よすが
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#446 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの顔を見てそう囁くと、笑顔のハナはまた明るく彩られた空を見上げる。
ハナはあたしが罪悪感を感じることを望んでいない。
それならあたしは謝らないでいよう。
そのかわり、これから先あたしはハナに感謝し続けよう。
ハナがこの十年間をあたしに捧げてくれたように、この先の全てをハナに捧げよう。
それがあたしの返し方だ。
「ハナ、ありがとう」
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:08/06/08 00:21
:SH903i
:aqXUJcpA
#447 [蜜月◆oycAM.aIfI]
その第一歩、あたしは感謝を言葉にしてハナに捧げた。
空で弾ける花火に照らされたハナの横顔は、穏やかで喜びに満ちていて美しい。
自分の顔と同じはずのそれは、全く別のものだった。
離れていた十年がそうさせたのだろう。
あたしとハナは見た目こそ同じだけれど、内側には絶対に重ね合わせることの出来ない違いがある。
どうやったって今のハナの気持ちをあたしが理解することは出来ない。
しかし、これから時間をかければ、もしかしたら。
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:08/06/08 00:21
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#448 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルがあたしとハナの周りを跳び回りながら花火に向かって叫んでいる。
あたしはハナの横顔から上空に視線を移し、この先の幸せな未来を明るく瞬く空に思い描いた。
火花が煌めく夜空の向こうに、温かくて希望に満ちた未来がはっきりと見えた気がした。
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:08/06/08 00:22
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#449 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/08 00:25
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#450 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/08 00:27
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#451 [蜜月◆oycAM.aIfI]
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歩道の端に植えられた桜は蕾を膨らませ、その下を歩く全ての人に春めいた空気を味わわせる。
あたしとサトルはバスに乗って街の端にあるマンションに向かっていた。
バス亭からマンションへと続く歩道には間隔を開けて桜の木が植えてあり、枝の間をくぐりぬけて落ちてくる太陽の光が時折あたしの目を眩ませる。
マンションまでは歩いて約二十分。ちょうど半分くらいまで来たところで、あたしは歩きながらセーラー服の上に着ていた黒いカーディガンを脱いだ。
もう、冬は終わったようだ。
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:08/06/12 05:10
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:80/PBkxE
#452 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そしてそれと同時に、ハナを苦しめていた悲劇も終わりを迎えた。
「やっぱりまだ家には戻らないって?」
ふいにサトルがそう尋ねる。
ヒラヒラと桜の花びらがあたしの目の前を横切った。それを目で追いながらあたしは答える。
「うん、まだ……。でも体は良くなってるし、食事の間ぐらいなら一緒に過ごせるようになったし、もうすぐだよ」
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:08/06/12 05:11
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#453 [蜜月◆oycAM.aIfI]
風を受けながら地面に落ちてゆく花びらから視線を外し、サトルに笑顔を見せる。
「そっか。なら良かった!」
嬉しそうに表情を崩したサトルは軽い足取りで桜を見上げながら歩いてゆく。
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:08/06/12 05:11
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#454 [蜜月◆oycAM.aIfI]
悲劇は終わった。
けれど、なにもかもが元通り、という訳にはいかない。
ハナの心に深く刻まれた精神的な苦しみは今も彼女を攻め続けている。
あたしはその傷を塞ごうと、ハナの元に通い詰めた。
ハナの中に残った傷はこの数ヶ月で随分癒えたけれど、時折傷口を広げては血を流し、ハナを苦しませる。
あの犯人の男が、今もなおハナを苦しませているのだ。
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:08/06/12 05:12
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#455 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしとサトルが十年振りにハナと再会を果たしたあの時、犯人の男はいなかった。
あの場所にいなかったのでは無く、既にこの世にいなかった。
ハナの言うところによると、男は自分の過ちを悔い、自ら命を絶ったようだ。
しかも、ハナの目の前で。
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:08/06/12 05:13
:SH903i
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