WHITE★CANDY
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#401 [ぎぶそん]
風呂上がりに、パジャマ姿のままでリビングのベランダに出てみた。
見上げて見るお月様は、満月に近い形をしていた。
瞬く満天の星に、人はそれぞれどんなことを思うのだろう。
私は明日も明後日も夜を迎える度、こうして星たちを眺めていたいよ。
辛い時も、楽しい時も。
何事もなく終えた日でも。
自分の命が瞬き続ける限り、目の前にあるものを受け止めていく。
私はそう、生き続けたいんだ。
:09/04/10 13:34
:SH705i
:j.4ME3cQ
#402 [ぎぶそん]
弥生と町田の噂はたちまち他のクラスにも広まり、それ以降彼女に親しく声を掛ける者は少なくなっていった。
以前、町田と付き合っていた子に言い寄ってしまった男子が、その後町田に一発殴られたという。
その一件もあって、下手に彼女を近づいたり傷つけたりして、町田に因縁をつけられることを、皆は恐れているのだ。
そんな中、エリは変わらず転校してきた頃のように、積極的に彼女に話し掛けたりしていた。
町田との交際が噂された当初は驚いていたようだったが、少し経つとそのことにも気にも止めなくなったみたいだ。
移動教室の時は彼女も誘ったり、休み時間に勉強を教えてもらったりするエリは、楽しそうだった。
:09/04/12 17:23
:SH705i
:UwxDzFUk
#403 [ぎぶそん]
数日後の昼休み、私は優平と屋上に来ていた。
弥生が何か訳がありそうな雰囲気あり、それを私に伝えようとしていることを、優平に話してみることにした。
「きっと、村上さんは誰かに自分のことを理解して欲しいんじゃないかな。」
「理解?」
「うん。ずっと、寂しかったんだと思うよ。」
ああ、そうか。
彼女を初めて見た時、その瞳は孤独で淋しそうに見えたんだ。
:09/04/12 17:31
:SH705i
:UwxDzFUk
#404 [ぎぶそん]
放課後、トイレを済ませ教室に戻ろうとした時だった。
「真ー希ちゃんっ。」
弥生に後ろから肩を軽く叩かれた。
「F組の桜井くんだっけ?彼、奥手そうだね。
そういう男と付き合うと、後々じれったくて面倒になるわよ。
他の男に乗り換えたら?」
腕組みをしながら、私の隣を歩く。
身長はクラス内で低い方だが、どこか威圧感がある。
私と二人きりになると、彼女は少々毒舌になるようだ。
彼女自身が言う、『本性』といった所か。
:09/04/12 17:46
:SH705i
:UwxDzFUk
#405 [ぎぶそん]
「…弥生ちゃんは、町田くんのどんな所が良かったの!?」
「え?」
「私、知りたいな。弥生ちゃんのこと、色々と。」
嘘じゃない、全くの本心。
彼女が意表をつかれたという顔をしていると、教室から出て来たエリが「真希ー、遅い!帰るよー!」といいながらこっちに来たので、会話は中断した。
:09/04/12 17:53
:SH705i
:UwxDzFUk
#406 [ぎぶそん]
その後、いつものようにエリと一緒に帰る。
「ねえ真希、弥生ちゃんってどう思う?」
西洋を意識した通りに差し掛かった所で、エリが口を開いた。
「んー、正直、どこか陰のある子だなって。」
「私も思った!だからその分、色々と気になっちゃうんだよね。」
その後、無言で下を向くエリ。
:09/04/12 18:04
:SH705i
:UwxDzFUk
#407 [ぎぶそん]
「…真希たちには言ってなかったけどね、私中学の時にハブられてた時期があってね。
ほら私、気がついたらついついうるさくなるでしょ?
それで一部の子たちから、『調子乗ってる』って言われだして。」
突然、エリが辛かった過去を告げてきた。
私が黙ったままでいると、彼女は話を続ける。
「やっぱり、その時は全然楽しくなかったよ。学校に行きたくないって思った時もなかったし。
だから、一人ぼっちにしてる子とか、気になっちゃうんだよね。
『独りは寂しいでしょ?』って。」
:09/04/12 18:14
:SH705i
:UwxDzFUk
#408 [我輩は匿名である]
:09/04/15 07:49
:SH903i
:geEztBOA
#409 [ぎぶそん]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>匿名さん
アンカーありがとうございます!(*^-^*)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
:09/04/16 08:15
:SH705i
:KQHVNB.U
#410 [ぎぶそん]
「エリには言ってなかったけどね、前元基が言ってたの。
"エリは優しくて可愛い子だ"って。
私もそう思う。エリの気持ちは、皆に届いてるよ。」
私はずっと、人付き合いとやらが苦手だった。
父親以外の人と接するのが億劫で、こんなことが一生続くのかと思ってた。
だからずっと、友達と呼べる人がいなかったんだ。
:09/04/16 08:21
:SH705i
:KQHVNB.U
#411 [ぎぶそん]
中2の時の担任の先生が、クラス初めてホームルームで、こんな言葉を贈ってくれたっけ。
『親と先生は裏切っても、友達は絶対に裏切るなよ。
孤独で寂しい人生になるから。』
正直、その時はイマイチ意味が分からなかったんだ。
トモダチという価値を見いだせなかった。
どんなに仲が良い者同士でも、女子は平気で相手の陰口を叩くし。
"友情は一生物"だなんて話を耳にすると、迷信を聞いた時の感覚に陥ってた。
:09/04/16 08:32
:SH705i
:KQHVNB.U
#412 [ぎぶそん]
でも、エリと出会って、自分の中で何かが変わったんだ。
私には分かる。
彼女はどんな時も、決して友達を見放したりはしないだろう。
彼女から話し掛けてくれた時、本当は嬉しかったんだ。
心の中ではずっと、孤独を感じていたのかも知れない。
"一人の方が好き"なんて、無意識に意地を張っていたんだ。
もし自分が将来学校の教員になり、教壇に立ったその時は、あの時の先生の言葉をそっくりそのまま引用させてもらうだろう。
:09/04/16 08:41
:SH705i
:KQHVNB.U
#413 [ぎぶそん]
そして、エリと出会っていなければ、私は優平のことをその存在も知らぬまま、高校生活が終わっていただろう。
そんなことをふと考えると、ぞっとしてしまう自分がいるんだ。
エリも、元基も、優平も、自分にとって、父親と同じ位なくてはならない存在。
そう、友達がいるだけで、友達を大切に思うだけで、こんなにも日常は幸せで溢れているんだ。
:09/04/16 08:48
:SH705i
:KQHVNB.U
#414 [ぎぶそん]
数日後の日曜日、父の提案で我が家で焼肉パーティーが開かれることになった。
転校生も是非連れて来なさいと言うことで、エリたちに加え、弥生も予め誘った。
彼女は嫌がる様子もなく、すんなりと承諾してくれた。
夕方の4時頃、エリたち参加メンバーが我が家にやって来た。
東吾兄もこの日はどこにも出掛けず、転校生見たさにパーティーの手伝いを積極的にやっていた。
:09/04/20 12:31
:SH705i
:L/GbGVZM
#415 [ぎぶそん]
子供たちで、リビングのテーブルに囲む。
父が台所で準備をしている間、皆で団欒をしていた。
「へぇ、エリちゃんと元基くんは付き合ってるんだ!
となると残りは…。」
東吾兄が私と優平の顔を、ニヤニヤとした表情で交互に見回す。
「真希ー、いつもの特製のタレも出来たぞー。」
反論をしようとしたら、大皿などを持った父が、ニヤニヤとした表情でこちらにやって来た。
:09/04/20 12:46
:SH705i
:L/GbGVZM
#416 [ぎぶそん]
「おじ様、特製のタレって?」
エリが興味津々に尋ねる。
「真希は辛口7:甘口3の配合で作るタレが好きなんだ。
でも自分で作ろうとすると失敗するから、おじさんがいつも作ってやってるんだ。」
「アハハ。雨宮さんもまだまだ子供だね。」
キャップを被ったままのますちゃんが笑う。
「うー、ますちゃんには言われたくない。」
私はそのキャップを取ってやった。
:09/04/20 13:06
:SH705i
:L/GbGVZM
#417 [ぎぶそん]
ホットプレートの上で焼かれる肉が、じゅうじゅうと香ばしい音を出す。
「さあ皆、遠慮せずどんどん焼いて食べて!
桜井くんもしっかり食べて栄養をつけて!」
父が優平の皿に、ピーマンばかりを次々放り込む。
優平は緑一色になった皿を見て、少し困っていた。
「ちょっとお父さん、こんなにピーマンばっかり食べられないでしょ?」
私は優平に変わって注意した。
「ああすまん、桜井くんが『緑マントのピーマンマン』に似てたもんで、つい。」
「意味不明!」
:09/04/20 13:18
:SH705i
:L/GbGVZM
#418 [ぎぶそん]
「城さん、桜田くんを『要注意人物』として見ているらしい。」
隣に座ってた東吾兄が、小声で話し掛けてきた。
「何それ?因みに桜井だから。早く覚えて。」
「マキロンに近づく男どもは、一刀両断だって。」
「何それ、呆れた…。」
それでこんな嫌がらせを?
『幸せになれ』って言ったのは、一体何処のどいつよ…―
:09/04/20 13:24
:SH705i
:L/GbGVZM
#419 [ぎぶそん]
「お父さん、お父さんにタレ作ってあげたよ。」
顔に笑みを浮かばせながら、父に新しく皿を渡す。
「おお!ありがたやありがたや。
真希が作ってくれたのなら、ご飯が何杯でも食えそうだ。」
父は早速焼いた肉を取り、そのタレに浸けて食べた。
「って、辛〜っ!!」
そのリアクションに、私は笑った。
父に渡したのは、辛口のタレに唐辛子を沢山投入したものだった。
優平のこといじめたら許さないんだから。
:09/04/20 13:33
:SH705i
:L/GbGVZM
#420 [ぎぶそん]
「弥生さん、新しい学校にはもう慣れたかな?」
コップの水を飲み干した後で、父が隣の弥生に質問をしてきた。
今日集まったのは、彼女との親睦をより深める為でもある。
「はい、おかげさまで。」
弥生が気品漂う感じで返事をする。
「そうかぁ、そりゃ良かった。何かあったら、皆を頼っていいからね。」
「はい。ありがとうございます。」
弥生がニッコリと微笑む。
彼女は食事にほとんど口をつけていなかった。
:09/04/20 13:41
:SH705i
:L/GbGVZM
#421 [ぎぶそん]
肉や野菜がほとんどなくなった頃、私はトイレへと向かった。
洗面所で手を洗い、リビングに戻ろうと振り返った所、弥生が腕組みをして立っていた。
「真希ちゃんは幸せ者だね。
かっこよくて優しくて、何よりも真希ちゃん思いのパパがいて。
今日アタシを誘ったのって、嫌味のつもりなのかしら?」
先程リビングで皆に見せていた時とは、似ても似つかないような顔をしていた。
:09/04/20 13:51
:SH705i
:L/GbGVZM
#422 [麗]
:09/04/20 18:42
:SO905i
:mUTX4e12
#423 [ぎぶそん]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>麗さん
アンカーありがとうございます!(o^-^o)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
:09/04/20 19:39
:SH705i
:L/GbGVZM
#424 [ぎぶそん]
「そんなつもりはないよ。
それに、弥生ちゃんにもお父さんがいるじゃない?」
「…アタシが少6の時だったわ。
つい魔が差してね、ある日本屋で万引きをしちゃったの。
でも、あっけなく店の人に補導されてね。
保護者として迎えに来た父は、必死こいて店員に謝ってた。
でも、帰り際に私に放った言葉は『何てことをしてくれたんだ。これが会社の人にバレたら大事だ』だったわ。
娘のことより、世間体の方が気になるみたいよ。」
:09/04/20 19:50
:SH705i
:L/GbGVZM
#425 [ぎぶそん]
「…若気の至りで、避妊もせずに快楽に走るから、私なんかが産まれたんでしょ!」
誰に言う訳でもなく怒鳴ると、弥生は再びリビングへと戻った。
初めて見た、彼女のヒステリックな表情。
彼女は実の父親を憎んでいるようだ。
私と弥生は家族構成は似ているが、家族環境はどうやら正反対のようだ。
幼い頃にぞんざいに扱われた経験が、彼女の心にひたすら闇と空虚さを生んだのかも知れない。
:09/04/20 20:00
:SH705i
:L/GbGVZM
#426 [ぎぶそん]
その日の夜、これまでの弥生とのやり取りを父に相談してみることにした。
「…今日彼女を呼んだのって、かえって逆効果だったのかなあ。」
クッションを抱き抱え、ソファーに座った。
「そんなに落ち込むことはないぞ。
逆に、皆に見せない顔を見せるってことは、それほど真希に心を開いてるってことじゃないか?」
父は私の前にしゃがみ込み、ポンッと軽く私の頭を叩いた。
:09/04/20 20:47
:SH705i
:L/GbGVZM
#427 [ぎぶそん]
「ありがとうお父さん。
私、弥生ちゃんの心に潜む影を取り除いてあげたい。」
「それでこそ我が娘だ。」
そう、この時はまだ、私は彼女の心の暗雲を知る由もなかったんだ。
私自身、生きるということが希望に満ち溢れていたから。
それと全く正反対の人がいるということを、理解していたようで出来ていなかったんだ。
この時から彼女は、生きるという希望を失っていたのかも知れない。
Chapter05 END.―
:09/04/20 21:00
:SH705i
:L/GbGVZM
#428 [ぎぶそん]
Chapter06
「真希のアタックNo.1」
:09/04/20 21:06
:SH705i
:L/GbGVZM
#429 [ぎぶそん]
私の通う学校では、年に一度、体育祭とはまた違う大きなスポーツイベントがある。
『クラス対抗スポーツ大会』
それぞれのクラスが一丸となり、様々なスポーツを用いて勝敗を競い合う。
優勝したクラスには、学校から長野のスキー旅行がプレゼントされる。
したがって、この業者を煙たがったりサボろうと思う者はほとんどいない。
そして、その季節が今年もやって来た。
:09/04/20 21:16
:SH705i
:L/GbGVZM
#430 [ぎぶそん]
スポーツ大会の日にちが決まった放課後、級長を中心に話し合いが行われた。
級長が、黒板に数種類の球技名を書く。
そして、これから友達と話し合う時間を設けるから、10分後のチーム決めの際、一番やりたいものに挙手をするようにと指示した。
「真希ー!一緒にバレーやろー!」
級長の話が終わると、エリが私の席に近づいてきた。
:09/04/20 21:27
:SH705i
:L/GbGVZM
#431 [ぎぶそん]
「エリって、卓球やバドミントンが好きじゃなかった?」
「最近全日本バレーで賑わってるじゃん。その影響。」
エリはバレーのトスの振り付けをしながら、ウキウキとしていた。
彼女は流行やその時の話題に敏感な子だった。
好きな芸能人も今注目を浴びている人だし、ケータイの着信音も今話題の曲だ。
彼女の胸ポケットからはみ出していたケータイのストラップも、今人気のキャラクターの物だった。
:09/04/20 21:37
:SH705i
:L/GbGVZM
#432 [ぎぶそん]
バレーか。体育の授業でしかやったことないけど、たまにはいいかも。
中学の時、バレー部に入ろうかと考えたこともあったしね。
「それに…D組の鈴川姉妹覚えてる?」
「去年、うちらがバドミントンの決勝で対戦した双子の姉妹?」
「そう!奴らは今年、再び姉妹揃って今度はバレーをやるって噂よ!」
:09/04/20 21:45
:SH705i
:L/GbGVZM
#433 [ぎぶそん]
「奴らのお陰で、去年はバドミントン女子一位を逃したのよ〜!
このまま黙って寝過ごすエリ様じゃないわ!真希、リベンジするよ!」
「え?私は何とも思ってないよ。
彼女たち強かった…」
「とにかーく!今年は真希と私の黄金コンビで、クラスを優勝に導くわよー!」
私が言い終わる前に、闘志に満ちたエリが私の肩を抱く。
半ば強制的に、私はエリの私情に飲み込まれた。
私には、彼女の額に"闘魂"の二文字が浮かび上がったように見えた。
:09/04/20 21:57
:SH705i
:L/GbGVZM
#434 [ぎぶそん]
「元基も優平もバスケにしたの?
へぇ、じゃあもしかしたら2人の対戦が見れるってことね。」
翌日の昼休み、いつもの4人でベランダに集まった。
話はスポーツ大会のことで盛り上がる。
「俺、サッカー以外のスポーツには自信がないよ。
公平さを求める為とかで、所属してる部活の種目には参加できないのが、この大会の決まりだからなぁ。」
優平が困ったように、髪の毛をワシャワシャと掻く。
:09/04/21 13:12
:SH705i
:aLafzO6E
#435 [ぎぶそん]
「またまたそんなこと言ってー、去年ハンドボールで大活躍して、女子から黄色い声援を貰ってたくせに〜!」
「そうそう。元基のアホの失点を、上手くカバーしてくれたのよね〜。」
「ムッ…。そういうエリこそ、今年は真希の足手まといになるなよ!
去年の決勝、後半のミスが目立ったぞ。」
「ハァ…、そうなのよ。
でも、2人には悪いけど、今年は私と真希率いるB組が優勝なんだからね〜!」
エリが左手を腰に当て、右手でガッツポーズをする。
多分、彼女がクラスで一番張り切っているに違いない。
:09/04/21 13:14
:SH705i
:aLafzO6E
#436 [ぎぶそん]
その週の日曜日、私とエリはとある小学校の体育館へと足を運んだ。
それは、ほんの数日前のことだった。
『元基のお母さんが、最近ママさんバレーにハマッてるんだって。
私たちも参加させてもらってさ、クラスマッチに向けて猛特訓しようよ!』
教室に入ると、朝一番にエリがこんなことを伝えに来た。
そして今、体育館シューズや体操着を持って、ママさんバレーとやらが行われている場所に向かっていった訳である。
:09/04/21 13:22
:SH705i
:aLafzO6E
#437 [ぎぶそん]
体育館に入ると、沢山のお母さんたちで賑わっていた。
数人で座って談笑していたり、ウォーミングアップを始めていたり、試合前の自由な時間を過ごしていた。
『ママさんバレー』というネーミングだけれど、中年男性もちらほらいるのが見えた。
「私たちも、あっちでジャージに着替えよっかー。」
玄関先で体育館シューズに履き換えると、エリがステージ近くにある着替え室を指を差す。
:09/04/21 13:30
:SH705i
:aLafzO6E
#438 [ぎぶそん]
体育館の左隅を一直線に、着替え室まで歩く。
「きゃあっ!」
その途中で、履いていたスカートをめくられる感触があった。
「こら栄基、ダメでしょう!」
エリが、走り回る小学生位の男の子の腕を掴んでいた。
どうやらこの子の仕業らしい。
「エリ、この子と知り合い?」
男の子を掴んで離さないエリに尋ねてみた。
:09/04/21 13:40
:SH705i
:aLafzO6E
#439 [ぎぶそん]
「羽田栄基。元基の弟よ。」
「えっ、そうなの!?」
元基は3人兄弟の長男だったけ。
そう言われてみればこの子、元基に目元が似ている気がする。
「エリのブ〜ス。ペチャパイ。」
「何ですってー!!」
エリの腕を払いのけ、栄基は子供たちに人気の『ブレイブマン』の立ち去るポーズをしながら、私たちの元を走り去っていった。
:09/04/21 13:47
:SH705i
:aLafzO6E
#440 [ぎぶそん]
「もー!相変わらず生意気なガキなんだから!」
「お母さんについて来たのかな!?」
「そっちでやってる、ちびっこバレーってのに参加してんのよ。
マセたガキのくせに、あれでもなかなか上手いらしいわよ。」
丁度私たちのいる真横では、子供たちがソフトバレーを楽しんでいた。
ネットの高さは大人たちの半分以下だった。
体育館を横半分に区切り、ステージ側のコートは子供たちの、後ろの玄関側のコートはお母さんたちのスペースとなっているそうな。
:09/04/21 19:38
:SH705i
:aLafzO6E
#441 [ぎぶそん]
着替え室で、エリは水色のTシャツに紺色の短パン、私はピンク色のTシャツに黒色の長ズボンジャージに着替えた。
そして着替え室を出てから、お母さんたちの元へ駆け寄る。
「あなたが羽田さんの知り合いの娘さん?
うーん!やっぱ若い子がいると活気が溢れるわね〜!」
「いえいえ、おば様も十分若いですってー!」
「まー、お世辞が上手な子ねー!」
愛嬌のあるエリは、すぐにお母さんたちと打ち解けていた。
:09/04/21 19:46
:SH705i
:aLafzO6E
#442 [ぎぶそん]
午前10時、ようやく最初の試合が始められることとなった。
チーム分けのじゃんけんの結果、私とエリは偶然にも同じチームになった。
試合は本格的なスタイルにこだわらず、前衛に3人、後衛に3人の形でローテーションをする。
最初の礼を済ませ、私は前衛のレフトに移動した。
エリはその隣のセンターに位置している。
試合開始は、私たちのチームからのサービスとなった。
試合の人が、笛を鳴らす。
:09/04/21 19:56
:SH705i
:aLafzO6E
#443 [ぎぶそん]
「真希ー、いくよっ!」
「はいっ!真希っ!」
エリは試合中、回ってきたボールを必ず私の方に渡す。
どうやら彼女は、私にアタックを決めさせたいらしい(全日本バレーの影響をされすぎだ)。
身長はそこそこ高いが、バレーについては素人なので高度なプレーは無理だ。
それでも相手チームの穴となっている所にひょいと投げ込んで、次々と点数を入れていった。
:09/04/21 20:03
:SH705i
:aLafzO6E
#444 [ぎぶそん]
「お嬢ちゃんたち、若いだけあってなかなかやるねぇ!」
相手チームに5点差をつけた所で、私の同じチームの中年男性が、私たち2人に声を掛けてきた。
「そうなんです!特にこの雨宮真希は、クラスの女子一足が速いんですよ!」
エリが私を名指し、自分のことのように得意げな顔をして話し始める。
それは関係あるのかと思いながら、私はバレーボールの楽しさを味わっていった。
:09/04/21 20:11
:SH705i
:aLafzO6E
#445 [ぎぶそん]
審判の人が、ピーッ!と笛を長く吹いた。
24対16で、私のエリのママさんバレー初試合は、勝利を収めた。
10分後に他のチームたちが試合を始めたので、自販機でジュースを買って休もうとした。
そう思った時、エリがバレーボールを片手に、私の行く手を封鎖する。
「さあ真希、試合がない間は、2人でパスの練習をしましょう!」
「…。」
彼女に抜かりはなかった。
:09/04/21 20:23
:SH705i
:aLafzO6E
#446 [ぎぶそん]
その後も試合を重ね、3勝1敗と、まずまずの試合成績を残した。
午後2時、ママさんバレーは終了した。
皆でコートの片付けを済ませ、お母さんたちに来週もまた来ることを約束した。
それから、再び着替え室へと向かっていった時だった。
「おい。そこのペチャパイ星人と白パンツ星人。」
元基の弟・栄基が私たちを指差してきた。
私は勝手に"白パンツ星人"とやらに命名されていた。
:09/04/21 20:40
:SH705i
:aLafzO6E
#447 [ぎぶそん]
「何よ、何か用?このハナタレ小僧。」
バストアップの為、毎朝牛乳を飲んでいるエリは、胸のことを言われ、明らかに勘に触っているようだった。
「お前ら、俺たちと勝負しろ!俺たちに負けたら、皆にジュースを奢ること。」
栄基の周りを、5人の子供たちが囲っていた。
彼らも栄基に続くように、"勝負しろー!""勝負しろー!"と金切り声で叫ぶ。
:09/04/21 20:47
:SH705i
:aLafzO6E
#448 [ぎぶそん]
「ハハーン。クソガキの分際で、このエリ様に盾突く訳ェ!?
いいわよ、その代わりあんたらが負けたら、すんなりとエリ様の配下になること!分かったわね!?」
エリが栄基たちの要求を飲み込む。
エリは半分キレ切み、半分ノリノリだった。
「ちょっとエリ、大丈夫なの?負けたら奢りだよ?」
「なーに弱気になってんのよ。私と真希の黄金コンビなら、こんなクソガキ共コテンパンにやっつけられるわよ。」
こうして、あっさりと子供たちと2対6の試合をすることとなった。
:09/04/21 20:55
:SH705i
:aLafzO6E
#449 [ぎぶそん]
「ブレイブアタッーク!」
「うわっ!」
エリの放ったアタックを、栄基は受け止めることが出来ずに、ボールは次々遠くに飛んでいく。
「あらあら、最初の意気込みはどうしたのかしら、羽田栄基くん。」
「…くそっ…。」
本気と化したエリは、強くたくましくなっていた。
小学生相手と言えども、容赦しなかった。
:09/04/21 21:03
:SH705i
:aLafzO6E
#450 [ぎぶそん]
「白パンツ星人、今度はお前だっ!」
「真希、ボール来たよっ!」
栄基はエリばかり狙うと油断していた時、栄基がボールをこちらに飛ばしてきた。
咄嗟に、エリにパスを出さず力強くアタックしてみた。
ソフトボールなので、通常のボールより威力を増す。
:09/04/21 21:12
:SH705i
:aLafzO6E
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