりをしながら訳を話し出す。
「しばちゃん、は、い、ちごの、おに、ちゃ、だ、もんっ……。せんせ、しばちゃ、が、ほし、とか、もら、ちゃうとか、いったぁ……っ!」
つまり。
苺は柴が誰かに取られるのが嫌だと妬きもちを妬いていたのだ。
:08/08/30 04:07
:SO906i
:☆☆☆
#545 [向日葵]
遊ぶのは自分だけ。
自分だけのお兄ちゃん。
だから誰も近づくのは許さない。
そういう気持ちが強くなって、今日みたいな事が起こったのだろう。
しかし……と越は思う。
自分は柴と恋人同士にある訳なのだがそれはいいのか?と。
「柴がお姉ちゃんに抱きついたりしてるのはいいの?」
「おねえちゃんは、い、いの。いちご、は、おね、ちゃんがすき、だからっ」
基準がよく分からないな、と、苦笑いを浮かべていると、苺はそばに置いてあった丸めている画用紙を越に渡した。
:08/08/30 04:11
:SO906i
:☆☆☆
#546 [向日葵]
受け取って、苺を見る。
「見てもいいの?」
苺は両手で目を擦りながら大きく首を縦に振る。
画用紙を伸ばして見れば、人が2人クレヨンで描かれてい。
片方の人にはピンク色で「おねえちゃん」と書かかれていて、もう片方人には黄緑色で「しばちゃん」と書かれていた。
「一生懸命描いてくれたの……。ありがとう……」
苺に微笑みかける。
しゃっくりは止んできたが、苺の涙はまだ止まりそうにない。
「だ、いすきなひと、をかきましょーって、せんせい、がいっ、たの。だからね、いちごね、おねうちゃんとしばちゃん、かいた、の」
:08/08/30 04:18
:SO906i
:☆☆☆
#547 [向日葵]
「そっか……でもね苺」
越は伸ばした自分の膝の上に苺を乗せて目線を合わせて話す。
「何も言わずに“大嫌い”とか、“見ちゃだめ”とか言ったらだめだよ。先生がびっくりしちゃうでしょ?」
苺はしゃっくりを上げながらもしっかりと聞きながら相槌を打つ。そんな苺を優しく見つめながら越は背中をさする。
「なんで見ちゃだめなのか、どうして大嫌いって思っちゃったのか、伝えなきゃだめ。もしお姉ちゃんが突然苺に大嫌いって言ったら、苺どう思う?」
「……いや」
「だよね?じゃあ苺も、先生に嫌な事しちゃだめ。……ね?」
:08/08/30 04:23
:SO906i
:☆☆☆
#548 [向日葵]
苺はしょんぼりしながらもコクコク頷く。
越はこつりと苺と額をくっつける。
「苺はいい子だから、明日先生にごめんなさい出来るよね?」
「うん……」
「あと柴にも言えるよね?柴に馬鹿って言ったんだよね?柴傷ついてたよー」
苺は黙ると、また涙をため始めた。
自分のしてしまった事が悪かった事と分かり、反省しているようだった。
「苺、お返事はー?」
「……あい……」
:08/08/30 04:27
:SO906i
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#549 [向日葵]
「よしいい子ー」
越は苺を抱き締めてやる。
すると苺は小さな腕を越の首に回し「うぅー」と言ってまた泣き出した。
怒られると緊張していた糸が切れたようだった。
そんな苺をポンボンと叩いてあやしながら、立ち上がる。
そして下へと降りて行く。
リビングの机でぼんやりしていた柴は苺と越に気づいて、そちらを向く。
苺は顔を上げて柴を見ると、降ろしてと越に無言で頼む。
越が床に降ろしてやると、苺はすぐに柴が座っているとこまで走って行って、その膝に飛び込んだ。
:08/08/30 04:32
:SO906i
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#550 [向日葵]
「しばちゃんごめんねーっ」
柴は驚いて越を見るが、越は笑顔のままだった。
柴は再び苺に視線を落とすと、微笑んで苺を膝に乗せる。
膝に乗せると苺はヒシッと柴の胸にしがみつく。
小さな手で必死に服を掴む姿はなんとも可愛らしい。
こうして、苺のトラブルは幕を降ろした。
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―次の日―
「ねえ柴、理由もなく、叱りつけたらだめだからね。子供でも意見を尊重してあげないと」
:08/08/30 04:38
:SO906i
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