短編集
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#1 [◆LOSh2yD9/c]
気ままな短編集

⏰:08/09/21 01:51 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#2 [◆LOSh2yD9/c]
『君とあたしとあんたの赤い糸』



〜♪〜♪〜♪〜


突然携帯が鳴りだした。

誰からの着信か、画面を見なくてもあたしにはわかる。
このメロディーは一人しかいない。

あたしは大好きなお笑い番組から視線を外し、いつもの調子で電話に出た。

⏰:08/09/21 02:12 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#3 [◆LOSh2yD9/c]
「もしもぉ〜し!」

「…あ、ゆっきー?」

「うん!陽菜、どぉしたの〜?」

「あはは、急にごめんねぇー」

「全然だよ!どしたぁ」

いつもと変わらない口調。
あたしたちは大の仲良し。
要するに、親友だ。

また他愛のないお喋りが始まるのだと思い、陽菜の言葉を待ちながら視線をTVに戻した。

⏰:08/09/21 02:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#4 [◆LOSh2yD9/c]
丁度、あたしの好きな芸人のコントが始まった。

「………もぉ、嫌」

「…え?」


あたしはTVに意識がいき、陽菜が何を言ったのか一瞬わからなかった。

そして次の瞬間、もうTVの声はあたしに届くことはなかった。

「ゆっきー、もう陽菜限界!嫌だよぉ…!」

⏰:08/09/21 02:39 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#5 [◆LOSh2yD9/c]
突然切羽詰まった陽菜の声が、受話器越しにあたしに訴える。

「え?何、どうしたの??」

あたしはまるで状況が掴めない。

電話に出た時、陽菜はいつも通りだったよね…?

「…今、直人と一緒にいるの。もうこいつ、許せないよ…!」

陽菜、泣いてるの…?
良く聞けば、微かに声が震えているのがわかった。

⏰:08/09/21 02:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#6 [◆LOSh2yD9/c]
「え?直くんと一緒にいるの?」

直くんとは陽菜の彼氏で、あたし達より一つ年下だ。

もう付き合って一年は経ったと思う。
あたしも何度か逢っていて、一緒に遊んだこともある。


「グスッ………、うん…」

とうとう陽菜は弾かれた様に、声を出して泣き出した。

「え、え?えと、何がどうしたか良くわかんないけどさぁ…」

⏰:08/09/21 02:57 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#7 [◆LOSh2yD9/c]
あたしはあたふたする。

え、どぉーしよ…
喧嘩、だよねぇ…
てか陽菜がこんな泣いてあたしに電話してくるなんて初めてじゃあ…?

あたしはどうしたもんかと考えていると、受話器の遠くの方で、直くんであろう声が聞こえた。その後直ぐ、声を荒げた陽菜の叫びが響く。


「…ッ、煩いなぁ!謝って済むもんじゃないんだよっ…!!」

⏰:08/09/21 03:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#8 [◆LOSh2yD9/c]
「陽菜っ!!…」

今度は直くんが声を荒げ、何かを叫んでいた。


ちょっ…話が聞こえん!
てか、そもそもこの喧嘩の原因は何だよ!!
と、陽菜に聞こうと口を開きかけた瞬間…

「別れる!!もう終わりだよっ陽菜たちは…!!」

ちょっちょっ、ちょっと待てー!!
おい話を勝手に進めるなぁー!

⏰:08/09/21 03:20 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#9 [◆LOSh2yD9/c]
てか何、あたしに電話して来たこと覚える?陽菜ちゃん。
別れ話をあたしに聞かせる為じゃないでしょ?
そうだよね?
てか昔から君はそーゆー所があるんだよね、まぁそこが好きだったりする訳で…
いや今はそんな場合じゃないだろ!

あたしは陽菜の突然の別れ宣言を受け、この一瞬の内にそりゃあもう様々なツッコミと言うか何というかをした。

そして今度はあたしが弾かれた様に声を荒げた。

⏰:08/09/21 03:31 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#10 [◆LOSh2yD9/c]
「ちょっと待ってよ!そんな簡単に決めていいの?!今から行くから、そこで待ってて!二人で!!」

「…う、うん」

突然のあたしの大声に、陽菜は少し驚いたようだった。

「で、今どこにいんの?」

「………ラブホ」

「………どこの」

「……ゲーセンの裏にある路地を曲がった所…」

⏰:08/09/21 03:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#11 [◆LOSh2yD9/c]
「…あぁ、あそこね」

「うん…今は、外にいるから…」

「わかった。じゃあ今から飛ばして行くから、道路も空いてるだろうし、十分弱ってとこかな。」

「うん…ごめんね」

「何で謝るの。いいから、そこで待っててね」

「うん…」

陽菜は落ち着きを取り戻した様だ。

⏰:08/09/21 03:56 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#12 [◆LOSh2yD9/c]
あたしは電話を切り、TVを消し、そのまま玄関へと向かった。

今日は仕事も休みで一日中家でゴロゴロしてたから、化粧もしてないし服も超寛ぎスタイルだったが、親友の一大事だし夜だし、まぁいいかと気にしないことにした。


歩きながらヘルメットと被り、キーを用意して足早にバイクへと向かった。

⏰:08/09/21 04:08 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#13 [◆LOSh2yD9/c]
―――――
――――


頬に当たる風が冷たい。

バイクに乗っているから余計そう感じるのか、あたしは何か羽織ってくれば良かったと思った。

信号が赤に変わる。
止まっても尚、風は冷たかった。

「…もう冬、かぁ」

あたしはポツリと呟いた。

⏰:08/09/21 07:07 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#14 [◆LOSh2yD9/c]
不意に、不安があたしを襲った。

あたしが行った所で、あの二人は仲直りするのだろうか。
あたしが行った所で、何が出来るのだろうか。


そんな不安は、信号が青に変わったことで、風と共に吹き抜けた。

…急ごう。

⏰:08/09/21 07:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#15 [◆LOSh2yD9/c]
思った通り道路は空いていて、ゲーセンまで思ったより時間がかからなかった。

そりゃそうだよな、真夜中だもん。

このゲーセンも結構古い付き合いで、良く暇潰しに遊んだもんだ。陽菜と。
最近はその中に直くんも加わっている時がある。

あたしはその時が一番好き。

…別に場所はゲーセンじゃなくても良いんだけどね。

⏰:08/09/21 07:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#16 [◆LOSh2yD9/c]
とにかく、陽菜とは絶対一緒が良い訳で。
あたしは陽菜と笑っている時が一番好き。


約一年前、陽菜に彼氏が出来たと聞かされた時は一緒に喜んだし、心から祝福した。
と同時に、少し寂しかった。

だって、陽菜はあたしの親友で、もう二十年近くの付き合いだもん。

だから、陽菜を泣かせる奴は許さない。
陽菜には、幸せになって欲しいから…

⏰:08/09/21 12:17 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#17 [◆LOSh2yD9/c]
そんなことを思っている内に、あたしは裏路地を抜けていた。

角を曲がった先には、ピンクの光に照らされた二人がぎこちなく立っていた。

陽菜と直くんだ。
二人に近付くにつれ、何とも言えない微妙な空気が嫌でも伝わってくる。

「おーい」

でもあたしはそんなのお構いなしに、呼びかけと共に大きく手を振った。

⏰:08/09/22 16:53 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#18 [◆LOSh2yD9/c]
…だって気まずいじゃん!

もっと良い登場の仕方があったかなぁ…

うー、でもこれがあたしの精一杯だよぉー



あたしの声に気づき、陽菜がパッとこっちを向いた。
一瞬ニコッと笑って、悲しそうに微笑んだ。

直くんは、ちらっとこっちを向くと、すぐにそっぽを向いてしまった。

⏰:08/09/22 17:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#19 [◆LOSh2yD9/c]
あたしはバイクから降りた。

辺りはひっそりとしていて、只この微妙な雰囲気に似合わない程の明るい光が、ピカピカ照らしているだけだった。

時折直ぐ隣にある道路で走り去る車の音が響いている。


「…陽菜、大丈夫?直くんも…。どうしたの?」

「………ごめんねゆっきー、来てもらっちゃって…」

⏰:08/09/23 23:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#20 [◆LOSh2yD9/c]
目が赤い。
鼻声だし、化粧も崩れてるみたい。
相当泣いたのかな…


「いいんだって!てかビックリしたよー。慌てて飛び出したから、こんな姿でごめんねっ」

あはは、と陽菜が笑う。
あたしは少しほっとした。

横目でちらっと直くんを見ると、相変わらずそっぽを向いていた。

「…で、何があったの?」

⏰:08/09/23 23:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#21 [◆LOSh2yD9/c]
「………」

陽菜は黙ったまま鼻を啜っている。

あたしは陽菜が話し出すまで待った。まずは落ち着かないとね。

「…………あのね、」

「うん」

「……直人が、」

「うん」

「…また裏切ったの!」

⏰:08/09/24 00:01 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#22 [◆LOSh2yD9/c]
「は?」

「っ、だから違うんだって!!」

陽菜が言い終わったと同時、それまで黙っていた直くんが抗議の声をあげた。

「え?」

「何が違うって言うのよ!同じ事ばっか繰り返してっ」

あー、もしかしてあれかなぁ…

段々、何となく話が見えてきたあたし。

⏰:08/09/24 00:07 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#23 [◆LOSh2yD9/c]
「…何あれ…ヒソヒソ…」

「ヒソヒソ…あはは…」


何やら声が聞こえた。
振り返ると若いカップル(だと思う)が、こっちを見て(明らかに)笑っている。


そりゃそうだよね。
ラブホの前で男女三人で突っ立ってんだもん…
うん、怪しいよね。

⏰:08/09/24 00:25 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#24 [◆LOSh2yD9/c]
そしてそのカップルは暗闇に消えて行った。

何かちょっと笑えてきた。
客観的になるあたし。


「…場所変えよっか」

すると陽菜が苦笑しながら言った。

「そうだね」

あたしも笑いながら答えた。

あたしはバイクを押し、直くんが自転車を押しながら、あたし達はその場を去った。

⏰:08/09/24 02:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#25 [◆LOSh2yD9/c]
少し歩いた所に、小さな公園を見つけた。

「此処でいっか?」

「うん」


あたしと陽菜はブランコに跨り、直くんはあたし達から見て正面のブランコを囲んでいる棒に腰掛けた。

「ゆっきー、直人がね、また女と逢ってたんだよ」

公園にはあたし達以外誰もいない。道路からも離れているので、陽菜の声だけが重く響く。

⏰:08/09/24 02:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#26 [◆LOSh2yD9/c]
「…ふーん……」

内心やっぱりか、と思った。

最近、「直人が他の女とメールしてるみたいなの。嫌だっていってるのに」みたいな事、良く聞いてたし。
とにかく陽菜は嫉妬深い。
いくら只の友達でも、嫌な人なのだ。

「…それは、直くんが悪いよねぇ…?本当なの?」

若干言いにくかったが、ズバッと言ってやった。
直くんも言い訳したいだろうし。

⏰:08/09/24 02:30 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#27 [◆LOSh2yD9/c]
恐らく陽菜は、聞き耳を持たなかっただろう…
それに、我慢の限界だったんだろうな…

「本当だよっ」

隣で陽菜が小さく吐いたけれど、直くんの言葉を待った。

「…それは、本当だけど…買い物に付き合って欲しいって言われたからで…別に何もないし…」

直くんは言いにくそうに、区切りを付けて話し出した。

⏰:08/09/24 02:42 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#28 [◆LOSh2yD9/c]
「何もなくたって何で二人で買い物なんか行くんだよ!それを隠してたのも許せないし!!」

「そいつ彼氏いるよ!隠してたのは悪いと思ったけど…だって、陽菜知ったら怒るじゃん…」

「当たり前じゃん!それに彼氏いるから何だって言うのよ!?逆に怪しいだろっ」

陽菜は凄い剣幕で直くんを見上げている。

「………」

直くんは黙ってしまった。

⏰:08/09/24 02:56 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#29 [◆LOSh2yD9/c]
「…直くん、隠すから余計陽菜が怒るんだよ?何も疚しい事ないんだったら、陽菜に話すべきだよ。」

まぁこんな事言わなくたってわかってるだろうけどさ…
陽菜は他の女の事になると、直ぐ頭に血が上っちゃうから言い辛いって言うのもあるかもしれないけどね。

「………」

再び黙り込む直くん。

「大体、今に始まった事じゃないじゃん!陽菜はずっと嫌だって言ってるのに!!」

⏰:08/09/24 03:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#30 [◆LOSh2yD9/c]
陽菜の目には再び涙が溢れていた。

「前だって他の女とメールしてたしね」

足だけを使ってゆらゆらとブランコを動かしながら、陽菜は冷たく言い放った。

「だからっ…それも、只陽菜の事とかで相談に乗ってもらおうとしただけだし、高校でずっと同じクラスだったから単に仲良かっただけで…」

声が弱々しい。
段々直くんも涙ぐんできたみたいだ。

⏰:08/09/24 19:37 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#31 [◆LOSh2yD9/c]
てか、あたしがいる事による微妙な気まずさもあるんだろうな…

カップルのいざこざに、いくら彼女の親友だからって首を挟まれたくないよね…

二人の問題だし、ね?
しかも格好悪い所なんて、彼女以外見せたくないよね?
あ、彼女だからこそ見せたくないのか?

あれ?どうしよう、あたしめちゃくちゃ気まずいんですけど。

⏰:08/09/24 19:48 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#32 [◆LOSh2yD9/c]
もしかして、いや、もしかしなくても、来ない方が良かった?

あたし場違いじゃね?
空気読めてない?

ぎゃーどうしよう!



「女に相談したいならゆっきーがいるじゃん!陽菜の事一番良く理解してくれてるし」

一人悶々としていると、あたしの名が上がった事で、ハッと我に返った。

⏰:08/09/24 19:57 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#33 [◆LOSh2yD9/c]
「…え?あ、そうだよね」

落ち着けあたし。

「……ゆっきーは、陽菜の味方じゃん」

直くんが拗ねたように口を尖らす。

え?そりゃあ…まぁ、味方と言うか、もし相談メールが来たら、あたしはきっとダメ出し一杯するだろうな…

「…そりゃあ、味方?かもしんないけど、あたしは二人がうまくいく為なら何でもするし、相談に乗れると思うよ?」

⏰:08/09/24 23:58 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#34 [◆LOSh2yD9/c]
あたしはニコッと笑った。
…そりゃあ、陽菜の味方だけどさ、陽菜は直くんが好きなんだよ。
話を、顔を見ていればわかる。本当に直くんが大切なんだなぁって、そう思える。
一年付き合ってるんだから、そんな事くらい直くんだってわかってる筈だよ。

だから、あたしはこんな事で(って言ったら二人は怒るか)二人が終わって欲しくないの。

…もっと、素直になりなよ。
初めの頃の気持ちを思い出してさ。
正直に、自分の気持ちを…

⏰:08/09/25 00:07 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#35 [◆LOSh2yD9/c]
言葉に出来ない思いを巡らせる。
どうやって伝えよう。
考えが上手くまとまらない…


「もう………耐えらんない。」

少しの沈黙の後、陽菜が声を振るわせて言った。

「……もう、疲れたよ」

「どうしていつも……陽菜は他の男とメールしないのに…ツ」

「直人…、もう別れよう。」

あぁ…まずいぞこれ…!!

⏰:08/09/25 00:19 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#36 [◆LOSh2yD9/c]
「…………嫌だ……グスッ」

これまで涙を必死に堪えていたであろう直くんは、ついに声に出して泣き出した。(大泣きじゃないけど)

…あちゃー…。
泣いちゃったよね、これ。
本当ごめんね直くん。
あたしいてごめんね。

「……ツ…何で泣くんだよ…グスッ…泣きたいのは、…こっちだし…」

陽菜もつられてか、直くんと同じように泣き出す。

⏰:08/09/25 00:35 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#37 [◆LOSh2yD9/c]
…あのさぁ、泣く程お互い好きなんだよねぇ?
それわかってる?
それもうはっきり証明してるから。
後は…

あたしが今思った事を二人に訴えようとしたその時。


「…ツ俺は陽菜が好きなんだよ!陽菜以外考えられない!別れるなんて絶対嫌だ!!」

ちょっ…
うぎゃー!恥ずかしい!!
あたしが恥ずかしい!!!
そーゆーのは余所でやれっ

⏰:08/09/25 00:43 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#38 [◆LOSh2yD9/c]
…と、内心パニクっていたが、普段顔に出ないあたしは冷静に陽菜に向き直り、優しく尋ねた。

「直くんはあー言ってるけど、陽菜はどうなの?本当に、別れたいの?」

「……ツ…」

「………グスッ…」

静寂な闇に、二人の涙音だけが響いている。

「……陽菜だって…、本当は、別れたくないよぉ…」

⏰:08/09/25 00:50 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#39 [◆LOSh2yD9/c]
…やっぱりそうなんじゃん。
じゃあ、やるべき事は一つだね。

あたしは隣で泣きじゃくる陽菜を宥めるように、ポンポン…っと軽く頭を叩いた。

直くんに目をやると、予想だにしていなかったのだろうか、驚いた表情をして陽菜を見ていた。

「…ねぇ直くん。どうして直くんは、あんなに陽菜が嫌がる事をしちゃうの?」

「………」

⏰:08/09/26 00:15 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#40 [◆LOSh2yD9/c]
「直人は女好きだもんね。誘われればほいほいついて行っちゃうような奴だよ」

あたしは陽菜の発言には何も触れず、直くんに再度問い掛ける。

「そんなに直くんは、女友達と遊びたい訳?」

直くんの反応はないままだ。

「それならそれで陽菜に言うべきだよ。隠して女と逢うなんて、浮気と変わんないんじゃない?逆にされたらどう思う?」

「……ごめん」

⏰:08/09/26 07:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#41 [◆LOSh2yD9/c]
「誘いを受けたなら受けたで、陽菜にちゃんと言う。陽菜も頭ごなしに怒んないで、直くんの話をちゃんと聞く。」


相手が知らなければ、誰と逢おうがなかったこと。
秘密が増える。
例え何もなかったとしても、普通誰だって怒るし、悲しいよね。
陽菜みたいな人は特に。

だから余計言いづらくなって、ずるずる引きずってしまう。
悪循環。

⏰:08/09/27 13:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#42 [◆LOSh2yD9/c]
【直人はさ、優しすぎるんだよ…。陽菜にも、周りにも。あんまり断れない性格だし、陽菜の我が儘も何だかんだで聞いてくれて…。】

いつかの陽菜の言葉が再生される。
あぁ、そんな事良く言ってたよね。
胸の内を話す時の陽菜は、いつも苦しそうに笑ってたっけ…






……わかってるんだ。

⏰:08/09/27 22:40 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#43 [◆LOSh2yD9/c]
本当は、全部わかってるんだ。

陽菜は。

だけど、独占欲が、意地が、プライドが、色んなものが邪魔してしまうんだろう。

だから…わかってしまった時、爆発する。

あくまであたしの推測だけど、近いんじゃないかな。

⏰:08/09/27 22:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#44 [◆LOSh2yD9/c]
…あー


何か焦れったくなって来た。

何であたしがあれこれ考えてんだ。

二人は相変わらず無言のまま。

そろそろまとめちゃっても良いかな?

この公園に来てから気付いた事がある。

…結構寒いんだよね。

君達は、寒くないの?

⏰:08/09/28 07:32 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#45 [◆LOSh2yD9/c]
…まぁ、それどころではないか。

「………仲直り、する?」

あたしは静かに聞いた。

「………」

「………」

「…………俺は、仲直りしたい。陽菜と別れたくない」

「………………これで最後だよ。次やったら本当に別れるから」

「…うん。ごめん……」

⏰:08/09/28 16:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#46 [◆LOSh2yD9/c]
「……それからっ、もう隠し事はしないで!陽菜も、少しは大人になれるよう努力するから…」

陽菜は拗ねたように言葉を続ける。

「…陽菜だって、直人と別れたくないし」

途端、直くんの顔がパッと華やいだ気がした。



「クスッ…」

あたしは思わず小さく笑った。

⏰:08/09/29 23:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#47 [◆LOSh2yD9/c]
何か可愛いなぁって。
良かったなぁって。

そう、思ったから…


やっぱりあたしが来なくても、この二人は大丈夫だったかな…。

「…良かったよ。これで一件落着って事で、いいんだよね?」
あたしは満面の笑みで問い掛ける。

「うん…。ゆっきー、ありがとう。…本当に、来てくれてありがとう。」

⏰:08/09/29 23:38 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#48 [◆LOSh2yD9/c]
「え、そんな、全然だよっ!てか寧ろごめんね、何か勝手に来ちゃって…」

陽菜にありがとうって言われて焦るあたし。
だってあたし何もしてないしさ、少しでしゃばった感あるし…。

「ううん!謝るのはこっちだよ…。巻き込んじゃってごめんね。でもゆっきーのお陰で仲直り出来たよ…」

「あたしは大丈夫だよ。でも、本当に良かったよ。電話来た時はまじびびったかんね!どーしようかと思った。こんなの初めてだしさ」

⏰:08/09/29 23:51 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#49 [◆LOSh2yD9/c]
「あはは…陽菜もう頭に血がのぼりまくっててさ、気付いたらゆっきーに電話してた」

そう言ってえへっと照れ笑いをする陽菜。
あたしもつられて笑う。

そして直くんが若干気まずそうにあたしを見る。

「…ゆっきー、俺もごめんな。ありがとう」

「あたしはいいから、陽菜を大事にしてあげてね。今度泣かしたら許さないよ?」

「おう…!」

⏰:08/09/30 00:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#50 [◆LOSh2yD9/c]
「あたしの許可があって付き合えている事、忘れないでよ?」

あたしは意地悪く直くんを指差しながら言った。

「そうだよ直人っ!!」

「え?そうなの?!…あ、はい」

あたし達は一斉に笑った。
空は未だ暗く、肌寒いままだ。
けれどさっきとは違い、暖かい空気があたし達を包んでいるようだった。

「てかさ、ちょっと寒いよね?」

⏰:08/09/30 00:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#51 [◆LOSh2yD9/c]
「陽菜も思ってたぁー」

「…確かに」


「あたし達笑えるね。何時間此処にいんだ?」

「てか今何時?」

「3時過ぎだ」

「まじかよ〜4時間近くはいるのか」


さっきの張り詰めていた空気はどこへやら。
談笑を始めるあたし達。

⏰:08/09/30 00:18 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#52 [◆LOSh2yD9/c]
「よし。じゃあ…ずっと此処にいるのも何だし、行くか!」

「え?何処に?」

「あたしんち!こーなったら三人で朝まで遊ぶよっ」

「えっ?!」

「心配するな。ゲームなら家に一杯ある」

「いやそーじゃなくて…」

「つべこべ言わずにさぁ立った立った!あ〜何か気が抜けたら腹減って来ちゃったよ〜。あ、食べ物もあるから安心してね」

⏰:08/09/30 00:27 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#53 [◆LOSh2yD9/c]
「えー、ちょっとゆっき〜…」


後ろで何か聞こえたけど、そんなのは知らない。

だって何か嬉しいじゃない?
まるで自分の事のように嬉しいの。

君はあたしの親友。
あんたはあたしの親友の彼氏。

二人共、大切だし大好きだよ。

これからも、この先も、この思いは変わらない。

⏰:08/09/30 00:34 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#54 [◆LOSh2yD9/c]
あたしはブランコから立ち上がり、お尻をパンパンッと払った。
そしてくるりと後ろを振り返り、陽菜に左手を差し出す。

初めは頭にハテナを浮かべていたが、直ぐにニコッと笑って陽菜は右手を伸ばした。

「はい。直くんも」

陽菜が立ち上がったのを確認して、次は直くんにあたしの右手を差し出した。

「え…?」

「ほらっ…」

⏰:08/09/30 00:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#55 [◆LOSh2yD9/c]
直くんは少し戸惑っているようだったが、おずおずと左手を伸ばして来たので、あたしはそれをパシッと勢い良く取った。

「え、な、何だよ…」

動揺の声が聞こえてきた。

「だから帰んの!」

「このままぁ?!」

素っ頓狂な声が聞こえた。

「そう、このまま」

「はあぁ?!!」

絶句と共に笑い声が混じる。

⏰:08/09/30 00:55 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#56 [◆LOSh2yD9/c]
「良いじゃん。誰も見やしないよ、こんな時間だし」

「そりゃ、そーだけど…。でも何だこれっ」

直くんも笑い出す。

「…たまには、良いんじゃない?」

あたしも自分でやってて、この異様な光景に客観視して笑えてきた。

「仲直りした、記念?」

「何だそれっ」

⏰:08/09/30 01:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#57 [◆LOSh2yD9/c]
「なら俺は陽菜と手繋ぎたいよー」

「あはは確かに。でも今日はこれで良いの〜っ」

「陽菜はこれで全然良いけどね!」

寒い公園に笑い声が響く。
あたしは寒いけど、これなら暫く此処にいても良いかな、なんて思った。
違う意味で温かいから。

「じゃあ行こっか!」

「うん!」

あたし達は出口の方へと向かう。

⏰:08/09/30 01:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#58 [◆LOSh2yD9/c]
ねぇ陽菜。

あたしはね、陽菜が笑ってくれれば嬉しい。

悲しんでる姿は見たくないの。

涙を流して、傷付いている陽菜を見るのはあたしも辛いの。


だからね、陽菜が笑ってくれるなら、あたしは何処にでもいくし、何でもするよ。(出来る範囲であれば)

⏰:08/09/30 16:43 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#59 [◆LOSh2yD9/c]
だって陽菜はあたしの唯一無二の親友だもん。

陽菜もあたしと同じ気持ちだって自信、あるよ。


そして、ちょっと我が儘で自己中な、寂しがり屋で優しい陽菜の事が、直くんに負けないくらい大好きだよ。

百歩譲って任せるけどさ!

⏰:08/09/30 17:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#60 [◆LOSh2yD9/c]
だからどうか笑っていて。

陽菜が幸せならあたしも幸せ。


この赤い糸が解けそうになったら、あたしがいくらだって繋きとめるよ。

あたしは手で繋がれた見えない赤い糸を、もう二度と切れないようにしっかりと握り締めた。

⏰:08/09/30 17:15 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#61 [◆LOSh2yD9/c]
…そう。

これは、陽菜とあたしと直くんの赤い糸。









*END*















「…あ!そいや俺達、バイクとチャリだったよな……?」

「ああぁーっっ!!」

「ちょー忘れてたぁ〜!」

「あはは…」

⏰:08/09/30 17:44 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#62 [◆LOSh2yD9/c]
>>2-61
君とあたしとあんたの赤い糸

⏰:08/09/30 18:54 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#63 [◆LOSh2yD9/c]
"実紗は将来何になりたいの?"


"…わかんない。でも、看護師だけは絶対なんないな!"











『私の理由』

⏰:08/10/01 00:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#64 [かな]
ぁあげ

⏰:08/10/01 01:44 📱:D705i 🆔:n4XOR9RA


#65 [◆LOSh2yD9/c]
あれ、orderしていたつもりでしたが…
でもあげありがとうございます

⏰:08/10/02 00:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#66 [◆LOSh2yD9/c]
"実紗は将来何になりたいの?"


"…わかんない。でも、看護師だけは絶対なんないな!"











『私の理由』

⏰:08/10/02 00:19 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#67 [◆LOSh2yD9/c]
私は森川実紗、二十二歳。
看護師二年目のまだまだ新人ナース。

今日は夜勤明け。
そして今、私は電車の中で程良い揺れに身を任せ、うとうとと船をこいでいる。

今日の申し送りは長くなっちゃったなぁ、と思いながら時計を見た。

11時30分

もうすぐお昼になる。
この時間は電車が空いていて本当に助かる。
朝のラッシュ時みたいに満員だったら、夜勤明けには相当応える。

⏰:08/10/02 01:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#68 [◆LOSh2yD9/c]
意識が遠退く中、駅に着いた事を告げるアナウンスの声に、一気に脳が覚醒する。

やばっ!

私は慌てて立ち上がり、ドアの向こうへと走った。

私が電車から降りると、プシューっと音を立て扉が閉まった。

危ない危ない。
乗り過ごす所だった…。


電車はゆっくり動き出し、次の駅へと走り去って行った。

⏰:08/10/02 01:20 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#69 [◆LOSh2yD9/c]
私は駅ナカの小さな喫茶店に入った。

此処は私の最寄り駅だけど、滅多に寄らない店だ。

何でかって?
…特に理由はないけどさ。


今日は偶々ままも夜勤明けで、じゃあ久々にお茶でもしようか。って事になって、この場所に決まった。

私は実家住みで、ままもこの駅が最寄りになるから帰り道同じだし、じゃあ此処で良いんじゃん?って事で。

⏰:08/10/02 01:31 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#70 [◆LOSh2yD9/c]
私はアイスコーヒーだけ頼んで、奥のテーブルに座った。

私以外に何人かちらほらと座っているが、本を読んでたり二人でお喋りを楽しんでいたりと、みんな思い思いにそれぞれの一時を過ごしている。

そんな光景をぼけーっと見ながらカップに手を伸ばした。

…っあー

この一杯が堪らん。
私はこのアットホームな空間に、居心地の良さを感じていた。

⏰:08/10/11 16:38 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#71 [リーザ◆I94GMMnlgM]
…にしても。

今日のこうちゃん、可愛かったなぁー。

思わずにやけてしまった。

…いかんいかん、今は一人なんだ。絶対怪しい奴に見えるよな…私。

そうは思っていても、堪えようとすればする程、何か可笑しくなってくる。

別に何が面白い訳ではないけど、自然と笑顔になってしまう。

本当、癒されるなぁ…

⏰:08/11/09 02:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#72 [◆LOSh2yD9/c]
こうちゃんとは、私達の病院に入院している患者様で、皆(スタッフ)のアイドル的存在なのだ。

笑顔の可愛いお爺ちゃんで、いつもニコニコしてる。

どんなに疲れてても、

『ありがとう』

と言う笑顔で、すぐ元気になれちゃうんだよね。



「…あんた、何一人でニヤニヤしてんのよ」

⏰:08/11/09 07:23 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#73 [◆LOSh2yD9/c]
「ぶっ!!?」

口元に運んであったコーヒーカップがカチャッと音をたて、突然降って来た声に、危うく吹く所だった。

慌てて顔を上げると、向かいの席にままが不適な笑みを浮かべて立っていた。

「ちょっ…吐くとこだったじゃん!」

ままはクスクスっと笑うと、ホットコーヒーとサンドイッチを乗せたトレイを置いて、椅子に座った。

「ねぇ、やっぱやばかった?私」

⏰:08/11/09 17:22 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#74 [◆LOSh2yD9/c]
「かなりね」

そう言ってままはコーヒーを一口飲んだ。

「…えーまじどうしよ。てかこうちゃんが悪いんだよっ!」

ちょっとまずかったかな、と思いながら、全部こうちゃんの所為にする私。

…だって、本当だもん。

……………うん。

「またこうちゃん?今日も可愛かったの?」

こうちゃんの名前が出て、ままは呆れたように楽しむように笑った。

⏰:08/11/09 17:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#75 [◆LOSh2yD9/c]
「うん!今日もちょー可愛かったよ。羊羹♪羊羹〜♪♪って」

「本当に羊羹が好きなのねー」

私達は一斉に笑った。

「何かさぁ、どんなに忙しくても、こうちゃんのおやつの時間はちゃんと守りたいんだよね」

「あら、贔屓は駄目よ〜」

「わかってるけどさぁー…。やっぱ、こうちゃんが一番可愛いや!」

「ふふ。こっちにも、こうちゃんみたいな人がいたらいいのに」

⏰:08/11/09 23:48 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#76 [◆LOSh2yD9/c]
「本当だね。癒されるよ〜」

「相変わらず楽しい職場だこと。ね?」

そう言って意地悪く笑い、サンドイッチに手を伸ばした。


―そう。

私のままも看護師。

だから、私もままのような看護師になることが、小さい頃からの夢だった。

…なんて、そんなの大きな間違い。寧ろその逆。

看護師なんて、絶対なりたくなかった―

⏰:08/11/10 00:20 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#77 [◆LOSh2yD9/c]
「うん。楽しいよ」

私は何の迷いもなく即答した。

ままは一瞬きょとんとした後、ふっと鼻で笑った。

恐らく予想外の反応だったのだろう。

「…もう二年目だものねぇ」

「早いよね」

「……実紗が看護師になるって言い出した時は、流石に驚いたけどね」

「あはは…そうだよね。まぁ自分自身が一番びっくり、みたいな」

⏰:08/11/10 17:11 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#78 [◆LOSh2yD9/c]
私は苦笑いしながら夜勤用の余りのお菓子を口に放り込んだ。

「…しかも私さ、ままにハッキリ断言してたもんね。"私は看護師にはならないからね"って」

「しかも随分昔からね」

「…う、うん」

最早苦笑いしか浮かべられない。

そう。

あの時の私は、将来看護師になりたいなんてこれっぽっちも思ってなかった。

⏰:08/11/13 01:21 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#79 [◆LOSh2yD9/c]
「でも今じゃ立派な、でもないか?看護師さんね」

ままはまたクスリと笑う。

「ちょっとー!それ誉めてないよねー?」

私も笑いながらまたコーヒーを飲む。


―――いつからだろう。

私が看護師になろうと決意したのは…

―――あぁ、高校最後の夏か…

我ながらふざけてるよなぁ。
それまで本当に何も考えてなかったんだから…

⏰:08/11/13 01:29 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#80 [◆LOSh2yD9/c]
中学…高校って、将来のことを聞かれた時、特別夢がなかった私は、いつも"え〜まだ良くわかんないよ〜"って答えてた。

興味のあることや好きなことは勿論あったけど、それを仕事にしたいとか思えなかったし、私自身、将来について真剣じゃなかったんだよね。きっと。
てかそうか。

でも昔から"看護師にはなりたくない"って考えはハッキリあった。

"何で?"って言われたらハッキリ答えられなかったけどさ。
自分でも良くわからなかった。

⏰:08/11/13 01:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#81 [◆LOSh2yD9/c]
今でも何でそう思ってたんだろう、って思う。

でも、高校3年にもなればみんな将来のこととかちゃんと決まってる時期だし、それに向けて動き出して一生懸命になっている友達を見て、流石に私も焦った。
それじゃ遅いんだけどね。

何となく漠然と考えてはいたけど、"まぁ何とかなる"って現実から目を反らしてた。

成績はそんな悪くはなかったし、やっぱり遊んでる時の方が楽しいもんね。

⏰:08/11/13 01:51 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#82 [◆LOSh2yD9/c]
馬鹿な私は高校最後の夏、やっと真剣に自分の将来について考えた。


「………まま、私、……看護師になる」


色んな学校を見て回って、沢山悩んで沢山考えた結果、辿り着いた答えは私が"絶対なりたくない"と断言したものだった。

私の答えに、ままは一瞬だけ驚いた顔をした後、"……そう。頑張りなさい"と、只優しく微笑みながらそう言うだけで、理由は聞かなかった。

⏰:08/11/13 02:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#83 [◆LOSh2yD9/c]
それから私はひたすら勉強をした。

遅い決断だったし、今の私の学力じゃ厳しいってわかってる。

最悪、浪人するかもしれない。

そう覚悟はしてた。


でも努力して努力して…
最後の最後まで諦めなかった。


そして、その努力が実ったのか、私は晴れて看護学生になることが出来た。

⏰:08/11/13 02:24 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#84 [◆LOSh2yD9/c]
…嬉しかった。

本当に、合格通知が来た時は飛び跳ねて喜んだっけ。

家族も友達も、みんな喜んでくれた。


数日後、教材やらナース服やらの荷物が届き、私は嬉しくなって早速ナース服を着てみた。

ままにそれを見せると、"…実紗も、本当に看護師になるのねぇ……"なんて言ってた。

その時ままが涙ぐんでたのは、私の見間違いじゃなかったと思う。

⏰:08/11/13 02:45 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#85 [◆LOSh2yD9/c]
その時、"学生じゃなくて、絶対看護師になろう"って、心に誓った。


それからが辛かった。

覚えることは山のようにあって、一つの教科が終わればすぐテストだし、毎日レポートに追われ、常に寝不足状態。

おまけに実習なんかが始まれば、遊ぶ余裕さえなかった。


何度挫けそうになったか。

何度逃げ出したいと思ったか。

⏰:08/11/14 03:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#86 [◆LOSh2yD9/c]
でも一番応援してくれて、支えてくれたのは家族だった。

同じ志を持つクラスメイトの存在が、私を強くし、成長させてくれた。

たまに遊んだ地元の友達が、私に元気を与えてくれた。

私はみんなの支えがなければ、ここまで来れなかったと思う。


ありがとう。
みんな、感謝しているよ…

⏰:08/11/14 03:40 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#87 [◆LOSh2yD9/c]
…あ。

国試が近付くと、それこそ死ぬもの狂いで勉強したっけ。

高3の時とは比にならないくらいに。

それで合格者の中に私の番号を見つけた時は、泣いて喜んだっけ。

同じく、高3の時とは比にならないくらいに。


これで晴れて私も看護師だぁ!って思うと、本当に嬉しかった。

⏰:08/11/14 03:47 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#88 [◆LOSh2yD9/c]
まぁ実際、なってからが一番大変だったんだけどね…

何しろ改めて覚えることが沢山あって、毎日が慌ただしく過ぎて行って…

でも、凄く充実した日々だった。


あっという間に一年が過ぎて、もうこの病院にも大分慣れた。

そして、教えてもらう立場から、教える立場になった。

⏰:08/11/14 03:56 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#89 [◆LOSh2yD9/c]
「…ねぇまま、私ね、今でも何で看護師の道を選んだのか、ハッキリ答えられないの。……もしかしたら心のどこかで、ままに憧れてたのかな。」

「……………」

「何で看護師なんか選んだんだろうって辛い時期もあったけど、今は本当になって良かったって思ってる。…これが私の天職だって思える」

「……あんたを見てればわかるわよ」

相変わらずままはクールだ。
でも、ちゃんとわかってるよ。ままはいつだって私を思ってくれている。

⏰:08/11/14 04:29 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#90 [◆LOSh2yD9/c]
「…これからも頑張らなくちゃね!!」

私はままの言葉ににっこり笑顔で答えると、コーヒーを一気に飲み干した。

ままはやれやれといった表情で、残りのサンドイッチを平らげた。


「さっ!帰ったら一緒に一眠りでもしよっ♪」

「帰ったら掃除洗濯、やることは一杯あんのよ」

私の満面の笑みは、冷ややかな顔で却下された。

⏰:08/11/14 04:39 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#91 [◆LOSh2yD9/c]
"行くよ"とだけ言うと、食べ終わったトレイを持って、さっさと行ってしまった。

「ちょっと待ってよー!」

慌てて追い掛ける背中に、私は思った。

こんな中途半端な私だけど、育ててくれて、見守ってくれて、支えてくれてありがとう。

これからも、この仕事に誇りを持って生きていくよ。

そして将来結婚して子供が出来たら、自慢したいな。

⏰:08/11/14 04:58 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#92 [◆LOSh2yD9/c]
時々思うの。
最初から私は、自分が何になりたいのかわかっていたんじゃないか……って。

…でも、可笑しいけど、やっぱりわかんないや。



―きっと、あの時私は、

"これしかない"

って思ったんだ。


今はそれで良いよね。

それが、『私の理由』―

⏰:08/11/14 05:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#93 [◆LOSh2yD9/c]
>>2-61
君とあたしとあんたの赤い糸

>>66-92
私の理由

⏰:08/11/14 05:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#94 [◆LOSh2yD9/c]
その人との出会いで、自分の人生又は価値観等、何かが変わった時、それは性別関係なく『運命の出会い』と言えるのではないだろうか…。


――と、今なら、俺はそう思う。





俺は『運命の出会い』はあるって信じるよ。

慧弥さんと出会って、俺を取り巻く環境が変わって、俺自身も変わった。


あんたも、そう思うだろ?





『運命の出会い〜俺論〜』

⏰:09/02/23 16:26 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#95 [◆LOSh2yD9/c]
この世は奇妙な事だらけだ。


俺がそうなのか。

周りがそうなのか。

………いや、きっと周りだな。

だって俺は至って普通な男子学生で、至って普通な家庭で育ち、至って普通な恋愛をしていて…

まぁ、要するにどこにでもいそうな18歳の健全な男子ってワケ。




所がどうだ。

俺は今、真夜中に突然彼女に呼び出され胸を高ぶらせながらいつもの場所に着いた途端―――

⏰:09/02/23 16:32 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#96 [◆LOSh2yD9/c]
「遅かったね湊。あのさ、別れよ」

ニッコリと可愛い顔して何言ってやがんだコイツ

「…は?」

当然俺はそう返した。

「だから、別れよ。」

尚も可愛い笑顔でさらりと言い放つ、俺の愛しい人。

「…何で?つか、意味わかんねーし」

そうだ。
意味わかんねーよ

俺たち、何か問題あったか?
…いや、ない。

喧嘩してたか?
……いや、してない。

そうだよ。
昨日だってデートしてラブラブに過ごしたし、先月一年記念日を迎えたばかりじゃねーか!

⏰:09/02/23 16:35 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#97 [◆LOSh2yD9/c]
………これは夢か?
あぁ、俺は夢を見てんだな。


「ごめんね。別にね、湊のこと、嫌いになった訳じゃないんだよ?」

「………」

「湊は顔もいーし、あ、可愛いって言った方が合ってるか。好きなのは変わらないんだけど…」

「………」

「兎に角ねっ最近、未那のバイト先に美形が入ったの!それで、未那、今まであーゆータイプと付き合ったことなかったから、超興味持っちゃってさ〜」

「………」

「だから、ごめんね?」

⏰:09/02/23 16:39 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#98 [◆LOSh2yD9/c]
―――――――――


…………ああ


悪夢だとも。


俺の恋は今さっき終わった。


……あの女は悪女だ。

人の皮を被った悪魔だ

あーゆーのを魔性の女って言うんだな

いや性格に問題がある

…と言うか、人間として間違ってる!!!



「…………っ」

⏰:09/02/23 16:41 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#99 [◆LOSh2yD9/c]
やべー
眼が潤んで来やがった!

…おいおい、まさかの涙か?!

クソー
あんな女の所為で泣いてたまるかよ


「…………」

そんな俺の気持ちとは裏腹に、一滴の涙が頬を伝った。

「…っはあああぁー」

俺は盛大に溜め息を吐いて、がくりと柵に項垂れた。



―…本気だった。
俺は未那のこと、本当に好きだったんだ。

⏰:09/02/23 16:46 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#100 [◆LOSh2yD9/c]
はああぁー
駄目だ俺、重傷…
……カッコ悪ィー

目の前に広がる夜に染まった川をぼんやりと眺め、どこまでも深いこの闇色に吸い込まれそうだと思った。


あれから俺は、とても家に帰る気になれなくて、友達んちに行こうとも思えなかったし、…兎に角一人になりたくて、気がついたらこの公園に来ていた。

思った通り、人一人いなくて少し安心した。
こんな所、例え知らない奴だとしても見られたくねーし!


「……はぁ」

俺はもう何度目かの溜め息を吐いた。

⏰:09/02/23 16:49 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#101 [◆LOSh2yD9/c]
明日学校行きたくねーなぁ。
玲司に何言われっかわかんねーし、絶対あいつ馬鹿にするな…


『あはは!ほら見ろよあんな軽そうな女、絶対浮気するって言っただろ〜まぁ一年持っただけでも良しと思えよ』


ぐあ…!!
痛い言葉が突き刺してくるー(想像上で)

俺は頭をガシガシ掻きながら、未那に言われた言葉を思い出していた。



『それにね、未那、一年持ったのって湊が初めてなの!だから未那にしてみれば良く持ったなって感じ♪じゃあ、今までありがと。じゃね〜!』

⏰:09/02/23 16:54 📱:F906i 🆔:☆☆☆


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