よすが
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#479 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは抱きしめたハナの体をさらに強く抱きながら、ハナに語りかけた。
ハナが何をしたと言うのか。
ここまで自分を犠牲にしてきたのに、まだ自分を責めさせるの?
神様は残酷だ。
あたしはハナの体を抱いている手で撫で、目を閉じた。
神なんて……様付けで崇められているけれど、人間を弄んで喜ぶ変態だ。
あたしは神からもその他全ての悪からも、ハナを守る。
もう、二度と失いたくないから。
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:08/06/12 05:30
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#480 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナがあたしの腕を抜けたのを感じた後に、チャリ、と言う音がした。
「これ……ちゃんと着けてくれてるんだね」
あたしは目を閉じたまま頷く。
ハナが手に取ったであろう物体は、あたしの首から提げられたリングだ。
チェーンを通して肌身離さず着けている。
「ずっと着けててね……あたしとユキはあの人を忘れないでいてあげないと……ダメだから……」
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:08/06/12 05:31
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#481 [蜜月◆oycAM.aIfI]
トン、と胸に重さを感じて瞼を上げると、ハナの体がもたれかかっていた。
顔を覗き込むと、目を閉じて穏やかな顔をしている。
眠ってしまったようだ。
「寝ちゃったね」
サトルが小声で囁きクスリと笑う。
あたしの顔にも自然と笑みが零れた。
静かに寝息を立てるハナを起こさないようにベッドに寝かせながら、あたしは自分の胸が温かくなるのを感じていた。
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#482 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナとこうして普通の、ありふれた楽しい時間を過ごせることがあたしには奇跡みたいに思えていた。
毎日この部屋に来ては尽きることのない思い出を語り合う。
それだけなのに、あたしはそれまで感じたことのない幸福感に包まれていた。
記憶に穴があったせいか、無意識にハナを求めていたせいかはわからない。
けれど今になって思えば、あたしには何かが足りない、何か欠けているという喪失感があったような気がする。
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#483 [蜜月◆oycAM.aIfI]
けして不幸せだったとは思わない、むしろ両親やサトルに温かく守られてあたしはぬくぬくと生きてきた。
それでも、あたしは心のどこかでこれを――今のこの満ち足りた状態を、欲していたのだと思う。
ハナがいなかった世界と、今ハナが近くにいる世界とは、同じに見えて同じじゃない。
ただハナがこの街に帰ってきたというだけなのにその違いは、あたしの内部に大きな変化をもたらした。
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:08/06/12 05:33
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#484 [蜜月◆oycAM.aIfI]
これが、この状態こそがあたしにとって、そしてハナにとってあるべき状態だと。そう感じている。
心には余裕が溢れ、些細なことにも心を動かされるようになった。目に映る全てのものに感謝の気持ちを持てるようになった。
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:08/06/12 05:33
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#485 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナが側にいてくれることで、あたしは生きる意味を見出だせたような気がする。
あの時の誓い――この先の全てをハナに捧げるという誓いを、あたしは胸に刻んで過ぎ行く一瞬一瞬を消費してゆくのだ。
それが、あたしの生きるよすがだ。
―了―
:08/06/12 05:34
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#486 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/12 05:39
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#487 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/12 05:40
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#488 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/06/12 05:59
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