*柴日記*
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#600 [向日葵]
しばらく口を開けたまま固まった祐子は、「ありえない」と頭を振り、自転車を進ませた。
それに神田一朗はついてくる。
「森下さん、どうしたの?」
「お前は宇宙人か。あたしを好き?馬鹿もやすみやすみ言え。それと寝言は寝てから言え」
「馬鹿な事でもないし、寝言でもないよ。本気の気持ち」
それがおかしい。
「そんな事言ってないで、大好きな本でも読みあさってろよ」
「僕は本気だっ!」
いきなり大声を出されたので、びっくりした祐子は足を地面につけながらよろける。
:08/09/16 01:22
:SO906i
:☆☆☆
#601 [向日葵]
神田一朗の方を見れば、なかなか信じてくれない祐子に少々腹をたててるようだった。
しかし、祐子からしてみればあまり怒っている風には見えず、どちらかと言えば拗ねてるように見える。
祐子は彼の額に指を弾いて当てる。
急に攻撃された彼は小さく「痛っ」と言って額に手を当てる。
「何考えてるか分かんねぇけど、冷静に考えてみれば分かる。お前は普通の人間。あたしは問題児。どう見られるか分かるだろ。分かったなら、二度と話かけるな」
それだけ言うと、祐子は自転車を走らせる。
もう、神田一朗は追って来なかった。
:08/09/16 01:26
:SO906i
:☆☆☆
#602 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいまー」
帰ってくればいい香りが祐子の鼻をくすぐる。
そしてフリフリなエプロンを着ておたまを持った祐子の母が祐子を迎える。
「おかえり祐子ちゃぁんっ!今日は祐子ちゃんがだぁい好きなハンバーグよっ」
「あのさママ……いつも思うけどそのエプロンどうなの……」
すると母は可愛らしく頬を膨らませる。
「んもうっ。ママじゃなくて翠(ミドリ)ちゃんって呼んでって言ってるじゃなぁいっ!」
:08/09/16 01:30
:SO906i
:☆☆☆
#603 [向日葵]
母が嫌いな訳ではない。
むしろ好きだし、尊敬するが、この少々ぶりっこが入った母の血が自分の体のどこを通っているか不思議で仕方ない祐子だ。
「早く着替えてらっしゃい。あ、そういうば今日喧嘩しなかったのね。良かったわ、これ以上女の子に傷がついたら翠悲しいんだからぁっ」
そういえば、神田一朗もそんな事を言ってたなと思い出す。
彼の事を思い出せば、帰りの事も思い出す。
「ママ……じゃない。翠ちゃん。今日あたし告白されちまったよ」
「え!本当に!?やっだぁ早くその子連れて来てぇっ!翠会いたいわぁっ!」
:08/09/16 01:35
:SO906i
:☆☆☆
#604 [向日葵]
「やだな翠ちゃん。連れて来るわけないっしょ。それ以前に、本気じゃなさそうだもん」
「また祐子ちゃんはぁっ!そんなの分からないでしょぉっ!?」
少し怒ったように、上目遣いで祐子を睨む。
神田一朗もこんな目してたっけ……。
やっぱり、本気じゃなさそう……。
きっと自分のような問題児が珍しいのだろうと思いながら、祐子は自分の部屋へと向かっていく。
「あ、今日、圭ちゃん遅くなるんだって!先にご飯食べちゃいましょー」
圭ちゃんとは、祐子の父、圭司(ケイジ)の事。
:08/09/16 01:41
:SO906i
:☆☆☆
#605 [向日葵]
あんな筋肉ムキムキな父が果たして圭ちゃんと呼ばれていいのだろうかと祐子は遠い目をした。
着替えが済んだ祐子は下へ向かいテーブルに並べられた夕飯に目を光らす。
「たっくさん食べてね。翠、いーっぱい作ったから」
「うん。いただきまっす!」
空腹は最大の調味料。
体の芯まで味が染み渡っていく。
満足気な顔でご飯を頬張る祐子を見て、翠は微笑む。
そして正面に座る。
「で、祐子ちゃん、その子どんな子?」
「その子?」
「んもうっ、しらばっくれちゃって。好きって言ってくれた子よぅっ」
どんな子……。
神田一朗の事を思い浮かべる。
:08/09/18 02:46
:SO906i
:☆☆☆
#606 [向日葵]
ふにゃふにゃしててアハハと笑いながら頭をポリポリかいてる姿が目に浮かぶ。
「……なよっちくて、変人……。いや、宇宙人……?」
「まぁ宇宙人だなんてっ。祐子ちゃんにとっては珍しく気になっちゃってるのねっ」
「え、何言ってるの」
あの宇宙人を何故気にしなくちゃならないと祐子は眉間にシワを寄せる。
出来れば関わりたくないタイプなのに気になるだなんてとんでもない。
「……ママ」
「“翠ちゃん”っ」
:08/09/18 02:50
:SO906i
:☆☆☆
#607 [向日葵]
どっちでもいいだろうに……。
「翠ちゃん達はいつ知り合ったの?」
訊けば翠は頬をポッと赤く染めてモジモジしだした。
「16歳の時、圭ちゃんがね、女の子に囲まれてる翠を助けてくれたの」
翠は指を組んでキラキラした目で宙を見つめた。
その時の父を思い浮かべ、もう1度恋に落ちるかのように。
「スーパーマンだって思ったわ!だって赤いマントが見えたものっ!」
幻覚だと言いたいのをぐっとこらえる。
「今と変わらず大きな体で必死に庇ってくれる姿に、翠は運命を感じたのっ」
:08/09/18 02:56
:SO906i
:☆☆☆
#608 [向日葵]
聞くんじゃなかったと後悔する。
翠には少々……いやだいぶ、乙女チックな所がある。
そう思えば、自分は父の似たのだなと祐子は思った。
守られるだなんてとんでもない。
守られるぐらいなら守ってやる。
ふと、あのたれ目を余計にたらして笑う神田一朗を思い浮かべる。
あれはどう見たって、守ってやらなくちゃいけないタイプだ。
――――――――…………
爽やかな朝。
あくびをしながら祐子は学校へ向かっていた。
:08/09/18 02:59
:SO906i
:☆☆☆
#609 [向日葵]
今日は数学のハゲチャビンの日か……。
屋上で昼寝でもしようかね……。
校門が見え、祐子の姿を見た一般生徒達は半径2メートルは離れて行動する。
いつもの場所に自転車をガシャンと置いただけでその場にいた人はそそくさと去っていく。
祐子には日常茶飯事なので、我関せずといった風にカゴから鞄を取り出す。
くるりと方向転換する。
「おはよう」
思わずぶつかりそうになる。
そこにいたのは神田一朗だった。祐子はわざとらしくため息を吐く。
「なんだよ。今日は足骨折でもしたか?」
:08/09/18 03:05
:SO906i
:☆☆☆
#610 [向日葵]
「荷物扱いされるつめりはないから気にしないで」
にっこり笑う。
祐子は無視して歩き出す。
彼は後を追ってくる。
早歩きしてもなんなく付いてくる。
祐子のこめかみに、青筋が浮き出る。
「なんだよお前よぉっ!」
振り返って彼に怒鳴る。
片目を瞑ってそれをやり過ごす彼は、ずずいっと近づいてきた。
「考えたんだ」
「は?」
「君がいったんだよ。冷静に考えてみろってさ」
:08/09/18 03:09
:SO906i
:☆☆☆
#611 [向日葵]
言ったような言ってないような……。
祐子は自分が言った事を忘却の彼方にやってしまっていた。
半目で神田一朗を睨む。
彼は涼しい顔で受け流す。
「僕が普通だろうが、君が問題児だろうが関係ない。僕は森下祐子さんを好きになったんだ。これが答え。合格はもらえる?」
祐子は顔が熱くなると共に足から順番に鳥肌が立っていくのが分かって身震いしながら数歩後ずさる。
「う、宇宙人……っ!寒い事言ってんじゃねぇぞっ!」
「寒い?僕はただ本音を……」
「黙れっ!」
:08/09/18 03:14
:SO906i
:☆☆☆
#612 [向日葵]
なんでこんなに心をかき乱されなくちゃならないのかと腹が立って、鞄で彼の胸辺りを殴る。
反動でカシャンと彼の眼鏡が落ちる。
彼が取ろうとする前に、祐子はその眼鏡を勢いよく踏む。
呆気ない音と共に、眼鏡は粉々になった。
さすがにやり過ぎたかと罪悪感を感じるが、全て彼が悪いと思えばそれも薄れた。
「これで私が見えないだろ。それでいい」
ならこんな風に追いかけられる事もない。
「じゃあな」
珍しく後味が悪いと思いながら、教室には行く気にはなれなかった祐子はそのまま屋上へと向かう。
:08/09/18 03:19
:SO906i
:☆☆☆
#613 [向日葵]
:08/09/20 02:06
:SO906i
:☆☆☆
#614 [向日葵]
―――――――――…………
粉々になった眼鏡を拾いながら一朗はため息をつく。
彼女がそこまで自分を拒絶するのは何故なのだろうか。
粉々になった眼鏡同様、一朗の祐子に対する気持ちも粉々になりそうだった。
眼鏡を壊されても怒る気にはならない。
そうやって感情をぶつけてくれると言うのはまだ自分は眼中にあるからだ。
だからこそ、気持ちを理由もなく受け取ってくれない彼女対し、へこみつつある一朗だった。
「――……たは?」
:08/09/20 02:10
:SO906i
:☆☆☆
#615 [向日葵]
:08/09/20 02:11
:SO906i
:☆☆☆
#616 [向日葵]
話し声が聞こえたのでその方を見る。と言っても、彼のただ今の視界は水の中にいるようにぼやぼやしている。
分かるのはなんとなくそこに人がいるという事だけだ。
「さっき屋上に行った……」
「よし……行くぞ、この間の復讐……」
途切れ途切れにしか聞こえないが、誰かに喧嘩を売りに行くのだと言う事は分かった。
それもただの口喧嘩ではないらしい。
声からして計画を企てているのは女の子だろう。
女の子がそんな事しなくてもいいのに……と一朗は思う。
「いやー……女って恐ぇーなぁ……」
:08/09/20 02:16
:SO906i
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#617 [向日葵]
「坂上?」
友人の声に反応する。
気づけば隣にいた。この距離なら見えなくもない。
「寄ってたかって暴行計画とは、穏やかじゃないねー。あれ、お前眼鏡は?」
粉砕した眼鏡を乗せた掌を見せると友人は納得したように頷く。
おそらく一朗がドジをしたとでも思っているのだろう。
「でもさ、あの女子達、絶対返り討ちになるよな。なんてったって、相手は学校の鬼神だかんなぁー」
呑気に言って去ろうとする友人の肩を一朗は勢いよく掴む。
「それって、森下さん?」
「ん?あぁそうだけど?」
:08/09/20 02:22
:SO906i
:☆☆☆
#618 [向日葵]
それを聞くなり、一朗は駆け出した。
―――――――――…………
「ぃえっくしっ!」
なんともおっさんくさいクシャミをしながら祐子は屋上で寝そべっている。
しかしさっきから寒気がして仕方ない。
ついに誰かから呪われ始めたか?と心の中で笑っていると、また派手にクシャミをする。
あぁ寒い……。
やっぱり冬に屋上に出るものじゃないな……。
別の場所に移ろうと、半身を起こした時、屋上のドアが開く。
:08/09/20 02:26
:SO906i
:☆☆☆
#619 [向日葵]
「ん?」と振り向けば、見た事ある4人組が立っていた。
「あれま先輩方、怪我はすっかり治ったみたいっすね」
にやりと余裕の笑みを浮かべる裕子に、この間こてんぱんにやられた4人は歯ぎしりする。
「あんなの怪我のうちにはいんねぇよ」
「で、何の用です?」
立ち上がりながら祐子は訊いた。
「リベンジいつでも受けるっつっただろ。正にそれだよ」
「今度はいい勝負になるといいんですけど……。ちゃんと腕あげてきたのか?」
:08/09/20 02:30
:SO906i
:☆☆☆
#620 [向日葵]
「へっ!身をもって体験しやがれっ!」
4人いっぺんに祐子に飛びかかる。
ゆっくり身構えて、相手がまずどう出るかを目で微かに捕らえてまず何をお見舞いするかすぐさま考える。
避けて回し蹴りが有効そうだと考え、実行に移すため避けた時だった。
「いけませーんっ!!」
そこにいた5人はピタッとそのままの体勢で静止する。
この……迫力の無い声は……。
振り向けば、ドア付近に息を切らした神田一朗がいた。
:08/09/20 02:37
:SO906i
:☆☆☆
#621 [向日葵]
「お前……」
祐子は頭痛を覚えて額に手を当てる。
他の4人はポカンとしていた。
「前も言ったじゃないか森下さんっ!女の子が顔に怪我したら大変なんだよっ!」
ピリッとしていた空気がまるで砂のようにさらさら呆気なく去っていくのが分かる。
変わりにぽけぽけした空気に支配されていく。
「お前は今さっきの私の行動を全く反省してな……あれ、お前眼鏡……」
粉砕したはずの眼鏡を彼はかけていた。
「スペアだよ。ホラ僕ドジだから持っておかないとダメでしょ」
:08/09/20 02:41
:SO906i
:☆☆☆
#622 [向日葵]
神田一朗の空気に流されそうになってハッと気づいた祐子はかぶりを振る。
「ってかあたしの事にいちいち首突っ込むなっ!」
「好きだから突っ込みたくもなるよ。ホラ帰ろう」
と神田一朗は祐子の手を取る。
そして目を軽く見開く。
「森下さん……熱ある?」
眉を寄せた祐子はまたクシャミをする。
さっきからのクシャミや寒気はそれで?こんな丈夫な体が?
自覚した途端、頭がくらくらしてきた。
:08/09/20 02:45
:SO906i
:☆☆☆
#623 [向日葵]
それを聞いた4人もさっきの気分を取り戻しす。
「熱ならなおのこと都合いいじゃねえか。そこの彼氏共々ボコボコにしてやんよ」
「彼氏じゃねぇし」
くらくらしながらもしゃんと立っている祐子は神田一朗を背に庇い4人に向き直る。
それを神田一朗はのけさせようとする。
「森下さん、今日は駄目っ」
「うっさい、アンタ弱いんだからさっさと帰れっ!」
その言葉に、神田一朗は目をパチパチさせた。
「僕弱くはないと思うよ」
:08/09/20 02:50
:SO906i
:☆☆☆
#624 [向日葵]
そう言うと、祐子の前に進み出て、そのまま4人の所まで平然と歩いていく。
祐子は驚いて止めようとするが声が出ない。
「先輩方、喧嘩はよしませんか?」
神田一朗はにっこり笑って言う。
「なよっちい奴は……ひっこんでなっ!」
言葉と共に繰り出された拳を、神田一朗はひらりとかわし、ひね上げ、動けないようにする。
「ね?森下さん体調不良ですし」
笑って喋りながら、近くで呆けていた1人を足払いでこかす。
あとの2人は目だけで威嚇する。
:08/09/20 02:56
:SO906i
:☆☆☆
#625 [向日葵]
笑っているのに、目からは冬の寒さよりも冷たい空気が流れてきて、4人はもう固まるしかなく、遠くにいた祐子もなんとも言えない表情をして固まっていた。
「わ、分かった!今日は止めるから放しやがれっ!」
パッとひねり上げていた手を解放すると、彼はまたにっこりと笑う。
「ありがとうございます」
野生の本能で分かる、この人には敵わないと言う雰囲気に、4人は押され、そのままそそくさと帰る。
祐子はそれを呆然と見送ってから、神田一朗を見る。
「ね、弱くないでしょ?」
:08/09/20 03:00
:SO906i
:☆☆☆
#626 [向日葵]
「……どうしてついて来るんだ……。あたしはお前がうっとおしいっつっただろ……」
「何回も言ってるじゃないか。僕は君が好きなの」
「だからあたしは……」
「ねぇ森下さん」
彼は祐子の言葉を遮る。
「森下さんは僕の事や、自分の周りからの評価でしか僕の事を拒否してない。でも僕が求めてるのはそんなのじゃなく、森下さん自身の気持ちが知りたいんだ」
真剣に言われてしまえば、ここから去ってしまいたい程恥ずかしい。
考えれば考える程頭が熱くなっていく。
:08/09/20 03:06
:SO906i
:☆☆☆
#627 [向日葵]
そして忘れていた。
熱があった事。
視界が真っ暗になる。
「あ、森下さんっ!」
彼の声を最後に、祐子は意識を手放した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校のチャイムが聞こえた気がした。
額にひやりとした物が乗せられているのが分かる。
暖かい物にくるまれているのも分かる。
体がダルい……。
そう思いながらも目を開ける。
:08/09/20 03:09
:SO906i
:☆☆☆
#628 [向日葵]
:08/09/20 03:10
:SO906i
:☆☆☆
#629 [向日葵]
:08/09/20 03:25
:SO906i
:☆☆☆
#630 [向日葵]
:08/09/20 03:30
:SO906i
:☆☆☆
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